沙織「タイが曲がっていてよ」:243

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243 : 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 20:49:59.42 ID:MjI6d/rI0 朝起きると携帯の背面ディスプレイがチカチカと光っていた。 新着メール:1通 昨日寝る前に携帯を見た時は確かになかったはずなので 寝ている間にメールが来ていたらしい。 それなりに遅い時間だと言うのに誰だと携帯を開き操作する。 フェイトさんだった。 『PCの方のアドレスにいつもの送ったからよろしく☆』 年甲斐もなく星マーク。あの人はそろそろ年齢を考えた方が良い、 なんてのは妙齢の女性に対して禁句である事ぐらいは俺も承知している。 冗談は、真実でないから良い事もある、って事だ。 それにしても、と思う。 そうか。もういつものヤツが届いたのか。 つまり、前回から一ヶ月経ったという事。 特別な思い入れがある訳じゃないが、なんだかちょっと感慨深いモンがあるな。 244 : 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 20:54:19.40 ID:MjI6d/rI0 高校の連中と同人誌即売会にサークル参加した時に再会して以来、 フェイトさん、こと伊織・F・刹那さんとはちょっとした親交がある。 そもそもの馴れ初めは今回省略するとして、あまり友好的とは言えないはずの 俺と彼女が定期的に連絡を取り合うようになった経緯は説明させて頂こうと思う。 きっかけはやはりメール。ちょっとした相談があるとの旨だった。 FXや馬、ボートに自転車ととにかく碌な金の使い方をしない彼女だが さすがに高校生相手に金の無心はしないだろう。いや、してきたらその場で着拒ものだが。 とにもかくにも都内で会う事になった。 その席で打ち明けられたのは、小説の事だった。 「小説を、読んでほしい?」 「そう。小説と言っても、ちょっと特殊なジャンルではあるんだけど」 特殊? それはまさか赤城瀬菜が好むような、いわゆるBLものではあるまいな。 「あの、腐った女子向けの本なら紹介できるヤツがいますけど……」 「ち、違う違う。ソッチじゃないわよ。ドリーム小説とか、夢小説って知ってる?」 「いや、聞いたことないッスね。なんですか、それ?」 245 : 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 20:55:15.73 ID:MjI6d/rI0 ここでフェイトさんはちょっと得意そうな顔になって件の小説について説明してくれた。 曰く。 ①ウェブ上で公開されている。 ②ブラウザに名前を登録する事で登場人物の名前を自由に変えられる。 この2つが大きな特徴らしい。 つまり、自分がピンチになったところに颯爽と現れて助けてくれるのは 自分の好きな漫画のキャラ、ないし好きな芸能人、みたいな事ができる形態の小説らしい。 へー、ふーん。なるほどねー。ケータイ小説とかドリーム小説とか色々手ぇ出すよな、この人。 「でもそれって金になるんすか?」 「そんなのは分からないけど、ケータイ小説だって、  当初からお金になるなんて誰も思ってなかったのよ?」 まぁそれは確かにそうだろう。ある程度の知名度を得たところでそれを商材に活用する。 近年、より顕著に見られるビジネスモデルだ。 246 : 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 20:56:07.95 ID:MjI6d/rI0 「で、そこで名前を売るなりして、お金を稼ぎたいって訳ですか?」 俺は正直この時点でかなりうんざりしていた。 あんだけやってまだ懲りてないのか、とか。 いい加減しっかり働いて稼ぐ気はないのか、とかな。 「ううん」 でも、フェイトさんは意外な一言を放ったのである。 「私、なんだかんだ言って、お話を書くのが好きなのよ」 その声は驚くほど柔らかく、落ち着いていて。 ああ、この人って本当に年上の女性なんだな、と妙に思ったものだった。 もっとも、帰り際に 「ところで、今日って……この店ワリカンよね?」 この一言で霧散しちまったけどな。 247 : 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 20:56:49.17 ID:MjI6d/rI0 まぁそんな訳で。 ネットにアップロードする前に誰かに見てもらいたい。 その誰かとして白羽の矢が立ったのが俺だったのだ。 ……他に友達いないのかな……あの人。 それからと言うもの、毎日1回のペースでフェイトさんは小説を書いてはメールで送ってくる。 ちなみに俺はとうとう、ねんがんの のーとぱそこんを てにいれた! のだった。 なので桐乃に気兼ねすることなく自室でPCが使えるのだ。 気をつけないと時間が無為に流れていくから要注意だけどさ。 今回送られてきたのは、またあっまあまなラブストーリーだな。ていうかちょっとエロっちいよ? でも読者の事を考えると、自分の好きなキャラとこういう事したいって思う人もいるのかもね。 オーケーわかった。エロいのは良しとする。良しとする事に決めた。 でもさ、なんで登場人物の名前が『フェイト』と『京介』なのかね! 『京介くん……私もうガマンできないよ……』 『俺もさ、フェイト……できるだけ優しくするから……』 『うん……嬉しい、嬉しいよ……京介くんと1つになれるなんてぇ……!』 机に突っ伏した。 何考えてんだよ、あの人!! そりゃこの名前の部分は自由に読者が変更するから、このまま使われたりしないけどさ! さすがにこれ以上は読めないぞ? うーん。でもなぁ。 『私、なんだかんだ言って、お話を書くのが好きなのよ』 248 : 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 20:57:40.17 ID:MjI6d/rI0 チクショウ、である。あの顔が未だに忘れられないのだ。 正直言って反則だったと思う。 あーもう。あーもう。分かったよ。最後まで読む。読みますよ。読めば良いんでしょう。 それから30分ほどして。 今月分の夢小説の原稿を読み終える頃には、俺の中でいろいろな何かが壊れかけていた。 死力を尽くして携帯を取り出してメールを打つ。 『こんばんは。今月分読みました。内容はまぁ良いんじゃないかと思います。  でも刹那さんはともかく、俺の名前使わなくても良いんじゃないですかね』 送信ボタンを押して、ベッドになだれ込む。 たまにあるんだよな。こういうちょいエロ系。 今日のはちょいどころかモロだった気がするけど。 でも名前がフェイトと京介って……。 もうこのまま寝ちまおうかなと思った矢先、携帯が鳴る。 フェイトさんからの返信だろうか。 『だから、言ったでしょ?』 『』 『』 『』 『』 『自分の好きな人と、素敵な体験ができるのが、夢小説の良いところなんだ、って』 終わり

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