無題:10スレ目957

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957 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:32:01.55 ID:0kkrz6kAo 夏休みのある日の午後―― いつものように黒猫の家を訪れた俺は、五更家の居間で一人、ぼんやりテレビを眺めていた。 なんで彼女の家に来てるのに一人なのかって? 黒猫の奴は、買い物があるとかで外に出てったっきり。俺はいつもの放置プレイを頂戴してるってわけだ。 ……薄々感じてはいたけど、なんか彼氏の扱いが悪くねぇか? あいつと付き合い始めたばかりの頃は、こういうシチュエーションに緊張して、実に落ち着かない気分になったもんだけど、もう今ではすっかり慣れちまったよ。ハァ…… いいや、だけど逆にさ、お客扱いされてないことが、今の俺達の親密ぶりを表しているとも言えるよな? 気を許しているからこそのこの処遇なんだよ、きっと。 そう考えるだけで、陰鬱な気分はどこへやら。自然と頬が緩くなってしまうんだから、俺の色ボケぶりも堂に入ったものだ。 と、独りでニヤついていると、玄関の方から戸がガラガラと開く音が聞こえてきた。 黒猫が帰ってきたのかと思い、居間の出入り口に視線を移すと、そこに姿を見せたのは五更家の次女日向ちゃんだった。 「あーっ、高坂くんだ」 「よう、おじゃましてるぜ」 日向ちゃんはプールの帰りらしく、ビーチバッグをぶら下げ、おさげの髪はほんのり湿って見えた。 「あれぇ~?ルリ姉はいないの?」 「ああ、買い物に行っちまったぜ」 「ふ~~ん。なんかさー……高坂くんって、いつもいつも放置されてるよねぇ……」 やめてっ!そんな目で見ないで! 小学5年生から向けられた哀れみの視線に、さっきまでのポジティブシンキングは消え去り、俺はがっくりとうな垂れた。 そんな俺の心の動きを察知してか、うひひ~と意地悪な笑みを寄越す日向ちゃん。 こういうところは黒猫にそっくりだ。 958 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:33:13.03 ID:0kkrz6kAo 「まぁまぁ、ルリ姉が帰ってくるまで、あたしが相手してあげるからさっ」 「ははは……ありがとよ……」 今は日向ちゃんのその優しさが切ないぜ…… ため息を吐きつつ俺が顔を上げると、日向ちゃんは左耳に小指を突っ込んでモゾモゾしていた。 右手には……綿棒が握られている。 「ん?耳どうかした?」 「えっとね、今日プールで泳いだから、なんか水が耳の中に入っちゃって……ううう、むずがゆい~」 「その綿棒でほじくったらいいんじゃねえの?」 「あ、うん。そうなんだけどー……」 そう言うと、日向ちゃんは左手に綿棒を持ち、耳の穴に近づける。 だけど、その動きは妙~にゆっくりで慎重な上に、小刻みに手が震えていて、いかにも危なっかしい感じだった。 んん~?これは…… 「……日向ちゃん、もしかして自分で耳かきができないの?」 「あーっ!高坂くん、いま馬鹿にしたでしょー!?」 日向ちゃんは顔を真っ赤にし、こちらを指差して抗議の声を上げた。 「いや、別に馬鹿にはしてないけどさ。耳に綿棒突っ込んで動かすだけじゃねえか」 「……だって、自分からは見えない耳の穴に、手探りで綿棒入れるのって……なんか怖いんだもん……」 「そうかぁぁ?」 「もし手が滑ってうっかり奥まで挿しちゃったら大変だよぉー?!」 うーむ、こういうところはさすがにマセてても小学5年生。 日向ちゃんは、また耳に小指を突っ込んで悶えている。 「ううう、かゆいぃ~~」 自分で耳かきができない小学5年生の妹。これがエロゲなら、桐乃が全力で食いつくキャラ設定だろう。 「……じゃあ、まぁ、しょうがないよな」 俺は誰に言い訳するわけでもなくそう呟くと、この場の流れに身を任せた。 959 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:35:55.41 ID:0kkrz6kAo そして今、俺の膝の上には、日向ちゃんの頭が乗っている―― まぁ待て、お前ら。まずは落ち着け。ほら、素数を数えるんだ。 小学生の女の子を膝に乗せて耳掃除だなんて、その道の人達にとってはたまらないシチュエーションだよな。 桐乃の奴なら盛大に発狂した挙句、萌え死んでるかもしれない。 「高坂くーん、なにぶつぶつ言ってんの? 早くしてよー」 おっと、どうやら俺の心の声はちょっぴり漏れ出てしまっていたようだ。危ねぇ。 それにしても、膝に感じる温かな重みと、かすかに俺の腹に触れるおさげ髪の感触が実に心地いい。 一応言っておくけど、俺はそっちの方面の属性はまったく持ち合わせてないのであしからず。 俺は日向ちゃんの横髪を人差し指でひょいと耳に掛けて、耳孔の入り口に綿棒を軽く触れさせた。 「ひゃん!」 「お、おい、変な声出すなって」 「だって高坂くんがくすぐったくするからー」 普通にしてるつもりだけど……そもそも俺は人の耳掃除をしたことなんて無いので、どうにも勝手がわかんねぇ。 とりあえず俺は、耳の淵に沿ってやさしく綿棒を這わせた。 960 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:36:42.68 ID:0kkrz6kAo 一通り耳の外側を掃除すると、かすかに耳の淵に残っていた水分が綿棒を湿らせる。 まぁ、外側はそんなに汚れが溜まるところでもないし、こんなもんかな。 そんなことを思ってると、日向ちゃんから催促の声が飛んだ。 「高坂くーん、はやく耳の中をやってよー……むずむずするよぉ」 そうだった、メインはそっちだ。 俺は綿棒をひっくり返し、反対側を耳孔に近づける。 「なんかさ、日向ちゃんじゃないけど、人の耳に突っ込むのは結構おっかねぇな。自分のなら何ともないけど……」 「ええー、いまさらそんな事言うの無しっしょー!?」 「分かってるって。――じゃあ行くぞ」 「ほらぁ、早く入れてってばー! おかしくなっちゃうよぉ」 だから変な声を出すなってば。 俺は綿棒の頭の部分がちょうど耳の穴に隠れるぐらいまで入れて、耳孔の壁に押し付け軽くこする。 すると一瞬、膝の上の日向ちゃんの頭に力が入った。 「おっ、この辺か?」 「うひいいい~、気持ちいぃぃ。でもね、かゆいのはもうちょっと奥の方かな」 もっと奥か…… 961 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:38:38.27 ID:0kkrz6kAo 俺は慎重に綿棒を奥に進めると、耳の穴の壁に沿って綿棒を動かした。 綿棒の柄が少しずつ耳の中に隠れていく、が、他人の耳掃除に慣れてない俺にはどこまで深く入れていいのか分からない。 不安になった俺は、綿棒を握る手を止めてしまう。 「案外、難しいなこれ……」 そんな俺に、日向ちゃんは非難の声を上げた。 「ガツッとやっちゃってよ。ったく、高坂くんって結構ビビりだよねー。頼りないなぁー」 い、言ってくれるじゃんよ……! お兄さんちょっとカチンときちゃったからね! 俺は綿棒を耳から抜くと、再び耳の外側をチマチマと擦り始めた。 「えっ、えっ? なんでまた外を……耳の中をやってってばー」 かゆみのポイントまであと少しに迫りながら、まさかの撤退に慌てる日向ちゃん。 俺は精一杯の笑顔を作り、わざとらしい棒読み口調で言った。 「あー、でも俺ってビビりだからなぁー。耳の奥はやっぱ無理かもしれないなー」 「えっ、さっきのナシ! 高坂くんはビビリじゃないからさ! ねっ?」 俺の意図に気づいて更に慌てる日向ちゃん。 やばい、これは可愛い。うっかりおかしな方面に目覚めてしまいそうじゃないか…… 962 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:43:36.01 ID:0kkrz6kAo 調子に乗った俺は、日向ちゃんに意地悪したい衝動に駆られてしまった。 「んー、じゃあ、『ビビリじゃないイケメンの京介お兄ちゃん、お願いだから耳の中を掃除してっ』って  可愛く言ってくれたらな考えようかなー」 ふふふ、我ながら嫌らしい提案だぜ! そんな俺の意地悪に、日向ちゃんが恥ずかしがって顔を赤らめる――って展開を期待したのだけど、実際には日向ちゃんは「ぶっ!」と吹き出していた。 「イケメンってwww高坂くん言うねーwwww」 「……っ!」 草生やしまくりの思わぬ反応に、逆にたじろぐ俺。 日向ちゃんはケタケタと笑っている。 「そんなの、いくらでも言ってあげるよー。イケメンのお・に・い・ちゃ・ん」 かあっと顔が熱くなるのを感じ、俺はまんまと自爆してしまったことを察知した。 いつもツンツンしてる黒猫や桐乃とは違い、天真爛漫な日向ちゃんにこういう意地悪は通用しないようだ。 な、なんという不覚…… 「ビビりじゃないイケメンの京介お兄ちゃん、お願いだから――」 「ま、参った!俺の負けだ!」 ダメだ、この子には勝てねぇ…… 素直に負けを認めた俺は、再び綿棒を日向ちゃんの耳に挿し込み、耳の壁に沿って奥に進める。 「んじゃ、痛かったらすぐに言ってくれよ」 「うん、大丈夫……って、おおおお!きたきたきたー!」 どうやらいきなり金脈を掘り当てたらしく、日向ちゃんは身体をわずかに仰け反らせて歓喜の雄叫びを上げた。 俺はそのポイントを逃さず、綿棒を左右に往復させて擦る。 「あぁぁ……そこそこ!気持ちいいぃぃぃ」 散々待ちかねていたせいもあるのだろう、日向ちゃんはとろんとした瞳で悦楽に浸っている。 俺はさらにその周囲を綿棒で這わせて、なんとか耳掃除を完遂した。 963 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:46:14.60 ID:0kkrz6kAo とはいっても、まだ片側だけだ。 俺は日向ちゃんを逆向きにさせると、今度は綿棒ではなく耳かきで反対側の耳掃除を始めた。 「はぁー、極楽極楽ぅー」 最初はおぼつかなかった耳掃除だったけど、やってるうちに徐々に要領を掴み、日向ちゃんも満足してくれてるようだ。 俺は耳かきの匙の部分で耳の壁を擦り、少しずつ奥に進んでいく。 耳かきを伝わる手ごたえを頼りに、力の入れ具合を調整して、耳あかをこそぎ落とす。 だけど、こっちの耳は水が入ってなかったようで、もともと耳の中も綺麗だったので、大した獲物も取れず仕舞いだった。 最後に耳かきの綿の部分で耳の中を掃除して終了だ。 「よーし、これで終わりっと」 おや?なんだかさっきから日向ちゃんの反応がねえな。 姿勢を崩さないよう、後ろに退けぞって顔を覗き込むと、日向ちゃんはすうすうと寝息を立てて眠っていた。 そういえばプールに行ってたんだもんな。泳いだ後って、なんであんなに眠くなるんだろう。 それに加え、俺の耳かきが日向ちゃんの眠気を増幅させたのかもしれない。 何だかんだで俺の耳かきテクもなかなかのモンだな、ふっふっふ……、と妙な達成感でニヤつく俺であった。 964 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:48:54.48 ID:0kkrz6kAo そんな俺がニヤけ面のまま、ふと視線を上げると、 買い物袋をぶら下げて廊下からこちらに冷ややかな視線を向けている黒猫と目が合った。 「うおっ! お前いつの間に帰ってたんだよ!?」 「……いま帰ってきたところだけど……、随分楽しそうね、先輩。これは一体どういう状況かしら?」 そこで俺はハッと我に返った。 オヤスミ中の少女を膝に乗せ、いやらしい笑みを浮かべる男の姿は、端から見りゃあ充分ヤバい光景だろう。 「待て待て!変な勘違いをするんじゃねえ」 己を客観視し、慌てて否定する俺。 そんなやり取りをしていると、膝の上の日向ちゃんが目を覚ました。 「あれ、ルリ姉帰ってたんだ? ふぁ~あ」 「あなたも男の膝枕で何を……」 「ん~?高坂くんにいっぱい気持ちいいコトしてもらって、ついつい居眠りしちゃったんだよー」 うおおおおおおおおおい!!日向ちゃん!!! それはさすがにわざと言ってるだろ!? 日向ちゃんはもう一度大きなあくびをすると、また俺の膝に頭を乗せて、むにゃむにゃと眠りの体勢へ。 おそるおそる黒猫の方を見ると、黒猫は絶句し、わなわなと肩を震わせている。 うん、俺死んだね。 965 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:51:25.10 ID:0kkrz6kAo その後、必死の弁明で黒猫の誤解を解いて、正座1時間の刑で勘弁してもらった俺は、足の痺れに苦しみながらも、なんとか生き長らえたことに安堵していた。 ま、まさか耳かきごときでこんな事態を招こうとはな…… そんな俺に対し、黒猫は例の黒いノートと耳かきを手に、ある提案をしてきた。 「ねぇ先輩、……デスティニー・レコードへの追記は、今からでも認めてもらえるかしら?」 おわり &br()
957 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:32:01.55 ID:0kkrz6kAo 夏休みのある日の午後―― いつものように黒猫の家を訪れた俺は、五更家の居間で一人、ぼんやりテレビを眺めていた。 なんで彼女の家に来てるのに一人なのかって? 黒猫の奴は、買い物があるとかで外に出てったっきり。俺はいつもの放置プレイを頂戴してるってわけだ。 ……薄々感じてはいたけど、なんか彼氏の扱いが悪くねぇか? あいつと付き合い始めたばかりの頃は、こういうシチュエーションに緊張して、実に落ち着かない気分になったもんだけど、もう今ではすっかり慣れちまったよ。ハァ…… いいや、だけど逆にさ、お客扱いされてないことが、今の俺達の親密ぶりを表しているとも言えるよな? 気を許しているからこそのこの処遇なんだよ、きっと。 そう考えるだけで、陰鬱な気分はどこへやら。自然と頬が緩くなってしまうんだから、俺の色ボケぶりも堂に入ったものだ。 と、独りでニヤついていると、玄関の方から戸がガラガラと開く音が聞こえてきた。 黒猫が帰ってきたのかと思い、居間の出入り口に視線を移すと、そこに姿を見せたのは五更家の次女日向ちゃんだった。 「あーっ、高坂くんだ」 「よう、おじゃましてるぜ」 日向ちゃんはプールの帰りらしく、ビーチバッグをぶら下げ、おさげの髪はほんのり湿って見えた。 「あれぇ~?ルリ姉はいないの?」 「ああ、買い物に行っちまったぜ」 「ふ~~ん。なんかさー……高坂くんって、いつもいつも放置されてるよねぇ……」 やめてっ!そんな目で見ないで! 小学5年生から向けられた哀れみの視線に、さっきまでのポジティブシンキングは消え去り、俺はがっくりとうな垂れた。 そんな俺の心の動きを察知してか、うひひ~と意地悪な笑みを寄越す日向ちゃん。 こういうところは黒猫にそっくりだ。 958 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:33:13.03 ID:0kkrz6kAo 「まぁまぁ、ルリ姉が帰ってくるまで、あたしが相手してあげるからさっ」 「ははは……ありがとよ……」 今は日向ちゃんのその優しさが切ないぜ…… ため息を吐きつつ俺が顔を上げると、日向ちゃんは左耳に小指を突っ込んでモゾモゾしていた。 右手には……綿棒が握られている。 「ん?耳どうかした?」 「えっとね、今日プールで泳いだから、なんか水が耳の中に入っちゃって……ううう、むずがゆい~」 「その綿棒でほじくったらいいんじゃねえの?」 「あ、うん。そうなんだけどー……」 そう言うと、日向ちゃんは左手に綿棒を持ち、耳の穴に近づける。 だけど、その動きは妙~にゆっくりで慎重な上に、小刻みに手が震えていて、いかにも危なっかしい感じだった。 んん~?これは…… 「……日向ちゃん、もしかして自分で耳かきができないの?」 「あーっ!高坂くん、いま馬鹿にしたでしょー!?」 日向ちゃんは顔を真っ赤にし、こちらを指差して抗議の声を上げた。 「いや、別に馬鹿にはしてないけどさ。耳に綿棒突っ込んで動かすだけじゃねえか」 「……だって、自分からは見えない耳の穴に、手探りで綿棒入れるのって……なんか怖いんだもん……」 「そうかぁぁ?」 「もし手が滑ってうっかり奥まで挿しちゃったら大変だよぉー?!」 うーむ、こういうところはさすがにマセてても小学5年生。 日向ちゃんは、また耳に小指を突っ込んで悶えている。 「ううう、かゆいぃ~~」 自分で耳かきができない小学5年生の妹。これがエロゲなら、桐乃が全力で食いつくキャラ設定だろう。 「……じゃあ、まぁ、しょうがないよな」 俺は誰に言い訳するわけでもなくそう呟くと、この場の流れに身を任せた。 959 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:35:55.41 ID:0kkrz6kAo そして今、俺の膝の上には、日向ちゃんの頭が乗っている―― まぁ待て、お前ら。まずは落ち着け。ほら、素数を数えるんだ。 小学生の女の子を膝に乗せて耳掃除だなんて、その道の人達にとってはたまらないシチュエーションだよな。 桐乃の奴なら盛大に発狂した挙句、萌え死んでるかもしれない。 「高坂くーん、なにぶつぶつ言ってんの? 早くしてよー」 おっと、どうやら俺の心の声はちょっぴり漏れ出てしまっていたようだ。危ねぇ。 それにしても、膝に感じる温かな重みと、かすかに俺の腹に触れるおさげ髪の感触が実に心地いい。 一応言っておくけど、俺はそっちの方面の属性はまったく持ち合わせてないのであしからず。 俺は日向ちゃんの横髪を人差し指でひょいと耳に掛けて、耳孔の入り口に綿棒を軽く触れさせた。 「ひゃん!」 「お、おい、変な声出すなって」 「だって高坂くんがくすぐったくするからー」 普通にしてるつもりだけど……そもそも俺は人の耳掃除をしたことなんて無いので、どうにも勝手がわかんねぇ。 とりあえず俺は、耳の淵に沿ってやさしく綿棒を這わせた。 960 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:36:42.68 ID:0kkrz6kAo 一通り耳の外側を掃除すると、かすかに耳の淵に残っていた水分が綿棒を湿らせる。 まぁ、外側はそんなに汚れが溜まるところでもないし、こんなもんかな。 そんなことを思ってると、日向ちゃんから催促の声が飛んだ。 「高坂くーん、はやく耳の中をやってよー……むずむずするよぉ」 そうだった、メインはそっちだ。 俺は綿棒をひっくり返し、反対側を耳孔に近づける。 「なんかさ、日向ちゃんじゃないけど、人の耳に突っ込むのは結構おっかねぇな。自分のなら何ともないけど……」 「ええー、いまさらそんな事言うの無しっしょー!?」 「分かってるって。――じゃあ行くぞ」 「ほらぁ、早く入れてってばー! おかしくなっちゃうよぉ」 だから変な声を出すなってば。 俺は綿棒の頭の部分がちょうど耳の穴に隠れるぐらいまで入れて、耳孔の壁に押し付け軽くこする。 すると一瞬、膝の上の日向ちゃんの頭に力が入った。 「おっ、この辺か?」 「うひいいい~、気持ちいぃぃ。でもね、かゆいのはもうちょっと奥の方かな」 もっと奥か…… 961 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:38:38.27 ID:0kkrz6kAo 俺は慎重に綿棒を奥に進めると、耳の穴の壁に沿って綿棒を動かした。 綿棒の柄が少しずつ耳の中に隠れていく、が、他人の耳掃除に慣れてない俺にはどこまで深く入れていいのか分からない。 不安になった俺は、綿棒を握る手を止めてしまう。 「案外、難しいなこれ……」 そんな俺に、日向ちゃんは非難の声を上げた。 「ガツッとやっちゃってよ。ったく、高坂くんって結構ビビりだよねー。頼りないなぁー」 い、言ってくれるじゃんよ……! お兄さんちょっとカチンときちゃったからね! 俺は綿棒を耳から抜くと、再び耳の外側をチマチマと擦り始めた。 「えっ、えっ? なんでまた外を……耳の中をやってってばー」 かゆみのポイントまであと少しに迫りながら、まさかの撤退に慌てる日向ちゃん。 俺は精一杯の笑顔を作り、わざとらしい棒読み口調で言った。 「あー、でも俺ってビビりだからなぁー。耳の奥はやっぱ無理かもしれないなー」 「えっ、さっきのナシ! 高坂くんはビビリじゃないからさ! ねっ?」 俺の意図に気づいて更に慌てる日向ちゃん。 やばい、これは可愛い。うっかりおかしな方面に目覚めてしまいそうじゃないか…… 962 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:43:36.01 ID:0kkrz6kAo 調子に乗った俺は、日向ちゃんに意地悪したい衝動に駆られてしまった。 「んー、じゃあ、『ビビリじゃないイケメンの京介お兄ちゃん、お願いだから耳の中を掃除してっ』って  可愛く言ってくれたら考えようかなー」 ふふふ、我ながら嫌らしい提案だぜ! そんな俺の意地悪に、日向ちゃんが恥ずかしがって顔を赤らめる――って展開を期待したのだけど、実際には日向ちゃんは「ぶっ!」と吹き出していた。 「イケメンってwww高坂くん言うねーwwww」 「……っ!」 草生やしまくりの思わぬ反応に、逆にたじろぐ俺。 日向ちゃんはケタケタと笑っている。 「そんなの、いくらでも言ってあげるよー。イケメンのお・に・い・ちゃ・ん」 かあっと顔が熱くなるのを感じ、俺はまんまと自爆してしまったことを察知した。 いつもツンツンしてる黒猫や桐乃とは違い、天真爛漫な日向ちゃんにこういう意地悪は通用しないようだ。 な、なんという不覚…… 「ビビりじゃないイケメンの京介お兄ちゃん、お願いだから――」 「ま、参った!俺の負けだ!」 ダメだ、この子には勝てねぇ…… 素直に負けを認めた俺は、再び綿棒を日向ちゃんの耳に挿し込み、耳の壁に沿って奥に進める。 「んじゃ、痛かったらすぐに言ってくれよ」 「うん、大丈夫……って、おおおお!きたきたきたー!」 どうやらいきなり金脈を掘り当てたらしく、日向ちゃんは身体をわずかに仰け反らせて歓喜の雄叫びを上げた。 俺はそのポイントを逃さず、綿棒を左右に往復させて擦る。 「あぁぁ……そこそこ!気持ちいいぃぃぃ」 散々待ちかねていたせいもあるのだろう、日向ちゃんはとろんとした瞳で悦楽に浸っている。 俺はさらにその周囲を綿棒で這わせて、なんとか耳掃除を完遂した。 963 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:46:14.60 ID:0kkrz6kAo とはいっても、まだ片側だけだ。 俺は日向ちゃんを逆向きにさせると、今度は綿棒ではなく耳かきで反対側の耳掃除を始めた。 「はぁー、極楽極楽ぅー」 最初はおぼつかなかった耳掃除だったけど、やってるうちに徐々に要領を掴み、日向ちゃんも満足してくれてるようだ。 俺は耳かきの匙の部分で耳の壁を擦り、少しずつ奥に進んでいく。 耳かきを伝わる手ごたえを頼りに、力の入れ具合を調整して、耳あかをこそぎ落とす。 だけど、こっちの耳は水が入ってなかったようで、もともと耳の中も綺麗だったので、大した獲物も取れず仕舞いだった。 最後に耳かきの綿の部分で耳の中を掃除して終了だ。 「よーし、これで終わりっと」 おや?なんだかさっきから日向ちゃんの反応がねえな。 姿勢を崩さないよう、後ろに退けぞって顔を覗き込むと、日向ちゃんはすうすうと寝息を立てて眠っていた。 そういえばプールに行ってたんだもんな。泳いだ後って、なんであんなに眠くなるんだろう。 それに加え、俺の耳かきが日向ちゃんの眠気を増幅させたのかもしれない。 何だかんだで俺の耳かきテクもなかなかのモンだな、ふっふっふ……、と妙な達成感でニヤつく俺であった。 964 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:48:54.48 ID:0kkrz6kAo そんな俺がニヤけ面のまま、ふと視線を上げると、 買い物袋をぶら下げて廊下からこちらに冷ややかな視線を向けている黒猫と目が合った。 「うおっ! お前いつの間に帰ってたんだよ!?」 「……いま帰ってきたところだけど……、随分楽しそうね、先輩。これは一体どういう状況かしら?」 そこで俺はハッと我に返った。 オヤスミ中の少女を膝に乗せ、いやらしい笑みを浮かべる男の姿は、端から見りゃあ充分ヤバい光景だろう。 「待て待て!変な勘違いをするんじゃねえ」 己を客観視し、慌てて否定する俺。 そんなやり取りをしていると、膝の上の日向ちゃんが目を覚ました。 「あれ、ルリ姉帰ってたんだ? ふぁ~あ」 「あなたも男の膝枕で何を……」 「ん~?高坂くんにいっぱい気持ちいいコトしてもらって、ついつい居眠りしちゃったんだよー」 うおおおおおおおおおい!!日向ちゃん!!! それはさすがにわざと言ってるだろ!? 日向ちゃんはもう一度大きなあくびをすると、また俺の膝に頭を乗せて、むにゃむにゃと眠りの体勢へ。 おそるおそる黒猫の方を見ると、黒猫は絶句し、わなわなと肩を震わせている。 うん、俺死んだね。 965 &font(b,#008000){◆kuVWl/Rxus}[sage saga] 投稿日:2011/06/13(月) 23:51:25.10 ID:0kkrz6kAo その後、必死の弁明で黒猫の誤解を解いて、正座1時間の刑で勘弁してもらった俺は、足の痺れに苦しみながらも、なんとか生き長らえたことに安堵していた。 ま、まさか耳かきごときでこんな事態を招こうとはな…… そんな俺に対し、黒猫は例の黒いノートと耳かきを手に、ある提案をしてきた。 「ねぇ先輩、……デスティニー・レコードへの追記は、今からでも認めてもらえるかしら?」 おわり &br()

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