14 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/20(木) 17:08:56.72 ID:t9HYaQDS0 [2/7]
「ふ……ふふっ、ふふふ……」
今日の黒猫は何だか様子がおかしい。
何かいい事でもあったのか、顔がニヤケっぱなしだ。
「なあ、そんなに興奮して何かあったのか?」
今日も一緒に高校から帰って来て、二人で俺の部屋にいるわけだが。
さっきからずっと、独り笑いをしている黒猫に問い掛けてみた。
「先輩……遂に私は邪眼の力を得たのよ。ふふ……」
「はぁ?」
いきなりどうしたんだコイツは。
とうとう、妄想と現実の区別がつかなくなっちまったのか?
「いや、何言ってんだお前」
「やはり人間風情には理解できないでしょうね……
まあ身をもって知るといいわ。闇の力をね」
そう言うやいなや、黒猫は俺に向かって手をかざし、訳の分からない呪文らしき
ものを呟き始めた。そして――
「ハアッ!」
と叫び声をあげた……何だってんだ。
「おい黒猫、邪気眼もそこまでに……っ!」
動けない。え? 体が動かんぞオイッ!
何かに縛られているかのように、自分の身体が微動だにしない。
15 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/20(木) 17:09:58.49 ID:t9HYaQDS0 [3/7]
「さらに……」
空間から縄が現れて、俺の体をグルグル巻き始めた。
こうなると全く身動きがとれねーぞ! ど、どうするつもりだ。
「お分かり? 今の私は、こんな事もできるのよ」
「お、俺を動けなくさせて何をしようってんだ! お前は」
「ふふ……そうね。例えば……こんな事かしら?」
黒猫は俺に流し目を送りつつ、顔を上気させてこちらに近づいて来た。
そして俺の顔に手を添えて――
「く、黒猫?」
「黙って……先輩……」
黒猫は目を潤ませて、切なげな表情でどんどん顔を近付けて来た。
こ、これはまさか……! 正に唇が触れ合おうとしたその時。
「そこまでよ、この泥棒猫!!」
「き、桐乃!?」
「なっ……!」
勢いよくドアを開け放ち、桐乃が入って来た。
「何であたしの兄貴に手を出してるワケ?」
「フン、別にあなたの許可なんていらないじゃない」
「うっさい! 兄貴はあたしだけのものなんだから!!」
お、おいおい。何言ってんだ桐乃。つか、お前俺の事好きだったの!?
「いやだわ、ブラコンも度が過ぎると手に負えないわね」
「電波女には言われたくないっての」
「でも無駄よ……今の私にはこれがあるもの」
そう言って黒猫は手をかざしブツブツ唱えた後、いとも簡単に桐乃にも金縛りをかけた。
16 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/20(木) 17:10:29.09 ID:t9HYaQDS0 [4/7]
「な、何これ……動けない。ア、アンタ超能力でも身に付いたの!?」
「そんな事どうでもいいじゃない。まあ、あなたはそこで私と先輩の愛の営みを
眺めているといいわ……ふふ」
桐乃を挑発した後に黒猫は俺のほうに向き直り、再び唇を接近させてきた。
「先輩……さあ儀式を」
と、その時――
「破ぁ!!」
桐乃が叫んだかと思うと、今まで不動だったあいつの身体が動き出した。
「何ですって……!?」
「こんな事もあろうかと、寺生まれのTさんの所で修業しておいたのよ。
アンタみたいな奴から兄貴を守る為にね!」
な、なんだと。桐乃、お前いつからそんな凄い奴になったんだ!?
「クッ、見くびっていたわ」
「今度はあたしの番ね。破ぁーーーーッ!!」
「かはっ……」
黒猫は桐乃の放った気弾を受け、意識を失ってしまった。
桐乃にこんな事ができるなんて……寺生まれってスゴイ、俺は改めてそう思った。
術者が倒れたためか、俺の身体そのものは動くようになった。だが、
縄で縛られているために依然として身動きはとれない。
「やれやれ、威力はTさんの半分か」
そう呟き、ひとしきり黒猫を見つめた後に桐乃はこっちへ近付いてきた。
17 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/20(木) 17:11:32.05 ID:t9HYaQDS0 [5/7]
「兄貴……」
「き、桐乃?」
桐乃が未だ動けない俺の背中にスッと手を回し、抱きついて来る。
その後、物欲しそうな顔をしながら――キスを迫ってきた。
「お、おい桐乃」
「目を閉じて……」
ま、待て。駄目だ! 俺達は兄妹なんだぞ? そう思うも手足の自由が効かないのでは
どうしようもない。おとなしく流れに身を任せようとした、その時。
ブイーンブイーン、と桐乃のポケットにある携帯のバイブ音が鳴った。
「チッ……いいところで。誰?」
『もしもし、桐乃?』
「あ、あやせ? どうしたの」
『あのね、今――』
通話相手は、あやせのようだが……何を話してんだ?
「ええええええええ! ブリジットちゃんがこの家の付近にいた!?」
『そうそう。早く行かないと見失っちゃうよ?』
「こうしちゃいらんない。兄貴、また後でね!」
「お、おい」
桐乃は目にも留まらぬ勢いで部屋を飛び出してしまった。まず俺の縄を解いてくれよ……
しかし、どうしたもんか。
「どうやら上手くいったようですね」
「えっ」
この声は、まさか――
「あ、あやせ!? 何でお前がここに……!」
「桐乃の部屋にずっと潜んで好機を伺ってたんですよ、フフフ」
18 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2011/01/20(木) 17:12:33.41 ID:t9HYaQDS0 [6/7]
コ、コイツ……そうか!
隣の部屋に隠れてたから、ブリジットがこの近くにいたって分かったのかよ!
「ま、まさか。お前も何か能力を」
「私にはそんな力、必要ありませんよ。だって……これがありますし」
カバンから、手錠とムチを取り出すあやせ。ん……?ムチ?
「さあ、たっぷりと愛し合いましょう。お兄さん」
「おい待て、そのムチは何だよ!?」
「何いってるんですか。私とお兄さんの絆を深めるための大切な道具ですよ、フフフ……」
あやせが服を脱ぎながら、じりじりと距離を縮めて来る。
おいやめろ、俺にはビシバシ叩かれて喜ぶような趣味はねーぞ!
「さあ、おとなしく……うっ」
呻き声を上げて、その場に倒れるあやせ。一体何が起こったんだ?
「マネージャーさん!無事ですか?」
「えっ、ブリジット!?お、お前なんで?」
「胸騒ぎがしたので……」
見ると、いつぞやのコスプレ大会で振り回していたアレを持っている。
どうやら、それであやせの頭に一発ドカンとやったようだ。
「助かったぜ。俺さ今、動けないから何とかして欲し……ブリジット?」
じーっと舐め回す様に俺の身体を見て、頬を染めるブリジット。
気のせいか、何やらモジモジしてるような……まさか。
「わたし……初めてだけどマネージャーさんが動けない分、頑張りますから!」
「……」
頼む。誰か俺をここから解放してくれ……
終わり
最終更新:2011年01月20日 17:14