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106 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/06(月) 21:18:08.27 ID:aX2CVwDO [3/9]
―――とある夜中―――
京介「いい加減にしろ!!!」
桐乃「……っな、なによ!」
京介「いっつもいっつもわがままばっか言いやがって!
俺が誰のためにここまでしてたかわかってんのか!!」
桐乃「そっ!そんなのわかってるわよっ」
京介「いーや、わかってないね!毎日毎日俺のムカつくことばっかしやがってよ!
もう我慢ならねえ!!これからずっと話しかけてくんな!!」
桐乃「!!ちょ、兄……っ!」ビクッ
俺は桐乃の部屋から出、力一杯ドアを閉めた。
京介「ばかみたいだな……俺」
107 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/06(月) 21:19:10.52 ID:aX2CVwDO [4/9]
―――翌日―――
桐乃「お、おはよ、兄貴っ」
京介「……」
桐乃「なによ、返事くらい……」
京介「ごっそさんした」
桐乃「あ……」
佳乃「き、桐乃、あんたたちなにかあったの?」
桐乃「な、なんでもないよ」
京介「ってきまーす」
佳乃「あ、はい、いってらっしゃい」
桐乃「っ……」
桐乃「……ごちそうさま、あたしももう行くね」
佳乃「はい、いってらっしゃい桐乃!はやく仲直りしなさいよ?」
桐乃「う、うん……いってきます」
108 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/06(月) 21:20:08.30 ID:aX2CVwDO [5/9]
―――学校―――
まなみ「きょうちゃんおはよ~」
京介「おう、おはようまなみ」
まなみ「……?きょうちゃんなにかあった~?」
京介「ん、なにがだ?」
まなみ「だってきょうちゃんいつもより元気ないように見えるよ?」
京介「……いや、大丈夫だ、いつも通りだよ」
まなみ「ふぅん……なにかあったら言ってね?」
京介「おう、わかったよ」
―――放課後―――
まなみ「きょうちゃん一緒にかえろ~」
京介「おお、いいぜ」
ブルルルル ブルルルル
京介「電話か?誰だ……」
着信:あやせ
おっほう!ラブリーマイエンジェルあやせたんからじゃんいやっほう!
京介「わりいまなみ!ちょっと用事ができた!」
まなみ「ええ~?しかたーないなあ、じゃあまたあしたね?」
京介「おう!」
109 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/06(月) 21:20:54.03 ID:aX2CVwDO [6/9]
―――裏庭―――
京介「おう、あやせどうした?俺と結婚したくなったか?じゃあ式は……」
あやせ『ちっちがいますよ!なにいってんですかブチ殺しますよ!』
京介「違うのか……」
あやせ『まったくお兄さんは相変わらずキモいですね』
京介「あやせも相変わらず容赦ないな……で、どうしたんだ?」
あやせ『ああ、そうでしたお兄さんに聞きたいことがあったんです』
京介「なんだ?」
あやせ『桐乃になにかしたんですか』
京介「……なにもしてねえよ」
あやせ『嘘!桐乃、表面上はいつもどうりに振舞ってますけど明らかに元気がありませんよ!
お兄さんがなにかしたんじゃないですか!?』
京介「な、なにもしてねえ……」
あやせ『嘘!嘘嘘嘘!ねえお兄さん、本当のことを言ってください。
私桐乃になにかあったらお兄さんのこと許さないと言いましたよね?』
京介「……ぐ……」
あやせ『話してください。さもないと……』
京介「わかったよ、話す……」
196 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:15:05.43 ID:noI5GJA0 [2/11]
そして……
あやせ『はああああああ!?バッカじゃないんですか!?バカ、アホ、ボケナス!死ねエエエエェェェエエエ!!』
京介「うおっ!い、いきなり怒鳴るなよあやせ……!」
あやせ『怒鳴りますよ!「桐乃が我儘ばっかり言うからキレて話しかけてくんなと言った」?もう一度言います、バッカじゃないんですか!?』
京介「いや、俺も言い過ぎたとは思ったけど前と同じ状態にもどっただけだし、俺と話せないからって桐乃も気になんてしないだろ……」
あやせ『っ!……それ、本気で言ってますか?』
京介「……いや、悪かった。失言だった。本心じゃねえよ」
あやせ『なら帰ったら桐乃にすぐ謝ってください!じゃないとまた着信拒否にしますからね!』
それだけは勘弁。
京介「……ああ、わかったよ……」
あやせ『桐乃はお兄さんが思ってるよりもはるかにお兄さんのこと頼りにしてるんですから、これ以上悲しませたらだめですよ?』
京介「……ああ」
197 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:16:45.13 ID:noI5GJA0 [3/11]
―――桐乃・高坂家―――
桐乃「……っ……ひっく……なによ!……グスッ、兄貴のバカ……!」
あたしは家に帰って早々自分の部屋にかけて入り、ひたすら泣いた。
学校ではいつもどおりにできていただろうか。
桐乃「……なんで、素直になれないんだろ……あたし……」
好きなのに。ホントは兄貴……お兄ちゃんのこと大好きなのに。
あたしは密かに盗んでいた兄貴のYシャツに顔を埋めながら自己嫌悪に陥る。
桐乃「うううううう~……ズズッ……スンスン……おにいちゃぁん、好きなの、ホントは大好きなのぉ」
お兄ちゃんが居ないところでいくら言っても届かないこの想いは湧いては溜まり、湧いては溜まり。想いが溜まると余計に素直になれず、溢れた分は大好きなお兄ちゃんに暴力や暴言となって吐き出される。
桐乃「おにいちゃん、おにいちゃん、あたし素直になるから、ひっく……だから嫌わないでよぉ……うぅ……」
でも絶交宣言を出されてしまった。あたしは大好きなお兄ちゃんに想いも伝えられずに嫌われてしまったのだ。
桐乃「うっぐしゅっ……うううううう、ううう~ごめんね、ごめんね、おにいちゃん……」
あたしはこれからどうお兄ちゃんと接していけばいいのだろう。
……ずっとこのまま、また前と同じような関係に戻っちゃうのかな……
桐乃「いやだ、いやだ、いやだよお……!おにいちゃんと話したい、おにいちゃんに甘えたい、おにいちゃんと……恋人になりたい……」
あたしの想いはすでに家族愛のそれにおさまらず、恋愛感情へ変わっていた。
お兄ちゃんを異性として好きになったのは、いつのことだったかもう思い出せない。
それでももうあたしはお兄ちゃんを異性としか見れず、……手遅れかもしれないけど、この想いを成就させたいと思っていた。
桐乃「うぅ……ひっく、うわあぁああん……」
198 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:17:51.89 ID:noI5GJA0 [4/11]
―――京介・高坂家前―――
京介「……う……」
い、いまから桐乃に謝るのか……これは難しいぞ……!
京介「や、やっぱやめ……」
ブルルルルル ブルルルル
メール着信:あやせ
京介「……」ゴクリ
件名:なし
本文:やっぱりやめる、なんて考えてたらブチ殺しますからね
京介「……!!!?」
どっ!どこかで見られてる!?
ブルルルル ブルルルル
件名:なし
本文:探しても無駄ですよ、そこからじゃ絶対見つかりません
京介「……」ゾクゾクッ
……はあ……覚悟を決めるしかないか……顔パンパンに腫れるかもな……
199 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:19:16.74 ID:noI5GJA0 [5/11]
―――桐乃―――
桐乃「……ぐすっ」
ちょっと落ち着いた。
それでもやっぱりもやもやはおさまらなくて。
桐乃「おにいちゃん……」じわっ
お兄ちゃんという言葉を声に出すと涙があふれ出す。
桐乃「決めた……」
お兄ちゃんにあやまろう。こんなの、絶対にいやだ。
ただいまー
桐乃「……!」
―――京介―――
京介「……ただいまー」
……静かだな……桐乃は……靴がある、帰ってるか。
京介「……よし」
俺は意を決して階段を上る。
そして自分の部屋の前を通り過ぎたところで……
ガチャ…
桐乃の部屋の扉が開いた。
200 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:19:42.90 ID:noI5GJA0 [6/11]
―――桐乃―――
お兄ちゃんが帰ってきた。
あやまらなきゃ……あやまらなきゃ……
お兄ちゃんが階段を上ってくる音がする。
きっとお兄ちゃんは自分のことなど気にせず、そのまま部屋に入るんだろう。
そうなればもう一生お兄ちゃんとなかなおりできない気がする。
お兄ちゃんの足音がお兄ちゃんの部屋の前まで来る。
桐乃「……っ」
あたしは意を決して、自分の部屋の扉を開けた。
201 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:20:27.00 ID:noI5GJA0 [7/11]
―――高坂家、二階廊下―――
京介「……」
桐乃「……」
ドクン、ドクン。
心臓の音が鳴る。
廊下には二人の息遣いの音と心臓の音しかない。
二人の距離は2メートルほど。
二人は顔を見合わせる。
だが、なにもはなさない、話せない。
桐乃は何かを話そうとするように口を開きかけるが、なにも出てこない。
ふと、京介の視線が桐乃から外れ、自らの部屋の扉を見る。
桐乃「っ!」
桐乃には京介のこの動作が完全に見捨てられたように見え、あわてるように……悲痛な声が出た。
京介「桐n 桐乃「ごめんなさいっ……!」
京介「……え?」
桐乃「ごめんなさい、ごめんなさい!いつもいつも生意気言ってごめんなさい、殴ったり蹴ったりしてごめんなさい!」
京介「ちょ、きり……」
桐乃「あたしもう我儘言わないから……ぐすっ、おにいちゃんに暴力なんてふるわないから、だから、だから……」
京介「お前、泣いて……ってそれよりも、お兄ちゃんって」
桐乃「許して……ううううう、うううう~ぐす、ひっく……もう、前みたいな関係に戻るのなんて、いやだよぉ……」
202 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:21:31.38 ID:noI5GJA0 [8/11]
京介「――――――っ!桐乃っ!!」
桐乃「―――きゃっ!?」
京介が勢いよく桐乃に詰め寄り、力強く抱き寄せた。
桐乃「え、ちょ、う、ぐす……おにい、ちゃん……?」カアア
桐乃は戸惑いながらも現状を受け止めきれず、それでいて大好きな兄のにおいに包まれながら少し幸せな気分に陥った。
桐乃(お兄ちゃんのにおい……)
京介「ごめん、桐乃」
桐乃「ふえ?」
京介「あんな言い方して、ごめん。傷ついたよな、悲しかったよな。……もう、絶対あんな言い方はしない。約束する。だから……」
桐乃「おにいちゃ……」
京介「だから、もう泣かないでくれ。お前は……お前は俺の大切な妹なんだ。」
桐乃「!!!!!」ぶわっ
ぎゅうう。だらんとぶらさがっていた桐乃の腕が京介の背中にまわり、力が入る。
桐乃「うっ、うっ、ううううう、うううううううう!」
ぎゅううううう。まるで母親に許してもらった子供のように、力いっぱい京介を抱きしめ、顔を胸にうずめる。
京介「ちょ、泣くなって桐乃!ごめん、ごめんな?な、泣かないでくれよっ」
桐乃「ううううう、違うの、違うの、嬉しいの、ぐすっ、うう……」
京介「嬉しいなら泣くなって……」
桐乃「ごめんね、ごめんね、いままで迷惑ばかりかけて。ひっく、ありがとう、ありがとう、いつも我儘をきいてくれて」
京介「……ああ、ああ……俺こそごめんな、あんなこと言って……」
桐乃「うん、うん、うん!ぐすっ、ねえ、もうしばらくこうしていてもいい……?」
京介「ああ、いいぞ。頭も撫でてやる。」
桐乃「ありがとう、お兄ちゃん……」
親に見られてはまずいので、それからすぐに桐乃の部屋へと移動した。
桐乃は俺の胸にしがみついたままで、俺は桐乃を抱きしめたままで。
桐乃のベッドに座り、対面座位のような体制になり、桐乃が落ち着くまで抱きしめ続けた。
203 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:25:23.21 ID:noI5GJA0 [9/11]
――――――
桐乃「……お兄ちゃん」
京介「……落ち着いたか?」
桐乃「……うん、ありがとう……」
京介の胸から顔をあげた桐乃の瞼は赤く腫れあがり、そして頬は赤く上気していた。
ドキリ。京介の胸が高鳴る。
京介「そ……そっか、よかった。」
桐乃「んう」
京介は桐乃の頬を撫で、後頭部を二度撫でおろした。
205 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:26:27.26 ID:noI5GJA0 [10/11]
桐乃「ねえ」
京介「ん?」
桐乃「言わなきゃいけないことが、あるの」
それはきっと。
京介「……うん」
兄妹では許されないことなのだろう。
桐乃「おかしいと思うかもしれないけど、ドン引きするかもしれないけど」
京介「……」
大丈夫だ。
桐乃「それでも、聞いてくれますか?」
京介「……」
静かに頷く。
桐乃「……わかった、言うね」
ゴクリ、桐乃の喉が鳴る。
それはきっと……
桐乃「高坂桐乃は、ダメダメで、でもちょっとかっこよくて、とてもやさしくて、頼りになって、シスコンな高坂京介を……」
それはきっと、今までよりも素敵で、今までよりももっと騒がしい日々の始まりなんだろう―――――
おわり
106 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/06(月) 21:18:08.27 ID:aX2CVwDO [3/9]
―――とある夜中―――
京介「いい加減にしろ!!!」
桐乃「……っな、なによ!」
京介「いっつもいっつもわがままばっか言いやがって!
俺が誰のためにここまでしてたかわかってんのか!!」
桐乃「そっ!そんなのわかってるわよっ」
京介「いーや、わかってないね!毎日毎日俺のムカつくことばっかしやがってよ!
もう我慢ならねえ!!これからずっと話しかけてくんな!!」
桐乃「!!ちょ、兄……っ!」ビクッ
俺は桐乃の部屋から出、力一杯ドアを閉めた。
京介「ばかみたいだな……俺」
107 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/06(月) 21:19:10.52 ID:aX2CVwDO [4/9]
―――翌日―――
桐乃「お、おはよ、兄貴っ」
京介「……」
桐乃「なによ、返事くらい……」
京介「ごっそさんした」
桐乃「あ……」
佳乃「き、桐乃、あんたたちなにかあったの?」
桐乃「な、なんでもないよ」
京介「ってきまーす」
佳乃「あ、はい、いってらっしゃい」
桐乃「っ……」
桐乃「……ごちそうさま、あたしももう行くね」
佳乃「はい、いってらっしゃい桐乃!はやく仲直りしなさいよ?」
桐乃「う、うん……いってきます」
108 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/06(月) 21:20:08.30 ID:aX2CVwDO [5/9]
―――学校―――
まなみ「きょうちゃんおはよ~」
京介「おう、おはようまなみ」
まなみ「……?きょうちゃんなにかあった~?」
京介「ん、なにがだ?」
まなみ「だってきょうちゃんいつもより元気ないように見えるよ?」
京介「……いや、大丈夫だ、いつも通りだよ」
まなみ「ふぅん……なにかあったら言ってね?」
京介「おう、わかったよ」
―――放課後―――
まなみ「きょうちゃん一緒にかえろ~」
京介「おお、いいぜ」
ブルルルル ブルルルル
京介「電話か?誰だ……」
着信:あやせ
おっほう!ラブリーマイエンジェルあやせたんからじゃんいやっほう!
京介「わりいまなみ!ちょっと用事ができた!」
まなみ「ええ~?しかたーないなあ、じゃあまたあしたね?」
京介「おう!」
109 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/06(月) 21:20:54.03 ID:aX2CVwDO [6/9]
―――裏庭―――
京介「おう、あやせどうした?俺と結婚したくなったか?じゃあ式は……」
あやせ『ちっちがいますよ!なにいってんですかブチ殺しますよ!』
京介「違うのか……」
あやせ『まったくお兄さんは相変わらずキモいですね』
京介「あやせも相変わらず容赦ないな……で、どうしたんだ?」
あやせ『ああ、そうでしたお兄さんに聞きたいことがあったんです』
京介「なんだ?」
あやせ『桐乃になにかしたんですか』
京介「……なにもしてねえよ」
あやせ『嘘!桐乃、表面上はいつもどうりに振舞ってますけど明らかに元気がありませんよ!
お兄さんがなにかしたんじゃないですか!?』
京介「な、なにもしてねえ……」
あやせ『嘘!嘘嘘嘘!ねえお兄さん、本当のことを言ってください。
私桐乃になにかあったらお兄さんのこと許さないと言いましたよね?』
京介「……ぐ……」
あやせ『話してください。さもないと……』
京介「わかったよ、話す……」
196 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:15:05.43 ID:noI5GJA0 [2/11]
そして……
あやせ『はああああああ!?バッカじゃないんですか!?バカ、アホ、ボケナス!死ねエエエエェェェエエエ!!』
京介「うおっ!い、いきなり怒鳴るなよあやせ……!」
あやせ『怒鳴りますよ!「桐乃が我儘ばっかり言うからキレて話しかけてくんなと言った」?もう一度言います、バッカじゃないんですか!?』
京介「いや、俺も言い過ぎたとは思ったけど前と同じ状態にもどっただけだし、俺と話せないからって桐乃も気になんてしないだろ……」
あやせ『っ!……それ、本気で言ってますか?』
京介「……いや、悪かった。失言だった。本心じゃねえよ」
あやせ『なら帰ったら桐乃にすぐ謝ってください!じゃないとまた着信拒否にしますからね!』
それだけは勘弁。
京介「……ああ、わかったよ……」
あやせ『桐乃はお兄さんが思ってるよりもはるかにお兄さんのこと頼りにしてるんですから、これ以上悲しませたらだめですよ?』
京介「……ああ」
197 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:16:45.13 ID:noI5GJA0 [3/11]
―――桐乃・高坂家―――
桐乃「……っ……ひっく……なによ!……グスッ、兄貴のバカ……!」
あたしは家に帰って早々自分の部屋にかけて入り、ひたすら泣いた。
学校ではいつもどおりにできていただろうか。
桐乃「……なんで、素直になれないんだろ……あたし……」
好きなのに。ホントは兄貴……お兄ちゃんのこと大好きなのに。
あたしは密かに盗んでいた兄貴のYシャツに顔を埋めながら自己嫌悪に陥る。
桐乃「うううううう~……ズズッ……スンスン……おにいちゃぁん、好きなの、ホントは大好きなのぉ」
お兄ちゃんが居ないところでいくら言っても届かないこの想いは湧いては溜まり、湧いては溜まり。
想いが溜まると余計に素直になれず、溢れた分は大好きなお兄ちゃんに暴力や暴言となって吐き出される。
桐乃「おにいちゃん、おにいちゃん、あたし素直になるから、ひっく……だから嫌わないでよぉ……うぅ……」
でも絶交宣言を出されてしまった。あたしは大好きなお兄ちゃんに想いも伝えられずに嫌われてしまったのだ。
桐乃「うっぐしゅっ……うううううう、ううう~ごめんね、ごめんね、おにいちゃん……」
あたしはこれからどうお兄ちゃんと接していけばいいのだろう。
……ずっとこのまま、また前と同じような関係に戻っちゃうのかな……
桐乃「いやだ、いやだ、いやだよお……!おにいちゃんと話したい、おにいちゃんに甘えたい、おにいちゃんと……恋人になりたい……」
あたしの想いはすでに家族愛のそれにおさまらず、恋愛感情へ変わっていた。
お兄ちゃんを異性として好きになったのは、いつのことだったかもう思い出せない。
それでももうあたしはお兄ちゃんを異性としか見れず、……手遅れかもしれないけど、この想いを成就させたいと思っていた。
桐乃「うぅ……ひっく、うわあぁああん……」
198 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:17:51.89 ID:noI5GJA0 [4/11]
―――京介・高坂家前―――
京介「……う……」
い、いまから桐乃に謝るのか……これは難しいぞ……!
京介「や、やっぱやめ……」
ブルルルルル ブルルルル
メール着信:あやせ
京介「……」ゴクリ
件名:なし
本文:やっぱりやめる、なんて考えてたらブチ殺しますからね
京介「……!!!?」
どっ!どこかで見られてる!?
ブルルルル ブルルルル
件名:なし
本文:探しても無駄ですよ、そこからじゃ絶対見つかりません
京介「……」ゾクゾクッ
……はあ……覚悟を決めるしかないか……顔パンパンに腫れるかもな……
199 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:19:16.74 ID:noI5GJA0 [5/11]
―――桐乃―――
桐乃「……ぐすっ」
ちょっと落ち着いた。
それでもやっぱりもやもやはおさまらなくて。
桐乃「おにいちゃん……」じわっ
お兄ちゃんという言葉を声に出すと涙があふれ出す。
桐乃「決めた……」
お兄ちゃんにあやまろう。こんなの、絶対にいやだ。
ただいまー
桐乃「……!」
―――京介―――
京介「……ただいまー」
……静かだな……桐乃は……靴がある、帰ってるか。
京介「……よし」
俺は意を決して階段を上る。
そして自分の部屋の前を通り過ぎたところで……
ガチャ…
桐乃の部屋の扉が開いた。
200 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:19:42.90 ID:noI5GJA0 [6/11]
―――桐乃―――
お兄ちゃんが帰ってきた。
あやまらなきゃ……あやまらなきゃ……
お兄ちゃんが階段を上ってくる音がする。
きっとお兄ちゃんは自分のことなど気にせず、そのまま部屋に入るんだろう。
そうなればもう一生お兄ちゃんとなかなおりできない気がする。
お兄ちゃんの足音がお兄ちゃんの部屋の前まで来る。
桐乃「……っ」
あたしは意を決して、自分の部屋の扉を開けた。
201 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:20:27.00 ID:noI5GJA0 [7/11]
―――高坂家、二階廊下―――
京介「……」
桐乃「……」
ドクン、ドクン。
心臓の音が鳴る。
廊下には二人の息遣いの音と心臓の音しかない。
二人の距離は2メートルほど。
二人は顔を見合わせる。
だが、なにもはなさない、話せない。
桐乃は何かを話そうとするように口を開きかけるが、なにも出てこない。
ふと、京介の視線が桐乃から外れ、自らの部屋の扉を見る。
桐乃「っ!」
桐乃には京介のこの動作が完全に見捨てられたように見え、あわてるように……悲痛な声が出た。
京介「桐n 桐乃「ごめんなさいっ……!」
京介「……え?」
桐乃「ごめんなさい、ごめんなさい!いつもいつも生意気言ってごめんなさい、殴ったり蹴ったりしてごめんなさい!」
京介「ちょ、きり……」
桐乃「あたしもう我儘言わないから……ぐすっ、おにいちゃんに暴力なんてふるわないから、だから、だから……」
京介「お前、泣いて……ってそれよりも、お兄ちゃんって」
桐乃「許して……ううううう、うううう~ぐす、ひっく……もう、前みたいな関係に戻るのなんて、いやだよぉ……」
202 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:21:31.38 ID:noI5GJA0 [8/11]
京介「――――――っ!桐乃っ!!」
桐乃「―――きゃっ!?」
京介が勢いよく桐乃に詰め寄り、力強く抱き寄せた。
桐乃「え、ちょ、う、ぐす……おにい、ちゃん……?」カアア
桐乃は戸惑いながらも現状を受け止めきれず、それでいて大好きな兄のにおいに包まれながら少し幸せな気分に陥った。
桐乃(お兄ちゃんのにおい……)
京介「ごめん、桐乃」
桐乃「ふえ?」
京介「あんな言い方して、ごめん。傷ついたよな、悲しかったよな。……もう、絶対あんな言い方はしない。約束する。だから……」
桐乃「おにいちゃ……」
京介「だから、もう泣かないでくれ。お前は……お前は俺の大切な妹なんだ。」
桐乃「!!!!!」ぶわっ
ぎゅうう。だらんとぶらさがっていた桐乃の腕が京介の背中にまわり、力が入る。
桐乃「うっ、うっ、ううううう、うううううううう!」
ぎゅううううう。まるで母親に許してもらった子供のように、力いっぱい京介を抱きしめ、顔を胸にうずめる。
京介「ちょ、泣くなって桐乃!ごめん、ごめんな?な、泣かないでくれよっ」
桐乃「ううううう、違うの、違うの、嬉しいの、ぐすっ、うう……」
京介「嬉しいなら泣くなって……」
桐乃「ごめんね、ごめんね、いままで迷惑ばかりかけて。ひっく、ありがとう、ありがとう、いつも我儘をきいてくれて」
京介「……ああ、ああ……俺こそごめんな、あんなこと言って……」
桐乃「うん、うん、うん!ぐすっ、ねえ、もうしばらくこうしていてもいい……?」
京介「ああ、いいぞ。頭も撫でてやる。」
桐乃「ありがとう、お兄ちゃん……」
親に見られてはまずいので、それからすぐに桐乃の部屋へと移動した。
桐乃は俺の胸にしがみついたままで、俺は桐乃を抱きしめたままで。
桐乃のベッドに座り、対面座位のような体制になり、桐乃が落ち着くまで抱きしめ続けた。
203 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:25:23.21 ID:noI5GJA0 [9/11]
――――――
桐乃「……お兄ちゃん」
京介「……落ち着いたか?」
桐乃「……うん、ありがとう……」
京介の胸から顔をあげた桐乃の瞼は赤く腫れあがり、そして頬は赤く上気していた。
ドキリ。京介の胸が高鳴る。
京介「そ……そっか、よかった。」
桐乃「んう」
京介は桐乃の頬を撫で、後頭部を二度撫でおろした。
205 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:26:27.26 ID:noI5GJA0 [10/11]
桐乃「ねえ」
京介「ん?」
桐乃「言わなきゃいけないことが、あるの」
それはきっと。
京介「……うん」
兄妹では許されないことなのだろう。
桐乃「おかしいと思うかもしれないけど、ドン引きするかもしれないけど」
京介「……」
大丈夫だ。
桐乃「それでも、聞いてくれますか?」
京介「……」
静かに頷く。
桐乃「……わかった、言うね」
ゴクリ、桐乃の喉が鳴る。
それはきっと……
桐乃「高坂桐乃は、ダメダメで、でもちょっとかっこよくて、とてもやさしくて、頼りになって、シスコンな高坂京介を……」
それはきっと、今までよりも素敵で、今までよりももっと騒がしい日々の始まりなんだろう―――――
おわり