396. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/08(土) 03:48:05.60 ID:sB/tDRMo
元日の午後――
郵便受けを確認してはため息をつく。
私は朝からそんな情けない行動を繰り返していた。
妹1「お姉ちゃん、年賀状何枚届いた〜?」
黒猫「うっ!? べ、別に……いいじゃないそんなこと」
妹1「わたし、学校の友達から10枚も届いたんだよ〜」
黒猫「そ、そう…… よかったじゃない……」
妹1「お姉ちゃんの年賀状は遅れてるのかなー?」
黒猫「そうね……私の年賀状は闇世界の住人からのものだから、配送ルートが一般とは異なるのよ」
妹1「ええー、すっごーい」
妹1「じゃあ届いたら 絶 対 見 せ て ね」
黒猫「(しまった……)」
397. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/08(土) 03:49:12.39 ID:sB/tDRMo
最近、上の妹が私の闇属性の能力や世界観を疑っている気がしてならない。
これまでも時折みせていたあの子の冷ややかな眼差しに、私は気付かないふりをしてきたけれど、
最近は随分と露骨な態度をとりだしている。
下の妹は素直に受け入れてくれているのに……
これは姉の威厳に関わる由々しき事態だわ。
それにしても私の下僕達はなぜ年賀状を送ってこないのかしら。
こちらは私の力作イラスト入りの年賀状を送っているというのに。
……。
考えても答えなんて出やしない。私は恥を忍んで直接問い質すことにした。
Prrrr
ガチャ
沙織『これはこれは黒猫氏、明けましておめでとうごさいまする』
398. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/08(土) 03:49:56.19 ID:sB/tDRMo
黒猫『……おめでとう。貴女いま何をしているの?』
沙織『拙者は年末からフィジーのリゾート地で過ごしているのでござるよ。
遊びのお誘いでしたかな?申し訳ござらぬ』
黒猫『そ、そう……じゃあ(年賀状は)仕方ないわね……』
沙織『本当は日本で年越しをして年末恒例のアニメ一挙放送などで盛り上がりたかったのでごさるが、
家族の付き合いも蔑ろにはできぬゆえ致し方なく』
沙織『しかし青い空に広い海、常夏の南半球はいいですぞ〜。いつか黒猫氏も(ガチャ』
ふん、ブルジョアの戯れ言なんかに付き合ってられないわ。
しかし一番見込みのあった沙織が駄目となると……不本意だけど、あの女に頼るしかなさそうね。
399. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/08(土) 03:51:25.74 ID:sB/tDRMo
Prrrr
ガチャ
桐乃『ありゃ、あんたからかけてくるなんて珍しいじゃん。どういう風の吹き回し?』
黒猫『……新年早々随分なご挨拶ね。とりあえず新年おめでとう』
桐乃『あ、うん。おめでとう』
黒猫『ちょっと確認したいことがあって電話したのだけど、貴女は年賀状――』
桐乃『あーっ!!!そうそう、思い出した!アンタとんでもない年賀状を送り付けたでしょ!?』
黒猫『えっ?……私が送ったのはただのイラスト入りの年賀状よ』
桐乃『あれのどこが“ただの”なのよ!? アンタのやたらアゴのとがったケバケバしたキャラ絵で
埋め尽くされててる痛々しい年賀状なんて……受け取る身にもなってみなさいっての』
黒猫『……ひどい言い草ね。私の力作に対して』
桐乃『元日の年賀状は一家の分がまとめて配達されるのよ?
年賀ハガキの束に潜んでたあの年賀状を見つけた時のうちの両親の表情といったら……
宛名にはバッチリ兄貴とあたしの名前が書かれてるしサ……』
桐乃『あれはもうテロね。年賀テロよ!』
黒猫『うぐっ……』
桐乃『あんたもさぁ、ちょっとはTPOをわきまえなさいよね』
400. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/08(土) 03:52:08.98 ID:sB/tDRMo
黒猫『そ、そんなことより、貴女達はどうなの?』
桐乃『へっ?』
黒猫『貴女からも先輩からも……年賀状が届いてないんだけど……』
桐乃『ああ、だってあんた住所教えてくれてないし?
だからパソコンのアドレスにメールで送っておいたよ。兄貴と連名で』
黒猫『えっ? そういえばまだメールチェックをしていなかったわ……』
桐乃『なにそれ〜〜〜せっかく0時0分ちょうどに送ったのに』
黒猫『それは悪かったわね。後で見ておくわ。で、ものは相談なのだけど……』
黒猫『それ、あらためて年賀ハガキでいただけないかしら?』
桐乃『えええ?面倒くさいってば。
大体、2011年にもなって紙で送るとか無いってwwwwいまはデジタルデータの時代ですからwwwwww』
黒猫『……電話で草を生やすのはやめて頂戴。こっちにも事情があるのよ』
桐乃『なによ事情って?』
401. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/08(土) 03:53:16.62 ID:sB/tDRMo
かくかくしかじか――
黒猫『――というわけなのよ』
桐乃『要するに、妹に闇世界からの年賀状が届くって電波全開の大風呂敷広げちゃって困ってるワケね』
黒猫『いつもながら癇に障る言い方をする女ね』
桐乃『だって事実じゃん?』
黒猫『……』
桐乃『んで、どういう年賀状を書いて欲しいの?』
黒猫『そうね……ハガキから暗黒の瘴気が感じられるような、おどろおどろしい感じの年賀状を書いて欲しいの』
桐乃『……な、なにそれ』
黒猫『そういう風なイラストを描くとか。マスケラの世界観的な?あ、でもトレス絵はやめてね』
桐乃『いや、そんなの無理だから』
黒猫『じゃあ、そうねぇ……血文字で書くとか?』
桐乃『……もっと無理でしょ』
黒猫『貴女、協力する気が無いの?』
402. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/08(土) 03:57:30.26 ID:sB/tDRMo
桐乃『てか、アンタもさぁ、新年も迎えたことだし、邪鬼眼電波設定はそろそろ卒業した方がいいんじゃない?
付き合ってられないっての』
黒猫『な、なんですって……!?』
桐乃『今年で高二になるんでしょ?厨二病ならまだ可愛げもあるけど、高二病はやばいって』
黒猫『……いいわ、貴女に頼んだ私が莫迦だったわ(ガチャ』
本当にあのスイーツ女は言うことは言うくせに、役に立たないったらありゃしない。
ハァ、これで振り出しに戻ってしまったわ。
かくなる上は……もはやあの方法しか……。
今年も結局やるのね……。
403. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/08(土) 03:58:14.51 ID:sB/tDRMo
二日後――
妹1「お姉ちゃんすごい!年賀状30枚も届いてる!!」
黒猫「ざっとこんなものね。まぁ、私が予想してたよりはずっと少なかったわ」
妹1「一枚一枚すごい絵が描いてあるよ! ……あれ、でも消印がないね?」
黒猫「……!!」ギクッ
おわり
最終更新:2011年03月03日 21:34