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86 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:54:36.87 ID:BFbVwFUo
俺と黒猫が恋人関係になってから一週間が経過した。
まぁ、恋人関係と言っても実際の所、とりたてて変化があったわけでもないんだけどね。
変わったことと言えば、夏休み中の部活に一緒に行くようになったことくらいだよ。
「さて、ゲームコンテストの第二弾が近づいてきたわけだが、お前らはどうするんだ?」
「どういう意味ですか?当然参加はしますけど」
部長の問いに瀬菜が答える。
「いや、そういう意味じゃない。五更と赤城は今回も一緒に作るのかと思ってよ」
「そういえば、前回は二人に仲良くなってもらうのが目的でしたね」
「おうよ。で、今やその目的は果たしたわけだから今回は別々に製作してもいいぜって話だ」
そう、紆余曲折を経て今や二人は友人と呼べる関係になっていた。
あの時、黒猫は自分の力で友達を作ることができた。
俺が何とかしてやらないと、と思っていた自分が恥ずかしい。
「…あなたは今回もガチホモゲーを作る気なのかしら」
「当然じゃないですか!むしろそれ以外に何を作るんです?」
自慢げに胸を張る瀬菜。
87 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:55:32.47 ID:BFbVwFUo
今は夏休み期間ということもあって部室には、俺、黒猫、瀬菜、部長、真壁君、の五人しかいない。
前回のゲームコンテスト以来、この五人の前では瀬菜は自分の変態趣味を隠そうとしない。
…もうちょっと自重した方がいいんじゃねえの?女の子として。
「……ゲー研部員をモデルにするのだけはもう二度とやめてくれよ」
「え~、なんでですか。せっかくいいアイディア思いついたのに……」
俺が念のために釘をさしておくと、案の定その予定だったようで、口をすぼませて拗ねる瀬菜。
ここだけ見ると実にかわいい。
かわいいが、その正体はガチホモ上等の腐女子である。
俺がうんざりしていると、黒猫が意外な言葉を発した。
「なら、私は別のものを作らせてもらうわ」
「えっ?」
思わずそう口に出してしまった。
前回コンテストが終わった後に、「今度は最初から一緒に作る」みたいなことを言っていたので、てっきり今回もそうだと思い込んでいた。
「えっ?どうしてですか?以前はライトなBLなら問題ないって言ってたじゃないですか」
それは瀬菜も同じだったようで、こいつも少し困惑しているようだ。
今度こそ一緒に作れると思って期待してたんだろうな。
「BLが駄目だというわけではないの。どうしても作ってみたいものができたのよ」
「じゃあそれを一緒に作ればいいじゃないんですか?」
「…駄目なのよ。そのジャンルはBLとは決して相容れないものだから、あなたがBLを捨てられない以上、一緒に作ることはかなわないわ」
黒猫だって、瀬菜と一緒にゲームを作るのを楽しみにしてたはずだ。
それに向けて準備だってしていたことも知っている。
それを覆してまで黒猫が作りたくなったゲームってどんなジャンルなんだろう。
88 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:56:14.25 ID:BFbVwFUo
「その五更さんが作りたいジャンルって何なんですか?」
「……恋愛よ」
部活を終え、黒猫と帰宅する最中で俺はこう切り出した。
「しかし、黒猫が恋愛ゲームとは思わなかったぜ」
「…悪かったわね」
そう言って、ふてくされる黒猫。
瀬菜とはまた違ったかわいさを持っている。
「悪い、そういう意味で言ったんじゃないんだ。何で恋愛を選んだのかと思ってよ。まさか桐乃の影響か?」
俺の妹、桐乃は妹もののエロゲをガンガンやるという筋金入りの変態である。
黒猫も最近は妙に桐乃と仲がいいし、悪い意味で影響を受けてしまっているのかもしれない。
「違うわ」
「じゃあ一体どうしたんだ?」
「…秘密よ」
そうですか。
黒猫の真意は相変わらずわかりづらい。
「先輩も今回は手伝ってくれなくていいわ」
「えっ?」
黒猫からの予期せぬ言葉に素っ頓狂な声をあげてしまう。
まさか、前回の俺の役に立たなさっぷりを見て見切をつけられたのか!?
やべぇ、ちょっと悲しい……しかし事実だけに反論もできない。
「…何を泣きそうになっているの。先輩も受験生なのだから、私に構ってばかりもいられないでしょう?これが原因で落ちてしまっては困るもの」
89 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:57:24.24 ID:BFbVwFUo
そういうことか。
驚かせるなよ、あまりのショックで泣きそうになっちゃっただろ。
黒猫は、初めて会った時こそヘンテコなやつだと思ったが、桐乃や沙織と遊ぶうちにこいつの本性というものが次第にわかってきた。
こいつの言葉に見え隠れする優しさに気づいてからは、おかしな言動も全てかわいらしく思えてくるから不思議なものだ。
さっきみたいに俺が気づけなかった場合は別として。
「それは気にすんなよ。これでも頑張ってて、今の所余裕をもって勉強できてるからさ」
「…いいの?」
「おう」
瀬菜じゃあないが、俺は胸を張ってそう言った。
夏休みの頭から麻奈実にも手伝ってもらってしっかり勉強したおかげで、今のところは合格圏内にいると言っていい。
「…じゃあ今度はうちで作業する?」
「えっ?」
またしても素っ頓狂な声をあげる俺。
え?あれ?まさか俺誘われてる?
「…いつも先輩の家にお邪魔してばかりでは悪いからよ。だから早くその欲にまみれた顔をなんとかなさい」
…なんで俺の心は黒猫に筒抜けなの?そんなひどい顔してたかな…。
まぁ、黒猫の家がどんなのかも気になるし一度お邪魔させてもらおうかな。
「わかった。そういうことならお邪魔させてもらうよ」
90 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:58:00.67 ID:BFbVwFUo
翌日、俺は早速黒猫の家にお邪魔することにした。
学校で作業するのもいいけど、たまには二人きりになりたかったし、なにより黒猫の家がどんなのか気になってたからだ。
「ここよ」
正直に言うと、悪魔城みたいなところをイメージしていたんだが、実際は至って普通の日本家屋だった。
「……ち○まる子ちゃん家そっくりだな」
「……否定はしないわ」
黒猫の後に続くようにして、黒猫宅にお邪魔する。
玄関が開く音を聞きつけたのか家の奥から小さい子供が駆け寄ってくる。
「姉さまお帰りなさい!」
「ただいま」
どうやら黒猫の妹らしい。
そう言えば、いつだったか「妹がいる」って言ってたっけ。
黒猫に似ててかわいいじゃないか。
なんとなく黒猫の小さいころを想像してしまい、思わず顔がゆるんでしまう。
決してロリコン的な意味ではないからな。勘違いすんなよ?
「誰さまですか?」
俺が想像にふけっていると黒猫の妹から不意に声をかけられた。
「え?あぁ、俺は高坂京介。よろしくな」
「…私の学校の先輩よ。今日はこの人に遊んでもらいなさい」
あれ?今日は一緒に作業するんじゃなかったんですか、黒猫さん。
怪訝な顔で俺が黒猫を見やると、黒猫は呆れたような顔でこう返した。
「まだ作り始めてすらいないのだから、デバックしかできないあなたに出番があるわけないでしょう?」
くっ…なんて辛辣なお言葉。
おまえ、付き合いだしてからなんか冷たくなってねえか?
その癖、桐乃とはどんどん仲良くなっていってるみたいだし…それだけにこの扱いは心にくるものがある。
俺なんかしたかな?
91 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:58:33.20 ID:BFbVwFUo
「二人は『おとことおんなのカンケイ』なのですか?」
突然とんでもないセリフを吐く黒猫の妹。
「は、はぁ!?」
「な、何を言ってるの!?」
どこで覚えたんだ、そんな言葉。
さすが黒猫の妹といったところか…。
「違うわ。…なんで私がこんないやらしい雄とそんな関係にならなければならないの」
ひでぇ…仮にも俺って彼氏だよね?
なにもそこまで言うことないんじゃないかな?
俺、泣いてもいいよね?
俺が涙目になっているのを見たからか、言い過ぎたと後悔したのか、遅まきながら黒猫がフォローを入れてくれる。
「あ、でも…い、一応付き合ってはいるのよ?こんなのでも…その…優しい人だから」
黒猫は自分の言葉で真っ赤になってしまってい、俺も黒猫につられ真っ赤になってしまう。
そんな俺達に黒猫の妹がさらに追い打ちをかけてくる。
「じゃあ、ねえさまとケッコンするのですか?」
なんてことを聞いてくるんだ!
とても純粋な目をしているせいかどうにもごまかしにくい。
案の定黒猫も同じだったようで、口をパクパクと開閉しているだけで何も言葉を発することができないようだ。
「あ~、そ、それより今日は何して遊ぶんだ?」
「じゃあ、メルルごっこしましょう」
俺がなんとかごまかすことに成功すると、黒猫の妹は俺の手を引き居間へと連れていく。
妹は黒猫と違ってだいぶ人懐っこい性格みたいだな。
92 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:59:00.18 ID:BFbVwFUo
なんで俺は彼女の家まで来てメルルごっこをしているんだろう…。
キャラを理解しているせいかできてしまうのが悲しい。
しかもセリフ等もしっかり覚えてしまっていることが悲しさに拍車をかけている。
「めておいんぱくと~!」
無尽蔵な子供の体力の前に敗北した俺は、一通り名シーンを再現し終えたところでギブアップしてしまう。
「す、すまん。ちょっと休憩させてくれ」
「え~」
俺も小さい子の扱いに慣れているとはいえ超大変だ。
まさか黒猫って毎日こんなことやってるの?あいつすげえな。
恐らく普段はもっと体力を使わない方法で遊んでるんだろうけど。
体力の限界が近づいてきた俺は、黒猫妹に大人しくしててもらう遊び方を黒猫に尋ねようと思い黒猫に目線を送る。
しかし、なにやら作業に集中しているようでこちらには気づかないようだ。
「もっと遊びましょう!」
こうしている間にも黒猫妹は遊ぼうとせがんでくる。
しかし、今は少しでも休憩時間を稼ぎ、俺の体力を回復させねばならない。
こうなったら仕方ない。黒猫もまさか聞いちゃいないだろう。
念のために黒猫とは反対の方を向いてヒソヒソと耳打ちをする。
93 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 16:01:56.30 ID:BFbVwFUo
「そ、そうだ。さっき俺達が結婚するのかどうかって聞いてたよな?」
「はい!」
「そのことなんだが…実は俺は結婚しようと思ってるんだ。もちろんお前の姉ちゃんがうんと言ってくれたらだけどな」
幼い子供相手にこんな話題を出して時間稼ぎするのもどうかと思うが背に腹は代えられない。
「わぁ、ほんとですか?」
「おう、ほんとだ」
それに…嘘は言ってないしね。
「姉さま!この人が姉さまとケッコンしたいそうです!!」
ちょ、ちょっと!?
大声でそんなことを叫ぶんじゃない!!
おそるおそる黒猫の方を振り返ると黒猫が目を見開いた格好のまま固まってこちらを見ていた。
「ち、違うんだ…」
いつぞやのメイドのコスプレした黒猫と同じセリフを吐く俺。
あの時の黒猫のセリフの意味がようやくわかったぜ。
「じゃあ兄さまですね!兄さま、またいっしょに遊びましょう」
俺達の気持ちを知ってか知らずか、黒猫の妹は天真爛漫な笑顔を向けてくる。
「……ふっ、そうだな。今度は何して遊ぶんだ?」
この子からはそのうち義兄さまと呼ばれることになるんろうけど、流石にそれは気が早いかな?
おわり
86 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:54:36.87 ID:BFbVwFUo
俺と黒猫が恋人関係になってから一週間が経過した。
まぁ、恋人関係と言っても実際の所、とりたてて変化があったわけでもないんだけどね。
変わったことと言えば、夏休み中の部活に一緒に行くようになったことくらいだよ。
「さて、ゲームコンテストの第二弾が近づいてきたわけだが、お前らはどうするんだ?」
「どういう意味ですか?当然参加はしますけど」
部長の問いに瀬菜が答える。
「いや、そういう意味じゃない。五更と赤城は今回も一緒に作るのかと思ってよ」
「そういえば、前回は二人に仲良くなってもらうのが目的でしたね」
「おうよ。で、今やその目的は果たしたわけだから今回は別々に製作してもいいぜって話だ」
そう、紆余曲折を経て今や二人は友人と呼べる関係になっていた。
あの時、黒猫は自分の力で友達を作ることができた。
俺が何とかしてやらないと、と思っていた自分が恥ずかしい。
「…あなたは今回もガチホモゲーを作る気なのかしら」
「当然じゃないですか!むしろそれ以外に何を作るんです?」
自慢げに胸を張る瀬菜。
87 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:55:32.47 ID:BFbVwFUo
今は夏休み期間ということもあって部室には、俺、黒猫、瀬菜、部長、真壁君、の五人しかいない。
前回のゲームコンテスト以来、この五人の前では瀬菜は自分の変態趣味を隠そうとしない。
…もうちょっと自重した方がいいんじゃねえの?女の子として。
「……ゲー研部員をモデルにするのだけはもう二度とやめてくれよ」
「え~、なんでですか。せっかくいいアイディア思いついたのに……」
俺が念のために釘をさしておくと、案の定その予定だったようで、口をすぼませて拗ねる瀬菜。
ここだけ見ると実にかわいい。
かわいいが、その正体はガチホモ上等の腐女子である。
俺がうんざりしていると、黒猫が意外な言葉を発した。
「なら、私は別のものを作らせてもらうわ」
「えっ?」
思わずそう口に出してしまった。
前回コンテストが終わった後に、「今度は最初から一緒に作る」みたいなことを言っていたので、てっきり今回もそうだと思い込んでいた。
「えっ?どうしてですか?以前はライトなBLなら問題ないって言ってたじゃないですか」
それは瀬菜も同じだったようで、こいつも少し困惑しているようだ。
今度こそ一緒に作れると思って期待してたんだろうな。
「BLが駄目だというわけではないの。どうしても作ってみたいものができたのよ」
「じゃあそれを一緒に作ればいいじゃないんですか?」
「…駄目なのよ。そのジャンルはBLとは決して相容れないものだから、あなたがBLを捨てられない以上、一緒に作ることはかなわないわ」
黒猫だって、瀬菜と一緒にゲームを作るのを楽しみにしてたはずだ。
それに向けて準備だってしていたことも知っている。
それを覆してまで黒猫が作りたくなったゲームってどんなジャンルなんだろう。
88 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:56:14.25 ID:BFbVwFUo
「その五更さんが作りたいジャンルって何なんですか?」
「……恋愛よ」
部活を終え、黒猫と帰宅する最中で俺はこう切り出した。
「しかし、黒猫が恋愛ゲームとは思わなかったぜ」
「…悪かったわね」
そう言って、ふてくされる黒猫。
瀬菜とはまた違ったかわいさを持っている。
「悪い、そういう意味で言ったんじゃないんだ。何で恋愛を選んだのかと思ってよ。まさか桐乃の影響か?」
俺の妹、桐乃は妹もののエロゲをガンガンやるという筋金入りの変態である。
黒猫も最近は妙に桐乃と仲がいいし、悪い意味で影響を受けてしまっているのかもしれない。
「違うわ」
「じゃあ一体どうしたんだ?」
「…秘密よ」
そうですか。
黒猫の真意は相変わらずわかりづらい。
「先輩も今回は手伝ってくれなくていいわ」
「えっ?」
黒猫からの予期せぬ言葉に素っ頓狂な声をあげてしまう。
まさか、前回の俺の役に立たなさっぷりを見て見切をつけられたのか!?
やべぇ、ちょっと悲しい……しかし事実だけに反論もできない。
「…何を泣きそうになっているの。先輩も受験生なのだから、私に構ってばかりもいられないでしょう?これが原因で落ちてしまっては困るもの」
89 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:57:24.24 ID:BFbVwFUo
そういうことか。
驚かせるなよ、あまりのショックで泣きそうになっちゃっただろ。
黒猫は、初めて会った時こそヘンテコなやつだと思ったが、桐乃や沙織と遊ぶうちにこいつの本性というものが次第にわかってきた。
こいつの言葉に見え隠れする優しさに気づいてからは、おかしな言動も全てかわいらしく思えてくるから不思議なものだ。
さっきみたいに俺が気づけなかった場合は別として。
「それは気にすんなよ。これでも頑張ってて、今の所余裕をもって勉強できてるからさ」
「…いいの?」
「おう」
瀬菜じゃあないが、俺は胸を張ってそう言った。
夏休みの頭から麻奈実にも手伝ってもらってしっかり勉強したおかげで、今のところは合格圏内にいると言っていい。
「…じゃあ今度はうちで作業する?」
「えっ?」
またしても素っ頓狂な声をあげる俺。
え?あれ?まさか俺誘われてる?
「…いつも先輩の家にお邪魔してばかりでは悪いからよ。だから早くその欲にまみれた顔をなんとかなさい」
…なんで俺の心は黒猫に筒抜けなの?そんなひどい顔してたかな…。
まぁ、黒猫の家がどんなのかも気になるし一度お邪魔させてもらおうかな。
「わかった。そういうことならお邪魔させてもらうよ」
90 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:58:00.67 ID:BFbVwFUo
翌日、俺は早速黒猫の家にお邪魔することにした。
学校で作業するのもいいけど、たまには二人きりになりたかったし、なにより黒猫の家がどんなのか気になってたからだ。
「ここよ」
正直に言うと、悪魔城みたいなところをイメージしていたんだが、実際は至って普通の日本家屋だった。
「……ち○まる子ちゃん家そっくりだな」
「……否定はしないわ」
黒猫の後に続くようにして、黒猫宅にお邪魔する。
玄関が開く音を聞きつけたのか家の奥から小さい子供が駆け寄ってくる。
「姉さまお帰りなさい!」
「ただいま」
どうやら黒猫の妹らしい。
そう言えば、いつだったか「妹がいる」って言ってたっけ。
黒猫に似ててかわいいじゃないか。
なんとなく黒猫の小さいころを想像してしまい、思わず顔がゆるんでしまう。
決してロリコン的な意味ではないからな。勘違いすんなよ?
「誰さまですか?」
俺が想像にふけっていると黒猫の妹から不意に声をかけられた。
「え?あぁ、俺は高坂京介。よろしくな」
「…私の学校の先輩よ。今日はこの人に遊んでもらいなさい」
あれ?今日は一緒に作業するんじゃなかったんですか、黒猫さん。
怪訝な顔で俺が黒猫を見やると、黒猫は呆れたような顔でこう返した。
「まだ作り始めてすらいないのだから、デバックしかできないあなたに出番があるわけないでしょう?」
くっ…なんて辛辣なお言葉。
おまえ、付き合いだしてからなんか冷たくなってねえか?
その癖、桐乃とはどんどん仲良くなっていってるみたいだし…それだけにこの扱いは心にくるものがある。
俺なんかしたかな?
91 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:58:33.20 ID:BFbVwFUo
「二人は『おとことおんなのカンケイ』なのですか?」
突然とんでもないセリフを吐く黒猫の妹。
「は、はぁ!?」
「な、何を言ってるの!?」
どこで覚えたんだ、そんな言葉。
さすが黒猫の妹といったところか…。
「違うわ。…なんで私がこんないやらしい雄とそんな関係にならなければならないの」
ひでぇ…仮にも俺って彼氏だよね?
なにもそこまで言うことないんじゃないかな?
俺、泣いてもいいよね?
俺が涙目になっているのを見たからか、言い過ぎたと後悔したのか、遅まきながら黒猫がフォローを入れてくれる。
「あ、でも…い、一応付き合ってはいるのよ?こんなのでも…その…優しい人だから」
黒猫は自分の言葉で真っ赤になってしまってい、俺も黒猫につられ真っ赤になってしまう。
そんな俺達に黒猫の妹がさらに追い打ちをかけてくる。
「じゃあ、ねえさまとケッコンするのですか?」
なんてことを聞いてくるんだ!
とても純粋な目をしているせいかどうにもごまかしにくい。
案の定黒猫も同じだったようで、口をパクパクと開閉しているだけで何も言葉を発することができないようだ。
「あ~、そ、それより今日は何して遊ぶんだ?」
「じゃあ、メルルごっこしましょう」
俺がなんとかごまかすことに成功すると、黒猫の妹は俺の手を引き居間へと連れていく。
妹は黒猫と違ってだいぶ人懐っこい性格みたいだな。
92 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 15:59:00.18 ID:BFbVwFUo
なんで俺は彼女の家まで来てメルルごっこをしているんだろう…。
キャラを理解しているせいかできてしまうのが悲しい。
しかもセリフ等もしっかり覚えてしまっていることが悲しさに拍車をかけている。
「めておいんぱくと~!」
無尽蔵な子供の体力の前に敗北した俺は、一通り名シーンを再現し終えたところでギブアップしてしまう。
「す、すまん。ちょっと休憩させてくれ」
「え~」
俺も小さい子の扱いに慣れているとはいえ超大変だ。
まさか黒猫って毎日こんなことやってるの?あいつすげえな。
恐らく普段はもっと体力を使わない方法で遊んでるんだろうけど。
体力の限界が近づいてきた俺は、黒猫妹に大人しくしててもらう遊び方を黒猫に尋ねようと思い黒猫に目線を送る。
しかし、なにやら作業に集中しているようでこちらには気づかないようだ。
「もっと遊びましょう!」
こうしている間にも黒猫妹は遊ぼうとせがんでくる。
しかし、今は少しでも休憩時間を稼ぎ、俺の体力を回復させねばならない。
こうなったら仕方ない。黒猫もまさか聞いちゃいないだろう。
念のために黒猫とは反対の方を向いてヒソヒソと耳打ちをする。
93 : ◆qPOxbu9P76 [sage]:2010/12/06(月) 16:01:56.30 ID:BFbVwFUo
「そ、そうだ。さっき俺達が結婚するのかどうかって聞いてたよな?」
「はい!」
「そのことなんだが…実は俺は結婚しようと思ってるんだ。もちろんお前の姉ちゃんがうんと言ってくれたらだけどな」
幼い子供相手にこんな話題を出して時間稼ぎするのもどうかと思うが背に腹は代えられない。
「わぁ、ほんとですか?」
「おう、ほんとだ」
それに…嘘は言ってないしね。
「姉さま!この人が姉さまとケッコンしたいそうです!!」
ちょ、ちょっと!?
大声でそんなことを叫ぶんじゃない!!
おそるおそる黒猫の方を振り返ると黒猫が目を見開いた格好のまま固まってこちらを見ていた。
「ち、違うんだ…」
いつぞやのメイドのコスプレした黒猫と同じセリフを吐く俺。
あの時の黒猫のセリフの意味がようやくわかったぜ。
「じゃあ兄さまですね!兄さま、またいっしょに遊びましょう」
俺達の気持ちを知ってか知らずか、黒猫の妹は天真爛漫な笑顔を向けてくる。
「……ふっ、そうだな。今度は何して遊ぶんだ?」
この子からはそのうち義兄さまと呼ばれることになるんろうけど、流石にそれは気が早いかな?
おわり