無題:6スレ目877


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877 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/16(日) 18:23:14.62 ID:dfLwBmsm0 [3/12]
「ほら、あんたも挨拶なさい。この人は、桐乃のカレで――」

ああ、知ってる。この間会ったばかりだからな。
御鏡光輝――ファッションモデル兼デザイナーで、エタナーの別ブランドを
任されているイケ好かない美形野郎だ。

言ってみれば桐乃の男版だな。エロゲーにも興味あるし、異性からも人気が
あって、上からの信頼も厚い。妹の様な凶暴性はないけどな。

「よう……」
「こんにちは京介くん、お邪魔してます」

気にいらねえ……なんで俺はこんなにイラついてんだ? 桐乃が誰と付き合おうが、
あいつの勝手だ。俺には関係ねぇだろ? だが頭では分かっていても、
目の前にいる御鏡を殴り飛ばしたい衝動が襲ってくる。

落ち着け……
妹が、彼氏を家に連れて来て家族に紹介なんてよくある話だ。
高坂家だって例外じゃない。

ふと視線を桐乃に移すと、俺の反応を待っているかの様にジッとこちらを
見つめていた。兄貴の口からどんな言葉が紡ぎ出されるのかを今か今かと
待ち構えている。

――どうするか

しばし、リビングに静寂が訪れる。
カチ……カチ……
壁に掛けてある時計の秒針音だけが周囲に響き渡った。

悔しいが御鏡は客観的に見ても女受けする顔立ちをしている上に、
性格も謙虚で爽やかだ。桐乃とも趣味が合う……

2、3分ほど経っただろうか。
お袋が無言の俺に痺れを切らし、次の言葉を促した。


878 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/16(日) 18:23:50.42 ID:dfLwBmsm0 [4/12]
「で、どう? 御鏡君が桐乃の彼氏だってことについては」
「……ああ、いいんじゃないか?」
「……!」

桐乃が眼を見開いて、息を呑んだ。気のせいか、あいつの顔からサッと血の気が
引いたかの様に感じたが……俺は何か変な事を口走ったか?

「御鏡、こんな妹だけどさ宜しく頼むわ」
「えっ……と……は、はい。桐乃さんを大事にします……」

なんで驚いてるんだコイツは。至極真っ当な台詞を口にしたつもりなんだがな。

「じゃあ、御鏡ゆっくりしてけよ。お袋、俺勉強すっから上行くわ」

リビングを出ようと、歩みかけた瞬間に桐乃と視線がぶつかった。
すがる様な目で俺を見てくる。なんでそんな顔してんだよ……
彼氏が出来たんだから、もっと喜んだらどうだ?

「良かったな、桐乃。御鏡は男の俺から見てもいい奴だと思うぜ。
まぁ……頑張れ」
「あ……」

桐乃が何か言いかけた気がするが、俺はその言葉を耳に入れる事なく2階へと上がった。
ドアを閉め、そのままベッドに倒れ込む。正直なところ、自分の鬱積した感情を
押さえ込むのに手を焼いた。この意味不明な苛立たしさが何なのか皆目検討がつかない。

「まぁ……あの野郎なら桐乃とうまくやっていけそうだしな」

そう自分に言い聞かせて、しばし眠りに落ちた。





879 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/16(日) 18:24:19.99 ID:dfLwBmsm0 [5/12]
翌日から桐乃の様子がおかしくなった。顔の表情が曇りがちで、覇気が感じられない。
家族が話し掛けても、一言二言で終わらせて後は沈黙するのみだ。

「……行ってきます」

桐乃は朝食にほとんど手を付けずに学校へ出掛けた。俺は椅子に座りながら、
目の前の両親に疑問をぶつけた。

「なあ、最近桐乃の様子がおかしくないか?」
「私にも分からないのよ」
「フン。大方、あの馬の骨との不純異性交遊にうつつを抜かして、
周りが見えておらんのだろう。」

親父がしかめ面で、茶をすする。そういえば、このオッサンは桐乃が御鏡と
付き合う事に反対してたらしい。御鏡が来た翌日に、お袋からそれを聞かされた。
俺も痛い程、気持ちは分かるんだが……
仕方ねえだろ、あいつが自分で選んだ男なんだからさ。

そう心中で無理矢理、自分を納得させて俺は家を出た。

――――
―――
――

昼休憩になり教室で昼飯を食っていると、あやせからメールが来た。

『ご相談があります。17時にあの公園で待ってますから』

相談内容は、桐乃の事だろうな……
放課後、指定の時間に行くと、あやせがベンチで俯いていた。

「悪い、待たせたな」
「いえ……」

元気が無いな。そういえば桐乃が交際し始めたと伝え聞いた時も、驚きを隠せない様子だったらしく、その日は一日中、魂が抜けたかの様な表情だったとか。


880 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/16(日) 18:24:51.61 ID:dfLwBmsm0 [6/12]
「で、なんだ相談って?」
「桐乃の事なんですけど……」
「ああ」

あやせはその先を言い淀んでいたが、やがて意を決したように口を開いた。

「御鏡さんと別れたみたいです」


……は?

一瞬、自分の耳を疑った。別れた?まだ1週間も経ってないのにか?

「……元々、付き合ってる最中も桐乃は変だったんですよ。憔悴しきったような顔をして、
全然幸せそうじゃありませんでした」

なんだそれ……なんなんだよ

「私が破局した理由を聞くと、自分から振ったとしか言わなくて。無理して笑顔
をつくって……正直、見てられませんでした」

あやせは膝に置いた手を震わせて、悲壮感に満ち溢れた表情で呟く。
桐乃のほうから振った?あいつが自分で見定めて、家まで紹介しに来たんだぞ?
意味が分かんねえ……

「それで……俺にどうしろと?」
「元気づけてあげてくれませんか? 意欲的で、華々としたいつもの桐乃に
戻って欲しいんです」
「……」

俺はその懇願にどう応えるべきか迷った。
こういう時は、迂闊に触れないほうがいいんじゃないか? でもな……
しばし自問自答した後、俺は返事を返した。

「……分かった、なんとかする。上手くいくかどうか分からないけどな」


881 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/16(日) 18:26:06.88 ID:dfLwBmsm0 [7/12]
高坂家に帰宅すると、玄関に桐乃の靴が履き散らかされていた。
あいつ、いつもは綺麗に揃えるのに。

「お袋と親父は……帰ってねえか」

冷蔵庫の麦茶を一杯飲んだ後、俺は階段を上がり、桐乃の部屋の前に立った。
軽く深呼吸した後に、躊躇いがちにドアをノックする。

「桐乃、いるか?」

――返事は無い。もう一度、ドアを叩く。

「なあ、いるんだろ? 少し話があるんだけどさ」

やはり言葉は返ってこない。試しにドアノブに手を掛けて回すと、
あっさりと扉が開いた。

「桐乃……?」

薄暗い部屋を見渡すと、ベッドに座って窓の外を眺めていた妹を認識出来た。

「どうしたんだ、電気も付けないで」
「……あたしの勝手でしょ」

桐乃は顔をこちらに向けずに、そのままの態勢を崩さない。

「あやせが心配してたぞ……お前が落ち込んでるってな」
「……」
「御鏡と別れたらしいな」
「……!」

ピクッと僅かに体を反応させた後、桐乃は緩慢な動作で顔をこちらに向けてきた。

「……あやせから聞いたの?」
「ああ」
「余計な事言ってくれちゃって……」


882 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/16(日) 18:26:36.52 ID:dfLwBmsm0 [8/12]
「桐乃、なんで別れた? しかもお前のほうから振ったらしいじゃねえか。
家まであいつを連れて来ておきながら」

桐乃は再び顔を背け、冷然とした口調で呟いた。

「アンタには関係ないでしょ……」
「……」

確かに妹の恋愛沙汰に家族が一々口を挟むのも、お節介かもしれない。
でもな……こんなに意気消沈したお前をこれ以上見たくねえんだよ。

「お前の事が心配なんだよ」
「あたしを心配……? なにそれ、彼氏を連れてきた時に何も言わなかった癖に」

いや、お前何言ってんだ。普通に祝福してやっただろ。

「何が気にいらねえんだよ、俺はお前の幸せを思って……」
「うっさい、喋んな!!」

桐乃は怒声を浴びせながら傍にあった枕を投げ付けてきた。

「っ! 何しやが……桐乃?」

泣いて……んのか? 妹の瞳から涙が溢れ、数滴の雫となって
ベッドシーツに染み込んでいく。

「アンタが何も言わないから……! アンタが悪いのよ!」
「何を怒ってんのか、さっぱり分からねえよ!」
「アンタ、あたしが御鏡さんと恋人になって何とも思わなかったの!?」

思ったさ。あの野郎をぶん殴ってやりたい衝動に襲われるくらいにな。でもさ、
仕方ねえだろ?その場で反対して何になるってんだ?

「別に……何とも。前も言っただろ、御鏡ならお前を――」

最後まで言い終わらない内に、桐乃が俺につかみ掛かって来た。


883 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/16(日) 18:27:07.84 ID:dfLwBmsm0 [9/12]
「何で……何で分かんないのよ、アンタは!」

そう叫んだかと思うと、俺の襟元をつかんで床に叩き付けた。

「いっ……! な、何を」

背中に走る痛みに耐えていると、桐乃は仰向けに倒れている俺に馬乗りになり、
再びシャツの襟元を掴んで絞り出す様な声を出した。

「御鏡さんは……彼氏の振りをしてくれてただけ。本当は付き合ってなんかない……」
「は……?」

彼氏の振り?コイツ何言ってんだ?じゃあ、俺や親父、お袋やあやせにも
嘘をついてたってことなのか?

「何の為にそんな嘘を――」
「アンタがあたしを見ないからでしょ!」

そう叫ぶと桐乃は再び興奮状態に陥り、俺を射抜く様な視線を浴びせてきた。

「あたしがどんだけ頑張ってきたと思ってんの!? 陸上も、勉強も、お洒落も!
全部……全部……!」
「桐乃、落ち着……」
「全部アンタの為に頑張ってきたの!!」

な……?

時間が止まったかのような錯覚を覚えた。
我に返って、桐乃の放った言葉を頭の中で反芻する。

全部俺の為……? それって、それってまさか。まさかお前、俺を……?

「あたしは……あたしはアンタの事が……」
「……」


884 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/16(日) 18:27:42.64 ID:dfLwBmsm0 [10/12]
シャツを掴む力が一気に弱まった。俺は桐乃の言葉を受けて放心状態にあったが、
しばらくして、その告白ともとれる台詞に対して返答をした。

「駄目だ」
「え……?」
「桐乃、俺はお前の兄貴だ。兄が妹とそういう関係に陥るのは……」

その刹那――何かに言葉を遮られた。

「――!」

桐乃の柔らかく端々しい唇が、俺の唇に重ねられていた。顔が急激に火照っていく。
触れ合った肌から、口唇から、桐乃の脈打つ音が感じられた。


――それから幾許の刻が流れただろうか。ふいに桐乃が顔を離し、囁いた。

「……てよ」
「え……?」
「あたしを女として見てよ……お願い……」
「……」

俺は視線を天井に移して桐乃が御鏡を紹介した時の事を振り返っていた。
何故あんなにも苛立ちを感じ、焦燥感を覚えたのか。
何故、御鏡をぶん殴りたい衝動に襲われたのか。

彼氏が出来た妹に歯痒さを覚える兄貴というのは、どこの家庭でも聞く話だ。
だが、俺はどうだ。御鏡が桐乃の彼氏と聞いた時の、それらの事例を遥かに凌駕する程の
嫌な感情が体中を駆け巡ったのはどういう事なのか。

それはつまり――

自分の中で幾重にも渦巻いていた意味不明のマイナス感情が、完成したジグソーパズルの如く
一つに収束していく気がした。


885 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/16(日) 18:28:21.51 ID:dfLwBmsm0 [11/12]
「……桐乃、あのな」

俺の言葉に反応し、桐乃は身体を小さく揺らす。

「世間や近所で肩身が狭くなってもいいか?」
「え……?」
「お前を連れて、腕なんか組んでさ。色んな場所にこれから――」

全てを言い切らない内に、桐乃が俺に抱きついてきた。

「兄貴……兄貴っ……!」

泣きながら、俺にすがる桐乃の背中に優しく手を回した。

「悪かったな、悲しませちまって」
「ううん、いいって。ねえ兄貴」
「ん?」



「……大好き」
「ああ」

そう囁いた後、俺達は再び互いの唇を重ね合わせた。


終わり
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