俺の妹が身長180cmなわけがない:第十三話(黒猫√)

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449 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/08(火) 20:49:10.53 ID:s4+v7UlLo [1/6] 「あのシスコンってば、ちょーキモい。あんなのが兄貴じゃなくてまじで助かった」 「その割にはえらく悔しそうな顔してるわね。っふ……まるで欲しい物を買ってもらえなかった子供みたいよ?」 「しっ、してないし! 何ばかなこと言っちゃてんの!?」 目の前のギャル風の少女は私の意見を慌てて否定し、さらにこれでもかとまくしたてる。 喫茶店での談笑。私たちくらいの歳の少女にはありがちで珍しくもない光景。 今日は私とこの子の二人だけで遊んでいる。沙織も誘ったのだけれど用事があるとかで来れなかったのだ。 でも、今日に限ってはその方がありがたかった。 「あんたこそ、あいつのこと兄さんとか呼んじゃってさ。なんなの? ブラコンなの?」 「最初に兄妹でもないのに兄貴と呼び出したのはあなたでしょう。私はそれを模倣しただけにすぎないわ」 「ぐぬぬ……」 ふふふ。この子は本当にからかいがいがある。口げんかが弱いにもほどがあるわ。 思ったことをそのまま口に出すからいけないのよ。もう少し考えて発言すればいいのに。 私は未だ歯軋りして悔しがっている親友に声をかけた。 「ところであなた、あのシスコンのこと好きなの?」 「はっ!? あああああ、あんた何言っちゃってんの!? ふっ、ふふ、ふざけんじゃないってば! 誰があんなの!」 虚を突かれ、呂律がまわらない様子。 「ふざけてなどいないわ」 声のトーンを落とし、真剣であることを相手に伝える。 それはちゃんと伝わったようで、先ほどまでの慌てまくって真っ赤になった顔が幾分かましになった。それでも依然として赤いけれど。 「あんた、どうしたの?」 「いいから答えなさい」 目を細めて、相手を見つめながら言葉を待つ。 いや、見つめるというよりは睨みつけるといった方がいいような顔をしているかもしれない。 それでも、私の親友は少しも臆することなく私を見つめ返してくる。 「……好き」 「……そう」 「うん」 少し、気が楽になった。先ほどまで力一杯握られ自分の意志では開くこともかなわなかった手の平も、今はもう自由に動かせる。 450 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/08(火) 20:49:49.08 ID:s4+v7UlLo [2/6] 「……そう」 ふう、と息を吐いて天井を見上げる。照明が目に入り、思わずきゅっと目を閉じた。 モデルやっているだけあってかわいい顔しているのは認めざるをえないし、足だって長い。丸顔ではあるがそれが好きだって人もいるだろう。 それに下賤なことを言うようだけれど胸も私より大きいし……。 あの人も愚かな雄の例に漏れず大きい方が好みなのかしら。中には小さい方が好きという人もいるらしいけれど。 もしそうなら私にも勝ち目が出て来るのだろうか。 ……なんてついつい莫迦な想像をしてしまう。それくらいにあの人のことが気になってしまっていた。 いつからかはわからない。特にきっかけがあったわけでもない。 でも、いつの間にかあの人は私の心に入り込んできた。そして今もその場に居座り続けている。 「いつから?」 「はあ? 何であんたにそこまで言わなくちゃならないわけ? あんたには関係なくない?」 「ふふ、いいじゃない。ここまで言ってしまったら後は一緒よ。それに関係なくはないもの」 「えっ?」 驚き、目を丸くする親友。 「ま、まさか……あんたも?」 「ええ、そのまさかよ」 「…………」 親友は言葉を失い、何も話せないでいる。 しばらくお互いに無言のままの時間が続く。そして、ようやく親友が口を開いた。 「そっか、あんたもか」 「……ええ」 私は力なく返事をすることしかできない。 451 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/08(火) 20:50:25.64 ID:s4+v7UlLo [3/6] 「だからあれ以降も兄さんって呼び続けてたんだ」 ん? 「でも、ま、あんたも物好きだよね。あんなののどこがよかったの? 人のこと言えないけどさ」 「どこって……そうね…………優しい……ところ?」 一瞬感じた違和感はとりあえず脇に置いて、質問に答える。 自分でもわからない。あんなののどこがよかったのか。顔は地味だし、重度のシスコンだし。 でもこうなってしまったものは仕方がない。もうどうにもできない。 私は自分の気持ちに嘘をつけるほど器用ではないのだから。 「だよね。…………沙織が本当に羨ましい」 んん? 口をとがらせ、しょぼんとうなだれる親友。 しかし、今、私の思考は別のことに囚われていた。 口に出すのも恐ろしい。これを口に出してしまうとこいつに弱みを握られることになってしまう。 だけど、それでも確認せずにはいられない。 「あ、あなた…………ひょっとして……男性としてではなく、兄として好きだと言いだすんじゃないでしょうね?」 「は? そうだけど? ……あんた何だと思ってたの?」 ふ、不覚。まさかこの私がこんな凡ミスを犯してしまうなんて。 しばらくきょとんとした顔を私を見ていた親友だったが、私が犯してしまったミスに気付いてしまったようで、ぐにゃあとその口を歪める。 にやにやと下卑た笑みを浮かべている。「さて、今からどう料理してやろうか」というような顔に見えた。 ……こんなことなら、普段この子をからかう回数を減らしておけばよかったわ。 「なに? あんた、あいつのことが好きなの? ……男として」 ぷくく、声が漏れた。申し訳程度に口を抑えてはいるようだが、それでも笑いをこらえきれないようだ。 「くっ……」 今の私はもはやまな板の上の鯉。あとは捌かれるのを待つことしかできない。 「ふ~ん、そっかそっか。なるほどね」 腕を組み、顔を上下させてなにやら一人で納得している。 さて、ここからどんな風にいじられるのか……。あまり意味はないが気持ちの上だけでも身構えておく。 しかし、聞こえてきたのは意外な言葉だった。 452 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/08(火) 20:51:39.70 ID:s4+v7UlLo [4/6] 「ま、いいんじゃない?」 「え?」 「だって、あいつ顔は地味だけど優しいのは間違いないし? 多分今まで彼女なんてできたことないだろうし、いざ彼女できたら大切にしてくれそうじゃん。地味子という対抗馬が気になるけど」 この子のことを少し誤解していたのかもしれない。この子は本気の相手を小馬鹿にするような人間ではなかった。 この子という人間をまた少し理解できた気がする。 「いや……一番の対抗馬は沙織? あれ? でも沙織が対抗馬になるなら私だってなっちゃうのかな? 同じ妹属性だし。…………ん? あんた、何笑ってんの?」 言われて初めて自分が笑顔になっていたことを自覚する。 「なんでもないわ」 「ま、いいけど。でも……ぷぷっ。まさかあんたがね~。ちょー似合わないんですけどwww」 こ、このアマ……。どうやら前言撤回しなければいけないようね。 思わず頬が引きつってしまう。褒めた矢先にこれだもの。 でも本気で馬鹿にしているわけがない。だって、この子は私の親友だから。 「……あなたに言われたくはないわ」 だから私は、ふんと鼻をならし、ありふれた捨て台詞を吐くだけにとどめておいた。 第十三話(黒猫√)おわり

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