俺の妹が身長180cmなわけがない:第十二話(黒猫√)

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435 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/06(日) 07:21:49.24 ID:ijSO94qlo [1/4] 「じゃあ黒猫と組むわ」 目的を優勝ではなく豪華賞品の入手に絞るならば、この組み合わせが一番いいだろう。 どちらかに戦力を集中させて、もしそちらが一回戦で強敵とあたってしまったら元も子もない。 「わ、私でいいの?」 俺という貧乏くじをひかされたにしては意外な台詞だった。 しかしながら、案の定沙織と桐乃は黒猫を憐れむような目で見ている。 「黒猫、すまない」 黒猫の肩に両手を置き、謝罪する。ゲーマーであるこいつとしては本気で勝ちに行きたかったに違いないからな。 黒猫は、俺が手を置いた瞬間びくっと体を震わせたかと思うと、「莫迦じゃないの」という捨て台詞とともに、ぷいっと顔を背けてしまう。 俺は沙織たちの方に向き直り、こう続ける。 「賞品、絶対ゲットしようぜ!」 そんな俺を不機嫌そうな面で見つめる桐乃。沙織はぐるぐる眼鏡のせいで目元はよく見えないが、恐らく黒猫を憐れんでいることだろう。 大会当日。俺たちはシスカリ大会に参加するため、秋葉原に集まっていた。 ふっふっふ、俺だってこの一週間、ただ漫然と過ごしていたわけではない。実は、黒猫とマンツーマンでシスカリの特訓をしていたのだ。 今では黒猫には遠く及ばないものの、人並み以上の腕前になったと自負している。もしかすっと、俺って格ゲーの才能があったのかも……なんてな。 「そういえば、大会ってどこでやんの?」 「会場はso○map内のイベントフロアとなります。すぐそこですな」 沙織たちの後に続き、会場へと移動する。 会場は既にオタクたちで埋め尽くされており、イベントが始まるのを今か今かと待ち構えていた。 「……結構な人数来てんな」 まさか全員が参加者ってわけじゃないだろうが、それでもざっと見回して100人以上はいるように見える。 こいつらとやりあって勝てるんだろうか。なにせ相手は沙織や桐乃、そして黒猫よろしく本気でこのゲームを愛しているような奴らなのだ。 一週間程度の練習でどこまで通用するのか……俺、すっかり自信なくなってきたぜ。 「気後れする必要はないわ」 俺の不安を見抜いたのか、黒猫が声をかけてきた。 「卑屈すぎるのは鬱陶しいだけよ」 いつのまにか俺の隣にぴったりと寄り添うように並んでいる。その瞳は真っすぐと前を見据えていた。 こいつはこいつなりに気を遣ってくれたのだろう。今の言葉を翻訳すると、「自信を持って」となる。 俺が礼を言うと、黒猫は「ふん」とつまらなさそうに鼻をならしたのだった。 436 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/06(日) 07:22:48.28 ID:ijSO94qlo [2/4] 結果から言うと、桐乃と沙織は2回戦負け。 そして俺と黒猫はというと……聞いて驚け! なんとこれから準決勝だ! 黒猫とばっかり特訓していたせいか、他のプレイヤーの動きがどこか鈍く見える。 俺の攻撃は面白いように当たるし、攻撃のタイミングも甘々だ。ましてや超必殺技を一つ一つパリングされるなんてこともない。 改めて黒猫の恐ろしさを思い知ったぜ。そして、その黒猫は味方なのだ。頼もしい事この上ねえな。 だが、さすがに準決勝ともなると相手のレベルも相当高く、今までのように楽に勝たせてはくれなかった。 じわじわと俺のライフを削られていく。 こりゃあ、俺も切り札を切るしかないかもな。くっ、できれば決勝戦までとっておきたかったんだが……致し方ない。 俺の切り札。それは、黒猫との特訓中に偶然見つけてしまった俺のオリジナルのコンボである。 ダメージ量こそそこまで大きくはないが、このコンボの重要なところはそこではない。実はこのコンボ、普通では考えられない技を起点とするため玄人ほど読みにくいのだ。まさに俺が素人ゆえの産物だった。 ただ、一度手の内がばれると簡単に対処されてしまうため、できることなら決勝で使うのが望ましかったのだがそうは言っていられない。 この大会はトーナメント戦であり、負けは許されないのだから。 今だ! 心の中で叫び、がちゃがちゃとレバーとボタンを操作する。 そして次の瞬間会場が一際大きな歓声に包まれた。 画面に映し出されるWINの文字。黒猫とまったくの同タイミングで相手の撃破に成功した。 「人呼んで、京介スペシャル!」 気付けば、右手をぐっと握りしめガッツポーズをしながら叫んでいた。 「いやあ、惜しかったですなあ。お兄様」 しょぼーんと、項垂れる俺。 決勝に進んだ俺たちは白熱した勝負を繰り広げていたのだが、勝負を焦った俺が”京介スペシャル”を発動。 しかし一度晒してしまった技が通用する相手ではなく、簡単にカウンターをくらってK.O。2対1ではさすがの黒猫もどうしようもなく、そのまま敗北してしまった。 「すまん、黒猫。俺が焦りさえしなければ」 「ええ、そうね。あなたがあそこで凡ミスしなければ勝てていたかもしれないわね」 黒猫のぐさっと言葉が突き刺さる。だが事実なので反論の余地はない。 や、やっぱり怒ってるみたいだな。 すかさず空気を読んだ沙織が話題の転換を試みる。 「まあまあお二人とも。賞品は手に入ったのですから、それでよしとしましょう。それでは早速戦利品の分配をば!」 「ひゃっほう! 待ってました!」 そして沙織がごそごそと賞品の入った袋を漁りだす。 事前に確認したところ、3人のお目当ての賞品は被ることはなかった。ただ一つを除いては。 「……さて、問題のこれの処遇ですが…………」 沙織が最後に取り出したのは、3人が3人とも欲しいと言っていた、ゲーム内でキャラに着せることができるコスチュームのデータである。 悲しいことに、このデータを使用できるのは一人だけらしい。タッグ戦の大会のくせに、なんてもんを賞品にしとるんだと突っ込まずにはいられない。 沙織曰く、何人でも使えるようにすると希少価値が下がるとかなんとかって理由かららしい。 こりゃあ、盛大な争奪戦が勃発しちまうな……。そう思っていたのだが、ある人物が真っ先にその争奪戦からドロップアウトした。 437 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/06(日) 07:23:44.00 ID:ijSO94qlo [3/4] 「私は遠慮しておくわ」 「えっ?」 真っ先に争奪戦を降りたのは黒猫だった。 「で、でも……おまえあんなに欲しがってたじゃねえか」 「……気が変わったのよ」 気が変わったって……。 そんな理由で欲しくなくなるもんなのか? オタクってのはよくわからん。 「し、しかし、これを入手できたのは黒猫氏とお兄様のおかげなのですから……黒猫氏が欲しいと言えば拙者たちは降りようときりりん氏とも相談していたのですよ!?」 黒猫の気持ちがわからないのは俺だけではないようで、沙織も把握しかねているようだった。 「ふん……私はもう私の取り分以上のものをもらったわ。だからそれはあなた達で決めなさい」 そう言って黒猫はくるっと振り返り歩いていく。 振り返る瞬間、口元がにやりと半月型になっているのが見えた。黒猫の機嫌がいい証である。 あれ? あいつ、機嫌悪いんじゃなかったの? 「いてえ!?」 黒猫がいきなり上機嫌になった原因を考えていると、桐乃に脛を蹴られ、沙織に脳天にチョップをかまされた。 「な、なんなのおまえら!? 俺に一体なんの恨みがあるの!?」  桐乃はともかく沙織まで! 両人とも、びきびきとこめかみに力が入っているのがわかる。 「……きもっ」 「今日の正座は20分で許して差し上げますわ」 俺が何をしたって言うんだ。 桐乃が何をそんなにキモがってるのかわからないし。沙織はなにやらご立腹なようだ。そもそも、沙織はなんでそんなに俺を正座させたいんだ。 あまりの怒りのためか、いつものお嬢様口調に戻っている。あるいは、俺を怒る時はその口調と決めているのだろうか。 丁寧な口調で怒られるのって怖いし、俺としてはござる口調で怒ってくれた方がいいんだけどな。 少し離れたところで俺たちがついてきていないことに気付いた黒猫は、立ち止まってこちらを楽しげに見つめていた。 第十二話(黒猫√)おわり

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