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717 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/09/30(金) 00:24:25.81 ID:6bbKYh6lo [1/2]
秋分の日を過ぎたかと思えば、めっきり朝が冷え込んできたことに驚かされる。
ここへきて振り返れば、俺の人生の中で今年の夏ほど想い出に残る夏もあるまい。
黒猫に振られたこと……今更後悔してもしょうがねえ。
あやせと中途半端な別れ方をしたこと……何とかしなくちゃいけねえ。
冷静に考えれば悪いのは俺のほうだ。
生まれて初めて彼女が出来たからって舞い上がっちまったからな。
そんな俺の気持ちが通じたのか、あやせも最近ようやく俺と口を利いてくれるようになった。
つい先日も俺があいつの携帯に掛けると、なんと20コール目で出てくれた。
「ようっ、20コールなんて、随分と早く出てくれるようになったじゃねぇか。
昨日とおとといは30コール目だったし、その前の日は……3分ぐらいだっけか?」
『黙れ変態っ! おまえの声を聞くと耳が腐る!』
「まぁそう言うなって。俺はあやせの声を聞くたびに自分の浅はかさに嫌気が差すんだよ。
あの時の俺はどうかしてたんだって、もの凄ぇー後悔してんだからさぁ……」
携帯の向こうで、あやせはしばらく考え込むように押し黙った。
俺の本当の気持ちを伝えるために出来ること、それは俺も只黙って待つだけだった。
『……嘘じゃないんでしょうね。本当に後悔してるんですか?」
「神に誓って――いや、あやせに誓って嘘はつかねえよ。
おまえが俺の顔なんか見たくもねぇって気持ちは俺も分かるし、
俺だって会ってくれなんて言えた義理じゃないしな」
『……別に、お兄さんに会いたくないなんて、わたしは一言も言ってませんけど」
「じゃ、じゃあ俺と会ってもいいっていうのか?」
『会って差し上げてもいいですよ、でも……』
「でも?」
『わたしがこれから言うクイズに答えられたら……
そうですね、お兄さんとデートしてあげてもいいですよ』
718 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/09/30(金) 00:25:05.81 ID:6bbKYh6lo [2/2]
あやせは悪戯っぽい声で『うふふっ』と笑い、さも楽しそうに俺にクイズを出してきた。
クイズに正解さえすりゃあ、晴れてあやせとのデートが実現するってもんだ。
間違うわけにはいかねえ。
俺は耳を研ぎ澄まし、全神経をあやせの声に集中した。
『いいですか、お兄さん。
朝は四本足、昼は二本足、なのに夜になると三本足……』
どんなクイズを出してくるのかと思えば……
はっ、あまりにも有名なクイズじゃねぇか、簡単、簡単。
「あー、俺、もう分かっちまった、答えは――」
『そして夜中は五本足、未明に六本足、日の出の頃は七本足、顔を洗って八本足……』
「……なぁ、あやせ……俺とデートする気なんか初めっからねぇだろ」
『朝御飯を食べると九本足、学校へ行く途中に十本足……』
(完)