無題:13スレ目62

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「ねー・・・あんたさ」 「んー?なんだ?」 カリカリと書き込む手を止めないまま俺は声だけで答えた。 夕食を終え戻ってきた自室の中、俺はあと僅かと迫った受験日に備えて最後の追い込みをかけていた。 『一緒に居ようよ』 「えーっとさ・・・んーと・・・」 「なんだー?随分と歯切れ悪りーな?」 一旦手を止めて俺は椅子ごと振り向いた。 「どうしたよ桐乃?」 キイッと背もたれに体重を預けながらみつめる先、妹様は俺のベッドにうつぶせになったまま枕に半分顔をうずめていた。 「うー・・・」 ・・・ホントに歯切れ悪いーな。 しかしここで『早くいえよ』などと言おうもんなら、『はぁ!?ちょっとくらい待てないの!?バカじゃん!?』とか罵倒されるのは目に見えてる。 ・・・やれやれ。大分妹様の扱いにも慣れちまったもんだぜ。 それから待つこと5分。 桐乃は不承不承といった体で聞いてきた。 「あんたさ・・・大学受かったらどーすんの?」 うおい。また抽象的な問いだな。 知らず俺はおうむ返しに聞き返す。 「どーするって・・・なにがだ?」 「だからー!」 案の定、キレた桐乃が大声をあげる。 予想通りッスね妹様。 「家から通うのか、それとも一人暮らしスンのかってこと!」 「あーそういう意味か」 相変わらず分かりづらい聞き方するよなお前。 などと考えていたら先手をとられた。 「相っ変わらず察し悪いよねあんた」 蔑んだようなジト目で見られる。 あんまりだろそれ。 「いやわかんねーよあの言い方じゃ!?お前の聞き方が曖昧過ぎんだよ!」 「はいはい人の所為人の所為。あんたって男らしくないよねー?」 「どの口が言うんですかねえ?お前なんかいつだって人の所為にしやがるじゃねーか!」 「だってあたし女だし」 「ぐっ!」 なんだその理由!? 理不尽だ・・・理不尽すぎる・・・。 「あーはいはい。察しが悪くてわるうござんしたね」 言い合ってもどうせ負けるのはこっちだ。 俺は早々に白旗をあげた。 「わかればよろしい」 桐乃は口をω←こんな風にしてドヤ顔で頷いている。 毎度のことながらムカつく顔だなおい。 「んで?どーすんの?」 「ん?ああ、つってもまずは大学受かんないと何とも言えないんだが・・・」 「は?あんた落ちる気でいんの?うーわー情けなー」 思いっきり引いた口調で言われた俺は、慌てて取り繕うように返す。 「そ、そんなつもりはねーよ!ただ物事には絶対ってのはないわけで・・・」 「落ちた時の言い訳とか、チョー情けないんですけど?やる前からネガティブに考えるとか誰得?俺は絶対に受かるってぐらい口にしてみなさいよヘタレ」 「くっ!」 一言ぐらい言い返してやりたいが・・・桐乃のいうことはまったくもってその通りなので返す言葉もない。 ましてやこの妹様はそれを身をもって実践してきているわけで、正直さっきの俺は自分でもカッコ悪かったとか思っちまう。 「あー・・・すまん。お前の言う通りだ。今から後ろ向きじゃ受かるもんも受かんないよな。ありがとうな、桐乃」 「わ、わかればいいのよ!」 素直に礼を言うと、桐乃は真っ赤になってそっぽを向いてしまう。 いつものやり取りに思わず笑いがこぼれた。 「・・・で?どうするつもりなの?」 「あ?うーん・・・正直第1志望に合格した場合、家から通うのは意外に大変な気がするな。だったら学校の近くにアパートでも借りて一人暮らしの方がいいかもな」 「ふ、ふーん」 なんだ?また歯切れ悪くなりやがった? 「でもよ、なんでそんなこと聞いてくんだ?」 「べ、別にあんたに関係ないでしょ」 「いやあるよ!?てか、俺以外に関係者居ないよ!?」 「うっさいな!」 「うっ・・・おまえさあ、言い返すにも程があんだろ?なんだよ『うっさいな』って?」 「う・・・うっさいからうっさいって・・・」 「あーはいはい。ならおとなしく勉強に戻りますよ。お前も大概に自分の部屋戻れよ」 「う・・・」 そう言って俺はまた参考書に向き直る。 ・・・最近分かったことだが、うちの妹様は、相手すればするほど饒舌になる。 反面、こちらがさっさと切り上げると・・・。 「え、えとね・・」 こうして自分から話しかけてくる。 どんだけ天邪鬼なんだよお前。 「その・・・きょ、京介が、その・・・ひ、一人暮らしするんなら・・・あ、あたしも・・・ついていっちゃおっかなー・・・なんて」 「はあっ!?」 「な、なによ?」 「お前・・・なに言ってんの?」 そう。ホントになに言ってんの、だ。 俺は今からほんの一か月前、受験勉強のため一人暮らしをさせられていた期間があった。 しかしそれは名目上受験の為だが、その実、急激に仲良くなり過ぎた俺たち兄妹の仲を、おふくろが勘ぐっての措置というものであった。 結局は笑い話に過ぎなかったのだが、それでもこのタイミングで俺と一緒に住むのはどんな藪蛇になるかわからない。 どこにも蛇など潜んでないとしてもだ。 「そんなこと、許されっこねーだろ?」 「わ、わかんないじゃん!お、お父さんに頼んでみるとか・・・」 「いやそれこそ無理に決まってんだろ。大体なんで一緒に住まなきゃなんないんだよ?」 「そ、それは・・・その・・・」 言いかけて黙ってしまう桐乃。 まったく何を言い出すかと思ったら・・・あ、まさか・・・。 「おい桐乃」 俺は思い至った理由に、内心でため息をついた。 「な、なに?」 「正直に答えろよ?」 「!!う・・・うん」 桐乃が少し身構える。 まったく困ったやつだ。 以前なら俺と一緒に住むなんて心から嫌だっただろうに、今となったらそれすら厭わないとは。 人間変われば変わるもんだぜ。 「お前俺と一緒に暮らしたい理由って、実は・・・」 「っ!!」 一瞬桐乃が息をのんだ。 「・・・ちょ、兄貴ストップ!」 「なんだよ今更?ここまで言わせて止めんなよ」 「や、だ、だっては、はっきり言われたらあたしの気持ちが・・・」 「わかるぜ桐乃。・・・俺だって同じ気持ちだからな・・・」 「・・・え?」 驚いたように動きを止める桐乃。 その目は信じられないものを見るように大きく見開かれている。 ったく。 お前の兄貴を舐めんなっての。 俺は一呼吸置くと、静かに微笑んだ。 「お前の気持ちはよくわかったって言ってんだよ」 「!?そ、そそそそそれって・・・!」 「ああ」 俺は一つ頷くと、ゆっくりと桐乃の頭に手を乗せた。 「俺も同じ気持ちだ」 「~~~~~~っ!?」 桐乃は顔を真っ赤にさせて二の句が継げなくなっている。 まあそうだろうな。 自分の目論見すべてを見抜かれちまったんだから。 「桐乃?」 「はははひゃい!?」 「・・・一緒に暮らすか?」 「っ!!!!」 もはや湯気でも出しそうなほど真っ赤になっている桐乃に笑いかける。 そんなに嬉しがられたらこっちまで嬉しくなるじゃないか。 「親父には俺から頼んでみる。俺の監視役って名目にすれば、納得してくれるだろうよ」 俺は先の一人暮らしで親父に書かされた、取得物報告書を思い浮かべた。 あの不本意ながらヒモみたいな取得物の多さを鑑みれば、親父も俺に監視役は必要だと思うだろう。 まったくもって冤罪ですけどね! まあいいさ。 それで桐乃が喜ぶ状況が作れるなら、甘んじてヒモの烙印も背負うさ。 「ああああ兄貴?」 「ん?」 「ほ・・・本当に・・・いいの?」 見ると桐乃は両手の指を絡ませて、所謂もじもじと言った感じで俺を上目遣いで見上げていた。 俺は軽くため息をつくと、またクシャリと桐乃の髪を撫でてやった。 「ああ」 「!!あ、ありがと・・・」 そう言って笑った桐乃の笑顔は、本当に嬉しそうで、俺はこう思ったね ―――――――俺の妹がこんなに可愛いわけがない・・・ってな。 その後、見事第一志望に合格した俺は、一人暮らしを始める旨を親父に伝えた。 勿論、桐乃が監視役でくることも。 案外簡単に親父の許しは取れて、俺達は今引っ越しの準備をしている。 もっともいくつかの条件は付けられたのだが。 一つ、桐乃は週に2日は実家に帰ってくること。 一つ、部屋は親父が決めたところにすること。 一つ、家賃は基本親持ちだが、生活費は自分で工面すること(仕送り含む) まあ実際これくらいならなんの制約でもない。 むしろ部屋を探す手間が省けて大助かりだ。 「兄貴ー、コレクション持ってっていい?」 「週に何日かは実家に戻るんだから、そのまま隠しとけ」 「えー?」 不満そうな声を上げながら、桐乃が渋々コレクションを押し入れへとしまいに行く。 「でもゲームは持ってっていいでしょ?」 「俺のPCにインストールしとけ。こないだ4Gの外付け買ったからそっちに」 極力持っていくものは少なくしておきたい。 そうでなくても桐乃の衣服だけですでにキャパオーバーなんだから。 ※ 「しかしお前も物好きだよなあ」 仕度も粗方片付いて、今は俺の部屋で寛いでいる。 仕事上がりの親父が車を回してくれれば、新生活の第一歩だ。 「え?な、なにが?」 缶コーヒーを飲みながらベッドに腰掛けていた桐乃が俺の言葉に反応する。 「ああ。俺と一緒に住むなんてさ、物好きだって言ったの」 「そ、そんなこと・・・」 言葉を濁しつつ、缶コーヒーへとまた向かう桐乃。 その顔が赤いのは照れくささと感謝かもしれない。 「ま、気持ちはわかるよ」 俺はこの間と同じことを言って、いすの背もたれに体重をかけた。 桐乃はチラチラとこちらを見ながらはにかむように笑っている。 まったく、そんなに嬉しいかね? ま、嬉しいか。 「門限のない生活ってのは嬉しいよな」 「・・・・・・・・え?」 あれ? 一瞬桐乃の動きが止まったぞ? 「い・・・今、なんて・・・?」 「え?」 どうしたんだ? 桐乃がプルプルと震えてるぞ? 「いや、俺と暮らしたいってのはあれだろ?門限が実家だと早すぎるからって」 「・・・」 「わかるぜ。確かに少しばかり家の門限はきついもんな」 「・・・」 「まあでも、俺だって管理責任があるからな。家ほど厳しくなくても、せめて10時までには帰ってきてくれよな?」 「・・・」 「・・・おい桐乃?どうした?ちゃんと聞いてるのか?」 「・・・聞いてるわよ・・・」 「そか。ならいい・・・」 ブチッ。 「いいわけあるかこの鈍感勘違いヤローがっ!!」 「うぐお!?」 突然繰り出された桐乃のハイキックは、見事に俺のこめかみをとらえて・・・俺の意識は暗闇の中へ。 気が付けば見慣れない天井だったわけで・・・。 こうして俺たちの二人暮らしは、喧騒とともに幕を上げたのだった。

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