無題:5スレ目917


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917. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01:12:00.60 ID:sXuewvQo
「あ、そう言えば京介氏、拙者と付き合って欲しいでござる」

俺達がいつもの4人で集まって遊んでいると、何の脈絡もなく唐突に沙織がそう切り出した。

「は?」

いきなり何言ってんだおまえは!?
なんでそんな“明日ちょっと買い物付き合って”みたいな軽いノリなんだよ!

「ちょ、ちょっとあんた何言ってんの!?ふざけんじゃないっての!」
「わ、わわわわ、私の妖気にあてられて気でも狂ったのかしら?」

そしておまえらは怒りすぎ&慌てすぎだ。ちょっと落ち着け。
なんでおまえらが俺以上に反応してんだよ。

「あの…駄目ですか?」

いつのまにか眼鏡を外し、真っすぐに俺を見つめてくる沙織。
両手は胸の前で組まれており、祈るようなポーズで俺の返事をまっている。
おい…こんな時に眼鏡を外すんじゃない!

「いや……いくらなんでも突然すぎるだろ…一体どうしたんだよ」

返事をごまかしつつ、沙織の腹の内を探る。
すると、沙織は何かに気付いたような顔をして、

「あ……これは失敬。拙者ともあろうものが少しテンパっていたようでござる。経過を省いて結論だけ伝えてしまうとは」

沙織は片手で頬をかきつつ、申し訳ないと謝る。
それにしてもこいつがテンパるだと?珍しいこともあるもんだ。

「実は……最近ちょっと困ったことに巻き込まれておりまして、京介氏のお力を是非お借りしたいのです」

あぁ、なるほど。ようやく話が見えてきた。
付き合ってくれってのは力をかしてくれって意味か。俺、完全に勘違いしちゃってたよ。
それなら“買い物に付き合って”みたいなノリだったのにも納得だ。


918. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01:13:14.59 ID:sXuewvQo
「わかった。俺でよければ付き合うよ」
「ほんとですか?ありがとうございます京介さん!」

だけどあの沙織がテンパるような事態って……一体どんなやばい事件に巻き込まれてるんだ?



あれから数日後、俺は真新しいスーツに身を包み、地図を頼りにとあるホテルまでやってきた。

「高坂京介様ですね、お待ちしておりました。お嬢様からお話は伺っております」
「はぁ、どうもっす」

ホテルのロビーに入ると、槇島家のメイドさんらしき人が声をかけてきた。どうやら俺を待っていたようだ。
っていうかリアルにメイドさんなんているんだな。俺は秋葉原でしか見たことないよ。

メイドさんに連れられ最上階のレストランへと辿り着く。

「本日貸し切り?」

え?貸し切り?入っちゃって大丈夫なの?

「ふふ、大丈夫ですよ。貸し切っておられるのは槇島家ですから」

困惑顔の俺を見て、クスリと笑うメイドさん。
やべ、超恥ずかしい。でも俺達一般人にとって貸し切りなんてのは無縁のものなんだからしょうがない。

「お嬢様はあちらで既にお待ちです」

メイドさんに促されレストラン内の一角を見やる。
すると外の景色を眺めている沙織の姿を確認できた。
恐らくあの席が最も展望がよく、このレストランでも特等席にあたるのだろう。


919. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01:14:51.40 ID:sXuewvQo
「あの…高坂様」

沙織のもとへ歩いて行こうとするとメイドさんが俺を呼び止めた。

「はい?なんでしょう?」
「お嬢様のこと、よろしくお願いいたします」

そう言って深々と頭を下げるメイドさん。
ここまで心配してもらえるのも、ひとえに沙織や沙織の両親の人徳ゆえだろう。

「はい。うまくやれるかはわからないけど…精一杯がんばりますよ」

―――――――――――

「で、力をかして欲しいって俺はいったい何をすればいいんだ?」
「はい、それなんでござるが…」

沙織が言うには、なんでも以前お見合いした相手がなかなか諦めてくれないんだそうだ。

「一度はお断りしたのですがなかなか納得していただけなくて…」
「キモッ、まるっきりストーカーじゃん」

見ず知らずの相手をばっさりと切り捨てる桐乃。
だが、今回ばかりは俺も同意見だ。

「仕方ない、今回だけは兄貴貸してあげる。」

おい、なんで俺がおまえの持ち物っぽくなってるんだよ。
まあ、いいや。

「それで?俺はお見合いの場に殴り込めばいいのか?」
「そ、それはダメでござる!相手はお父様の取引先のご子息ですからできるだけ穏便に……」

まじか…やりにくいな……。
ってことはあれだろ?以前俺が親父に対してやったような説教はできないってことだろ?

「じゃあ一体どうするんだ?」
「拙者の彼氏役として同席していただければそれで大丈夫です。
 さすがに相手の方も拙者に彼氏がいれば諦めてくれるでしょう。この役、京介氏にお願いしても?」


920. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01:16:00.47 ID:sXuewvQo
普段あれだけ世話になってる沙織からのお願いだ、断れるわけがないだろう?
それでなくても友達が困ってるんだ。助けないわけにはいかないさ。
俺は一も二もなく了承したよ。

「おう、まかせろ」

俺が了承してから沙織が桐乃と黒猫とにしきりに謝っていのが印象的だった。
なんでそいつらに謝ってるんだ?謝るべきは俺じゃないの?
いや、別に謝ってほしいわけじゃないんだけどさ。

――――――――――――

「よう沙織」
「こんばんは京介さん、お待ちしておりました。こちらにどうぞ」

そう言って自分の隣の席を指し示す沙織。

今日の沙織はいつものグルグル眼鏡を外し、ドレスに身を包んでいる。
くっ…これはやばい。なにこの破壊力。
こんなにかわいけりゃ相手が諦めきれないのも無理ねえよ。
これで眼鏡でもかけようものなら俺だってストーカーしちゃうぜ。あのぐるぐる眼鏡のことじゃないよ?

「京介さん?」

棒立ちになっている俺を心配したのか沙織がこちらを見上ていた。
ぐ…これはやばい。普段こいつの上目使いなんて全く見ないもんだから耐性がついてない分さらにやばい。
まぁ、例の眼鏡のせいでどのみち目は見えないんだけどさ。

「お、おう。わりぃわりぃ」

席に着いて相手の到着を待つ。
沙織によると、相手との約束の時間は21時らしい。
今の時刻は20時30分。一応早めに着いておいた方がいいだろうということでこの時間にやってきたわけだ。

「ところで沙織、沙織のご両親は?」

見渡したところ俺達の他に誰かがいる気配はない。

「なにぶん忙しい方たちですから」

そう言って微笑む沙織はどこか寂しげだった。
……お金持ちはお金持ちなりの苦労があるのかもしれねえな。

「そっか。大変なんだな、おまえも」

こいつがなにかと俺達の世話を焼いてくれるのは、沙織自身が寂しかったってのもあったのかもしれない。


921. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01:17:27.08 ID:sXuewvQo
「ふふふ、最近はそうでもないんですよ?これもきりりんさんや黒猫さん、そして京介さん…あなた達のおかげです」
「そっか、そりゃあ……よかった」

沙織との会話も盛り上がってきた頃、噂のお相手が到着した。

「もういらしてたんですね。お待たせしてしまったようで申し訳ありません」

あれ?なんかいい奴っぽくない?しかもやたらイケメンだし。年は20歳くらいか?
そういえば金持ちってやたらイケメン多い気がするんだけど気のせいかな。…今なんの関係もないけど。

「……そちらが例のお相手ですか?」
「はい。私が想いを寄せている高坂さんです」
「初めまして。高坂京介です」
「初めまして高坂君。僕は城戸星矢」

そう言うと星矢は右手を差し出してきた。俺も右手を差出し握手をかわす。
しかし、星矢ってすげえ名前だな。そのうちペガサス流星拳とか放ちかねない名前だ。

「ははは、父が聖闘士星矢の大ファンでね。この名前もそのせいさ」

なるほど、フェイトさんみたいなもんか。

…はっきり言って第一印象は悪くない。人柄は良さそうだし、なによりイケメンだしな。
沙織はこいつのどこが駄目だったんだろう。

「さて、沙織さん。この際ですから単刀直入に申し上げます。僕はやはりあなたを諦めることはできそうにない」
「…どうしてですか?」

そりゃそうだよな。
俺もここにくるまでは、内心相手のことをストーカーまがいの野郎だと思ってた。
だけど、そうじゃなかった。俺の人を見る目を信じるならばこいつはそんな男じゃない。
少しばかりの化粧とドレスで着飾った沙織を見たら大半の男はそうなっちまうよ。
それくらい今日の沙織は美しくて、男を惑わせる魅力を持っているように見えた。

「以前僕はこう言いましたね。あなたが連れてくる相手が僕以上の人間であれば、僕以上にあなたを幸せにできる人間であれば素直に諦めると」

そんなこと言ってたなんて聞いてねえぞ!?
沙織!これはどう考えても人選ミスだろ!?

「はい、確かにおっしゃいました」

だが、沙織は少しも動じる様子はない。


922. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01:18:55.80 ID:sXuewvQo
「彼を馬鹿にするつもりは毛頭ありませんが、僕にもプライドがある。そこらの男には負けていないという自負も」

星矢は、ギリと拳を握りしめた。
そりゃそうだろう。沙織が自分以上の人間として連れてきたのが俺みたいな凡人じゃ、怒りたくもなるってもんだ。

「何故ですか!?僕のどこが彼より劣るというんです!?そこの地味目の男のどこが僕より勝っているというんですか!?」

「お黙りなさい!!」

「え?」
「え……」

星矢も俺同様に呆気にとられているようで、目を丸くして沙織を見つめていた。

「この方は私が選んだ方です!その彼を貶めるような物言いは私が許しません!」

ちょ、ちょっと沙織!?いくらなんでもキレすぎだろ!?
っていうかおまえがキレるとこなんて初めて見たわ!

「あ………」

星矢も自分が言ってしまったことを理解したのか、何かに気付いたような表情を見せた。

「すみません、高坂君。とても失礼なことを……」

自分に非があると理解すれば年下のはずの俺にも素直に頭をさげる。
やっぱり俺の人を見る目は間違ってなかった。こいつは本当にいい奴なのだ。
ただ、沙織がそれを狂わせるような魅力を持ってたってだけでさ。

「あ、頭を上げてください!そもそも別に俺は怒ってないし、あなたが言ってることって事実っすから!」
「でも、ようやくわかりました」
「え?」

頭を上げた星矢は妙にさっぱりした顔をしていた。

「貶められたのが僕であれば沙織さんは今ほど怒ってはくれなかったでしょう。沙織さんがあんなに怒ったのはあなたが貶められたからです」
「は、はぁ……」

こいつは一体何を言ってるんだ?確かに今の状況はそうだけどさ。
単純に現状確認してるだけなのか?

「ふっ、その様子だとよくわかってないようですね。……人間、好きな人と結ばれるのが一番幸せってことですよ」
「き、城戸さん!?」
「ははは。では、僕はこれで失礼します。沙織さん、今までご迷惑をおかけしてすいませんでした。


923. ◆qPOxbu9P76 2011/01/02(日) 01:20:33.96 ID:sXuewvQo
そう言って沙織に頭を下げる星矢。
そして星矢は俺の方を振り向くと、

「高坂君、僕が言えた義理ではないけれど…沙織さんをよろしくお願いしますね」

そんな言葉を残して去って行った。



「終わった……のか?」
「はい、お疲れ様でした京介さん」

はぁ〜〜超緊張した………。
やっぱり上流階級の人間と話すってのはそれだけで緊張するもんだな。
もうしばらくこんなマネは遠慮したい。

「でも、なんであいつは諦めたんだろ?」

緊張が解け、リラックスしてきたせいか頭がさっきの言葉の意味を考え出す。

『人間、好きな人と結ばれるのが一番幸せってことですよ』

「ま、まさか……沙織?」

ありえるか?こんな綺麗なお嬢様が?
沙織の方を振り返ると何やらうつむきがちになって申し訳なさそうな顔をしていた。

俯いている人間の顔がなぜ見えるかって?
ははは、そんな野暮なこと聞くなよ。

「あ、あれ?どうしたんだ沙織?」
「あ、あの実は、両親にも同じ言い訳を使っちゃってて……」
「え?」

ってことはまさか……

「もう少し……私にお付き合い頂いても?」

くそっ!こうなったらとことんやってやるよ!!

「まかせろ!どこまででも付いてってやるぜ!」
「ありがとうございます!大好きです京介さん!!」
「ぐお、お、重い!いきなり抱き着かないでくれ!俺にも心の準備ってもんがあああ!?」

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