943 名前: ◆qPOxbu9P76[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 16:58:40.50 ID:oU6aH5Ao [4/10]
桐乃「うんっ、我ながら上出来!いただきまーす!…………まっず!!!」
桐乃「あれぇ?おっかしいなぁ、ちゃんとレシピ通りにやったのに…このレシピ間違ってんじゃないの!?」
桐乃「………いや、いい加減認めないと……あたしってやっぱり料理音痴だったんだ……」
桐乃「炒飯すらまともにつくれないとか…ははは、何やってんだろあたし」
桐乃「このままじゃいつまでたってもあたしの手料理を兄貴に食べさせてあげられないじゃん。……誰かに教わるしかないか」
桐乃「でも誰に?お母さんはカレーしか教えてくれなさそうだし、あやせは料理しないっていってたし……」
桐乃「そうだ!困ったときは兄貴の人生相談があるじゃん♪」
コンコン
「ちょっと人生相談があるんだけど」
俺が自室でエロゲの攻略を進めていると、数回のノックのあとそんな声が響いた。
「せーぶ」と書かれたアイコンをクリックし、ひとまずエロゲを中断してから部屋のドアを開ける。
声の主はやはり桐乃だったようで、相変わらずの腕を組んだ偉そうな態度でこちらを見上げていた。
京介「桐乃か?一体なんだよ、人生相談って」
桐乃「………料理が上手くなりたい」
京介「は?」
桐乃「だから!料理が上手くなりたいって言ってんの!何度も言わせないでよね!」
京介「え?どういうことだよ。上手くなりたいって……最初はレシピ見ながらでも作って段々レパートリー増やしていきゃいいんじゃねえの?」
桐乃「そういう問題じゃないの!」
京介「…じゃあどういう問題なんだよ」
俺が桐乃の言わんとしていることが把握できないでいると、桐乃は一度ギリッと歯軋りをしてから、こう呟いた。
桐乃「ちょっとついてきて」
944 名前: ◆qPOxbu9P76[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 17:00:04.44 ID:oU6aH5Ao [5/10]
桐乃「これなんだけど」
京介「これ、おまえが作ったのか?」
桐乃「うん」
京介「よくできてんじゃん。上手くなりたいって…これ以上どうなりたいんだよ」
桐乃「食べてみて」
京介「お、おう。…………まっず!!!」
し、しまった!あまりのまずさに正直に感想を叫んじまった!
こ、これはあれだ、思わず叫ぶほどまずいってことだから勘違いすんなよな!
……だ、駄目だ!慰めにも言い訳にもなってねえ!これじゃあ事実を述べてるだけじゃねえか!?
な、何かフォローできる点はないのか……?
京介「だめだ……見つからねえ、見つからねえよ」
俺がフォローの言葉をいつまでも見つけられないもんだから、桐乃は案の定半泣きになってしまっている。
桐乃「これで、わかったでしょ」グス
京介「おまえ…一体何がどうなったらこんなのができあがるんだ?」
桐乃「し、知らないってば!あたしはレシピ通りに作っただけなんだから!」
京介「じゃあこんな味になるわけねえだろ!」
桐乃「う、うっさい!あ、あたしだって好きでそう作ったわけじゃ……ないん…だもん」
京介「うおお!?な、泣くなって!わ、悪かった言い過ぎたよ!俺もおまえがちゃんと上達できるように手伝うからさ!」
桐乃「……ほんと?」
京介「ほんとうだ!味見でもなんでもやってやるからさ!」
あわてて桐乃を慰める俺。妹に泣かれるくらいならさっきの料理を食べてる方がまだましだからな。
シスコンだと笑わば笑え。
945 名前: ◆qPOxbu9P76[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 17:01:25.65 ID:oU6aH5Ao [6/10]
桐乃「あっ、ありが……ち、違う!じゃ、じゃあさっさと教えなさいよ!」
あれ?何この変わり身の早さ。
さっきまで半泣きになってたってのに……
京介「しかし、教えてやりたいのは山々なんだが、俺も料理は得意じゃないしなぁ」
桐乃「はぁ!?そんなんで『なんでもやってやるとか』ぬかしてたわけ!?」
京介「落ち着け。俺の知り合いに講師役として適役な人物がいる」
桐乃「え…ま、まさか」
京介『あ~、麻奈実か?悪いんだが、今から俺んちに来てくれないか?……おう、手ぶらでいいからさ……わかった、待ってるわ』
桐乃「ちょ、ちょっと地味子だけは嫌だって!」
京介「あいつ以上に講師役として適役な奴はいねえよ。それにおまえも学校の友人とかに教えてもらうよりは恥ずかしくないだろ?あと地味子って言うな」
桐乃「で、でも!」
京介「でももヘチマもねえ。あれの味見、自分でもしてみたんだろ?」
桐乃「う……」
京介「だから、今は大人しく麻奈実に教えてもらって、また今度美味い飯作ってくれよ…な?」
桐乃「ぐうぅ……チッ、仕方ないか」
なんとか説得には成功したようだな。
あとは麻奈実の到着を待って―――桐乃が教えてもらってる間はのんびり見学でもさせてもらうかな。
946 名前: ◆qPOxbu9P76[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 17:02:55.84 ID:oU6aH5Ao [7/10]
麻奈実「きょうちゃん、おまたせ~」
京介「悪かったな、急に呼び出しちまってよ」
麻奈実「ううん。でもどうしたの?急に呼ぶなんて珍しいね」
京介「それがな……」
俺は麻奈実にこれまでの流れを簡単に説明し、麻奈実に桐乃の講師になってやってくれと頼んだ。
麻奈実「そっかぁ。うんっ、いいよ~」
京介「助かる、ありがとな」
麻奈実「えへへ」
京介「おまえも、こっちきて挨拶しろって」
桐乃「……………今日はよろしくお願いします」
麻奈実「うんっ!頑張ろうね桐乃ちゃん」
そんなこんなで、無事麻奈実へと人生相談のバトンを引き継いだわけだが、あいつらうまくやれるかな?
桐乃はあいかわらず麻奈実のこと嫌いみたいだし…まぁ、いざとなったら仲裁にはいってやれば大丈夫か。
そんなことを考えながら、キッチンの方を見ているとちょうど『麻奈実の料理教室』が始まるところだったようで、桐乃が包丁を取り出していた。
………一応腹部に雑誌入れとこうかな。
なんとなく入れたくなっただけで大した意味はないんだけどさ。
俺の心配は杞憂に終わったようで、仲良く?作業を進めていく二人。
桐乃が実際に作業を担当して、麻奈実がそれに対してアドバイスを送るという形になっているようだった。
なんだ、これなら案外すんなり終わりそうだな。
947 名前: ◆qPOxbu9P76[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 17:04:00.85 ID:oU6aH5Ao [8/10]
「き、桐乃ちゃん!?そ、それはだめだって!」
「いいじゃんこれくらい、なんとかなるって!」
「はわわわ、それいれちゃうの!?」
「だって美味しそうじゃない?」
「げほっげほっげほっ」
「げほっげほっげほっ」
さて……胃薬どこにあったかな。
桐乃「で、できた!」
麻奈実「じゃあ最後に仕上げのおまじないをかけないとね~」
桐乃「えっ?これで終わりじゃないの?」
麻奈実「うん、ここからね……」ゴニョゴニョ
桐乃「………は、はぁ!?そんなことできるわけないじゃん!!」
麻奈実「これが一番おいしくなる方法なんだよ~」
桐乃「くぅ……や、やればいいんでしょやれば!!」
桐乃「おまたせ」
京介「お、できたのか?…思ったよりまともな外見じゃないか」
途中で聞こえてきた会話が嘘のようだ。
麻奈実「うん、桐乃ちゃんも頑張ったんだよ?」
京介「そっか、じゃあさっそくいただきます」
桐乃「……」ゴクリ
京介「…………」ホロリ
948 名前: ◆qPOxbu9P76[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 17:05:33.75 ID:oU6aH5Ao [9/10]
桐乃「!!」
麻奈実「やったね桐乃ちゃん!きょうちゃん泣くほど美味しいって!!」
桐乃「う、うそ!?ほ、ほんとに!?やった!あたしもやればできるんじゃん!!」
麻奈実「ね、あのおまじない効いたでしょ~」
桐乃「うんっ!じみ…じゃなかった。田村さん、今日はありがとうございました!ひゃっほーい!!」
くっそ、一口食べただけなのに辛い!ツーンとする!!!!!口の中が痛いいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!
なんだこの暗黒物質は!?ぐああああああああ!!!
桐乃「あ、兄貴!どう!?美味しくできてるかな!?おまじないちゃんと効いてる!?」
くっ……そんな嬉しそうにはしゃいじまって……今さらまずいなんて言える雰囲気じゃねえ……
っていうかおまじないってなんですか?黒猫よろしく呪いでもかけたの?
京介「あ、あぁ……う、美味いよ。おかげでさっきから涙が止まらねえよ。ははは」
桐乃「よかったぁ!じゃああたしも味見してみよっかな」
京介「な…それは駄目だ!これは俺が責任もって全部食うから!!」
今味見されたら美味いのが嘘だってばれちゃうじゃん!
桐乃「えっ?そんなに美味しかった?……にひひ」
麻奈実「よかったねぇ桐乃ちゃん」
桐乃「うん!」
すっかり仲良くなってやがる…まぁ俺の味覚と引き換えなら安いもんさ。
でも、今度からは刺激物は少な目にしてくれないかな。
これ以上食べたら俺の人格がおかしくなっちまう。
桐乃「あ、おかわりもあるからね兄貴!」
京介「」
おわり
最終更新:2010年12月19日 17:29