無題:9スレ目167

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167 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/30(水) 04:46:43.11 ID:2BmaPh3+o [3/11] 「みなさま方、先日連絡しておいたブツは用意していただけましたかな」 「おう、当然だ」 「あの時、あんだけ言われて引き下がれるわけないっしょ。あたしの本気見せてあげるから」 「ふっ、あれは自業自得でしょう。プラモをデコるなんて……流石ビッチの発想は違うわ」 「なんですって!」 「なによ」 「お~い。そこらへんでやめとけ」 とある休日の午後。俺たちはいつもの四人で俺の部屋に集まっていた。 この面子なら本来桐乃の部屋に集まるのが妥当な所なのだが、今回は違った。桐乃の「なんか部屋汚れそうだから嫌だ」の一言で俺の部屋に集まることになったのだ。 そう。俺たちはこれから沙織の指導の下、ガンプラの製作にチャレンジするのだ。 桐乃に関しては“再”チャレンジだがな。これは、以前桐乃がプレゼント用のガンプラをこれでもかとデコった挙句、パーツを余らせるという失態を演じたことがあるためだ。 沙織のガンプラ講座① ~~好きなキットを選ぼう~~ 「では早速、各々が用意したブツを見せていただきとうござる」 「俺はこれな」 「おお、HG(ハイグレード)1/144マスラオですな! 以前頂いたスサノオといい、京介氏はどうやらその系統の機体がお気に入りのようで」 「いやあ……やっぱかっこいいよな、これ」 「続いて黒猫氏は――」 「私はこれよ」 黒猫が背後に置いてあった箱をドンと、自らの面前に置く。 さっきから思っていたが、改めて見るとやっぱりでけえ。箱の大きさだけで言えば、俺のやつの倍くらいあるんじゃないの、それ。 「これは……MG(マスターグレード)1/100デスサイズヘルカスタムでござるな。最新技術が用いられたいいキットです。それにしても……しょっぱなからMGとはまた豪儀な」 「あら、いけなかったかしら」 「いえいえ、そんなことはありませんぞ。MGはHGに比べパーツ数こそ多いですが、素のままでも非常に完成度が高いので初心者の方にも意外とおススメなのでござる」 黒猫が選んだガンプラは、その名の通りでかい鎌を持った、死神を連想させるガンダムのプラモだった。 だが……なるほどね。MGとやらはでかくて複雑でとても初心者には向いてないと思っていたが、そういう解釈もあるわけか。 「でも作るのはやっぱり大変なんだろ?」 「ええまあ、それなりには。ですがその分完成した時の喜びもひとしおでござるよ」 腕を組み、上を見上げしみじみと語る沙織。きっと彼女の脳内ではガンプラを完成させたときの感動が思い起こされていることだろう。 「トリはあたし! これを見よ!」 沙織の感動をぶった切って意気揚々とブツを取り出す桐乃。 168 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/30(水) 04:47:50.16 ID:2BmaPh3+o [4/11] ででん! という効果音がこれ以上に似合う場面もそうそうあるまい。 桐乃が取り出したそれは黒猫の物よりさらにでかい――1.5倍くらいある代物だった。 「そ、それはっ!」 沙織は一瞬驚愕の表情を見せ、そしてどんどんと青ざめていく。 なんだ? そんなにやばい代物なのか? あれ。 「き、きりりん氏……よりにもよってそいつを選んでしまうとは」 「え……な、なんか駄目だった?」 沙織の異常なリアクションに選んだ桐乃自身も戸惑ってしまっている。 「MG1/100 Ex-Sガンダム。……初心者に最もおススメしてはいけないガンプラの一つでござる」 「あなた、さっきは『MGも実はおススメ』みたいなことを言っていたじゃない」 「そうではないのです……そうではないのですよ黒猫氏。こいつに関しては別なのでござる」 「というと?」 沙織の発言に対し、横から質問を入れる。俺だって、沙織の言葉の意味は気になるからな。 まあ、こいつはそんなことしなくてもきっと説明してくれるだろうが。 「圧倒的なパーツの多さ――これに尽きるでござる」 「……そ、そんなすごいの?」 桐乃が冷や汗を張り付けて沙織に尋ねる。若干、口元が引きつっているのが確認できた。 そりゃ、あんな大げさなリアクション取られたら誰だって心配になるよな。 「パーツ数でいえば、普通のMGの倍くらいあるでござる」 「あれ? そんだけ?」 素っ頓狂な声をあげる俺。 なんだ、あんな驚き方するからもっとすごいのかと思ったぜ。 これなら案外なんとかなるんじゃないの? 「京介氏、Ex-Sを甘く見てはいけません。熟練の者ほど箱を開けた瞬間、絶望のあまりそのままそっと箱を閉じてしまいたくなるほどのキットなのです。実際、拙者もこれを完成させるのに半年かかったでござる」 「「「半年!?」」」 沙織以外の、俺たち3人の声がハモる。 沙織ほどの奴が半年!? ……ごくり。いったいどんな中身してるんだあの箱の中は……。 「まあ、拙者の場合はぐだぐだしながらの上に塗装も行ったものですから。ただ組み上げるだけならもっと早く済むでしょう」 「そ、そうだとしてもとんでもねえな」 こりゃあ相当の覚悟をしねえと駄目みたいだぞ、桐乃。頑張れよ。 「……HGにしといてよかったぜ」 169 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/30(水) 04:49:16.08 ID:2BmaPh3+o [5/11] 沙織のガンプラ講座② ~~必要な道具を揃えよう~~ 「まずは、必要な道具の確認でござる。ぶっちゃけ爪切りさえあればそれで作れちゃうのですが、今回はもうちょっと踏み込んでみましょう」 え……爪切りで作れちゃうの? なんか思ってたよりも敷居低いんだな。 「今回は拙者が用意した道具を使って下され」 「ありがとう。悪いな、沙織」 「お気になさらず。たくさん余っていますから」 自分の鞄をごそごそと漁り、いくつかの道具を並べだす沙織。 さりげなくスルーしかけたけど、道具が余ってるってどういう状況なんだろう。不思議だ。 「これがニッパー。パーツの切り出しはこれで。――続いてヤスリ。ゲート処理はこれを使います。ゲート処理については後程説明するでござる。以上が今回使用する道具となります」 「あれ? ヤスリなんて使うの?」 桐乃がきょとんとした顔で沙織に尋ねる。 「ええ。ほんのちょっとの工夫で見栄えががらりと変わるのですよ」 そう言ってにやりと不敵に笑う沙織。 彼女とすれば今この瞬間が楽しくて仕方がないのだろう。まるでメルルやエロゲによってオタクのスイッチが入った桐乃状態だ。 うちの妹や、黒猫に限らずオタクってのは自分のフィールドだと異常にハイになるらしい。 まあ、沙織に関しては普段から、なんというかヘブン状態なのでテンションの上下がわかりづらいんだけどさ。 170 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/30(水) 04:49:59.82 ID:2BmaPh3+o [6/11] 沙織のガンプラ講座③ ~~実際に組み立ててみよう~~ 「まずは説明書を隅から隅まで見てニヤニヤしましょう」 沙織先生の教えに従い、説明書を黙々と読みふける俺たち。 「……」 「…………」 「……これ、本当に必要なのかしら。甚だ疑問だわ」 「ふっふっふ、プロは作る前にこうやってモチべを高めるのですよ黒猫氏」 おまえは一体なんのプロだ、なんの。 「それでは実際に製作に入りましょう! まずはニッパーを使ってのパーツの切り出しでござる。この際、一つ注意事項が」 「お、講座っぽくなってきたな」 「ふふん、それほどではござらん。で、その注意事項でござるが、部品とランナーの繋がる部分――ここを少し残して切り取ることでござる」 「え~、めんどくさくない?」 「これをしないとパーツに変な力がかかって変色してしまう場合があるのですよ」 意外とデリケートなんだな。 誰かと同じで手間のかかるやつだ。 「……」 「…………」 「………………こんな感じか?」 説明書に書かれた番号に従って部品を切り出す。 「この少し残した部分はどうするのかしら」 「よくぞ聞いてくれました黒猫氏! それをどうにかするのがゲート処理と呼ばれる作業なのです!」 「ああ、これをさっきのヤスリで削るのか」 「ご明察でござる、ワトソン君」 「誰がワトソン君だ、誰が」 慎重にヤスリをかけ、切断面を目立たなくさせる。思った以上の手間だ。 ちらり、と桐乃の方を見やる。あいつは、この作業を、あの山のようにあるパーツ一つ一つに対して行わなければならないんだろう? ……地獄だな。 「あれ? 削った後が白くなって、思ったより目立つんだけど?」 ヤスリをかけ終わったパーツを見て少し驚いてしまった。俺、どこかでミスったかな。 「ご心配には及びませんぞ京介氏。それでいいのでござる」 「そうなのか?」 「ええ、最後にトップコートなる魔法のスプレーを吹きかけるとたちまち目立たなくなりますから」 「そんな便利なものがあるなら最初から使えばいいのではなくて?」 「実はこれは“細かい傷”しか隠せないのでござる。だから、切断面のような“大きな傷”はヤスリで削って細かい傷へと変えなくてはいけないのでござるよ」 へー。何事もそうそう上手い話はないってことか。 「実は“最初から余裕を残さずに切り取って切断面を爪でこすってやる”という裏技もあるのでござる。そちらでも切断面は結構目立たなくなるので、もしめんどくさくなったらこっちをおススメします」 「ちょっと、そんないい裏技あるなら最初っからそっち教えてよね」 教えてもらう立場にありながら、沙織に文句を垂れる桐乃。 まあ、自分がこれから進む苦行の道を考えたらそんな愚痴がでるのも当然だろうな。 「で、こうやって切り出したパーツを組み上げればいいんだな」 「はい。向きや組み込む順番に注意しなければならないパーツもありますからそれに気を付けてくだされ」 「あいよ」 切り出した複数のパーツを、パチリパチリと組み合わせていく。 「……げっ!?」 「きりりん氏、どうされました?」 「……これ挟み忘れた」 「ポリキャップのハメ忘れでござるな。なんというあるある。大丈夫、そんなときはパーツの隙間にカッターの刃なりを滑り込ませてぐりぐりとしてやれば――」 「あっ、外れた」 「このように割と簡単に外れますので慌てなくても大丈夫でござるよ」 171 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/30(水) 04:50:45.70 ID:2BmaPh3+o [7/11] 沙織のガンプラ講座④ ~~最後の仕上げ・墨入れ。そしてトップコートへ~~ 「できたー!」 「おお、京介氏は完成したようですな」 「おう。いやあ、これだけ作るのにえらい手間がかかっちまったぜ」 「いやいや、十分早い方ですよ。胸を張っていいでござる」 「そ、そうか?」  へへ、そう言われると悪い気はしないな。 「……キモッ。デレデレすんなっての」 「沙織の本性を知った途端これだもの。嫌になるわね」 「だいたい、あんたのが一番簡単なんだから早く出来て当たり前じゃん」 「ぐっ……」 相変わらず言いたい放題言ってくれやがる。 だが、俺のが一番簡単なのは事実だから言い返せもしねえ。ちくしょう。 「まあまあ。プラモは早く作ればいいってものでもござらん。重要なのはいかに丁寧に作るかでござるよ」 この程度の仲裁は朝飯前と言わんばかりにするりと会話に入ってくる沙織。 この辺の上手さは、ほんと尊敬に値するよ。 「京介氏の物が完成したことですし、ここらで最後の仕上げについて説明しておこうと思いますがよろしいですか?」 「ああ、そうしてくれ。いいよな? 桐乃も黒猫も」 黒猫はともかく、桐乃は絶対に今日中には終わらねえもんな。 それならば、今のうちに最後の仕上げとやらについて説明してもらった方がいいだろう。 俺の言葉に対して無言で頷く二人。 いつもなら勝手に決めるなだのの文句が飛んできてもいいのだが、ゲート処理作業の繰り返しに桐乃も黒猫もどうやら精神的にキているらしい。眼がトロンとしてやがる。 この中断も休憩代わりとしてはちょうどいいだろう。 「墨入れとは、プラモに彫られた“溝”に沿って線を入れる作業でござる」 「ふーん。どんな効果があんの? それ」 疲労のせいか、桐乃の質問も心なしか投げやりだ。 「百聞は一見に如かずでござる。ここに取り出したるは二つの同じパーツ。このパーツの溝に沿ってこの墨入れペンをなぞらせて――そして後から拭き取ってやればあら不思議!」 「お、なんかシャキッとした感じになったな」 陰影のような黒い線が見えることによって、のっぺりとした質感から、より立体的に見えるようになっている。 例えるならこんな感じか。 (´・ω・`)ショボーン → (`・ω・´) シャキーン ……いや、我ながらこれはないな。忘れてくれ。 「その通り。まあ、墨入れの方法は一つではありませんので、試行錯誤して自分に合ったやり方を見つけるのがいいでござろう。ちなみに、この墨入れペンを用いたやり方は最も簡単な方法の一つですな」 「これが終わったら完成か?」 「それでも構いませんが、今回はトップコートを吹いてみましょう」 「ああ、さっき言っていた傷が隠れてくれる――というやつね」 「ええ。傷隠しというと語弊がありますが、この際その認識でも構いません。――今回は無難に缶スプレーの半つやでいこうと思います」 また知らない単語が出てきたな。半つや? 「半つやはつや有りとつや消しの中間にあたるものです。つや有りは文字通りつやつや、つや消しはマットな質感に仕上がるのでござるよ」 「へえ」 「ここでもまた注意事項が一つ。決して雨などの湿気が多い日に吹かないこと!」 「吹くとどうなるの?」 「真っ白くなってしまうのでござる! 所謂“かぶる”という状況に陥るのですよ。……丹精込めて作ったプラモの仕上げでこうなって心を折られたモデラーが何人いることか」 両掌を上に向け、「おおお」と狼狽する沙織。 やっと完成したプラモ。トップコートを吹き、わくわくしながら乾燥を待つ。 そして―― なんということでしょう。匠の悪戯心で丹精込めて作ったプラモが真っ白に。 「悲劇ね」 「まったくだ」 172 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/30(水) 04:51:57.91 ID:2BmaPh3+o [8/11] 沙織のガンプラ講座おまけ ~~プラモを楽しく作るコツ~~ 「実はこれが一番大事なことなのですよ」 「だからそんなのあるなら初めから言っといてってば!」 もはや桐乃は投げやりを通り越してご立腹だ。 元はと言えばおまえがそんなごついプラモ買ってきたのが悪いんだろうが。 とはいえ、俺も気になるな。聞かせてもらおうか、そのコツとやらを。 「それはプラモ製作のモチベーションを維持し続けることです。疲れたらさっさと中断する! 気が載らない日は作らない! これに限ります」 「それ、なんかすごいだらしなくねえ?」 もはや、怠けたいがための言い訳にしか聞こえねえよ。 「はははは、プラモ製作者の大半はこんなものですよ。最初は違ってもその内こうなるでござる。趣味が苦行になっては元も子もありませんからな」 そう言って、いつものようにからからと快活に笑う沙織。 なるほど、そりゃそうだ。苦行を趣味にして喜ぶのは重度のマゾくらいなもんだろ。 「まあ、モチべを維持する方法は他にもなくはないでござる。これは人によって違うのですが……その機体が出て来るアニメを見ながら、あるいは好きな音楽を聴きながら――要は好きなことをしながらその片手間に作るのでござる」 「片手間って……初心者には無理だろ」 「そうでもありません。要はだらだらと、根を詰めずに作ればよいのです。深く考えたら負けでござる」 「そんなもんかね」 「そんなもんでござる」 ま、沙織がそういうならそうなんだろ。 「……好きなことか」 「ん? どうした桐乃」 「な、なんでもないっ!」 「?」 173 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/30(水) 04:53:24.33 ID:2BmaPh3+o [9/11] ―――――――――――――――――――――――――――――― 「ごちそうさま」 夕食を終え、自室に戻る。 沙織達はすでに帰宅し、我が家もすっかりいつもの静けさを取り戻している。 結局、時間までに組み終えたのは俺一人で残りは各自の宿題となった。 「桐乃のやつ……あれ、終わんのか?」 ベッドに横になり、なんとはなしに壁越しに桐乃の部屋を見やる。 「ま、俺には関係ないか。精々頑張れよ」 と、独りごちた瞬間。 バン! と、俺の部屋のドアが勢いよく開かれた。一体何事かと目を丸くした俺が見たのは、とても不機嫌そうな妹様だった。 そのままズンズンと俺の室内に進入した桐乃は俺のベッドの隣でその歩みを止めた。 「お、おい、ノックぐらいしろって。いったいどうしたんだよ」 尋ねるが、桐乃は一向に口を開こうとしない。 その口はへの字になっていて、機嫌が悪いことを如実に語っていた。 だが、これは怒りからくる機嫌の悪さではない。なぜか、直感的にそう思えた。 拗ねている――いや、違うか。上手く表現できないが、ともかく違うんだ。こいつは怒ってるんじゃない。 「どうしたんだ?」 今度はなるべく優しく、諭すような口調で尋ねてやる。 こいつは昔からこういう言い方をしてやれば素直に口を開くのだ。 「……手伝って」 「あん?」 「手伝ってって言ってんの! プラモ!」 「俺がか!?」 「あんた以外に誰がいるってのよ!」 お、俺にあの苦行の道をともに歩めと――そうおっしゃるのですか? ぐぬぬ、なんという展開。 「い、いやいや、落ち着け。なんで俺が手伝わなくちゃならんのだ。沙織だってだらだら作ればいいって言ってたじゃねえか」 「それじゃあ黒いのに先超されちゃうじゃん」 おおう、なんてこった。 どうやら桐乃はこんなところでも黒猫と張り合っているらしかった。 おまえらが仲がいいのはわかったから、俺を全力で振り回すのは止めてくれないかな? とはいえ、かわいい妹様の頼みを断れるはずもなく。 「カリビア――」 「謹んでお受けさせて頂きます」 174 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/30(水) 04:53:57.36 ID:2BmaPh3+o [10/11] ―――――――――――――――――――――――――――――― 「ただいま」 「いやー、あれから手が進んで進んでたった二日で完成させちゃった。あたしってほんと何やらせてもすごいよね~」 俺が学校から帰ると、桐乃はいつものようにリビングのソファで誰かと電話をしていた。 「沙織の言った通りだった。モチべ維持できるとすごい楽しいんだって」 どうやら電話の相手は黒猫か沙織のどちらかみたいだな。 そのまま冷蔵庫へと歩を進め、麦茶を取り出す。 「えっ? モチべ維持の方法? あははは、あんたに教えるわけないじゃ~ん」 この相手を小馬鹿にするような話し方……電話相手は黒猫の方だったか。 「うええっ!? ちっ、違う! 兄貴は関係ないって!」 俺は、麦茶をコップに注ぎ、それをぐいと飲み干した。 「し、しつこい! もう切るから!」 そう言って(多分)一方的に電話を切った桐乃。 直後、桐乃が俺の方を見たせいで視線が交差する。 「ば~~~か!」 俺に対して、いきなりすぎる暴言を吐き、そのままリビングを出ていく桐乃。 「なんだありゃ?」 わけもわからず立ち尽くす俺。 ただ、馬鹿にされたというのに不思議と気分は悪くなかった。 おわり

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