456 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/11(土) 17:53:02.65 ID:o7p0Ccgo [2/9]
『Prrrrr!Prrrrr!』
ある休日の昼下がり、受験勉強に勤しんでいると、それを邪魔するように携帯が鳴った。
「チッ……折角乗ってきたとこなのによ。誰だ?」
番号を見るが、見覚えがない。間違い電話か?
「めんどくせぇな……はい、もしもし?……ゲッ!お、お前なんで……」
そして駅前の喫茶店、呼び出された俺は先客のいるテーブルの対面に座り、冷や汗を一筋垂らしながら尋ねた。
「な、なんで俺の番号知ってんの、お前?」
「へ?そんなんあやせのケータイからパクったに決まってんじゃん。バッカじゃねー?」
ケケケとむかつく笑い声の相手。それは桐乃の表の方の友達、来栖加奈子だった。
てかあやせ、こんなやつに携帯触らせんじゃねーよ。
「……んで?俺はお前とはまともに話したことがないと思うんだが、なんの用だよ?」
加奈子はまた気に触るケケケ笑いをすると、半目で俺を見た。
「プッ、おめーさぁ、ナニいつまでもバックレちゃってるワケェ?おめーが加奈子のジャーマネとかぁ、桐乃の
カレシのフリしてたとかぁ、全部バレちゃってんですケドォ~~?」
ゲッ!ま、まあその可能性は考えないでもなかったが、相手がアホの子と確信していただけにかなりショックだ。
ここで、飲み物が3つ運ばれてきて、一時会話が中断した。当然のようにレシートを俺の前に投げてよこす
加奈子。グッ!あとであやせに請求してやる……!
ウェイトレスが離れたところで俺は渋々ながら降参した。
「よ、よく判ったなお前。全然気付いてる素振り見えなかったんだが……」
「まぁ?ブッチャケると加奈子じゃなくて、ブリジットが気付いたんだけどさぁ」
な、なるほど。偽マネージャー=偽彼氏、に気付かれたということか。
「でもそれがなんで=桐乃の兄貴、ってとこまで関連したんだ?お前マジな話、俺のことなんてろくに気にも
してなかったじゃねーかよ」
「あ、ソレぇ?」
言っちゃおうかなー、どうしようかなーと加奈子は悪戯っぽく勿体振りながら、結局口を割った。
「友達のことだから内緒にしてやってもイーんだけどぉ、話進まなくなってもアレだしぃ?」
「友達?あやせか?」
「ソ!あやせのケータイいじっててさぁ、おめーのシャメ見つけたんだよねぇー、ケケケ」
な、なんだってーーー!いつ撮られたんだ。全く気付かなかったぜ。
「で、でもそれが?写メだけじゃ誰かまでわかんねーだろうがよ」
「プププププ、ソレがさぁ?あいつわざわざ別フォルダ作って、『お兄さん♥』って名前付けてたん
だよネェ~~!ちょーキモくねぇ?ま、それで判ったってワケ。納得したぁ?」
457 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/11(土) 17:53:35.74 ID:o7p0Ccgo [3/9]
な、なるほど。お兄さんで該当するのが多分こいつの知ってる範囲では俺しかいなかった、と。
あ!し、しまった!と、言うことは!
「て、てめー、俺を引っ掛けたな!」
「あ、やっと気付いたぁ?プププ!ここに来たって事で、桐乃の兄貴で確定ってワケェ。おせーよおめー」
クッ、こんなやつにはめられるとはなんて情けないんだ俺!
おそらくだが、あやせの携帯の登録は当然『高坂京介』だったんだろう。そして、呼び出された相手が
写真と一致したってことで、全てばれてしまったということか。
と、とりあえずそれはもう仕方ない。落ち込む気持ちを奮い立たせながら俺は尋ねた。
「で、ただそのためだけに俺を呼んだのか?だったら忙しいんで、もう帰りたいんだが」
「まっさかー?加奈子だってそんな暇じゃないしぃ?もっちろん用事があるんだけどぉ」
「なんだよ?またマネージャーでもさせたいっての?」
「それは、また今度ねぇ」
今度って、それはそれであるのかよ!
「じゃあなんだよ?ちなみに俺は金ないから財布代わりとかマジお断りだからな!」
「チッ、ケチクセー。でも今日は違うんだなぁ。ナニ?人生相談ってやつ?」
それかよ!つか俺なんで桐乃の周囲の人間にいつも相談を持ちかけられるんだ!意味わかんねぇ!
「はぁ?なんでお前の相談に乗ってやらなきゃなんねーの?」
「ケチクセーこと言うなってぇ、どうせあやせなんかにもヤっちゃってるんでしょぉー?」
「ヤらしい言い方すんな!」
「まぁ?頼まれてくれたら?加奈子もおめーのために一肌脱いであげてもいいんだケドォ?ぎぶあんどていくってヤツゥ?」
「は?何が出来るってんだよお前」
「んー、例えばぁ、あやせと繋いでやるとかってどーよ?」
う、それは非常に魅力的な条件だ……あやせは友達に対しては基本的に信頼している様子だし、こいつから
変態についての誤解を解かせるとか、そういう形でも出来れば……
いやしかし。ここで変な相談を持ちかけられても困る。一応俺受験生だし、あんまり時間を掛けられるのも
正直困るからな。
「ま、まあそれはともかく、一応話だけなら聞いてやってもいい。無理な内容かもしれないしな」
そう言うと、加奈子は意地の悪い笑みを顔から消して、渋面を作った。
「てゆーかぁ、聞かなくてもわかるっしょ。つーかおめーナニ最初っからみえねーフリしてんだよ」
「あ、や、やっぱり、そっちっすか?」
俺は思いっきり口を引きつらせた。そして俺と加奈子、両方がジト目で横を向いた。
「かなかなちゃ~ん♥」
すまん、あえて言ってなかったんだが、話の最初っから加奈子の横には、例の『アルファ・オメガ』激似の
女の子、ブリジットがぴったりくっついて離れなかったんだ。
458 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/11(土) 17:54:10.76 ID:o7p0Ccgo [4/9]
「で、こいつをどうにかしろ、と?」
「そ」
「前見たときよりさらにまた懐かれてるな。お前いったい何したんだよ?」
「ナンにもしてねーっての!ただレッスンとか一緒にやったり、気になるところ直してやったり、あんまりうるせーから
遊びに付き合ってやったりしてたダケだってぇ!」
め、面倒見いいのなお前。それでさらにベッタリになっちゃったってわけか。
「こいつが一緒じゃさぁ、ナンパもろくにされねーしさぁ、イロイロと不都合ありまくりなワケェ」
まあそうだろうな。普通に二人で歩いてるだけなら相乗効果も期待できて声掛けられまくりだろうが、こんなに
ベッタリくっつかれると、どう見ても百合百合なご関係にしか見えねーし。
「だが断る!」
「ちょ、ちょっとなんでぇ~~??加奈子マジ迷惑してんですケドォ?」
「まあ確かにそれは認めるが、ブリジットは超幸せそうじゃね?この間を引き裂くとか出来ねぇよ、つか無理!」
「なんだよそれぇ!?加奈子はどうでもいいワケェ?」
「つーかよ、10歳の女の子なんだからそんな邪険にしねーで可愛がってやれよ」
「歳はそーかもしれねーけどぉ、こいつの方が背も高いしどうみても加奈子のが妹ってカンジじゃねぇ?」
「まあそれはそれとしてだ、イギリスから来てて心細いってのもあるんだろうよ。乗りかかった船だし、このまま
暫く面倒見てやれって」
「シバラクってどのくらいだっつーのさぁ。なんかもうこのまま永遠にって気がしてしょーがねーんですケドォ?!」
加奈子は一転して涙目だ。前にも思ったが、こいつはこういうときの方がよっぽど可愛いよな。まあ言ってやらないが。
「なぁー、マジ頼むってぇ!もし上手くいったらさぁ、あやせとあーんなイベントやこーんなイベントも起きるように
フォローしてやっからさぁ~~?!」
自分のためには親友をも売るとか、こいつ相変わらずすげー自己中な性格してんのな。
しかし、それが俺にはすごく魅力的な提案過ぎて困るわけなんだが。
それにまぁ、流石に加奈子も可哀相すぎるような気がしないでもないし。
「まー、あれだ。上手くいくかわかんねーけどさ、考えるだけ考えてやるよ」
「ほ、ホントにぃ?!」
まさしく溺れる者はって感じで加奈子がすがってくる。
桐乃のプレゼントの件ではこいつのお陰で助かったしな。ここらで借りを返しとくのもいいんじゃないかと思ったわけだ。
あ、あやせのイベントに釣られたわけじゃねーから!そこ勘違いしないでよね!!
「とりあえず、すぐってわけにもいかねーしよ。なんか思いついたら連絡するから待っててくれな」
「ん、わかった……このままバックレたりすんなよな?もしそんなことになったらあやせに逆にあること無いこと吹き込んで
やっから、覚悟しとけよてめー」
ぐ、それも一瞬思わないでもなかったが、釘を刺されてしまった。加奈子、恐ろしい子!
459 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/11(土) 17:54:56.02 ID:o7p0Ccgo [5/9]
そして一週間後、俺と加奈子(+ブリジット)は、とあるマンションの前にいた。
「おー、よくいらっしゃいましたな京介氏!で、そちらが?」
「電話で話した加奈子だ」
ブリジットの方は見たくないのでスルーした。
沙織もあはははと乾いた笑みを浮かべた。相変わらず察しが良くて助かるわ。
「で、ここに何があるってーの?」
加奈子は歩いている最中もブリジットに纏わりつかれてへとへとだ。でも初対面なんだから挨拶くらいしろよお前。
「加奈子氏、でよろしいですかな。ま、まずはこちらへ」
マンションの中に通される。エレベータに乗ると、沙織は迷わず⑤のボタンを押した。
上がっていったソコは、他のフロアと同じく、キッチンも壁もない、大きな空間だった。
てか前も思ったんだが、これって建築法とか大丈夫か?
その部屋の向こう側の壁に、いろいろなグッズがいっぱい飾ってある。これは俺が沙織に頼んで特別にセッティング
してもらった、『星くず☆ういっちメルル』関連の品々だった。
勿論、桐乃が張り付いていたメルルフィギュアも飾ってある。そして……?!
「お、おい沙織、な、ナニアレ?」
「あー、あれでござるか?」
沙織は悪戯が成功したって感じで口をω(こんなふう)にした。
「先日京介氏に聞いたラブドールのお話から連想して作ってみたものでござるよ」
そこには、前に見たものではないフィギュアが一体増えていた、それは等身大のメルル人形だった!
おいおいおいおい、それって聞いてねーぞ?てか沙織のやつ、今回の協力だけにとどまらず俺を驚かそうとしてやがった!
「ちなみにあの人形、服も勿論ですが下着もメルルプリントのものをつけてござる。さらに(ごにょごにょ)も標準装備!」
沙織が俺にだけ耳打ちしてきて、俺の顔が真っ赤になった。
それってほんとのラブドールっすよね?75万とかするあれだよな?
こいつマジ恐ろしいわ!
ちなみに加奈子もドン引き気味だ。だがそれはどちらかというと自分そっくりの人形があるって事に対する驚きと言うか
嫌悪感、いつも自分はこんな格好なんだと見せられることの羞恥心がさせているのだろうな。
そちらに歩いていくと、桐乃のようにブリジットも超反応した。
「わ、わわわぁ~~!すごぉーい!メルルばっかりだよぉ~~!」
目がキラキラ輝いて、グッズとフィギュアに飛びつくブリジット。ハッと触るのを思いとどまって、そーっと振り返ると
「どうぞどうぞ、手に取って御覧下され」
沙織が得たりとばかりに許可を出す。
ブリジットは顔を輝かせて、グッズを鑑賞しはじめた。流石にフィギュアと等身大人形はケースに入っているので触ることは
出来ないが、桐乃と同様に大はしゃぎで「うわぁー、うわぁー!」ともうこっちにはまるで関心を失ってしまっていた。
「チッ……お子様じゃん」
加奈子は纏わりつかれていたのが解放されて嬉しいのかと思いきや、不満げな顔だ。
こいつも素直じゃねーな。ま、いつも引っ付いて来られるのがうざったいだけだったんだろうけどね。
「なかなか良好なご反応ですな。では皆様はこちらへ……」
ブリジットを残して沙織に誘導される俺と加奈子。第一段階『加奈子とブリジットを連れ出し、かつブリジットを引き離す』は
成功したってわけで、これから第二幕の寸劇に移行だ。
460 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/11(土) 17:55:23.88 ID:o7p0Ccgo [6/9]
夢中でメルルグッズにはまっているブリジットだったが、突然、その部屋の電気が消えた!
ちなみに最初から窓にはぶ厚いカーテンが全て下ろされており、照明が消えるとまさに真っ暗闇になってしまう。
「え!え、え、え、なんで?!か、かなかなちゃ~ん!」
涙声のブリジット。可哀相だがここで仏心を出すわけにも行かない。
「かなかなちゃん?どこ、どこいっちゃったの??暗いよ~~!かなかなちゃ~~ん!」
そして突然!一箇所だけ照明が回復する。ちなみにこれは元のシナリオには無かった、沙織が挿入した演出だ。
「え!あ、あれ……あ!お人形がない!!」
回復したと言ってもグッズの上の照明で、しかも非常灯だったため薄暗い。そしてさっきまであったメルル人形には
黒い覆いがいつのまにかかぶさっていて、メルルが消えてしまったような錯覚をブリジットに与えた。
そして……
「ふ、ふはははは、メルルはこっちだ!」
俺がハイテンションで叫び、入ってきたドア側の頭上の照明が完全に回復する!
そこには俺と加奈子がいた。
俺が加奈子の首を腕で絞め、加奈子は苦しそうな演技をする。
ちなみに、加奈子はメルルのコスプレ、俺は例の漆黒のコスプレに仮面、という格好だ。
「か、かなかなちゃん!!」
慌ててこちらに向かってくるブリジット。
「あ、あなたはなんですか!かなかなちゃんを放して!」
「ぐぅ、アルちゃん……!た、助けて!」
「メルちゃん!」
俺に飛び掛ってくるブリジット!
わりーな、ちょっと手荒だけどお前のためでもあるんだ、許してくれ!
「ふっ、甘いな!」
飛びつこうとするブリジットの頬を軽くパシッと張り、ひるんだブリジットの腹に足を掛けて押し出すと、軽量の
ブリジットはたまらず転がった。
「ちょ、おめー本気でy、ぐっ……」
台本を忘れて激高しようとした加奈子、その首を強めに絞めつつ耳打ちする。
「馬鹿、マジになるなっつの。それに軽くやっただけだって」
ハッとした加奈子だったが、ブリジットを見るその目はとても心配そうだ。
正直、これやらなくてもよかったんじゃね?と言いたくなったが、途中で勝手にやめる訳にもいかない。
転がされたブリジットは、ビンタされたショックで泣きそうだ。
単に泣かしてしまっては失敗なので、ちょっと早いが次の台詞に移る。
「ふ、無様だなアルファ・オメガ!お前の力はそんなものか?」
「ぐ、ぐすっ、だ、だってぇ……」
「あ、アルちゃん……く、苦しい」
「め、メルちゃん!」
461 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/11(土) 17:55:57.64 ID:o7p0Ccgo [7/9]
加奈子が苦しがると、泣いていられないと思ったのか立ち上がるブリジット。
もう一度飛び掛ってくるがそれを俺はひらりとかわすとブリジットの足を払う。
「あっ!」
またしても倒れこむブリジット。あー、擦り傷とか出来てなきゃいいんだが……
「ふははは!こんなものか、まあそれはそうだろうな!」
「な、なんで……」
「いつもメルルに構ってもらっているだけで、自分で頑張ろうとしないからだ!」
本当はもっと凝った台詞にしたかったんだが、子供相手なので判りやすさ重視の台詞。苦心のあとが偲ばれるだろ?
「仕事もメルルと一緒、遊びにいくのも一緒、そうしてメルルメルルと頼っているうちに、お前自身が
力を失ってしまったのだ。ふはははは!」
「そ、そんな!」
痛みもあってか蹲ってしまうブリジット。涙も出てしまっているようだ。マジもうやめたい。
「だから見よ!いざメルルがピンチの時に、お前は何も出来ないではないか!」
「うっ、ぐすっ、だ、だってぇ」
「ブリジット!おめー加奈子と一緒にいて、いってーナニ勉強してきたんだよ!」
「か、かなかなちゃん!」
ハッ、として顔を上げるブリジット。そこにイライラ顔の加奈子の叱責が飛ぶ。
「いちいち泣いてんじゃねーっつーの!『かなかなちゃん』じゃねーよ!加奈子はおめーのこと見込んでいろいろ
教えてやってんのに、一人じゃ何にも出来なくなっちまってるっての?!ばかじゃんおめー?」
素で罵倒する加奈子。どうやら心配を通り越して怒りがMAXに達した様子だ。
予定には無かったが、ここは加奈子に任せよう。つか、最初っからそうしろっつーの。
「ご、ごめんなさいかなかなちゃん、でも、わたし」
「あーあー、なっさけねぇー。チッ、折角加奈子のライバルって認めてやってんのによぉー、もうしらねーわ
おめーなんか」
「そんな!わたしだって!」
「ハァ?ちょっと上手くいかないからってへこたれちゃってるやつがナニ言っちゃってんのぉ?それにぃ、だったら
やることあんじゃねぇ?」
言われたブリジットは自分で立ち上がり、グシグシと袖で目元を擦って涙を拭くと、キッと厳しい目をした。
「判ってんじゃん。言われなくてもやれっつーのぉ。じゃあ次アレやってみ?」
「うん!」
ブリジットは力強く頷くと、演舞?みたいな踊りを踊り始めた。レッスンでやっているものだろうか?
「うし!」
加奈子からOKが出ると、ブリジットは一瞬ぱぁっと嬉しそうな笑顔をしたが、慌ててまたキリッとした表情に戻した。
462 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/11(土) 17:56:31.68 ID:o7p0Ccgo [8/9]
「じゃあ……いつまで触ってんだよおめー?!」
ゴッ!いきなり加奈子のヒジ打ちが俺の腹に入った。ちょ!これは台本にねーぞ!
「ブリジット!」
「かなかなちゃん!」
視線だけでお互い了解したのか、二人並んで立ち、俺に向かって---
「ダブルーーー!」
「メテオーーー!」
「「インパクトーーー!!!」」
ちょ!お前ら息合い過ぎ!
と言うまもなく、ヒジ打ちで腹を押さえて頭が下がっていた俺は二人のパンチを受けて倒れ、気絶した……
ほ、本気すぎるだろお前ら……
……で、後日。
なんとかブリジットも自分の依存過剰な状態に気がついたみたいで、アレ以来加奈子とも適当な距離は置けるようになったらしい。
成功したのかどうか良くわからんけどな。
んで……
『っつーわけぇ、あやせもちょろいよねぇ~~』
一応報酬?にあやせとデートの段取りを組んでくれたらしく、加奈子からの連絡を聞いているわけだが。
「ああ、判った。んで、11時だっけ」
『そーそー、遅れんなヨ?』
さてと、ライブリーマイエンジェルとデートだデート。と浮き浮きして支度を始め、家を出る俺。
(ニヤリ)
(『あ、もしもしー桐乃?今なにやってんのぉ?友達と一緒?んじゃさぁー、11時に駅前の公園行ってみ?おもしれーからさぁ』)
待ち合わせの公園に着くと、あやせが渋面を作りながら立っていた。
俺を認めるとつかつかと歩き寄ってくる。
「あやせ、待った?」
「いえ、今来たとこ、って何恋人みたいなこと言わせてるんですか!」
顔を真っ赤にして抗議してくる。何しても可愛いなぁ。
「それより、加奈子になにかしたんですか?」
「いや、何にも?まあそんなことより……」
と言おうとしたところで、
「あ、あ、あ、あんた!そこであやせと何やってんの!!」
「へ?……ゲェっ、桐乃!と、黒猫まで!?」
顔を真っ赤にして近づいてくる桐乃と、その後ろでぶすっとした顔で睨んでいる黒猫の姿があった。
お、俺なんか悪いことしたっすか??
(プ、おめーは加奈子のジャーマネなんだからさぁ、他の女に手ぇ出させるわけないっしょ。キシシシシ!)
終わり
最終更新:2010年12月12日 00:20