無題:7スレ目949


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949 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/28(月) 01:57:35.15 ID:8cnOQ5sEo [3/8]
「ここ……ね?」

店の名前を確認して店内に入る。

少し明かりの量が少ない、どちらかといえばカップル向けの店だった。

「いらっしゃいませー、お一人ですか?」

「いえ、ツレが先に来てるので。」

店員の案内を制して、奥に入る。

そうするとすぐに待たせていたツレの姿を見つけることができた。

窓際の外がよく見える席。

カップルが二人で外を見ながら食事やお酒を楽しむという席だろう。

そこで1人、水を飲みながらメニューを眺めている彼女を見て私は苦笑しながら声をかけた。

「おまたせ、ごめんなさいね。遅れてしまって。」

「まったくですよ。こんな雰囲気の店のこんな席で女一人で待たすなんて! どういうプレイですか!瑠璃さん!」

「店も席も私のセレクトじゃないのだけれど……というか全部あなたのセレクトでしょう?あやせ」

席につくと店員がすぐに注文を取りに来た。

ビールとすぐに出せるものを頼んでから、再びメニューに目を落とす。

「別にこんな店じゃなくても、安い居酒屋でいいじゃない。八剣とか魚民とか」

「なに言ってるんですか!そんなトコばっかりだと、いざ彼氏ができたときにこまるじゃないですか!!」

「……普通、そういうのって男性に任せてリードしてもらうものじゃないの?」

「……私と瑠璃さんの過去から現在に至るまでで、そういうリードできる男性っていましたっけ?」

言われて過去記憶をさかのぼるが、そういう男性を思い出せない。

大学時代の先輩や他サークルとの飲みではいたが、これはそういうのとは別カウントだろう。

そもそも私は彼らをそういう風に見ていなかったし。

そんなことを考えているとビールとアテが運ばれてきた。

「こういう店ではアテでも結構見た目がきれいなのね。」

「まあ、そういうお店ですからね。じゃあ、とりあえず……

「「かんぱーい」」

グラスを軽く当てて乾杯をする。

しかしこういう店ではビールのグラスもおしゃれなのね。


950 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/28(月) 01:59:07.97 ID:8cnOQ5sEo [4/8]
2.3杯のお酒を飲んで一通りの料理が出揃うことには、お互いの話も軽くスタート部分が終わっていた。

「それにしても、こうしていると人生分からないものね。」

「わたしと瑠璃さんがこうして飲んでることですか?べつに不思議じゃないでしょう?

高校が同じで、大学が同じ学部、サークルでも交流があったんですから」

キョトンとした顔でそう返したあやせに私は苦笑しながら切り返す。

「そうじゃなくて、最初に会ったときのことを考えるれば、こういうことになるなんて思えなかったでしょう?『ビッチ2号』さん?」

「ああ~……そのことですか……そういわれるとたしかにそうですね、『邪気眼厨二女』さん」

あやせも苦笑してそう返す。

3杯目のチューハイをあけて、三度ビールを頼む。

ビッチ2号に邪気眼厨二女。

私達がお互いをそう呼ぶことになった彼女を思い浮かべながら昔のことを思い出す。

「……お互い、苦労してるわね」

「瑠璃さんはまだいいじゃないですか、高校時代に恋人だった時期あったんだから」

「あなたこそ、けっこう告白されたりしてたし、合コンじゃ行ってたじゃない」

「……最初の基準がお兄さんですよ?」

「言いたいことはわかった。飲もう。」

そういって二人で4杯目のお酒を開けた。

最初の本格的な恋なあんないい人だと後のハードルが高くなって困る。

お互い、本当に苦労するわね。



「桐乃の親友ってことでキャラかぶってましたよね」

「それを言うなら黒髪ロングという見た目もキャラかぶってるわ」

「お兄さん的に攻略キャラってことでもかぶってましたよね」

「あなたはPSPでおめでたENDあったからいいじゃない」

「瑠璃さんはまだ原作メインヒロインの可能性残ってるじゃないですか」

「いまのところ7:3くらいで分が悪い気がするわ」

951 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/28(月) 02:02:22.68 ID:8cnOQ5sEo [5/8]
くだらない話をして2時間ほど過ぎたころ。

お互いの仕事の不満と、男への不満を出し尽くして、そろそろネタがなくなってきた。

しかしまだお互いまだ余裕があるし、なんとなくまだ話していたかった。

というよりまだ本題の話をしてない。

……話す場と機会を提供してもらったのだから、ここは私から話すことにしよう。

「そろそろ……予定日ね」

「!!……ですね……」

「シスコンをこじらせると大変ね」

「そのシスコンを本気で好きになった女が言っていいことじゃないですよ」

「そうね」

二人ほぼ同時にまたお酒に口をつける。今度は一口だけ。

「でも……ブラコンをこじらせた方も問題ですよね」

「『兄さん』や『お兄さん』と呼んで慕っていた女が口にしていい言葉では無い気がするのだけど?」

「いいんですよ、私達は。私は桐乃のお兄さんって意味で、瑠璃さんはお兄さんを茶化すように使ってたんだから。」

「そうね、そもそも兄妹でもないし。」

魚の刺身のサラダのようなもの『カルパッチョです、瑠璃さん』

……カルパッチョに箸をのばす。うん、おいしい。今度家でも作ってみよう。

「お見舞いには?」

「行ってないです。というかアレ以来会ってないです。メールや電話では連絡取ってますけど」

「そう」

人のことは言えないがつくづく難儀な娘だ。

兄さんのこともあきらめて、桐乃の思いも理解したというのに。

いえ、だからこそかしら?

全部理解して、納得して、ケジメをつけたからこそ会いにいけない。

私には理解できないけれど、この娘ならと納得はできてしまう。

私はこの場で何度目になるかわからない苦笑してから、手を伸ばしてあやせの頭をなでる。

「……もぅ、なんです?」

「明日、二人でお見舞い行くからね。決定、拒否権ないから」

「……似すぎてて怖いんですけど?」

「兄さんに『お前、中身桐乃じゃねーだろうな?』といわれたくらいだからね」

「……瑠璃さんは桐乃を妹扱いしていい気がしてきました」

「これ以上手のかかる妹が増えたらたまらないわ」

「タマラないですか」

「悪い意味の方よ」

なでていた手をグーにして軽く小突く。

952 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/28(月) 02:04:09.56 ID:8cnOQ5sEo [6/8]
「イター、なにするんですか、もぅ」

「殴られたのにうれしそうにニヤニヤしてる後輩がいた、通報したい」

「やめてください、黒歴史ここで話しますよ」

「それこそやめてください」

こんどは二人でニヤニヤする。本当にとんだバカ女達だ。

「まあ、明日の予定も作ってしまったことだし、今日はここで解散ね。」

「……どんな顔して会えばいいんでしょうか?」

あやせが笑顔から一転、沈んだ顔になる。本当に難儀な娘だ。

「いつもの……あの子と会ってたときのままのあなたでいいんじゃないかしら?」

「お兄さんを変態扱いして、桐乃をおかしいって言ってた時の私……ですか?」

「ええ、そのあなたのまま、会って、話して、おめでとうを言ってあげれば

 桐乃は喜ぶんじゃないかしら?」

親友に祝福してもらえれば、少しくらい悪態をついても差し引きプラスになる。あの子はそういう子だ。

「……やっぱり瑠璃さん、桐乃のお姉さんを名乗ってもいいと思います。」

「いくら先輩の妻になれても手のかかる妹とその娘がついてくるんなら、それは流石に遠慮したいわ」

「結婚できても一番になれない……意味が無いですね」

「そういうこと。それに……なにより……」

目を閉じてあの兄妹のことを思い出す。

息を吸ってあの兄妹との思い出を取り出す。

息を吐きながらあの人のことを思い出す。

そして

「もう、あの兄妹に振り回されるのはごめんだわ」

「……そうですか」

半分本気、半分強がりを言う。

きっとあやせもそれがわかっているのだろう、あきれた口調でそういってからは

もう何も言わなくなった。


953 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/28(月) 02:06:54.95 ID:8cnOQ5sEo [7/8]
外にでると店に入る前は空にいた雲がすでにどこかに消え、月が出ていた。

「あら、月がきれいね……」

「……瑠璃さん、いくら男運に見放されつつあるとしても、百合ルートに行く勇気はまだ……」

「そういう意味じゃない。というかわざとでしょ?わざわざ夏目漱石の英訳持ってきてまであなたはなにがしたいの?」

「明日桐乃に会ったときに、おめでとうを言うためのイメトレです(キリッ」

「心の底からウザイ、私が潰れるまで酒に付き合せたい」

「申し訳ありませんでした。10秒しか経ってませんが、後悔し、海より深く反省しています」

本当に難儀で面白い娘だ。

「……なんにせよ」

「はい?」

「私はいつまでもあの子の親友で、あの兄妹の味方よ。だから祝福する。世間がどう言おとね。」

「……私も……そう言い切りたいんですけどね」

「言い切れるわよ」

背中から聞こえてくるあやせの弱音に間髪いれず応える。

理由なんてこの1つだけで十分だ。



「だってわたしもあなたも……桐乃の……あの兄妹の親友でしょ?」

そう、それだけでいい。

私とあやせのこの関係も、元をたどれば『桐乃の友人』

たったそれだけしかなかったのだから

だから、こそ言い切る。言い切って、その言葉を貫き通す自信がある。

「私達が親友を祝福できないわけがない」




END
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