私の気持ちが兄貴を好きなわけがない 改:12スレ目79

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79 名前: ◆k4qYXRI5uY[sage] 投稿日:2011/12/21(水) 19:22:46.20 ID:JmJNEyhS0 [8/12] 私の気持ちが兄貴を好きなわけがない 改 はぁ、暇だなー あたしはそう呟くと何もする事が無くバタンと机に突っ伏した。 ただパソコンの画面を見て好きなカップリングの小説を探すだけ。エロゲも全部やっちゃったし、ラノベも漫画もアニメも全部一通り見てしまったのでそれしかやる事が無いのだ。 マウスのクリック音とキーボードの打鍵音、その二つの無機質な音が部屋にやけに大きく響く。 早く兄貴帰ってこないかなーー そんな考えが頭によぎるが自覚した瞬間、ちょっと頬を赤く染めて、頭を振ってその考えをかき消した。どうやら暇すぎて頭がまわらなくなってきてるらしい。 やがてパソコンも飽きて電源をおとした。 コトンと音をたてて私は顔を机にピッタリとつける 机はひんやりしててとても気持ちが良かった。 「気持ちいぃ」 思わずそんな声が漏れてしまう。 なんかしなきゃ寝ちゃいそう………。 閉じられそうになった瞼をムリヤリ開いて、何か気を紛らわせようとして、ふいに机の上に置かれていた白紙とペンに目が行った。 どうせやる事など無いのだ。 あたしはペンを手に取り白紙を手元に持って来た。 何の気なしに適当にペンを走らせる。 紙の上には知らず知らずの内にこう書いてあった。 『兄貴 好き?』 何故なのかなんて分からなかった。ただ単に体が勝手に、というやつだ。 それを見た瞬間私の脳は一瞬フリーズしたかと思うとまた動き出し、混乱した な、な、な、何書いてんの!? あたし!! なんで兄貴なのよ!? あたしはすぐに消しゴムを取り出し、書かれている事を消した。 消された頃には私は運動をした訳でもないのに肩で息をしていた な、何動揺してんのよ!あたし! そ、そう!きっと今さっきのは何かの間違いよ!、なんか兄貴っていう文字って書きやすいし、うん、きっとそれが理由に違いないわ! ムリヤリそう決め付けると、頭を振って、ちょっとでも落ち着こうとする。 でも中々胸の動悸が治まる気配がない。どんだけ動揺してんのよあたし……、ていうか本当、何で『兄貴 好き?』なんて書いちゃったんだろう。どんだけ兄貴の事考えてんのよ、ボンヤリと書いただけで『兄貴 好き?』なんて言葉が出てくるのなんてよっぽどだ。 あたしは短く溜息をつくと、頭を冷やしにリビングに行こうと部屋を出た。息抜きに冷えた麦茶を飲みたい。 …だがそれがまずかったらしい。 あたしの家は自分の部屋からリビングに行くにはどうしても玄関の前を通らなくちゃならない、今回はそれが仇になった。 あたしが部屋を出てリビングの扉に手を掛けると、狙い済ましたかのように兄貴が玄関を開けて入ってきたのだ。 今さっきの事もあってかあたしの顔は一瞬で真っ赤になって、焦って兄貴のアソコに向かって思いっきり蹴りを入れてしまった。 我ながら照れ隠しでもやり過ぎだと思うのだが、これも体が勝手に…っていうやつだから仕方が無いという事にしておこう。 結果、兄貴は気絶してしまい。倒れて今私の前で寝ている。 さすがにそのままほっとく事はできないのでリビングのソファに寝かしてあげる。 80 名前: ◆k4qYXRI5uY[sage] 投稿日:2011/12/21(水) 19:23:26.02 ID:JmJNEyhS0 [9/12] 「う……ん」 兄貴は最初の苦悶の表情が嘘のように静かに眠っていた やっぱり……、以外とかっこいいよね、睫毛だって長いし、顔も意外と整っているし 私は思わず見惚れてしまった。今まで兄貴の顔をじっと見るなんて事は無かったため、兄貴の顔が意外と整っているなんて事を知る機会など無かったのだ。 こうやって見てみると、うん、やっぱり兄妹なんだなぁ。って思う。 地味に見えるのはあくまで地味な格好しかしないから。いわゆる光る原石という奴なのだろう、兄貴は。 そんなどうでも良い事を考えている自分に気ずく、すると私は兄貴の顔を憎らしげに見た。 あたしは兄貴の事でこんなに悶々とさせられるのに、兄貴の涼しげな寝顔を見てたらムカついてきたのだ。 なんでそんなに涼しげに寝てんのよ。 あんたは私の事どう思ってんのよ、どう見てんのよ。 なんで、そんなに優しいのよ、なんで……そんなに気になる様な事ばっかり言うのよ。 そんな兄貴に対する文句、小言があたしの中にあふれてくる。 そして何時の間にか、小言よりも兄貴の思い出が溢れてくる。 あたしの凡ミス、趣味がバレた時からの人生相談から始まる、兄貴の今までの、まぁ、格好良いんじゃない?……と思える姿。それに優しい、甘いような、そんな思い出すと胸がキュンとするような台詞。 そんな事を頬を火照らして思い返していた。 『別に?おかしくないんじゃねぇ?』 『お前がどんな趣味もってようが、俺は絶対バカにしたりしねえよ』 『桐乃―――俺に任せろ』 『…………何も言うな。………………お前はよく頑張ったよ』 言っていて恥ずかしくないんだろうか、と思う。けど、言われて嬉しかった、うん、やっぱり嬉しかった事だけは認める。 けどそんな事ばっかり言われて、いくら妹だからって、そんなの……気になるに決まってんじゃん。仕方無いでしょ、こんな気持ちになっちゃうのなんて、当たり前でしょ。 あたしは胸が熱くなるのを感じた。変だって事なんてとっくに分かってる。兄妹でこんなの変だってことはもう充分過ぎるぐらい分かっているのだ。 でも抑えられない、鼓動は勝手に早まるし、顔も勝手に赤くなる。 ……どうしてくれんのよ。あんたのせいでしょ? いつもみたいに何とか……してよ。 あたしは兄貴の顔をジッと見つめる。どこまでも整った顔。息遣いさえも優しく聞こえる。 すると、兄貴は行き成り苦しげに眉を顰めはじめた。身を捩ってまるで何かを探るように手が宙を掻く。 どうしたのだろうか? そう思っていると兄貴の手がいきなりあたしの腕を掴んできた。そのまままるで暖かい毛布でも見つけたかのように抱きしめられる。 兄貴は満足そうに笑みを浮かべた。 ビックリして言葉を無くす。 きっと今のあたしを他人が見たらさぞかし心配するだろう、「どうしたの? 風邪ひいてるの?」とか「どうしたの? 体調悪いの?」とか、そんな風に話しかけられるに違いない。だってあたしは今、多分信じられないほど顔が赤いだろうから。自分でも自覚出来るほど、顔が熱いのだ。 81 名前: ◆k4qYXRI5uY[sage] 投稿日:2011/12/21(水) 19:24:16.58 ID:JmJNEyhS0 [10/12] ちょ……!! 兄貴!? 顔をこれでもかというほど赤くして驚いていると、その寝言が突然あたしの耳に届いた。 「桐、乃………、今、度……は、なんだよー」 目を見開いて兄貴の言葉があたしの中でやまびこのように鳴り響いた。 その意味をゆっくりと理解し、吟味し、余韻をあじわうと、あたしは体の力を抜いた。 どうやらこのシスコン兄貴は夢の中でも私の世話を焼いているらしい。今頃夢の中のあたしは兄貴に迷惑をかけて、兄貴は嫌な顔をしながらもその迷惑につきあっているのだろう。 「ふふ……、このシスコン、あ、に、き!」 自然に笑みが零れてしまう、いや、これは笑みなんて良いものじゃないな。 白状すると、あたしは思い切りニヤけていた。これでもかというくらい、ニヤけていた。 ったく、このシスコン兄貴 しょうがないからもうちょっとだけ世話になってあげる。 あたしはちょっと背伸びをして、兄貴を起さないように体を捩った。そして………静かに兄貴のオデコにキスをした 「今回だけ、うん………今回だけ。ちょっとだけなら、いいでしょ? 兄貴」 そう静かに呟くと、あたしはこみ上げてくる気恥ずかしさを隠すことが出来ずに元の位置に戻る。 プシュ~と頭から湯気を出しながら兄貴の胸に顔をこすり付けると、その行動も恥ずかしくてうずくまってしまう。 あたしは結局その後も悶々と過ごし、無事に寝ることが出来たのは、それから何十分も後になってからなのだった。 82 名前: ◆k4qYXRI5uY[sage] 投稿日:2011/12/21(水) 19:25:16.63 ID:JmJNEyhS0 [11/12] 机の引き出しの奥。そこには今も大事にしまってある、紙がある。 そこには、あたしがだした質問に、あたしが答えた紙がある。 机の奥にしまっている紙にはこう書かれている。 『大好き』 それは無意識に書いてしまった、純粋な質問に対する、あたしの精一杯の答え。 きっと叶う事は無いのだろう。 けどやっぱり願ってしまう。 いつか兄貴とあたしの願いが重なりあう事を。 叶ったときにもう一度出そう、目一杯笑って取り出そう。 それまでは、悲しいけれど、ここで待ってもらおう。 取り出す日はいつなのか、何日後? 何年後? それとも、もうそんな機会は無いの? それは誰にも分からない。 だけど取り出せることを信じて、あたしはそっと目を閉じて、今日という日にさよならを告げたのだった。 fin 

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