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「桐乃「デレノート……?」:1」(2012/07/07 (土) 04:27:52) の最新版変更点
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1 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage] 投稿日:2011/01/22(土) 22:21:44.27 ID:/X7dip2ro
その日もあたしは、いつものように退屈な授業をぼんやりと聞いていた。
自分で言うのも何だけど、あたしって要領がいいから、授業でやる範囲なんて教科書を読むだけで自然と頭に入っちゃうんだよね。
だからかったるくて授業なんて聞いてられないってワケ。
そんなあたしが何の気なしに机の中に手を入れると、そこには覚えの無い、薄く、でもしっかりとした硬い手触りのノートが入っていた。
(あれっ?こんなノート持ってたっけ?)
取り出してみると、表紙は真っ黒で、英語のタイトルらしきものが書かれている。
(「DERE NOTE」? デレ……ノートって読むのかな?)
誰かがあたしの机に入れたのだろうか?
周囲を見回してみたけど、周りのみんなは正面の教師へ視線を送っていて、あたしの行動には気づいていないようだった。
ちょっと気味が悪い気もしたけれど、とりあえず表紙を一枚めくってみる。
するとその裏には、小さな文字でなにやら書いてあった。
(ええっと…… 「HOW TO USE」? 使い方ってことかな?)
そこには小さな文字で、以下のようなことが書き連ねられていた。
&nowiki(){・このノートに名前を書かれた人間は、指定した人物に対しデレデレになる}
&nowiki(){・デレ対象を省略した場合は、ノートに書き込んだ当人がデレ対象となる}
&nowiki(){・書く人物の顔が頭に入っていないと効果はない}
ゆえに同姓同名の人物に一遍に効果は得られない
&nowiki(){・このノートは人間界の地に着いた時点から人間界の物となる}
&nowiki(){・所有者はノートの元の持ち主であるデレ神の姿や声を認知する事ができる}
&nowiki(){・デレノートを持っている限り、自分が誰かにデレるまで元持ち主であるデレ神が憑いてまわる}
あまりにも馬鹿馬鹿しくて、あたしはぷっと吹き出してしまった。
(へぇ~ なかなか凝ったイタズラじゃない)
誰が用意したのかわからないけど、こういうのはノリ良く応えないとねっ!
ってことで、あたしはシャーペンを握ると、真っ白なページの一番上の欄に構えた。
(うーん、誰の名前を書くべきなのかなぁ?)
っていうか、こんなイタズラ仕掛けるのって、ぶっちゃけあの子しか考えられないんだけどさ。
(「来栖加奈子」っと)
あたしはイタズラ犯である可能性が最も高い、加奈子の名前を書いてみた。
へへっ、これでネタばらしされた時に、「ふふーん、あんたの仕業だってお見通しだよっ」
ってやりかえせるよね。
あたしは名前を書き終えると、ふと加奈子の席の方を見てみた。
あれっ、気のせいか加奈子がぼんやりしてるように見えるかも?
眠いのかな?でもそれにしちゃ頬が妙に紅いし……
休憩時間――
さぁ、加奈子がネタばらしをしにくるのかな?
あたしはニヤニヤしながら様子を窺っていたんだけど、加奈子は相変わらず頬を染めたまま、こっちをチラチラと見るだけだった。
それはまるで恋する乙女の仕草だ……もしかしてそれでデレてる振りしてんの?
めんどくさくなったあたしは、加奈子の席へ向かい、こちらからネタばらしを要求してみた。
「加奈子ぉ、そんな演技したってとっくにバレてるんだってば。まったく……」
「えっ、あっ、桐乃……」
加奈子は目を合わそうとせず、耳まで真っ赤にして俯いている。
「もう~~、加奈子ってば!」ポンッ
あたしはちょっとイラついて、加奈子の肩を軽く押した。
すると加奈子は、あたしの手の上にスッと自分の手を重ね、潤んだ上目遣いの瞳であたしを見つめてきた。
「えっ? 加奈子……?」
なに?なんなのこの反応は??
これも演技なの?でも演技にしちゃ随分と真実味があるような。
「そ、そろそろ次の授業が始まるねっ! じゃ!」
あたしは慌てて加奈子から離れると、自席へと戻った。
まさか……まさかね……。
ま、そんなやり取りがあった後でも、あたしはこんなノートのことなんてこれっぽっちも信じて無かったんだけどさ、
その認識は放課後にあっさりと覆されてしまった。
あの後、ちょっと興味が湧いたあたしは、あやせの名前もノートに書いてみたの。
加奈子のイタズラだとしても、あやせまで加担してるってことは性格的に考えにくいし、むしろあやせはそういう下らないことを嗜める側の人間だから。
そう思ってたんだけど――
ホームルームが終わった瞬間、あたしが見た光景は、こちら目掛けて土煙を上げ猛突進してくるあやせと加奈子の二人の姿だった。
「桐乃っ!わたしと一緒に帰ろ!!」
「桐乃ぉぉぉ!加奈子と帰ろうぜっ!!」
二人はそれぞれあたしの腕をつかむと、思いっきり左右に引っ張り始めた。
ちょっ!待って!痛いってば!二人とも本気で引っ張ってるし!
「桐乃はわたしとかーえーるーのー」
「ちげーよ!!加奈子と一緒に帰るんだってばー!!」
なんか昔の話でこういうのがあった気がする……ううん、そんなこと言ってる場合じゃない!
「ちょ、ちょっと……もう、二人ともやめてってば!!」
そう一喝すると、二人はそれぞれ同時に手を離し、あたしはその弾みで尻餅をついてしまった。
そんなあたしの様子を見て、あやせは満面の笑みを浮かべて抱きついてくる。
「急に手を離されて転んじゃう桐乃、すっごく可愛いいいいい!」
「あっ、ずるいぞあやせ!加奈子にも抱かせろって!」
だからやめてってば……みんな見てるし。
教室中の注目を集めちゃってるよ……
っていうかマジだ――
このノートは本物だったんだ!!
下校中も二人はベタベタしっぱなしだった。
左にあやせ、右に加奈子と、それぞれに腕を絡められ、どちらも身体を密着させている状態で、すれ違う人たちから変な目で見られちゃったよ……
あたしは家の前まで二人に送ってもらう形になり、ようやくそこで一人になることができた。
ホントは二人とも家に寄っていこうとしてたみたいだったんだけど、このベタベタ状態に耐えられなくなったあたしが必死にお願いして帰ってもらったってワケ。
家に入ると人の気配はなく、まだ両親も兄貴も帰っていなかった。
あたしは自分の部屋に入ると、ドアの鍵を閉め、カバンからあのノートを取り出す。
「デレノート……すごいわ……」
ふふ……ふふ…… 思わず笑みがこぼれる。
その時、突如背後から人の声がした。
『――気に入っているようだな』
驚いたあたしが振り返ると、
そこには長身の黒ずくめで、頬まで口が裂けた異形の怪物が立っていた――
「きゃああああああああ!! だ、誰!? いつの間に入ったの!?」
驚いて椅子から滑り落ちたあたしを見下ろしながら、怪物はニヤリと笑った。
「そんなに驚くな。デレノートの持ち主、デレ神のリュークだ」
「デ……デレ神?」
「ああ、ノートにも書いてあったろ。人間をデレさせる神、それが俺だ」
デレ神……そんなのがホントに存在したなんて!
あたしは椅子にしがみつきながら身体を起こし、リュークとやらに問い掛けた。
「そのデレ神が……なぜあたしにこんなノートを授けたのよ?」
「ははは、退屈だったからな」
「退屈って……それだけで?」
「それにお前の周りにはツン気質の奴が多そうだし、デレノートの所有者として適任だと思ってな」
そう言うと、デレ神はククッと下卑た笑みを見せた。
そんなわけで、デレ神リュークはあたしに取り憑くことになってしまった。
そして、どうやらこいつの姿はあたしにしか見えないらしい。
その日の夜、家族が揃う食事のときもリュークは堂々と付いてきたので、あたしは一人で大慌てだったんだけど、こんな気味の悪い怪物がいるというのに、お父さんもお母さんも兄貴も、誰一人反応しなかった。
仮にも“神”を名乗ってるわけだもんね。伊達じゃなかったみたい。
まぁそれでも、部屋でもリビングでも常に一緒に居るので、正直言ってウザくてしょうがなかった。
だけど、リュークの話す声もあたし以外の人には聞こえないようだし、無視してれば静かにしてる奴なので、徐々に気にならなくなってきたけどさ。
だけど、さすがにお風呂のときは困っちゃったよ。
「アンタさぁ、もしかしてお風呂にまで付いてくる気?」
『……基本的にそういうシステムだからな』
「あり得ないでしょ!? 女子中学生のお風呂に侵入だなんて、即通報モノだって!」
『そもそも俺は人間の裸を見たところで、なにも感じないんだがな……』
と、リュークはしれっと言ってたけど、色々と検証してみたところ、数メートル程度は普通に離れていられることが判ったので、お風呂のときは浴室の外の洗面所に待たせることにした。
……こいつ、なにが「人間の裸を見たところで、なにも感じない」よ。
油断も隙もあったもんじゃないわ。
「ところでさぁ……リューク、ちょっと聞きたいんだけど」
あたしは浴槽につかりながら、ドアの向こうに居るリュークに問い掛けた。
『……なんだ?』
リュークは少し遅れて返事をする。ってか、こいつ外で何して待ってるんだろう?
まさかあたしの下着をくんかくんかしてんじゃないでしょうね。
「あのさ、このデレノートの効果って、いつまで続くの?」
『さぁな、俺は気にしたことが無いからな』
「あんたがノートの所有者だったってことは、あんたも誰かの名前を書いたりしてたんだよね?」
『ああ、書いていた。しかしお前が手にしたノートは、厳密には俺のノートじゃないんだがな。それは他のデレ神のノートを俺が盗んだものだ』
えっ、デレ神ってこいつ以外にもいるの?
『俺たちデレ神は基本的に一人一冊のノートを持っていて、そこに人間どもの名前を書き、デレてキャッキャウフフしてる様子を見ることを、生きる糧としているんだ』
「ずいぶんなご趣味ね……」
『だから、人間にデレノートを与えて遊ぶには、自分用とは別にノートを手に入れる必要があるんだ』
こいつの付き合いで分かってきたことは、おっかない風貌の割に案外おしゃべりだということだ。
なので聞いてないことまでペラペラとしゃべってしまう。
「あたし、クラスメイト二人の名前を書いたんだけど、今後もデレられることになっちゃうのかなぁ」
『そいつらキモい奴らなのか? ククク……だとしたらお前にとっては苦痛だな』
「ちょっとぉ!あやせと加奈子はキモいどころか、二人とも美少女でモデルまでやってるっつーの!」
そう反論したところで、あたしはハッと気づいた。
そういえば、今日は二人の豹変ぶりに思わずドン引きしてしまったけど、よくよく考えたら、あの美少女二人にデレられ放題ってすっごいご褒美じゃん。
「……そっか、デレノートの使い道ってそういうことなのね」
このノートを使うことで他人の好意を意のままに操ることができる――
あたしって美人だし友達も多いから、その手の願望ってあんまりなかったんだよね。
こんな当たり前のことに今更気づいてしまった。
それに、デレられてる優位を上手く利用すれば、あの二人をあたしの趣味に引き込めるかも?
加奈子にメルちゃんコスプレをさせたり、あやせには……アルちゃんコスかな?
二人に対決シーンを再現してもらったり……うへへ、夢がひろがりんぐ……
あたしはニヤけ顔を隠すように口元まで湯船に沈めると、しばし妄想の世界に浸った。
『(ククク……人間って面白っ!)』
こうしてデレノートの使い手となったあたしは、この力を存分に活用することにした。
具体的に何をしたのかって言うと――
誰が見ても互いに好き合ってるのに、なかなかくっつかないイライラする子達っているじゃん?
あたしのクラスにもさぁ、そういうのが何組かいたんだけど、
そういう男女をお互いデレ合うように片っ端から名前を書いてやったってワケ。
そんでカップル一丁あがり。
最初は自分のクラスだけだったけど、そのうち隣のクラス、次第に三年生全体に範囲を広げて、どんどんカップルを作ってやったの。
おかげであたしたち三年生のフロアは、なんとなくピンクの雰囲気になっちゃった。
学校内でも、急に交際を始めた男女が増えたんじゃないかって、次第に噂になってきてるみたい。
これヤバイわ、やり始めたら楽しくて止まらなくなっちゃう……
あたしって、まるで恋のキューピッドだよね。
「「桐乃~~ 一緒に帰ろっ」」
あれから一週間が経ったけど、あやせと加奈子は相変わらずあたしにデレデレしっぱなしだ。
嫌なわけじゃないけど、いつまでこの状態が続くのかなと、ちょっと心配になる。
三人イチャつきながら下校するのにだんだん慣れてきてしまった自分が怖いわ……。
そんなことを考えながら歩いていると、いつもの曲がり角で、同じく下校中の兄貴に遭遇した。
いや、正確には兄貴と地味子だ――
「……!」
「よう、桐乃……って、なんか妙にベタベタしてるなお前ら」
「うっさいわね!あんたに関係ないでしょ」
あたしはキッと睨み付けると、二人を追い越し早足で家路を急いだ。
「ああん、桐乃ぉぉ、置いてくなよ~~」
「桐乃、待ってってば~~~」
加奈子とあやせが慌てて追いかけてくる。
ふんっ、いつもいつもベタベタしちゃって。キモいんだってば、馬鹿兄貴。
思えばあたしが物心ついたときから、兄貴の隣にはあの女がいたような気がする。
兄貴も、なんであんな地味でスタイルもイマイチな冴えない女と一緒に居るんだか。
メガネっ娘好きなのは知ってるけど、ちょっと趣味悪すぎるんじゃないの?
もしデレノートに、地味子が別の男にデレるように書いたら、あの二人の関係は壊れるかな?
ムカつくからやってやろうかしら。
それとも、兄貴の方を、地味子じゃない他の誰かにデレるようにしちゃうとかさ。
たとえば……あたしとか?
そんな考えをめぐらせた瞬間、顔がかっと熱くなるのを感じた。
うわああ!キモっ!あたしキモい!とんでもないことを想像してしまった。
ありえないってそんな状況。あの死んだ魚の目のような兄貴があたしにデレてくるなんて……
でもこのノートがあれば、そんな状況も作り出せちゃうのよね。
そう考えたとき、あたしは初めてこのノートの力に薄気味悪さを感じた。
夕食後――
あたしはさっさと自分の部屋に戻ると、パソコンの電源を入れた。
ブラウザを立ち上げ、ブックマークの中からあるサイトを開く。
「リューク、ちょっとこれ見てみてよ」
『うん?何だそのサイトは』
あたしが開いて見せたのは、うちの中学校のいわゆる“裏サイト”。
誰が作ったのかは分からないけど、おそらくほとんどの生徒が知ってるサイトで、
学校に関するあらゆる情報交換が行われている。
「ここの掲示板にいろんな書き込みがあるんだけど――あった、このスレッド」
男女交際について語られてるそのスレッドのタイトルをクリックすると、
そこには最近の校内カップル急増についての報告や意見が書かれていた。
>507 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 18:38:07
>3年B組の◎田と△藤、あいつらが付き合うとは思わなかった
>どう考えても釣り合ってねえしwww
>
>508 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 19:09:17
>うちのクラスも急に付き合い始める奴ら大杉。ベタベタしてキモイ
>
>509 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 19:20:20
>うちもだぜ
>異様
>
>510 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 20:01:20
>他所もかよw
>
>511 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 20:19:44
>それって3年ばかりでしょ?
>高校受験なのになに考えてんのかね
>
>512 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 20:29:53
>リア充爆発しろ
>
>513 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 21:11:12
>てか最近付き合い始めたやつらってなんか怖くね?
>催眠術にでもかかってるかのように、目がイッちゃってるもん
リュークはあたしの肩越しにパソコンのモニタを眺めてる。
『なんだかあまり反応が良くないじゃないか。キューピッド気取ってたのに残念だったな』
「別にぃ~。ここに書いてる奴らは当事者じゃないからでしょ。非モテがひがんでるのよ」
あたしはモニタを見つめたままで答えた。
リュークは頬まで裂けた口元をさらに吊り上げ、クククと嫌な笑いを浮かべている。
『で、この掲示板がどうかしたのか?』
「ふふふ、よくぞ聞いてくれました」
あたしは椅子をくるっと回し、腕組みをしてリュークと向き合った。
「実は、くっつける男女のストックがそろそろなくなってきたから、ここで情報集めようかなって思って。それにあたしが手を出してない、他の学年にも恋のキューピッド様が降臨しないと不公平だしね」
『へぇ~ そういうものなのか』
あたしはニヤリと笑い、またパソコンに向かい直すと、投稿フォームを開いてキーを叩き始めた。
>名前: メルちゃん♪
>E-mail: sage
>内容:
>最近カップルが増えたのは、あたしが恋の魔法でくっつけたからだよ~ん
>他にもカップルにしたい男女がいたら名前を教えてよね(*´∀`*)
>写真があればなお良しだよ♪
>
>(・ω<)キラッ☆彡
「よーし、これで書き込みっと」
『……お前、ネット上ではこういうキャラなのか?』
「はぁ?なんか文句あるの?」
『いや……ないけど』
あたしは意気揚々と投稿ボタンをクリックした。
さすがに身元を明かすのはヤバいし、その点ネットの掲示板って便利な場所よね。
自分の書き込みが掲示板に反映されたことを確認すると、あたしはいつもより早めにベッドに入った。
明日の朝、少し早く起きてレスをチェックしよっと。
翌朝――
いつもより一時間早く起きたあたしは、パソコンの電源を入れて早速スレッドをチェックした。
ふふふ、みんなどんな反応してるかな……
>520 :メルちゃん♪:2011/01/26(水) 21:41:01
>最近カップルが増えたのは、あたしが恋の魔法でくっつけたからだよ~ん
>他にもカップルにしたい男女がいたら名前を教えてよね(*´∀`*)
>写真があればなお良しだよ♪
>
>(・ω<)キラッ☆彡
>
>521 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 21:46:53
>D組の◎山と◇岡も付き合い始めたってさ
>
>522 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 22:00:21
>カポーうぜえええええ
>
>523 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 22:16:20
>校内で所構わずいちゃらぶするのはマジやめて欲しい
>
>524 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 23:31:52
>&nowiki(){>>520}
>キチガイ乙です
>
>525 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 00:40:13
>みんな卒業してからにすりゃいいのにね
思わずキーボードを両手で殴りつけ、あたしは叫んだ。
「ちょっとぉ!!なんでスルーされてる上にキチガイ認定レスだけなのよっ!?」
『俺に言われても知らねえって……』
あたしの大声で目を覚ましたのか、隣の部屋から壁越しに「うるせえぞ!」の怒号が聞こえてきた。
チッ、こっちは大事なところなのよ? ああ、ウザいウザい。
「こうなったら、やっぱりあたしの力を実証して見せるしかないわね」
幸い、カップル候補のストックが一組だけ残っていた。
あたしは再び投稿フォームを開き、静かにキーを叩き始める。
>名前: メルちゃん♪
>E-mail: sage
>内容:
>ちょwwwお前ら無視すんなしwwwwwwwww
>しょうがないから、今から3年C組の◎村くんと△川さんをカップル化してやんよ
>これであたしの力を信じなさいよ!
>
>(・ω<)キラッ☆彡
投稿を終えると、あたしはデレノートに◎村くんと△川さんを互いにデレるよう書き込んだ。
これで準備完了。
さぁ、しっかり見てなさいよ、非モテの連中どもめ!
&br()
[[桐乃「デレノート……?」:95]]
&br()
1 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage] 投稿日:2011/01/22(土) 22:21:44.27 ID:/X7dip2ro
その日もあたしは、いつものように退屈な授業をぼんやりと聞いていた。
自分で言うのも何だけど、あたしって要領がいいから、授業でやる範囲なんて教科書を読むだけで自然と頭に入っちゃうんだよね。
だからかったるくて授業なんて聞いてられないってワケ。
そんなあたしが何の気なしに机の中に手を入れると、そこには覚えの無い、薄く、でもしっかりとした硬い手触りのノートが入っていた。
(あれっ?こんなノート持ってたっけ?)
取り出してみると、表紙は真っ黒で、英語のタイトルらしきものが書かれている。
(「DERE NOTE」? デレ……ノートって読むのかな?)
2 名前:&font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/22(土) 22:23:02.30 ID:/X7dip2ro
誰かがあたしの机に入れたのだろうか?
周囲を見回してみたけど、周りのみんなは正面の教師へ視線を送っていて、あたしの行動には気づいていないようだった。
ちょっと気味が悪い気もしたけれど、とりあえず表紙を一枚めくってみる。
するとその裏には、小さな文字でなにやら書いてあった。
(ええっと…… 「HOW TO USE」? 使い方ってことかな?)
そこには小さな文字で、以下のようなことが書き連ねられていた。
3 名前:&font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/22(土) 22:24:14.96 ID:/X7dip2ro
&nowiki(){・このノートに名前を書かれた人間は、指定した人物に対しデレデレになる}
&nowiki(){・デレ対象を省略した場合は、ノートに書き込んだ当人がデレ対象となる}
&nowiki(){・書く人物の顔が頭に入っていないと効果はない}
ゆえに同姓同名の人物に一遍に効果は得られない
&nowiki(){・このノートは人間界の地に着いた時点から人間界の物となる}
&nowiki(){・所有者はノートの元の持ち主であるデレ神の姿や声を認知する事ができる}
&nowiki(){・デレノートを持っている限り、自分が誰かにデレるまで元持ち主であるデレ神が憑いてまわる}
4 名前:&font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/22(土) 22:25:38.85 ID:/X7dip2ro
あまりにも馬鹿馬鹿しくて、あたしはぷっと吹き出してしまった。
(へぇ~ なかなか凝ったイタズラじゃない)
誰が用意したのかわからないけど、こういうのはノリ良く応えないとねっ!
ってことで、あたしはシャーペンを握ると、真っ白なページの一番上の欄に構えた。
(うーん、誰の名前を書くべきなのかなぁ?)
っていうか、こんなイタズラ仕掛けるのって、ぶっちゃけあの子しか考えられないんだけどさ。
(「来栖加奈子」っと)
あたしはイタズラ犯である可能性が最も高い、加奈子の名前を書いてみた。
へへっ、これでネタばらしされた時に、「ふふーん、あんたの仕業だってお見通しだよっ」
ってやりかえせるよね。
あたしは名前を書き終えると、ふと加奈子の席の方を見てみた。
あれっ、気のせいか加奈子がぼんやりしてるように見えるかも?
眠いのかな?でもそれにしちゃ頬が妙に紅いし……
5 名前:&font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/22(土) 22:27:20.81 ID:/X7dip2ro
休憩時間――
さぁ、加奈子がネタばらしをしにくるのかな?
あたしはニヤニヤしながら様子を窺っていたんだけど、加奈子は相変わらず頬を染めたまま、こっちをチラチラと見るだけだった。
それはまるで恋する乙女の仕草だ……もしかしてそれでデレてる振りしてんの?
めんどくさくなったあたしは、加奈子の席へ向かい、こちらからネタばらしを要求してみた。
「加奈子ぉ、そんな演技したってとっくにバレてるんだってば。まったく……」
「えっ、あっ、桐乃……」
加奈子は目を合わそうとせず、耳まで真っ赤にして俯いている。
「もう~~、加奈子ってば!」ポンッ
あたしはちょっとイラついて、加奈子の肩を軽く押した。
すると加奈子は、あたしの手の上にスッと自分の手を重ね、潤んだ上目遣いの瞳であたしを見つめてきた。
6 名前:&font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/22(土) 22:28:18.89 ID:/X7dip2ro
「えっ? 加奈子……?」
なに?なんなのこの反応は??
これも演技なの?でも演技にしちゃ随分と真実味があるような。
「そ、そろそろ次の授業が始まるねっ! じゃ!」
あたしは慌てて加奈子から離れると、自席へと戻った。
まさか……まさかね……。
ま、そんなやり取りがあった後でも、あたしはこんなノートのことなんてこれっぽっちも信じて無かったんだけどさ、
その認識は放課後にあっさりと覆されてしまった。
7 名前:&font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/22(土) 22:29:46.62 ID:/X7dip2ro
あの後、ちょっと興味が湧いたあたしは、あやせの名前もノートに書いてみたの。
加奈子のイタズラだとしても、あやせまで加担してるってことは性格的に考えにくいし、むしろあやせはそういう下らないことを嗜める側の人間だから。
そう思ってたんだけど――
ホームルームが終わった瞬間、あたしが見た光景は、こちら目掛けて土煙を上げ猛突進してくるあやせと加奈子の二人の姿だった。
「桐乃っ!わたしと一緒に帰ろ!!」
「桐乃ぉぉぉ!加奈子と帰ろうぜっ!!」
二人はそれぞれあたしの腕をつかむと、思いっきり左右に引っ張り始めた。
ちょっ!待って!痛いってば!二人とも本気で引っ張ってるし!
「桐乃はわたしとかーえーるーのー」
「ちげーよ!!加奈子と一緒に帰るんだってばー!!」
なんか昔の話でこういうのがあった気がする……ううん、そんなこと言ってる場合じゃない!
8 名前:&font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/22(土) 22:30:57.47 ID:/X7dip2ro
「ちょ、ちょっと……もう、二人ともやめてってば!!」
そう一喝すると、二人はそれぞれ同時に手を離し、あたしはその弾みで尻餅をついてしまった。
そんなあたしの様子を見て、あやせは満面の笑みを浮かべて抱きついてくる。
「急に手を離されて転んじゃう桐乃、すっごく可愛いいいいい!」
「あっ、ずるいぞあやせ!加奈子にも抱かせろって!」
だからやめてってば……みんな見てるし。
教室中の注目を集めちゃってるよ……
っていうかマジだ――
このノートは本物だったんだ!!
9 名前:&font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/22(土) 22:33:25.97 ID:/X7dip2ro
下校中も二人はベタベタしっぱなしだった。
左にあやせ、右に加奈子と、それぞれに腕を絡められ、どちらも身体を密着させている状態で、すれ違う人たちから変な目で見られちゃったよ……
あたしは家の前まで二人に送ってもらう形になり、ようやくそこで一人になることができた。
ホントは二人とも家に寄っていこうとしてたみたいだったんだけど、このベタベタ状態に耐えられなくなったあたしが必死にお願いして帰ってもらったってワケ。
家に入ると人の気配はなく、まだ両親も兄貴も帰っていなかった。
あたしは自分の部屋に入ると、ドアの鍵を閉め、カバンからあのノートを取り出す。
「デレノート……すごいわ……」
ふふ……ふふ…… 思わず笑みがこぼれる。
その時、突如背後から人の声がした。
『――気に入っているようだな』
驚いたあたしが振り返ると、
そこには長身の黒ずくめで、頬まで口が裂けた異形の怪物が立っていた――
10 名前:&font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/22(土) 22:34:31.95 ID:/X7dip2ro
「きゃああああああああ!! だ、誰!? いつの間に入ったの!?」
驚いて椅子から滑り落ちたあたしを見下ろしながら、怪物はニヤリと笑った。
「そんなに驚くな。デレノートの持ち主、デレ神のリュークだ」
「デ……デレ神?」
「ああ、ノートにも書いてあったろ。人間をデレさせる神、それが俺だ」
デレ神……そんなのがホントに存在したなんて!
あたしは椅子にしがみつきながら身体を起こし、リュークとやらに問い掛けた。
「そのデレ神が……なぜあたしにこんなノートを授けたのよ?」
「ははは、退屈だったからな」
「退屈って……それだけで?」
「それにお前の周りにはツン気質の奴が多そうだし、デレノートの所有者として適任だと思ってな」
そう言うと、デレ神はククッと下卑た笑みを見せた。
37 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/24(月) 00:33:37.50 ID:fKq/GzRDo
そんなわけで、デレ神リュークはあたしに取り憑くことになってしまった。
そして、どうやらこいつの姿はあたしにしか見えないらしい。
その日の夜、家族が揃う食事のときもリュークは堂々と付いてきたので、あたしは一人で大慌てだったんだけど、こんな気味の悪い怪物がいるというのに、お父さんもお母さんも兄貴も、誰一人反応しなかった。
仮にも“神”を名乗ってるわけだもんね。伊達じゃなかったみたい。
まぁそれでも、部屋でもリビングでも常に一緒に居るので、正直言ってウザくてしょうがなかった。
だけど、リュークの話す声もあたし以外の人には聞こえないようだし、無視してれば静かにしてる奴なので、徐々に気にならなくなってきたけどさ。
38 名前:&font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/24(月) 00:36:19.20 ID:fKq/GzRDo
だけど、さすがにお風呂のときは困っちゃったよ。
「アンタさぁ、もしかしてお風呂にまで付いてくる気?」
『……基本的にそういうシステムだからな』
「あり得ないでしょ!? 女子中学生のお風呂に侵入だなんて、即通報モノだって!」
『そもそも俺は人間の裸を見たところで、なにも感じないんだがな……』
と、リュークはしれっと言ってたけど、色々と検証してみたところ、数メートル程度は普通に離れていられることが判ったので、お風呂のときは浴室の外の洗面所に待たせることにした。
……こいつ、なにが「人間の裸を見たところで、なにも感じない」よ。
油断も隙もあったもんじゃないわ。
39 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/24(月) 00:38:56.53 ID:fKq/GzRDo
「ところでさぁ……リューク、ちょっと聞きたいんだけど」
あたしは浴槽につかりながら、ドアの向こうに居るリュークに問い掛けた。
『……なんだ?』
リュークは少し遅れて返事をする。ってか、こいつ外で何して待ってるんだろう?
まさかあたしの下着をくんかくんかしてんじゃないでしょうね。
「あのさ、このデレノートの効果って、いつまで続くの?」
『さぁな、俺は気にしたことが無いからな』
「あんたがノートの所有者だったってことは、あんたも誰かの名前を書いたりしてたんだよね?」
『ああ、書いていた。しかしお前が手にしたノートは、厳密には俺のノートじゃないんだがな。それは他のデレ神のノートを俺が盗んだものだ』
えっ、デレ神ってこいつ以外にもいるの?
40 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/24(月) 00:41:06.26 ID:fKq/GzRDo
『俺たちデレ神は基本的に一人一冊のノートを持っていて、そこに人間どもの名前を書き、デレてキャッキャウフフしてる様子を見ることを、生きる糧としているんだ』
「ずいぶんなご趣味ね……」
『だから、人間にデレノートを与えて遊ぶには、自分用とは別にノートを手に入れる必要があるんだ』
こいつの付き合いで分かってきたことは、おっかない風貌の割に案外おしゃべりだということだ。
なので聞いてないことまでペラペラとしゃべってしまう。
「あたし、クラスメイト二人の名前を書いたんだけど、今後もデレられることになっちゃうのかなぁ」
『そいつらキモい奴らなのか? ククク……だとしたらお前にとっては苦痛だな』
「ちょっとぉ!あやせと加奈子はキモいどころか、二人とも美少女でモデルまでやってるっつーの!」
そう反論したところで、あたしはハッと気づいた。
41 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/24(月) 00:43:59.02 ID:fKq/GzRDo
そういえば、今日は二人の豹変ぶりに思わずドン引きしてしまったけど、よくよく考えたら、あの美少女二人にデレられ放題ってすっごいご褒美じゃん。
「……そっか、デレノートの使い道ってそういうことなのね」
このノートを使うことで他人の好意を意のままに操ることができる――
あたしって美人だし友達も多いから、その手の願望ってあんまりなかったんだよね。
こんな当たり前のことに今更気づいてしまった。
それに、デレられてる優位を上手く利用すれば、あの二人をあたしの趣味に引き込めるかも?
加奈子にメルちゃんコスプレをさせたり、あやせには……アルちゃんコスかな?
二人に対決シーンを再現してもらったり……うへへ、夢がひろがりんぐ……
あたしはニヤけ顔を隠すように口元まで湯船に沈めると、しばし妄想の世界に浸った。
『(ククク……人間って面白っ!)』
67 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/27(木) 00:57:39.74 ID:uPWfOK4Zo
こうしてデレノートの使い手となったあたしは、この力を存分に活用することにした。
具体的に何をしたのかって言うと――
誰が見ても互いに好き合ってるのに、なかなかくっつかないイライラする子達っているじゃん?
あたしのクラスにもさぁ、そういうのが何組かいたんだけど、
そういう男女をお互いデレ合うように片っ端から名前を書いてやったってワケ。
そんでカップル一丁あがり。
最初は自分のクラスだけだったけど、そのうち隣のクラス、次第に三年生全体に範囲を広げて、どんどんカップルを作ってやったの。
おかげであたしたち三年生のフロアは、なんとなくピンクの雰囲気になっちゃった。
学校内でも、急に交際を始めた男女が増えたんじゃないかって、次第に噂になってきてるみたい。
これヤバイわ、やり始めたら楽しくて止まらなくなっちゃう……
あたしって、まるで恋のキューピッドだよね。
68 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/27(木) 00:59:20.66 ID:uPWfOK4Zo
「「桐乃~~ 一緒に帰ろっ」」
あれから一週間が経ったけど、あやせと加奈子は相変わらずあたしにデレデレしっぱなしだ。
嫌なわけじゃないけど、いつまでこの状態が続くのかなと、ちょっと心配になる。
三人イチャつきながら下校するのにだんだん慣れてきてしまった自分が怖いわ……。
そんなことを考えながら歩いていると、いつもの曲がり角で、同じく下校中の兄貴に遭遇した。
いや、正確には兄貴と地味子だ――
「……!」
「よう、桐乃……って、なんか妙にベタベタしてるなお前ら」
「うっさいわね!あんたに関係ないでしょ」
あたしはキッと睨み付けると、二人を追い越し早足で家路を急いだ。
「ああん、桐乃ぉぉ、置いてくなよ~~」
「桐乃、待ってってば~~~」
加奈子とあやせが慌てて追いかけてくる。
ふんっ、いつもいつもベタベタしちゃって。キモいんだってば、馬鹿兄貴。
69 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/27(木) 01:01:02.19 ID:uPWfOK4Zo
思えばあたしが物心ついたときから、兄貴の隣にはあの女がいたような気がする。
兄貴も、なんであんな地味でスタイルもイマイチな冴えない女と一緒に居るんだか。
メガネっ娘好きなのは知ってるけど、ちょっと趣味悪すぎるんじゃないの?
もしデレノートに、地味子が別の男にデレるように書いたら、あの二人の関係は壊れるかな?
ムカつくからやってやろうかしら。
それとも、兄貴の方を、地味子じゃない他の誰かにデレるようにしちゃうとかさ。
たとえば……あたしとか?
そんな考えをめぐらせた瞬間、顔がかっと熱くなるのを感じた。
うわああ!キモっ!あたしキモい!とんでもないことを想像してしまった。
ありえないってそんな状況。あの死んだ魚の目のような兄貴があたしにデレてくるなんて……
でもこのノートがあれば、そんな状況も作り出せちゃうのよね。
そう考えたとき、あたしは初めてこのノートの力に薄気味悪さを感じた。
70 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/27(木) 01:02:50.77 ID:uPWfOK4Zo
夕食後――
あたしはさっさと自分の部屋に戻ると、パソコンの電源を入れた。
ブラウザを立ち上げ、ブックマークの中からあるサイトを開く。
「リューク、ちょっとこれ見てみてよ」
『うん?何だそのサイトは』
あたしが開いて見せたのは、うちの中学校のいわゆる“裏サイト”。
誰が作ったのかは分からないけど、おそらくほとんどの生徒が知ってるサイトで、
学校に関するあらゆる情報交換が行われている。
「ここの掲示板にいろんな書き込みがあるんだけど――あった、このスレッド」
男女交際について語られてるそのスレッドのタイトルをクリックすると、
そこには最近の校内カップル急増についての報告や意見が書かれていた。
71 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/27(木) 01:04:45.49 ID:uPWfOK4Zo
507 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 18:38:07
3年B組の◎田と△藤、あいつらが付き合うとは思わなかった
どう考えても釣り合ってねえしwww
508 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 19:09:17
うちのクラスも急に付き合い始める奴ら大杉。ベタベタしてキモイ
509 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 19:20:20
うちもだぜ
異様
510 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 20:01:20
他所もかよw
511 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 20:19:44
それって3年ばかりでしょ?
高校受験なのになに考えてんのかね
512 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 20:29:53
リア充爆発しろ
513 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 21:11:12
てか最近付き合い始めたやつらってなんか怖くね?
催眠術にでもかかってるかのように、目がイッちゃってるもん
72 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/27(木) 01:06:41.87 ID:uPWfOK4Zo
リュークはあたしの肩越しにパソコンのモニタを眺めてる。
『なんだかあまり反応が良くないじゃないか。キューピッド気取ってたのに残念だったな』
「別にぃ~。ここに書いてる奴らは当事者じゃないからでしょ。非モテがひがんでるのよ」
あたしはモニタを見つめたままで答えた。
リュークは頬まで裂けた口元をさらに吊り上げ、クククと嫌な笑いを浮かべている。
『で、この掲示板がどうかしたのか?』
「ふふふ、よくぞ聞いてくれました」
あたしは椅子をくるっと回し、腕組みをしてリュークと向き合った。
「実は、くっつける男女のストックがそろそろなくなってきたから、ここで情報集めようかなって思って。それにあたしが手を出してない、他の学年にも恋のキューピッド様が降臨しないと不公平だしね」
『へぇ~ そういうものなのか』
あたしはニヤリと笑い、またパソコンに向かい直すと、投稿フォームを開いてキーを叩き始めた。
73 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/27(木) 01:07:46.21 ID:uPWfOK4Zo
名前: メルちゃん♪
E-mail: sage
内容:
最近カップルが増えたのは、あたしが恋の魔法でくっつけたからだよ~ん
他にもカップルにしたい男女がいたら名前を教えてよね(*´∀`*)
写真があればなお良しだよ♪
(・ω<)キラッ☆彡
「よーし、これで書き込みっと」
『……お前、ネット上ではこういうキャラなのか?』
「はぁ?なんか文句あるの?」
『いや……ないけど』
あたしは意気揚々と投稿ボタンをクリックした。
さすがに身元を明かすのはヤバいし、その点ネットの掲示板って便利な場所よね。
自分の書き込みが掲示板に反映されたことを確認すると、あたしはいつもより早めにベッドに入った。
明日の朝、少し早く起きてレスをチェックしよっと。
74 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/27(木) 01:10:34.11 ID:uPWfOK4Zo
翌朝――
いつもより一時間早く起きたあたしは、パソコンの電源を入れて早速スレッドをチェックした。
ふふふ、みんなどんな反応してるかな……
520 :メルちゃん♪:2011/01/26(水) 21:41:01
最近カップルが増えたのは、あたしが恋の魔法でくっつけたからだよ~ん
他にもカップルにしたい男女がいたら名前を教えてよね(*´∀`*)
写真があればなお良しだよ♪
(・ω<)キラッ☆彡
521 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 21:46:53
D組の◎山と◇岡も付き合い始めたってさ
522 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 22:00:21
カポーうぜえええええ
523 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 22:16:20
校内で所構わずいちゃらぶするのはマジやめて欲しい
524 :学校の名無しさん:2011/01/26(水) 23:31:52
&nowiki(){>>520}
キチガイ乙です
525 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 00:40:13
みんな卒業してからにすりゃいいのにね
75 名前: &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/01/27(木) 01:11:58.32 ID:uPWfOK4Zo
思わずキーボードを両手で殴りつけ、あたしは叫んだ。
「ちょっとぉ!!なんでスルーされてる上にキチガイ認定レスだけなのよっ!?」
『俺に言われても知らねえって……』
あたしの大声で目を覚ましたのか、隣の部屋から壁越しに「うるせえぞ!」の怒号が聞こえてきた。
チッ、こっちは大事なところなのよ? ああ、ウザいウザい。
「こうなったら、やっぱりあたしの力を実証して見せるしかないわね」
幸い、カップル候補のストックが一組だけ残っていた。
あたしは再び投稿フォームを開き、静かにキーを叩き始める。
名前: メルちゃん♪
E-mail: sage
内容:
ちょwwwお前ら無視すんなしwwwwwwwww
しょうがないから、今から3年C組の◎村くんと△川さんをカップル化してやんよ
これであたしの力を信じなさいよ!
(・ω<)キラッ☆彡
投稿を終えると、あたしはデレノートに◎村くんと△川さんを互いにデレるよう書き込んだ。
これで準備完了。
さぁ、しっかり見てなさいよ、非モテの連中どもめ!
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[[桐乃「デレノート……?」:95]]
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