会いたくなっちゃった:9スレ目608

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607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2011/04/24(日) 01:01:07.73 ID:EukJvy5/0 ブーッ、ブーッ… 俺が寝床に就こうとしたその瞬間、突然携帯のバイブが鳴り出した。 しかも、すぐに鳴り止まないところから考えると恐らく電話だろう。 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も……………って、○○からだと? なんだ、俺の彼女じゃねえか…。 A.麻奈実 B.黒猫 C.沙織 D.加奈子 E.あやせ F.桐乃 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 《A.麻奈実》 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も……………って、麻奈実からだと? あいつが夜に電話してくるなんて珍しいな。 「もしもし?」 『もしもし、きょうちゃん?起こしちゃったかなぁ?もしもそうだったらごめんね…。』 「大丈夫だ。起きてたぜ。まあ、たった今寝ようとしてたとこだったけどな。 それで…突然どうしたんだ?何かあったのか?」 「そっか…寝ようとしてたんだね…。う、ううん!何でもないの!変な電話してごめんね!あの、それじゃあまた明日…」 それまでのスローペースな喋り方から一転、麻奈実は突然テンポを早めて電話を切り上げようとしている。 こりゃ明らかに変だ。『何でもないの』なんて絶対に嘘だろう。 何かありそうだと思った俺は慌てて麻奈実を止めることにした。 「ちょっ、待てよ!そんな風に言われたら余計に気になるだろ?何かあるんだったらちゃんと言ってくれ。 その…お、俺たち、付き合ってるんだからよ。」 『う、うん…。じゃあ言うね。…あのね、えーっと……………』 麻奈実はなんだかやけに恥ずかしがっているような気がする。 そしてこいつの口から出てきたのは、およそ“らしくない”言葉で…。 『きゅ、急に…きょうちゃんに会いたくなっちゃって………。』 「…麻奈実?」 『でも、もういいの!きょうちゃんの声も聞けたから…。おやすみ、きょうちゃ…』 「…いいよ。」 『…えっ?』 「今からそっち行くからちょっと待ってろ。」 『で、でも…時間も遅いし、きょうちゃん寝るところだったって………』 「俺がいいって言ってんだからいいんだよ!着いたらメールすっから、そしたら出てきてくれよ?」 『…ありがと、きょうちゃん。じゃあ待ってるね。』 控えめとはいえ、普段麻奈実がこうやって自己主張することなんて滅多にないんだ。 だからたまにはお願いの一つくらい聞いてやらないとな? 俺は、微笑んだ麻奈実の顔を思い浮かべながら、隣部屋の主を起こさないようにそっと外出仕度を始めた。 (麻奈実編・終わり) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 《B.黒猫》 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も考えて……………って、黒猫からだと? あいつはまだ起きてるのか。でもなんか夜型っぽいもんな。 「もしもし?」 『…先輩、期は熟したわ。』 「…はい?」 『今宵は満月。我々闇の眷属は、汚らわしき天使どもの殲滅を願って定例の儀式を催さなければならないのよ。 …そういうことだから、今から私の“仮の”住まいに来て頂戴。』 「ぎ、儀式?それ…俺も参加しなきゃいけないのか?」 『当然でしょう?私と契りを交わしたあの瞬間から、先輩は夜の使い魔となったのよ?』 何が“仮の”住まいだよ。アレ、正真正銘お前の実家じゃねえか…。 俺の彼女は付き合ってからも相変わらずこんな感じだ。まっ、それも引っくるめて黒猫だから今更どうこう言う気はないけどな。 …だが、ウトウトしてる時にこんな話を聞かされる俺の身にもなってくれ。これから満月の度に儀式なんてやられたんじゃたまったもんじゃねえよ…。 「なあ黒猫…悪いけどさ、その話は今度にしてくれねーかな………」 『なっ!?』 「いや、もう時間も時間だしさ…続きは明日の休み時間にでもゆっくり聞くよ。だから…」 『ダ、ダメよ!今日でなければ意味が…。 …だったら、私が先輩の家に行くわ。それなら文句はないのでしょう?』 「ま、待て待て!お前一人で夜道を歩かせるわけには………あーもう!わかったよ!俺が行くよ!!!」 『そ、そう?わ、わかればいいのよ…。 でも…私の従属とはいえ、急な誘いに応じてくれたことに対してはその………い、一応礼を言っておくわ。』 「ったくお前ってヤツは…。わざわざこんな時間にやらなくてもいいだろ?そんなにその儀式ってやつが大事なのか?」 『…察して頂戴。』 「ん?今なんか言ったか?」 『な、何でもないわ!そ、それより、その……暖かい格好をしてくるのよ?夜は意外と冷えるものなのだから…』 慣れたつもりでいたけど、あいつの厨二病にはたまに困る時があるぜ…。 でもさ、それに付き合っちゃう俺も、“あっちの世界”に片足突っ込んじゃってたりしてな? まあたまには夜の散歩も悪かないけどさ。 ほら、こうして夜空には綺麗な三日月が………ってあれ?あいつ、儀式は満月にやるとか言ってなかったっけ? 結局黒猫が何を望んでいるのか半信半疑のまま、俺の姿は外の暗闇へと消えていった。 (黒猫編・終わり) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 《C.沙織》 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も……………って、沙織からだと? どうでもいいけど、沙織の名前を見た途端、@ω@みたいな顔文字が頭に浮かぶのは俺だけじゃないはずだぜ? 「もしもし?」 『おおっ、やはり起きておられましたか京介氏!大方、きりりん氏にエロゲ進行を強要させられていた、というところですかな?』 「ち、ちげーよ!そんなワケねえだろっ!!」 そう言いながら俺の目の前にあるPCには『妹と恋しよ♪』がしっかりと起動されている。 こいつの洞察力には恐れ入ったもんだ。 「それはそうと…急にどうしたんだ?何か用か?」 『相変わらず鈍いですな~。実は拙者、京介氏に会いたくなってしまったのでござるよ~!今から我が家まで御足労願えませぬか?』 「ええっ?今からお前んちに来てくれってことか?」 『まあ、平たく言えばそういうことですな。』 沙織はなかなかストレートだ。恋人からこんなことを言われるとなんか照れちまう。 …でも、沙織の家はさすがにイチャイチャするような軽いノリで行ける距離じゃねえからな………。 『な、なんだかあまり乗り気ではなさそうな気が…。京介氏は、拙者と会うのが嫌なのでござるか?』 「嫌なわけないだろ!お前がそんなこと言ってくれるなんて嬉しいし、俺もお前に会いたいと思ってるよ。 でもさ…これからはちょっと………。明日学校が終わったらすぐ行くよ!それじゃダメなのか?」 『む~……………京介氏、実は拙者、たった今シャワーに入ったばかりなのでござるよ?』 「…え?」 『そして無論、我が家には拙者以外誰もおりません!』 「う、うん?」 『…こ、ここまで言っても夜這いをかけに来てくださらぬのですか!?拙者、少しショックでおじゃる………』 「よ、夜這いって!?お、お前なぁ………」 い、いきなり何てこと言い出すんだよこいつは!? いくら深夜のテンションだからって………いや、沙織はいっつもこんな感じか。 「と、とにかく!明日学校終わったらマッハで行くからさ!明日は二人っきりでどっかデートにでも…」 『拙者は今すぐに会いたいのでござるよぉ………こうなれば、最後の手段っ!しばし待たれよ!!!』 「あっ!おい!!!」 沙織が勢いよく電話を切ってから5分後くらい。 今度は俺の携帯に一通のメールが届いた。 From:沙織 Message:京介さん。やはり私、一人では寂しいですわ…。 むっ…眼鏡なしver.口調で誘うつもりか…。あいつ、ここぞという時は自分のギャップ萌え利用してくるからな……… しかもよく見てみると、『添付ファイル有』の文字が。なんだろう?画像…? …なっ!?なんだと!? 俺の携帯画面には……………なんと、バスローブを着こんで挑発的な表情を浮かべる沙織(眼鏡なし)の姿が映し出されていた。 もちろん、例の超絶エロい胸元を惜しげもなく晒して。 …一応断っておくが、俺は別に身体目的で沙織と付き合ってるわけじゃねえぞ? で、でも、これは、これはさすがに―― To:沙織 Message:今すぐ行くからそのまま待っててくれ! (沙織編・終わり) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 《D.加奈子》 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も……………って、加奈子からだと? だったら仕方ないな。あいつに人の迷惑なんて考えられるワケねえし…。 「もしもし?」 『もしもし京介?つか電話に出るのおせーよ!もうちょっと早く出られねーワケ? …ところでオメーさ、今すぐ加奈子に会いてーだろ?』 「…は?」 相変わらずムチャクチャなヤツだ…。こんなヤツとそこそこ長く付き合ってるなんて、自分でもスゴイと思うぜ。 『しょうがねーから会ってやるヨ!今から特別にウチに来させてやっから、さっさと準備しろよな!』 「お、おい!お前いきなり何言って…」 …そうか、わかったぜ。こいつ、こんな時間だってのに俺に会いたくなったんだな?まったく、素直じゃねえけど可愛いヤツだ。 どうするかって?もちろん会いに行ってやるさ。 でも…いつものワガママの仕返しに、ちょっとだけからかってやろうかな?ちょっとだけ。 『出来るだけ早く来いよ?か、加奈子だってそんな暇じゃねーんだからサ!』 「…いや、明日も早いし、今日は遠慮しとくよ。」 『はあっ!?加奈子がわざわざこんな時間からオメーに会ってやるって言ってんのに、その優しさを受け取らねーってのかよ!?』 「俺も眠いんだよ。じゃ、おやす…」 『ま、待てよテメー!そ、そんなこと言うんだったらなぁ……か、代わりに他の男呼んでやっかんな! 加奈子と一緒に夜を過ごしたがってる男なんて山ほどいるん…』 「そうか。んじゃ、今夜はそいつらと楽しく過ごせよ。それじゃ、俺マジで寝るから…」 『きょ、京介ぇ…』 …さてと、悪ノリはこのくらいにしてくか。 実のところ、俺はこうして加奈子と電話をしながらすっかり外出準備を整えていた。 普段偉そうにしてるこいつも十分焦ってくれたみたいだし、そろそろネタばらしといこうかね。 「…なーんてな。冗談だよ。今からそっちに行ってやるから少しの間………」 『………ばか。』 「…え?」 『テメー、そんなに…そんなに加奈子に会いたくねえのかよぉ………』 「か、加奈子…?いや、今のはほんの冗談で………」 『も、もういい!テメーとなんか、京介となんか…一生会ってやらねえかんな!!この…バカ野郎!!!』 「いやっ、だから話を聞………ガチャッ!」 俺の弁解も虚しく、加奈子は俺に罵声を浴びせて電話を切ってしまった。 心なしか最後の方は涙声だったような気がする。 その後何度か電話をかけても、加奈子はいじけているのか出てくれない。 ほんの悪戯心だったのに、すげえ申し訳ないことをしちまったな。 やっぱり、慣れないことはするもんじゃねえってことか…。 加奈子に会いたい。いや、こうなったら絶対会わなきゃいけねえ。 その一心で、俺は急いで家を出た。 (加奈子編・終わり) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 《E.あやせ》 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も……………って、ラブリーマイエンジェルあやせたんからだと!? こりゃ寝てる場合じゃねえ! 『もしもし?お兄さん?』 「あやせ、用件はわかってるぜ!急に俺に会いたくなったんだろ?」 『ええっ?わ、私はただ、寝る前に“おやすみなさい”って言おうと思って…』 「いいっていいって!照れ隠しはその辺にしとけ!!今すぐお前の王子様が駆けつけてやるから、少しだけ待ってろよ!!!」 『あっ、ちょっとお兄さん!?今は両親も寝ちゃってるし、急に来られても困りますってば!!』 ホントは嬉しいくせに、俺の天使も素直じゃねえよなぁ。 戸惑う(フリをしている)あやせの制止を振り切って、俺は気がつくと、寝巻きに上着を羽織って飛び出していた。 待ってろよ!!!ラブリーマイエンジェルあやせたん!!!!! (あやせ編・終わり) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 《F.桐乃》 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も……………って、桐乃からだと? あいつ、なんだって電話なんか?すぐ隣の部屋にいるのに……… …と、そんな疑問を抱きながらも、とりあえず電話に出てみる俺。 「もしもし?」 『…ねえ、今からそっち行って一緒に寝てもいい?』 「え?いや、別にいいけど…」 そう返事するやいなや急に電話が切れ、すぐに桐乃が枕を持って部屋に入ってきた。 「…きた。」 「お、おう…。そ、それじゃあ、寝るか?」 「う、うん…」 今、俺と桐乃は同じベッドで寝ている。 でもいざこうしてみると何とも気まずいもので、会話がまったく弾まない。 さて、この空気をどうしたもんか………そうだ。この沈黙を打ち破るついでに、さっきの件でも聞いてみるか。 「そ、そういえば…なんでさっきは電話だったんだ?壁越しにでも言ってくれれば…」 「バカ!壁越しに聞こえる声って意外と大きいのよ!?もし下に聞こえたらどーすんのよ!!!」 確かにな…。何かの拍子で下に聞こえちゃマズいかもしれん。 実は、俺と桐乃が“兄妹”から“恋人”になったのはついさっきなわけで…。まだ当然両親に報告なんてしていない。 そりゃいつかは言わなければならないことくらいわかっているのだが………さすがに、『今日付き合って今日報告』ってのは、何となく早すぎるような気がしたのだ。 「でもさ、だったら電話なんてかけなくても最初からこうやって直接…」 「う、うるさい!そ、そんなに電話に食いつかなくてもいいでしょ!? だって……『今日から兄貴と恋人なんだ』って思ったら、直接言うの恥ずかしかったんだもん……………」 「桐乃…」 そういえばそうだよな。今日からこいつは俺の妹であり、俺の彼女でもあるわけだ。 なんかそんな風に意識したら、急に俺も恥ずかしくなってきちまったじゃねーか…/// 「こ、今度からは、いつでもこうやって来てくれていいんだからな?一々電話なんて必要ないんだぞ?」 「だからもう電話の話はいいって! …でも………ありがと。おやすみ、兄貴…」 「ああ。おやすみ、桐乃…」 それからちょっとすると桐乃がスウスウと寝息をたて始めたが、こっちは何だかドキドキしちまってなかなか寝付けない。 結局俺は桐乃の頭を撫でながら、しばらくその愛らしい寝顔を見つめていた。 (桐乃編・終わり)
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2011/04/24(日) 01:01:07.73 ID:EukJvy5/0 ブーッ、ブーッ… 俺が寝床に就こうとしたその瞬間、突然携帯のバイブが鳴り出した。 しかも、すぐに鳴り止まないところから考えると恐らく電話だろう。 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も……………って、〇〇からだと? なんだ、俺の彼女じゃねえか…。 A.麻奈実 B.黒猫 C.沙織 D.加奈子 E.あやせ F.桐乃 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 《A.麻奈実》 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も……………って、麻奈実からだと? あいつが夜に電話してくるなんて珍しいな。 「もしもし?」 『もしもし、きょうちゃん?起こしちゃったかなぁ?もしもそうだったらごめんね…。』 「大丈夫だ。起きてたぜ。まあ、たった今寝ようとしてたとこだったけどな。 それで…突然どうしたんだ?何かあったのか?」 「そっか…寝ようとしてたんだね…。う、ううん!何でもないの!変な電話してごめんね!あの、それじゃあまた明日…」 それまでのスローペースな喋り方から一転、麻奈実は突然テンポを早めて電話を切り上げようとしている。 こりゃ明らかに変だ。『何でもないの』なんて絶対に嘘だろう。 何かありそうだと思った俺は慌てて麻奈実を止めることにした。 「ちょっ、待てよ!そんな風に言われたら余計に気になるだろ?何かあるんだったらちゃんと言ってくれ。 その…お、俺たち、付き合ってるんだからよ。」 『う、うん…。じゃあ言うね。…あのね、えーっと……………』 麻奈実はなんだかやけに恥ずかしがっているような気がする。 そしてこいつの口から出てきたのは、およそ“らしくない”言葉で…。 『きゅ、急に…きょうちゃんに会いたくなっちゃって………。』 「…麻奈実?」 『でも、もういいの!きょうちゃんの声も聞けたから…。おやすみ、きょうちゃ…』 「…いいよ。」 『…えっ?』 「今からそっち行くからちょっと待ってろ。」 『で、でも…時間も遅いし、きょうちゃん寝るところだったって………』 「俺がいいって言ってんだからいいんだよ!着いたらメールすっから、そしたら出てきてくれよ?」 『…ありがと、きょうちゃん。じゃあ待ってるね。』 控えめとはいえ、普段麻奈実がこうやって自己主張することなんて滅多にないんだ。 だからたまにはお願いの一つくらい聞いてやらないとな? 俺は、微笑んだ麻奈実の顔を思い浮かべながら、隣部屋の主を起こさないようにそっと外出仕度を始めた。 (麻奈実編・終わり) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 《B.黒猫》 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も考えて……………って、黒猫からだと? あいつはまだ起きてるのか。でもなんか夜型っぽいもんな。 「もしもし?」 『…先輩、期は熟したわ。』 「…はい?」 『今宵は満月。我々闇の眷属は、汚らわしき天使どもの殲滅を願って定例の儀式を催さなければならないのよ。 …そういうことだから、今から私の“仮の”住まいに来て頂戴。』 「ぎ、儀式?それ…俺も参加しなきゃいけないのか?」 『当然でしょう?私と契りを交わしたあの瞬間から、先輩は夜の使い魔となったのよ?』 何が“仮の”住まいだよ。アレ、正真正銘お前の実家じゃねえか…。 俺の彼女は付き合ってからも相変わらずこんな感じだ。まっ、それも引っくるめて黒猫だから今更どうこう言う気はないけどな。 …だが、ウトウトしてる時にこんな話を聞かされる俺の身にもなってくれ。これから満月の度に儀式なんてやられたんじゃたまったもんじゃねえよ…。 「なあ黒猫…悪いけどさ、その話は今度にしてくれねーかな………」 『なっ!?』 「いや、もう時間も時間だしさ…続きは明日の休み時間にでもゆっくり聞くよ。だから…」 『ダ、ダメよ!今日でなければ意味が…。 …だったら、私が先輩の家に行くわ。それなら文句はないのでしょう?』 「ま、待て待て!お前一人で夜道を歩かせるわけには………あーもう!わかったよ!俺が行くよ!!!」 『そ、そう?わ、わかればいいのよ…。 でも…私の従属とはいえ、急な誘いに応じてくれたことに対してはその………い、一応礼を言っておくわ。』 「ったくお前ってヤツは…。わざわざこんな時間にやらなくてもいいだろ?そんなにその儀式ってやつが大事なのか?」 『…察して頂戴。』 「ん?今なんか言ったか?」 『な、何でもないわ!そ、それより、その……暖かい格好をしてくるのよ?夜は意外と冷えるものなのだから…』 慣れたつもりでいたけど、あいつの厨二病にはたまに困る時があるぜ…。 でもさ、それに付き合っちゃう俺も、“あっちの世界”に片足突っ込んじゃってたりしてな? まあたまには夜の散歩も悪かないけどさ。 ほら、こうして夜空には綺麗な三日月が………ってあれ?あいつ、儀式は満月にやるとか言ってなかったっけ? 結局黒猫が何を望んでいるのか半信半疑のまま、俺の姿は外の暗闇へと消えていった。 (黒猫編・終わり) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 《C.沙織》 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も……………って、沙織からだと? どうでもいいけど、沙織の名前を見た途端、@ω@みたいな顔文字が頭に浮かぶのは俺だけじゃないはずだぜ? 「もしもし?」 『おおっ、やはり起きておられましたか京介氏!大方、きりりん氏にエロゲ進行を強要させられていた、というところですかな?』 「ち、ちげーよ!そんなワケねえだろっ!!」 そう言いながら俺の目の前にあるPCには『妹と恋しよ♪』がしっかりと起動されている。 こいつの洞察力には恐れ入ったもんだ。 「それはそうと…急にどうしたんだ?何か用か?」 『相変わらず鈍いですな~。実は拙者、京介氏に会いたくなってしまったのでござるよ~!今から我が家まで御足労願えませぬか?』 「ええっ?今からお前んちに来てくれってことか?」 『まあ、平たく言えばそういうことですな。』 沙織はなかなかストレートだ。恋人からこんなことを言われるとなんか照れちまう。 …でも、沙織の家はさすがにイチャイチャするような軽いノリで行ける距離じゃねえからな………。 『な、なんだかあまり乗り気ではなさそうな気が…。京介氏は、拙者と会うのが嫌なのでござるか?』 「嫌なわけないだろ!お前がそんなこと言ってくれるなんて嬉しいし、俺もお前に会いたいと思ってるよ。 でもさ…これからはちょっと………。明日学校が終わったらすぐ行くよ!それじゃダメなのか?」 『む~……………京介氏、実は拙者、たった今シャワーに入ったばかりなのでござるよ?』 「…え?」 『そして無論、我が家には拙者以外誰もおりません!』 「う、うん?」 『…こ、ここまで言っても夜這いをかけに来てくださらぬのですか!?拙者、少しショックでおじゃる………』 「よ、夜這いって!?お、お前なぁ………」 い、いきなり何てこと言い出すんだよこいつは!? いくら深夜のテンションだからって………いや、沙織はいっつもこんな感じか。 「と、とにかく!明日学校終わったらマッハで行くからさ!明日は二人っきりでどっかデートにでも…」 『拙者は今すぐに会いたいのでござるよぉ………こうなれば、最後の手段っ!しばし待たれよ!!!』 「あっ!おい!!!」 沙織が勢いよく電話を切ってから5分後くらい。 今度は俺の携帯に一通のメールが届いた。 From:沙織 Message:京介さん。やはり私、一人では寂しいですわ…。 むっ…眼鏡なしver.口調で誘うつもりか…。あいつ、ここぞという時は自分のギャップ萌え利用してくるからな……… しかもよく見てみると、『添付ファイル有』の文字が。なんだろう?画像…? …なっ!?なんだと!? 俺の携帯画面には……………なんと、バスローブを着こんで挑発的な表情を浮かべる沙織(眼鏡なし)の姿が映し出されていた。 もちろん、例の超絶エロい胸元を惜しげもなく晒して。 …一応断っておくが、俺は別に身体目的で沙織と付き合ってるわけじゃねえぞ? で、でも、これは、これはさすがに―― To:沙織 Message:今すぐ行くからそのまま待っててくれ! (沙織編・終わり) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 《D.加奈子》 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も……………って、加奈子からだと? だったら仕方ないな。あいつに人の迷惑なんて考えられるワケねえし…。 「もしもし?」 『もしもし京介?つか電話に出るのおせーよ!もうちょっと早く出られねーワケ? …ところでオメーさ、今すぐ加奈子に会いてーだろ?』 「…は?」 相変わらずムチャクチャなヤツだ…。こんなヤツとそこそこ長く付き合ってるなんて、自分でもスゴイと思うぜ。 『しょうがねーから会ってやるヨ!今から特別にウチに来させてやっから、さっさと準備しろよな!』 「お、おい!お前いきなり何言って…」 …そうか、わかったぜ。こいつ、こんな時間だってのに俺に会いたくなったんだな?まったく、素直じゃねえけど可愛いヤツだ。 どうするかって?もちろん会いに行ってやるさ。 でも…いつものワガママの仕返しに、ちょっとだけからかってやろうかな?ちょっとだけ。 『出来るだけ早く来いよ?か、加奈子だってそんな暇じゃねーんだからサ!』 「…いや、明日も早いし、今日は遠慮しとくよ。」 『はあっ!?加奈子がわざわざこんな時間からオメーに会ってやるって言ってんのに、その優しさを受け取らねーってのかよ!?』 「俺も眠いんだよ。じゃ、おやす…」 『ま、待てよテメー!そ、そんなこと言うんだったらなぁ……か、代わりに他の男呼んでやっかんな! 加奈子と一緒に夜を過ごしたがってる男なんて山ほどいるん…』 「そうか。んじゃ、今夜はそいつらと楽しく過ごせよ。それじゃ、俺マジで寝るから…」 『きょ、京介ぇ…』 …さてと、悪ノリはこのくらいにしてくか。 実のところ、俺はこうして加奈子と電話をしながらすっかり外出準備を整えていた。 普段偉そうにしてるこいつも十分焦ってくれたみたいだし、そろそろネタばらしといこうかね。 「…なーんてな。冗談だよ。今からそっちに行ってやるから少しの間………」 『………ばか。』 「…え?」 『テメー、そんなに…そんなに加奈子に会いたくねえのかよぉ………』 「か、加奈子…?いや、今のはほんの冗談で………」 『も、もういい!テメーとなんか、京介となんか…一生会ってやらねえかんな!!この…バカ野郎!!!』 「いやっ、だから話を聞………ガチャッ!」 俺の弁解も虚しく、加奈子は俺に罵声を浴びせて電話を切ってしまった。 心なしか最後の方は涙声だったような気がする。 その後何度か電話をかけても、加奈子はいじけているのか出てくれない。 ほんの悪戯心だったのに、すげえ申し訳ないことをしちまったな。 やっぱり、慣れないことはするもんじゃねえってことか…。 加奈子に会いたい。いや、こうなったら絶対会わなきゃいけねえ。 その一心で、俺は急いで家を出た。 (加奈子編・終わり) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 《E.あやせ》 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も……………って、ラブリーマイエンジェルあやせたんからだと!? こりゃ寝てる場合じゃねえ! 『もしもし?お兄さん?』 「あやせ、用件はわかってるぜ!急に俺に会いたくなったんだろ?」 『ええっ?わ、私はただ、寝る前に“おやすみなさい”って言おうと思って…』 「いいっていいって!照れ隠しはその辺にしとけ!!今すぐお前の王子様が駆けつけてやるから、少しだけ待ってろよ!!!」 『あっ、ちょっとお兄さん!?今は両親も寝ちゃってるし、急に来られても困りますってば!!』 ホントは嬉しいくせに、俺の天使も素直じゃねえよなぁ。 戸惑う(フリをしている)あやせの制止を振り切って、俺は気がつくと、寝巻きに上着を羽織って飛び出していた。 待ってろよ!!!ラブリーマイエンジェルあやせたん!!!!! (あやせ編・終わり) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 《F.桐乃》 ったく…こんな時間に誰だよ?少しは俺の迷惑も……………って、桐乃からだと? あいつ、なんだって電話なんか?すぐ隣の部屋にいるのに……… …と、そんな疑問を抱きながらも、とりあえず電話に出てみる俺。 「もしもし?」 『…ねえ、今からそっち行って一緒に寝てもいい?』 「え?いや、別にいいけど…」 そう返事するやいなや急に電話が切れ、すぐに桐乃が枕を持って部屋に入ってきた。 「…きた。」 「お、おう…。そ、それじゃあ、寝るか?」 「う、うん…」 今、俺と桐乃は同じベッドで寝ている。 でもいざこうしてみると何とも気まずいもので、会話がまったく弾まない。 さて、この空気をどうしたもんか………そうだ。この沈黙を打ち破るついでに、さっきの件でも聞いてみるか。 「そ、そういえば…なんでさっきは電話だったんだ?壁越しにでも言ってくれれば…」 「バカ!壁越しに聞こえる声って意外と大きいのよ!?もし下に聞こえたらどーすんのよ!!!」 確かにな…。何かの拍子で下に聞こえちゃマズいかもしれん。 実は、俺と桐乃が“兄妹”から“恋人”になったのはついさっきなわけで…。まだ当然両親に報告なんてしていない。 そりゃいつかは言わなければならないことくらいわかっているのだが………さすがに、『今日付き合って今日報告』ってのは、何となく早すぎるような気がしたのだ。 「でもさ、だったら電話なんてかけなくても最初からこうやって直接…」 「う、うるさい!そ、そんなに電話に食いつかなくてもいいでしょ!? だって……『今日から兄貴と恋人なんだ』って思ったら、直接言うの恥ずかしかったんだもん……………」 「桐乃…」 そういえばそうだよな。今日からこいつは俺の妹であり、俺の彼女でもあるわけだ。 なんかそんな風に意識したら、急に俺も恥ずかしくなってきちまったじゃねーか…/// 「こ、今度からは、いつでもこうやって来てくれていいんだからな?一々電話なんて必要ないんだぞ?」 「だからもう電話の話はいいって! …でも………ありがと。おやすみ、兄貴…」 「ああ。おやすみ、桐乃…」 それからちょっとすると桐乃がスウスウと寝息をたて始めたが、こっちは何だかドキドキしちまってなかなか寝付けない。 結局俺は桐乃の頭を撫でながら、しばらくその愛らしい寝顔を見つめていた。 (桐乃編・終わり)

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