無題:7スレ目606


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606 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/02/10(木) 21:00:42.56 ID:3XdfzXHco [2/6]
ブリジット・エヴァンス。
流れるようなブロンドヘアーに、碧い透き通るような瞳、そして類まれなる美貌を持った彼女は、今、その美しい顔を夕日に照らされながら俺の腿を枕にしてうたたねをしていた。

「どうしてこうなった」



午前11時。ピンポーン、とインターホンが鳴った。
親父は仕事。お袋はお隣の奥さんと連れだってどこかへ出かけた。妹様は朝からいつものメンバーで秋葉へと繰り出して行った。
そんなわけで、俺は珍しく平和な休日を過ごすチャンスを得、のほほんしようとしていたわけなのだが、俺の平穏はいつだって唐突に崩れ去る。

「はいはい、今出ますよ」

リビングにあるソファから重い腰を上げ、サンダルをひっかけ玄関扉を開ける。
そこには見知った顔が立っていた。

「ち~す。桐乃いる?」

出会いがしらから適当なあいさつをくれやがったこのちんちくりんは来栖加奈子。桐乃の表の友人である。

「だ、駄目だよ、かなかなちゃん。ちゃんと挨拶しないと……こ、こんにちは」

こちらの礼儀正しいお嬢さんはブリジット・エヴァンス。金髪碧眼の有名なコスプレイヤー。縁あって、今はあやせや加奈子と同じ事務所に所属している。
ちなみに加奈子の方が年上ではあるが、ブリジットの方が背も高いししっかりしているので、加奈子の方が年下に見える。
こいつは年下に素行の悪さを注意されて恥ずかしくねーのか。

「桐乃ならいねーよ」

加奈子の質問に答えてやると、加奈子はがっくりと項垂れた。

「まじかよ~。せっかくブリジットの世話頼もうと思ったのによ~。桐乃、なんだかこいつのこと気に入ってるみたいだったし」

以前の偽装デートの時のこと。ブリジットを半泣きにした加奈子に対して桐乃はマジギレしていた。
こいつは、その辺りから桐乃がブリジットを気に入ってると判断したのだろう。
事実、桐乃はブリジットの大ファンなわけだから、こいつの判断は間違っていない。

と、ここでふと思い返す。そういえばこいつらには俺のことを桐乃の彼氏だと紹介したんだったな。
加奈子はどうせ忘れているだろうけど、ブリジットはどうかわからない。
面倒なことにならないうちに引っ込むのが吉だ。


607 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/02/10(木) 21:02:35.66 ID:3XdfzXHco [3/6]
「そういうわけだから、じゃあな」

そう言って玄関扉を閉めようとすると、加奈子は突然扉の隙間に足を滑り込ませた。

「おっと、逃がさね~ぞぉ。桐乃がいないなら兄貴でいーや」

扉の隙間からは加奈子のにやにやとしている顔が見えた。

「お、おい。まさか俺にブリジットと遊んでろっていうんじゃあるまいな」
「そのまさかだよ。加奈子ってぇ~、今日はナンパされるのに忙しいのぉ。人助けだと思ってさぁ~」

……なんという下らない理由。
猫なで声で俺に頼み込む加奈子。しかし、こいつの本性を知っている俺にとってはただただ気持ち悪い。

「あのなぁ、俺は平和な休日を満喫してるんだ。それに、ブリジットだっておまえと遊びたいんじゃないのか?」

もっともな言い訳で加奈子が諦めるのを待つ。
こいつは意外に優しい奴なのでブリジットが嫌がるようなことはしないはずだ。だから、この説得方法で大丈夫だと思ったのだ。
しかし、

「わ、私は……お兄さんがいいならお兄さんと遊びたいです」

俺の説得は意外な所から失敗した。
ちょ、ちょっと何言ってるのこの子!?

「ほらほら、ブリジットもこう言ってるしよ。じゃあ後頼むわ」

そう言うと加奈子はさっと踵を返し走り出した。追いかけようと玄関を飛び出すと、加奈子は意外にも少し離れたところで立ち止まっていて、そしていきなり大声で叫んだ。

「ブリジットに手だしたらぶっ殺すかんな、このロリコン!」
「大声でなんてこと叫びやがる!」

加奈子は言うだけ言ってそのまま逃走してしまう。
まったく、ご近所さんに聞かれてたらどうするつもりだ。
唯一の救いは隣の奥さんはお袋と出掛けているはずなので不在であるということか。
この状況で他に選択肢はない。俺は取り残されたブリジットに声をかけた。

「よかったら寄ってってくれ」

少し申し訳なさそうに頷いたブリジットのために、俺は玄関扉を開けてやった。


608 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/02/10(木) 21:04:15.61 ID:3XdfzXHco [4/6]
「あの……一つ質問があるんですけど」

ブリジットにお茶とお茶請けを用意してやり、二人揃ってソファでお茶を飲んでいると、ブリジットがそう切り出した。
ちなみに、ブリジットに出したのは日本茶で、お茶請けは田村家から頂いた和菓子だ。
外国人であるブリジットなら紅茶よりもこういうのの方が喜ぶと思ったのだが、正解だったようだ。
ブリジットは目を丸くして、ふわぁ、とか、おぉ、とか感嘆の声をあげていた。
そんなブリジットが思った以上にかわいかったので、俺の気も大きくなっていたらしい。

「なんだ? なんでも聞いてくれ」

いいところをみせてやろうとしたわけではないが、ちょっと恰好をつけたい気分だった。

「お兄さんって、桐乃さんの彼氏さんじゃなかったんですか?」

ビシッ。全身に筋肉がこわばる音が聞こえたようだった。
おおう、この子はやっぱり覚えてたのか。そりゃそうか、加奈子を判断基準として用いる方が愚かだった。

「……加奈子には言わないでくれよ?」

この子なら信頼できる。なんとなくそう思った俺はそうなった経緯を話すことにした。
マネージャーやってたことは内緒にしておいたけどね。



「ふわぁ、お兄さんって妹さんが大好きなんですね!」
「ぐ……い、いやそれはだな……」

瞳を輝かせてにこにこと笑うブリジットを前にしては、中々はっきりと否定しにくい。
なんだか、子供の夢を壊すようで罪悪感を感じてしまう。

「いいなぁ。恋人もいいけどお兄ちゃんもいいなぁ」

一人で納得して、挙句そんなことを言い出すブリジット。
少し前まではませた子供だと思っていたのだが、単純に仲がいい男女というものに憧れているだけなのかもしれない。

「あ、あのっ!」

そんなことを考えていると、ブリジットから声がかかった。

「ん? なんだ?」

しかし、ブリジットは手を体の前で交差させ、うつむきがちになってもじもじとしている。
少し間が開いて、意を決したように俺を見たブリジットは少し顔が赤くなっていた。
その歳に似合わぬ表情に思わずどきりとさせられてしまう。

「お、お兄ちゃんって呼んでもいいですか?」

全身からがっくりと力が抜ける。俺は一瞬何を期待したのか。これじゃあロリコンと言われても仕方ねえな。

「……おう。好きによんでくれ」

リアといいこいつといい、どうやら俺は外国の妹には懐かれる傾向があるようだ。
実妹の方は俺のことをどう思ってるのかわかったもんじゃないけどな。


609 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/02/10(木) 21:06:12.90 ID:3XdfzXHco [5/6]
結局、その後はメルルのアニメを見て過ごした。桐乃にメールで貸してくれと頼んだのだ。
いきなり何? と訝しがられたが適当にごまかしておいた。ブリジット二人で見る、なんて言ったらあいつはきっと怒り出すだろう。

5話前後見たところで、はしゃぎすぎて疲れたのかブリジットがこくりこくりと舟をこぎだした。
横になるか? と尋ねたところ、そのまま俺の腿を枕にして眠り始めてしまった。
そして、俺はこのまま動くこともできず冒頭の状況に繋がるわけだ。

「どうしたもんかね」

これからの行動に頭を悩ませていると、ガチャリと玄関扉が開く音がした。
やばい! 即座にそう思ったが、もう後の祭りである。
リビングのドアを開けた桐乃はそのままのポーズで固まり、一言も発しない。

「ふあ」

タイミングを見計らったかのようにブリジット目を覚ました。

「おはよう、お兄ちゃん」



この後、当然のように俺は桐乃にこっぴどく怒られた。やれロリコンだの、やれ変態だの、どうして教えてくんないのとかな。
ちくしょう、なんという理不尽。教えなかったのは確かに俺が悪い気もしなくはないが。

付け加えておくと、加奈子にもこっぴどく怒られた。ただ、桐乃の兄貴として怒られたわけではない。
あやせのお願いでまたマネージャーの真似事をすることになったときのことだ。
それはブリジットが発した何気ない一言が原因だった。

「じゃあ頑張れよ、二人とも」
「うんっ。頑張るね、お兄ちゃんっ!」

どうやらブリジットにはあっという間にばれてしまったようだ。黒猫にも一瞬で見破られたし、俺の変装ってそんなに変わり映えしないみたいだな。
手をふりながらステージへと駆けていくブリジットを苦笑しつつ見送った。
俺の背後では、加奈子が今まさに修羅と化そうとしているのに気付かずに。



おわり
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