無題:7スレ目809

809 名前: ◆3RC.SHzrpk[sage] 投稿日:2011/02/22(火) 11:04:31.31 ID:O1n4Sl1DO [2/6]
「お兄さん。お兄さんは一体いくつもらったんです?」

人生相談があると、あやせにいつもの公園に呼び出された俺。
だが、あやせの第一声はおよそ人生相談とはかけ離れたものだった。

「いくつって、なんのことだ?」
「決まってるじゃありませんか。バレンタインですよ」

なんで突然そんなこと聞いて来るんだ?
バレンタインからはもうだいぶ日が経っている。……まさか俺にチョコを!?
なんてな。あやせたんからもらうのはバレンタインから3日経った時点で諦めたよ。
俺の反応を見て楽しむつもりなんだろうか……そう考えると素直に答えるのも悔しくなってくるな……。

「……そんなに貰ってねえよ」
「4個ですか?」
「なんでそんなピンポイントで指摘してくるんだよ!?」
「ふむ、4個ですか……」

ぐぬぬ……あやせには何か特殊な能力が備わっているのではないだろうか。
確かに今年は麻奈美の他に黒猫と沙織、そして桐乃からで4個だったが……。
日付をまたぐ直前に急に部屋のドアが開いて投げつけられたのもカウントに入れてもいいよな?
と、今は回想よりあやせの話を……

「……だいたい……お姉さ…………りの……通り………他……ブツブツ」

あ、あやせさん?なんか怖いですよ?
なんだか直接殴られたりするよりも恐怖を感じるぞ……。

「……うん。あ、お兄さんまだいたんですか?」

なにそれ酷い!

「あのな……。それで、人生相談はどうしたんだ?」
「あー、今日はもういいです。私このあとに用事ができたので帰りますね」

そう言って俺の返事を待たずに公園の出口に向かうあやせ。まったく今日はなんだったんだ?
公園を出る前にあやせが振り向いた。

「明後日も人生相談があります。同じ時間にこの公園で待ってて下さい~!」

少し離れた俺に聞こえるように大きめな声でそう言うと、小さく手を振ってから走り去って行った。
……ちくしょー。可愛いな……。

810 名前: ◆3RC.SHzrpk[sage] 投稿日:2011/02/22(火) 11:06:30.37 ID:O1n4Sl1DO [3/6]
──約束の日


公園の入り口についた。
待ち合わせの時間までまだ20分くらいあるんだがすでにあやせがいる。取っ手付の箱をもってるな。
手元の箱を見たりキョロキョロしたりして挙動不審だ。なんか可愛いからちょっと見てよう。
……あ、気づかれた。

「お、お兄さん何やってるんですか!早くこっちにきてください」

呼ばれて近づく。
黙って見てたことについて怒られるんだろうな。いいものも見れたしそれくらい甘んじて受けよう。

「あ、あの、それで今日はですね」
「お、おう。……ってあれ?怒らないの?」
「なななんで私が怒らなくちゃいけないんですか!おk怒りますよ!?」

なんだかあやせの様子がおかしい。テンパってないか?

「いや、変なこと言ってすまんあやせ。で、今日はなんだって?」
「え、あ、その、あのですね……」

あやせの言葉を待つ。が、なかなか返ってこない。
何か言いかけては下を向くのを繰り返し、ついには下を向きっぱなしになってしまった。

「あやせ……?もしかしてその箱になんかあんのか?」
「!?いいいやこれは違くて、じゃなくて違いますこの箱です!!」

え、どっちなの?その箱なの違うの?

「あ、あやせ?とりあえず落ち着け。な?」
「わわ私は落ち着いてます!……スーハー……」

落ち着いてる奴は深呼吸なんか……まあいいかこれで落ち着いただろう。

811 名前: ◆3RC.SHzrpk[sage] 投稿日:2011/02/22(火) 11:09:30.60 ID:O1n4Sl1DO [4/6]

「えーとですね……。今日はこれをお兄さんに……」
「俺に?」
「~~!!おおお兄さんの妹の桐乃に渡して貰いたいんです!!」

なんでそんなややこしい言い回しをするのかはわからんが、要は桐乃への配達員役をしろってことか。
直接渡せばいいのに、とは思うが、今日のあやせは様子がおかしいしさっさと用事を済ませて解散したほうがいいな。

「わかった。その箱を桐乃に渡せばいいんだな?」
「……はい」

なぜか暗い顔でおずおずと箱を持ち上げるあやせ。
俺は反対側を受け取るが、あやせがなかなか離さない。

「あやせ……?」
「……」

むぅ、どうしたもんかね。
あやせも黙ったままだし、ここは一旦手を離して……

「「あっ!」」

ドサッ

あやせもちょうど手を離すところだったらしく箱を落としてしまった。

「な、中身は!?」

あやせがあわてて箱を開けると、中には少し形の崩れたチョコケーキのようなものが2つ入っていた。

「う、うぅ……せっかく作ったのに……」

つ、作った?
多少形は崩れてしまってはいるが、元の出来はかなりよかったことが見て取れる。
あやせはお菓子作りも上手いんだな~。おっと、思考が横道にそれてしまった。
今はこの状況をなんとかしないと……。

812 名前: ◆3RC.SHzrpk[sage] 投稿日:2011/02/22(火) 11:12:20.59 ID:O1n4Sl1DO [5/6]

「あやせ、そんなに落ち込むなって」
「でも、もうこんなになっちゃって……グス……もう……捨てるしか……」
「す、捨てる!?」

その言葉を聞いて、俺はあやせからケーキの箱を取り上げた。

「ちょ、ちょっと返してください!」
「嫌だね!こんなにうまそうなものを捨てるなんて言う奴には返せねえ!」
「き、桐乃にはちゃんときれいなのをあげたいんです!いいから返してください!」
「ならこれは俺がもらう!」
「な、ちょ、それもダメです!」

ええい、もうこうしてやる!
俺はケーキの乗っていたアルミ箔をつかみいっきに2つともたいらげた。

「ああ!」
「むぐ、すっげぇうまかった、もぐ、ん、ごちそうさん」
「………お兄さんのバカ……」

ああもうバカでもいいね。あやせたんの手作りケーキが食えたんだから。
シチュエーションはおかしかったけど、しょうがねえだろ。あれしか思いつかなかったんだから。

「……あの、そんなに美味しかったですか?」
「ああ。まったく、桐乃がうらやましいな」
「でしたら、今度桐乃のモノを作り直してくるときにお兄さんのぶんも作ってきます。お、お礼に」

お礼?礼なんてされるようなことはしてないぞ?
嫌がってるのに食っちまったぐらいだ。ケーキを。

「い、いいんです。とにかくお礼なんです!受け取らなかったらぶち殺しますよ!?」
「ありがたく受け取らせていただきます!」

この俺がマイスイートエンジェルからの贈り物を受け取らないことがあるだろうか、いやない。

……!?びっくりした今目の前に天使がいるのかと思ったらあやせたんだった。
だってよ、見ろよこの笑顔。……!?ああ驚いた女神かと思ったらあやせたんだった。
桐乃にケーキを渡すっていう今日の目的は潰れちまったはずなのに、なんでだろうな。
ほんとに今日のあやせはおかしいぜ。……!?(ry

───────────────

「ではお兄さん、また今度」

そう告げて天使、いや女神、いや(ry
あやせは帰って行った。
ああ、次の人生相談が楽しみだ!




終わり

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最終更新:2011年02月22日 13:41
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