無題:9スレ目403

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403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/04/10(日) 00:02:23.36 ID:TgFGyPwQo 「――わかってくれたか?」 「ええ。でも、お兄さんの疑いが晴れたわけではありませんよ」 「なんでだよ!? あれに関しては誤解なんだと、今しっかり説明しただろ!?」 俺は今あやせの部屋で『桐乃との偽装デート』の際に撮ったプリクラについて必死に弁明しているところだ。 あやせがあのプリクラをどこから入手したのかとか、そんなことは今どうでもいい。 両手を手錠で拘束され、ろくな抵抗もできない俺が願うのはただ一つ――わが身の無事のみだ。 「お兄さんが桐乃とデートせざるを得ない状況にあったのは認めましょう。仕方ありません」 「だったら!」 「で・す・が! だからと言って、それはお兄さんが桐乃に危害を加えないという保証にはならないでしょう?」 「いやその理屈はおかしい」 どこに好き好んで実妹にちょっかい出す兄貴がいるんだよ。そんなのはエロゲの世界だけで十分だ。 だが、訳あってあやせには『妹に手を出す変態鬼畜兄貴』として認知され続けなければならないので強く反論もできない。 「と、とにかく大丈夫なんだ! 偽装デートだって全然楽しいとか思わなかったしさ!」 ――これは嘘だ。 勿論終始楽しかったわけじゃないが、一瞬たりとも楽しくなかったわけじゃあない。 桐乃がもう一度お願いしてくるなら付き合ってやってもいい。そう思えるくらいには楽しかったさ。 それではなんで俺がとっさにこんな嘘をついたかと言うと―― 俺の命の灯が今まさに消えようとしているからだ。 「お、おお、落ち着けあやせ!? 落ち着いてその金槌をしまうんだ!」 「うふふ。私、言いましたよね。桐乃に手を出したらブチ殺しますよ――って?」 「早まるんじゃない! 俺は桐乃に手を出しちゃいねえ!」 「じゃあこのプリクラは何なんです? 日常的にキスでもしてるようなバカップルにしか見えませんけど? お兄さん、しっかり楽しんでますよね?」 「ままま、待て! 話せばわかる!」 「しつこい男は嫌われますよ?」 「こっちは命がかかってるんだよ!」 こんな状況では誰だってしつこくなるわ! 「……仕方ありませんね。じゃあ、こうしましょう。お兄さんと私で『偽装デート』を再現してお兄さんが楽しそうじゃなかったらお兄さんの無実を認めましょう」 「いやその理屈もおかしい」 桐乃とならまだしも、あやせとで偽装デートを再現する理由がさっぱりわからない。 相手が変わったら再現とは言えねえだろ。 そもそもあやせとデートして楽しくないわけがない。 この賭けは分が悪いとかそういうレベルじゃない。なんという負け戦。勝ち目ゼロである。 「それに、その条件だと俺死ぬしかないんだけど」 「海と山と偽装デート――今日、これから出掛けるならどれがいいですか?」 「……偽装デートでお願いします」 俺は絶望のあまり涙が止まらなかったよ。 ―――――――――――――― 「私はアニメ映画よりも恋愛映画の方がいいんですけど……桐乃が見たのがこっちなら仕方ありません」 「あれ? お兄さん達ここに来たんですか? ここ、私たちもよく来るスイーツショップじゃないですか」 ――― ―― ― 「つ、ついに今日のメインイベントですよお兄さん」 「な、なあ。何もこれまで再現する必要はないんじゃないかな」 「いいえ駄目です。お兄さんへの疑惑を決定的なものにした要因をスルーするわけにはいきません」 「……どうしても駄目か?」 「くどいです」 ここまで幾度もにやけそうになるのを必死に堪えてきた俺だったが、もう駄目だ。 カップル専用プリクラというある種の密室にあやせと二人きり。 こんな状況でにやけずにいられるだろうか。いやにやけずにはいられない。 そして、一度にやけてしまえばそれで終わり。 密室を脱出するまで何とかして俺のにやけヅラをあやせから隠しきったとしても、プリクラの筐体からは動かぬ証拠が排出される。ジ・エンドだ。 「親父にお袋……先立つ不孝をお許しください」 「何言ってるんですかお兄さん?」 そう言うとあやせはぐいぐいと俺の腕をひっぱりプリクラの筐体へと引っ張っていく。 404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/04/10(日) 00:04:29.38 ID:TgFGyPwQo 「あれ? 桐乃と撮ったのは隣のやつなんだけど」 「いえ、こっちでいいんです」 「?」 あれ? これは『偽装デート』の再現じゃなかったのか? ここまで完璧に再現してたのにこれは再現しないの? 多少の疑問を感じつつも、あやせに言われるがままプリクラの筐体内に入る。 「さあ、撮りますよ!」 あやせはぐいっと俺の腕を引き寄せにこやかにポーズを決めた。 「うん、よく撮れてますよお兄さん」 画面に映し出された写真の映像を見てたいそう満足気なあやせ。 そりゃあ、そうだろう。そこにはだらしないにやけヅラを浮かべた俺と、飛び切りの笑顔を浮かべた少女が映っていたのだから。 あやせの理論で行くと、これで俺が『桐乃との偽装デート』を楽しんだ証拠を手に入れたことになる。 説明する俺もどういう理屈でそうなるのかさっぱりだ。やっぱりこの理屈おかしくないですか? あやせさん。 今回の筐体は桐乃と取ったプリクラと違って、撮った後に文字や記号を書き込めるタイプだった。 さきほど撮った写真に、あやせは『あやせ』『京介』と互いの名前をすらすらと書き込んでいく。 桐乃とのプリクラが『日常的にキスをしてるようなバカップル』の図なら、こちらはさしずめ、『彼女に頭が上がらない情けない彼氏とそんな彼氏をまんざらでもなく思っている彼女』の図だった。 ―――――――――――――― 「今日は楽しかったですねお兄さん!」 「ああ、そうだね」 最早否定する気にもならない。決定的な証拠はあやせに握られているのだ。 ここで否定しても時間と労力の無駄である。それにどうせ死ぬなら心穏やかに死にたいからな。 不思議なことに今の俺は死を受け入れることができる精神状態にあった。やべーな。俺、悟り開いちゃったよ。 「じゃあ帰りましょうか」 「えっ? 海と山は?」 「え? まだ遊び足りないんですか? でも、時間も時間ですし……」 「いや、そうじゃなくて……俺が楽しんだら殺されるっていう話はどうなったの?」 ……しまった! あやせが忘れてくれてるならそのままでよかったのに!  なんで俺はわざわざ思い出させるようなことをしちゃったんだ!? ははは、これがまさに墓穴を掘るってやつだよ。……実際に穴を掘るのはあやせだけどな。 「お兄さんもしかして本気にしちゃったんですか?」 「え……?」 「いやだなあ。私が本気でそんなことする訳ないじゃないですか」 片目を細め、にやにやと小馬鹿にしたような表情で俺を見るあやせ。 あるいはその視線は俺を値踏みしているかのようだった。 「えっ? ……えっ?」 頭に回転が鈍い。思考が現実についていかない。 「お、お兄さん。まさか本気で信じ込んでたんですか? だとしたらかなりショックなんですけど…………」 あやせは俺の言動にショックを受けているらしかった。 だがな、あやせ。それは自業自得だというものだ。自分の行動を思い返してみろ。 手錠に金槌、そしてその他もろもろ。誰がどう見ても俺がこんな思考に陥ったのはあやせに原因があると思うんだ。 405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/04/10(日) 00:05:15.95 ID:TgFGyPwQo 「う……あ、あれはお兄さんが変態だから仕方なくですね……」 「いいや。俺はとんでもないストレスを受け続けてきたんだ。この責任はいつかとってもらうからな」 「せ、責任って……どうせまた『結婚してくれ』とか言うんじゃ」 「ふっふっふ。そんなことしても通報されるのが関の山だ。俺はしっかり学習したんだよ」 「へえ。じゃあ、その学習の成果とやらを見せて下さい。お兄さんが要求する責任の取り方とは?」 「そうだな。偽装じゃない、再現でもない、普通のデート一回で手を打とう」 「通報しました」 ぶーーーーーーーー! なんのためらいもなく防犯ブザーのヒモをひくあやせ。 「ちょ、通報するほどのことか!? いや、今はそれはいい! と、とにかくそれを止めて! このままじゃ逮捕されちゃう!」 「えへへ、冗談ですよ。デートプランしっかり考えといて下さいね、お兄さん」 ブザーを止めたあやせはそう言い残すと、くるりと踵を返し俺の返事を聞くこともなく去って行った。 その鮮やかな去り際は、まるで聞くまでもなく俺の答えを確信しているかのようだった。 ―――――――――――――― 「ちょっと話があるんだけど」 「ん? また人生相談か?」 「違う。……これ、どういうこと?」 「げっ!?」 桐乃が俺に見せつけてきた物は、以前俺があやせとの『再現デート』で撮ったプリクラだった。 そこには『彼女に頭が上がらない情けない彼氏とそんな彼氏をまんざらでもなく思っている彼女』の図が映っている 「なぜお前がそれを持っている!?」 「あんた、何あやせに手を出してんの? 死ねっ! このロリコン! 変態!」 「い、いてえ! やめろってば! 落ち着け! こっ、これは誤解なんだあああああああ!」 おわり

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