無題:7スレ目95


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95 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/22(土) 04:56:04.67 ID:YM/ATvuS0 [7/13]
「桐乃、実は俺、お前の事が好きなんだ」
「……は?」

状況を説明しよう。
俺はまた桐乃の部屋でエロゲをやらされている。
いや、きっと今重要なのはそこじゃない。

そう、今日は4月1日、エイプリールフールである。
つまり今日ばかりは合理的に嘘をつくことが許される。

だが、偽彼氏の一件でダメージを受けた俺にとっては、あまり大きな嘘は躊躇われた。
あまり家族関係がギクシャクするのも好ましくないからな。

――――――――――――――――――――――――――――――――

だから俺は、
(シスコンキモッ、馬鹿じゃん?)
ぐらいの反応を期待していたんだよ。
あいつもすぐに嘘ってわかって、そう返してくる。
そう思うだろ?
俺としては、妹との他愛無いコミュニケーションのつもりだったんだ。

『……つまり、話のネタのつもりで嘘を吐いたら本気で怒られてしまい、
それからというものきりりん氏に元気がない。
兄としてはなんとかして元気付けてやりたいと……
そういうことでござるな?』
「まぁ、おおむねそんな感じだ。なにか良い考え無いか?」

俺はあれから一悶着あって桐乃に部屋を追い出されてしまい、仕方なく自室に戻ったわけだ。
桐乃のいつもの癇癪だと思っていたが、数日経っても桐乃に元気が戻らない。
やっぱり嘘にしてもやりすぎたのかと反省して、沙織に人生相談の真最中というわけだ。

……沙織、溜息はやめてくれ。
これでも一生懸命考えているんだ。

『拙者はその一悶着とやらを思い返してみることをお勧めしますぞ』
「そう言われてもな……」

俺はそう言ってベッドに寝転がった。
しかし、誰であろう沙織の提案である。それにどの道俺には解決策が浮かばない。
ここは素直に従っておくとしよう。
確かあの時は…………


96 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/22(土) 04:56:55.66 ID:YM/ATvuS0 [8/13]
「あんた……何言ってんの」

あれ?桐乃の様子がおかしくないか?
いつもみたいに罵倒してくると思ったんだが……
今の桐乃は俯いて、手を震えるほど力強く握り締めている。
おいおい、今日はエイプリールフールだぞ?
嘘だってわかるだろ?そこまで嫌がらなくても……

「おい、桐乃……?」
「……」

返事が無い。ただの桐乃のようだ。
なんて悠長なこと言ってる場合じゃなさそうだ。
黒猫と違って、こいつが静かってのは只事じゃない。

「おい、桐n」
「出てって」

聞き逃してしまいそうな声だったが、確かにそう聞こえた。
普段の桐乃らしくない、とても弱弱しい声だった。
そして、だからこそ放っておいちゃいけない気がしたんだ。
だが、

「出てけ!」

次に桐乃から発せられた言葉によって、俺は退出を余儀無くされた。




……確かこんな顛末だったはずだが……

「すまん、さっぱりわからん」
『はぁ……』

なあ沙織、お前の溜息は地味にきついんだよ。
心に刺さるものがあるっていうか……

『拙者から言えることはただ1つでござる。
きりりん氏は「好きだという嘘」を吐かれたのが嫌だったのだと思いますぞ。
……ここから先は京介氏が御自分で考えてくだされ。それでは』

そこで電話は切れた。

どういうことだ?
沙織は一体何を言って……
……落ち着け俺。頭の中を整理しよう。
ここまでの状況と沙織の言葉から考えられる状況は……

1 桐乃は嘘が嫌い
2 俺に「好きだ」と言われたのが嫌だった
3 桐乃に彼氏(本物)か好きな人がいる

このあたりか……
1番はあやせならともかく、桐乃は無いだろう。それは除外してもいいだろうな。
2番は濃厚だな……だが、沙織の言葉といまいち噛み合わないような……
3番だとしてもあの反応はあまりしっくりこないような……
まぁ、考えたくないってのもあるが……


97 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/22(土) 04:57:58.19 ID:YM/ATvuS0 [9/13]
「……うーん」

わからん。さっぱりわからん。
頭の中のモヤモヤが浮かんでは消える。
ここのところその繰り返しだ。

考えられる可能性はこの数日で考え尽くした。
沙織の助言を貰った今でも、はっきりとした答えが出ない。
だが、沙織の言った通りここから先は俺が考えるべき問題だろう。
安易に黒猫やあやせに相談していいものじゃないよな。
……説得力無いか。もう沙織に相談したしな。

俺は壁に寄りかかって座りなおした。
今回ばかりは本当に桐乃の考えがわからない。
というか、今まで俺がわかってやれたことの方が少ないんじゃないだろうか。
だが、それでも理解してやりたい。
あんなに沈んでるあいつはこれ以上見ていられないしな。

「よしっ」

親父やあやせの時のような秘密兵器は無いが、いっちょやってみるか。

98 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/22(土) 05:00:00.93 ID:YM/ATvuS0 [10/13]
「桐乃ー、いるか?」
「……」

一応呼びかけてみた。部屋にいるのは知ってるんだがな。

「話がしたいんだ。ここを開けてくれないか?」
「……入って」

ようやく返事が返ってきて、部屋に入ることができた。
桐乃の部屋に入るのは数日ぶり程度だというのに、ずいぶん懐かしく感じてしまった。
……いかんいかん、本題を見失うわけにはいかない。

桐乃はベッドに座って壁に寄りかかっていた。
この前よりずっとやつれて見えるのは気のせいじゃないだろう。

「この前のことなんだけどよ……」
「……!」

そう言った途端、桐乃の体がビクっと僅かに反応した。

「何?『あれは嘘なんだ』とかでも言いに来たワケ?
はっ、そんなこと一々言われなくてもわかってるって。
出来の悪いあんたと一緒にしないでくれる?そういうの、マジウザイから」

……なんだよ……

「じゃあ、なんd」
「そもそも妹にマジで告白する兄貴とか有り得ないでしょ。
あんたがいくらシスコンだからってそんなことしないのはわかってるし」

……なんなんだよ……

「おい、桐n」
「じゃ、そういうことでいいでしょ?
もう出てってくれる?あたしあんたと違って忙しいんだよねー、色々と。
あんたすぐに出t」
「桐乃!」

「……なによ」
「なんでお前は……泣いてんだよ」

桐乃は話し始めてからずっと涙を流していた。
そして、それを隠すためのように喋り続けていた。

「……別に。あんたには関係無いでしょ」

桐乃は吐き捨てるかのように言い放った。

「……正直、お前が何が気にくわなかったのかわかんねぇ。
でも、そんなお前を見てると放っておけねぇんだよ!」
「はぁ?心配?そういうのがウザイんだって!」
「どうしてだよ!妹の心配して何が悪い?」

わからねぇ、やっぱりわからねぇ。
こいつは何を考えている?何がしたいんだよ!


99 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/22(土) 05:00:58.56 ID:YM/ATvuS0 [11/13]
「あんたは何もわかってない!
なんであたしが頑張ってるのか!
なんであたしが御鏡さんに恋人の振りを頼んだのか!」
「ああ、わからねぇよ!俺にはお前がわからねぇ!
いつも意味不明で理不尽なことばっかしやがるし!勝手にキレ出すし!
どうすりゃいいんだよ!」
「あたしは!」

そういって、桐乃は手元の枕を投げつけてきた。
俺はそれを避けることができずにまともに顔に当たり、一瞬目の前に火花が散った。
そして、抗議の声を挙げるために前を見ると。

「ってえな!……!?」

俺の目に映ったのは、今まさに俺に掴み掛かろうとする桐乃だった。
まあ一般人たる俺に、その一瞬でできたことといえば驚くことぐらいで、
その一瞬後には俺は襟元を掴まれてしまっていた。
だが、その力はとても弱く、少しでも振り払えば倒れてしまいそうにも見えた。

「あんたが……あんたが全部悪いのよ……!」
「お前……」
「あたしは!あんたに認めてほしかったの!」

え……?
こいつは一体何を……?

「勉強も!スポーツも!お洒落も!他の人に負けないように頑張った!
あんたに認められたくて!そのために!」

何言ってるんだ、少なくとも今の俺はお前のことを認めてるんだぜ?
口に出しゃしねーがな。

「でも今は!それだけじゃ嫌なの……!
あんたの……あんたの一番になりたいの……!」

俺の脳味噌は最初この言葉の意味を考えられなかった。
いや、もしかしたら拒絶していたのかもしれない。
俺は兄貴だ、こいつは妹だ……そんな感情が、今までこの可能性を消していたんだ。

搾り出すように自分の気持ちを紡ぎだした桐乃は、いまだに俺の襟元を掴んでいた。
その力はさっきより更に弱弱しく、手は小刻みに震えていた。
きっと今、こいつは心で泣いているんだろう。
こいつは強いから、泣くところなんて見せようとしないが。
……いや、「強い」ってのもどうだかわからないな。
「強くありたい」だけであって、本当は俺の思っている以上に打たれ弱いのかもしれない。


100 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/22(土) 05:01:43.56 ID:YM/ATvuS0 [12/13]
俺が嘘を吐いた時、こいつはどんな気持ちだったのだろうか。
嘘だとわかってしまうからこそ、辛かったのだろうか。
俺が部屋に入って来た時、こいつはどう感じたのだろうか。
俺の口から直接言われることを恐れていたのだろうか。

バラバラになっていたピースが集まり、俺の中で組み合わさって……
気付けば、桐乃の体を抱き締めていた。

「あ、兄貴?」

ああ、そうか。
俺は桐乃のことを理解したかったんだ。きっと、ずっと前から。
桐乃の趣味を馬鹿にしないってのは、俺の本心から出た言葉でもあったんだろう。
今の今まで気付かないなんて、俺は本当に馬鹿だよな。

「なあ、桐乃。
俺の人生相談、乗ってくれないか?」
「え、うん。別に……いいケド」

目を白黒させて桐乃は答えた。その眼には不安の色も見える。
それを見て少し苦笑してしまう。
まあそうだろう。いきなりの展開だからな。
お前は予想外の事には対処できないしな。

「それじゃ、俺からの人生相談……
妹の一番になりたい兄貴は、どうすりゃいいのかね?」

それを聞いた桐乃の顔はみるみる明るくなり……

「……はっ、馬鹿じゃん?」

……俺の大好きな笑顔になった。

「あたしの中じゃ、あんたが常に一番だから。いままでも、きっと、これからもね」


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