俺の妹の友達がこんなに狡猾なわけがない:8スレ目349


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349 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/09(水) 15:01:28.52 ID:aphiU9Ato [9/21]
「んあ……」

あー……、朝か。
陽光がカーテンの隙間から差し込み、陽気なスズメ達が新しい一日の訪れを歓迎している。
俺は体にかかっているシーツをどけ、上体を起こした。俺は裸で寝ていたので、今はちょっと寒い。それにしても……あー、頭痛えぇぇ。
右手で頭を押さえながら、左手でベッドを押し、立ち上がろうとした俺だったが……

むにゅ♪

あー、なんだ?今の感触は。
その正体を探ろうと、俺は左手がある方向へ目を向けた。そこには……一糸纏わぬ姿を惜しげもなく曝け出している超美女がいた。

「へ……?」

え?ちょっと待て。このお美しいご婦人はどちら様?何で俺のベッドで寝てるの?しかも裸で。
なんとか寝る前の記憶を探ろうとするも、さっきから引いてくれない鈍痛が、俺の思考を妨害する。
ダメだ……、思い出せん。つか、ここドコ?よくよく見たら俺の部屋じゃねえぞ!?
え?いやマジでどうなってるの?そういえば、何で俺も裸?
朝起きたら見知らぬ部屋で、隣には知らない美女がいて、お互い裸……だと……?軽くホラーじゃねえか!?
オーケーオーケー。落ち着けよ、俺。まずはこの状況を冷静に整理しよう。

Q.ここはドコだ?  A.知らない部屋だ。
Q.何故、俺は裸?  A.まったくわからん。
Q.この隣の美女は? A.存じ上げない。

……なるほど、わからん。何もわからんことがわかった。
って、何にも解決してNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!11
と、とりあえずだな、まずは服を着よう。うん、それが良い。そうしよう。ちょっと寒いしな。
今にも声を張り上げそうな自身を抑え込み、俺は室内を見渡す。俺の服はベッドのすぐ傍に有った。
下着を身に着け、ジーンズを穿きながらも俺は考えていた。昨日の夜は、何してたっけか?
確か……、うん飲んでた。外で飲んでたんだ。しかも俺一人じゃなかった。誰とだっけか?
服を全て身に着け、昨日の行動を何とか思い出そうとしている俺の耳に、可愛らしい声が届く。

「んぅ……」

ここで言い訳をさせてほしい。俺は昨日の行動を思い出すだけで精一杯だったんだ。だからさ、失念していたんだよ。ベッドで寝ていた女性が……裸だったのを。
首だけベッドの方向に向けた俺は、その姿勢のまま固まった。
考えてもみてほしい。顔だけじゃなく、その肢体もパーフェクトと言わざるを得ないスーパービューティーが、寝ぼけ眼でこちらを見ているんだ。
男性諸君、君達ならばわかるだろ?そんな神の作品……、いや美神が目の前で無防備な姿をしていたら、俺と同じ反応になるはずだ!

「あ、おはようございます。京介お兄様」

おまけに声も美しいだと!?なんだ、この完璧超人は!これでメガネを掛けていたら、もう言うことは無い!断じて無い!!
……ん、ちょっと待てよ。今、このヴィーナスは俺の名前を呼んだ。それはいい。だが、普通の呼び方じゃ無かったよな?
このアフロディーテは何と言った?――――「京介お兄様」だと?

「え?お、おま……おま……」
「あ、あの……。そんなにジロジロ見られると、恥ずかしいです……///」

ご婦人は体を覆っているシーツを口元まで持っていき、頬を赤らめながらそんな可愛いらしいことを言ってきやがった。
ぐふっ!圧倒されただと!?
俺はそんなサービスシーンを前にしながらも、なけなしの理性を総動員させて目を背けることに成功した。自分で自分を褒めてあげたい。
視線をどこに向ければいいか迷っている俺の背後では、小さな衣擦れの音が聞こえてくる。おそらく、先程の女性が服を着ているのだろう。
くそう、なんでこういう時って聴覚が敏感になるんだ?この原理を解明できたらノーベル賞取れるんじゃねえか?
俺は脳内を駆け巡る様々な疑問や邪念を振り払いながら、なんとか後ろにいる女性に話しかけた。

「あ、あの……つかぬ事をお聞きしますが……。沙織さんですか?」
「へ……?もう、何を仰っているんですか?わたくしは沙織ですよ……ふふっ」

やっぱりそうだ!俺のことを「お兄様」なんて呼ぶのは沙織だけだもんな!しかもお嬢様モードの!
あー、良かった。沙織だったのか。ふぅ、焦って損した。
……あれ?そうなると、俺は沙織と閨を共にしたということか?なんで?
『謎が一つ解けたら、新たな謎が出てきた』。な……何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった……。
頭がどうにかなりそうだった……。催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。

350 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/09(水) 15:02:35.63 ID:aphiU9Ato [10/21]
お互いに服を着終えた俺達は、改めて向き直った。俺にははっきりさせておかねえといけないことがあったからな。

「沙織……。聞きたいことがある」
「はい、なんでしょう?」

沙織はフリルブラウス、ブラウンのシフォンスカート、グレーのニーソックスという格好だ。あのぐるぐる眼鏡も無い、完璧なお嬢様モード。
なんでこういうときに限ってお嬢様スタイルなんだよ……。おかげで直視できねえ。

「ここはどこだ?」
「わたくしの家です」
「なんで、俺はここにいるんだ?」
「昨夜、お兄様が酔い潰れてしまいましたので、こちらに運ばせていただきました」

成程。俺も飲んでいたことだけは覚えている。その相手が沙織で、酔いつぶれた俺を介抱してくれたってことか。
ホント、コイツには助けられてばっかだな。

「そっか。迷惑かけて悪かったな。ありがとよ」
「いえ、礼には及びません。それに、昨日は……その……」
「ん?」

どうしたんだ?沙織のヤツ、いきなりもじもじし始めたぞ。おまけに顔もほんのり赤い。う~む、実に色っぽい。
いやいや、そうじゃねえ。なんでいきなりこんな反応を?トイレか?

「その……ですね。わたくし、お兄様に激しく愛されてしまいましたので……、とても嬉しくて……」

ホワッツ?何を言ってやがるんですか、この超お嬢様は?激しく愛された?
……え?それって、どういう意味?言葉通りの意味なの?HAHAHA、そんなまさか……。
だが、俺のそんな願いは、沙織の次の言葉で粉々に砕かれてしまった。

「わたくし、初めてでしたのに……。お兄様ったら、何回も何回もわたくしを求めてくださって……」

……………oh.
俺は無言で立ち上がると、この部屋の中でも特に頑丈そうな壁の前で立ち止まった。これなら……これなら……。

「あの……、お兄様?」
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!思い出せ!思い出せよ、このポンコツ脳がッ!!」

俺は壁目掛けてガンガン頭を打ち付けた。痛え、すげー痛え。けどよ、このぐらいしないと思い出せねえ気がするんだよ。

「お兄様!お止めになってください!!」
「止めるな沙織ィ!このぐらいしねえと、俺の頭は思い出さねえんだよオオオオオオオオオオ!!!!」
「それでは、思い出す前に頭が割れてしまいます!!」
「それでもこれしか方法が無えんだアアアアア!!」

沙織の制止も聞かず、俺は頭を壁に打ち続けた。ガンガン打ち続けた。鈍い音が室内に響き渡る。

「思い出せェ!思い出せよ俺エエェェェ!!もしくは全て忘れろオオオオオオオ!!」
「お兄様!目的が変わっています!」





「つまり、昨夜のことは全く覚えていない、ということですね」
「申し訳ございません」

今の状況を説明しよう。沙織は椅子に座って腕を組み、俺を見下ろしている。
俺はというと、沙織の前で額をフローリングの床にこすり付けていた。つまり、DOGEZA状態だ。
結局、俺は昨夜のことを全く思い出せなかった。その事を沙織に正直に話した。もちろん、沙織は怒ったさ。
知ってるか?激しく怒られるより、静かに怒られる方が何倍も怖いんだぜ。今の沙織は、ウチの妹様が怒っている時の何倍も怖かった。
罵倒の言葉も、手や足が出ることも無い。ただ、俺にプレッシャーを浴びせてくるんだ。針の筵に座る気持ちってのは、こういうことを言うんだと身をもって知ったよ。
頭を下げ続けた甲斐があったのか、沙織は溜息を一つ吐くと、優しげな口調で話しかけてきた。

「悲しいことではありますが、覚えていないのであれば仕方ありませんわね」
「許して……くれるのか?」

俺は頭を上げて、沙織の顔を見る。沙織は穏やかな笑みを浮かべながら、俺を見ていた。
俺は思ったよ。この世に聖母がいるんなら、きっと沙織の事だってな。なんなら、「沙織教」を開いてもいいと思ったくらいだ。

「今回は大目に見ましょう。ですが、わたくしも女の子です。この埋め合わせはきっちりとしていただきますから」
「お、おう!もちろんだ。俺に出来ることなら何だってやる!いや、やらせてください!」

沙織には本当に申し訳ないが、昨夜のことは全く思い出せない。なら、ほかの事で卍解……、挽回するしかねえ。
それに、コイツには俺や桐乃のことでかなり助けてもらっている。その借りを、少しずつでも返していかないとな。

「では、そのことについては後日連絡を入れます。今日は一旦お帰りなったほうがよろしいのでは?」
「ああ、そうだな。今日のところは帰らせてもらうわ」

俺は足の痺れをこらえながらも立ち上がり、玄関に向かった。
沙織は俺の後ろについてきて、見送ってくれている。なに、この子?天使なの?現代に舞い降りた天使なの?あ、聖母だった。

「今日は悪かった。今度、必ず埋め合わせするからよ」
「ええ、楽しみにしておりますわ」

351 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/09(水) 15:03:09.71 ID:aphiU9Ato [11/21]
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沙織の家で起こった騒動から三日が経った。
俺は卒論執筆のため、大学に来ている。と言っても、進行状況は順調そのものだ。就職内定もすでに取っており、いたって平穏な日々を過ごしている。
研究室で卒論の内容を纏めていると、ポケットに入れていた携帯が震えた。液晶には「沙織」と表示されている。

「もしもし」
「あー、拙者拙者」
「わりーが、俺の知り合いに侍はいねーよ」
「はっはっはー。相変わらずでござるな、京介氏」

電話に出ると、いつものバジーナ口調が聞こえてきた。こっちに慣れているとはいえ、この口調を聞いて安心する俺ってなんなの?
それはさておき、沙織が連絡してきたってことは……。

「埋め合わせの件、だよな」
「そうでござる。ときに京介氏、今度の日曜は空いているでござるか?」
「ああ、残念なことに予定は入ってねえ」
「それは重畳。では、その一日を拙者にいただきとうござる」
「わかった。何時にどこ集合だ?」
「朝の10:00。アキバの電気街口で待っていてくだされ」
「結構早いな。わかったよ」
「では、拙者はこれにて!」

用件を伝え終わると、沙織はさっさと電話を切っちまった。ったく、お前は台風かよ。
俺は電話をしまうと、再び執筆に取り掛かる。ある程度進めておかねえと、あとで泣きを見るからな。沙織と出かけてる中、卒論のことを気にしていたくもねえし。
埋め合わせと言いつつも、今度の日曜を楽しみにしている俺がいた。

352 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/09(水) 15:04:23.61 ID:aphiU9Ato [12/21]
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当日――――。

俺は約束した時間の二十分前に到着し、今は沙織を待っているところだ。
休日のアキバは、相も変わらず人でごった返している。今日は七月上旬並みの陽気と天気予報で言っていた。
そんな中、この人混みに紛れていくのだ。夏用の服装で正解だったな。
そんなことを考えながら、携帯で時間を確認していると――――。

「京介さん!」

背後から声を掛けられた。振り返らなくてもわかる。沙織の声だ。
軽快な足音を鳴らしながら、沙織が俺の前にやってきた。その時、俺は声を失ったよ。
アキバだから、いつものバジーナスタイルで来るものだとばかり思ってたからな。それがどうだ。俺の目の前には純白のワンピースを着たお嬢様がいやがった。
その清楚なワンピースがまた似合うこと似合うこと。思わず凝視しちまったよ。

「お待たせしました」
「……」
「あの、京介さん?」

沙織は俺の変調に気付き、目の前で手の平をひらひらさせている。俺は何とか現実に戻ってくることが出来たが、沙織は心配そうな顔をしていた。

「あの、どこかお加減が?」
「……あ、いや!なんでもねえ!いたって健康だ!」
「それならよろしいのですが……」
「ホント、なんでもねえ!ただ、すげー美人が現れたから、思わず見惚れちまっただけだ!」
「え?」

ぐああああああああああああああああ!
いくら動揺してたからって、いきなり何を言い出すんだよ俺エエエエエエエエエエエエエエッ!!暑さで頭がやられたのか!?
それに見ろ!沙織だって顔を赤くして俯いちまったじゃねえか!ああ、何やってんだよ。俺の馬鹿野郎。
しかし、こうして俯いている沙織は可愛いな。美人な沙織も良いが、こういう年相応な感じも……って、違うだろ!!

「わ、悪い!いきなり変なことを口走っちまって!」
「へ、変なこと……」

あれ~?今度はなにやら不機嫌そうな顔をされていますよ~?
どこだ!どこで地雷を踏んだんだ、俺!このクソ馬鹿野郎!

「あ、あのー。沙織さん……?」
「いきなり持ち上げておいて、それを変なことだなんて……。京介さん、ヒドイです……」

お、仰るとおりです……。
いつもは桐乃や黒猫のフォローに徹しているし、あの格好のせいで忘れがちだが、沙織だって女の子なんだ。
せっかくおめかしして来てくれたのに、俺は何つーことを……。
俺の無神経な一言で、沙織は目に涙を浮かべている。あ、こういう沙織も可愛いな。なんか、こう……。嗜虐心をそそられるというか……。ええい、煩悩退散!!

「悪い……。他意はないんだ」
「いいえ、許しません」

沙織は頬を膨らませながら、そっぽ向いてしまった。ちくしょう、可愛い。
いや、今は沙織の機嫌を何とかして直さねえと。埋め合わせどころか、俺の好感度がマイナスに……。

353 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/09(水) 15:04:52.63 ID:aphiU9Ato [13/21]
「本当にすまない。でも、沙織に見惚れてたってのは事実だ」
「もう、また冗談を……」
「いいや、誓って本当だ。沙織に見惚れてるときに声を掛けられたから慌てちまって、ついあんなことを言った。傷つけちまったよな、本当にスマン!」

俺は人目もはばからず頭を下げた。なんか、この間から沙織に謝ってばっかだな。それもこれも、全部俺のせいなんだけどさ。
周囲からはくすくすと笑い声が聞こえるが、そんなの知ったこっちゃねえ。いくら笑われようと、俺にはこうするほか無えんだ。
そんな俺の肩に、沙織の手が置かれる。

「わかりましたから、頭を上げてください。京介さん」

頭を上げると、沙織が全てを慈しむような笑顔を浮かべていた。あれ?数日前も似たような状況があったよな?

「許してくれるか?」
「いいえ、許しません♪」

なん……だと……。
あんな顔しておきながら、許してくれない。そりゃねーよ、沙織さん!結構恥ずかしかったんだぞ!あー、どうしたらいいんだよぅ……。
俺がどうにかして沙織の機嫌を直そうと考えている最中、左腕が誰かに絡め取られた。いや、沙織しかいないんですけどね。

「許しませんからね。代わりに、今日一日、ちゃんとわたくしを楽しませてくださいな」
「お、おう!もちろんだ!」

沙織は俺にもたれかかりながら、笑顔でそう言った。
それがまた可愛くて、俺はドギマギしちまった。おまけに俺の腕にさ。当たるんですよ。沙織の豊満なアレが。これやべー、マジでやベー。
隣にいる沙織は可愛いわ、やわらかいものが当たるわ、いい匂いはするわ。色々やばい。性的な意味で。

「じゃ、行きましょうか」

そう言って、沙織は俺を引っ張っていった。
ただ、沙織のほうが背高いから、なーんか不恰好になっちまうんだよな。はぁ……。

354 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/09(水) 15:05:24.99 ID:aphiU9Ato [14/21]
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俺達が最初に向かったのはガンプラ売り場だ。
沙織はガンダムが好きだし、俺も男の子だからな。人型ロボットって言うだけで、こう……内から来るものがあるんだよ。あ、ロボットって言っちゃダメだったんだっけ?
俺は沙織についていきながらガンダム講座を聞いていた。

「京介さんは、どういうMSがお好きですか?」
「俺か?そうだな……」

俺は陳列されているガンプラを見渡し、その中から大き目の箱を一つとって、沙織に見せた。

「こういうのとか、結構好きだな」
「クシャトリヤですか。UCの機体ですね」
「たまたま映像を見たんだけどさ、すげーカッコ良かったんだわ。あとこのゴツい感じとか、俺の好みなんだよ」
「そうなんですか?ふふ、少し意外です」
「そうか?」
「ええ。京介さんなら、主役機の方を好むとばかり……」
「主役機ってさ、なんかスッキリしすぎじゃないか?スマートなのも好きだが、やっぱこういうのに目が向いちまうな。それに、脇役の機体や敵機の方が好みだったりするぞ」
「ふふっ。本当に意外」

何がおかしいのかわからないが、沙織が楽しんでいるのならそれでいい。
泣き顔や不機嫌そうな顔も可愛いけど、コイツにはやっぱり笑顔が似合う。思わず俺も笑顔になっちまうくらいだからな。
それから俺達は、店内にあるガンプラを見て色々話しながら、その場を後にした。


次はショールーム。
ここにはショーケースの中に色んなものが展示されている。ガンダム系の展示もあるぞ。

「こういうのを見ると、自分でも作りたくなるけどさ。こんなに綺麗に作れないだろうな、きっと」
「そうですね。でも、近づけることは出来ると思いますわ」
「沙織はこういうの得意そうだもんな」
「慣れているだけです」

俺の腕に引っ付いている沙織は、展示物を眺めながら俺に答える。
俺も、沙織の方には顔を向けない。なんか、そうしちゃいけない気がしたからな。
傍から見れば、俺達はいっぱしのカップルに見えてるだろうな。そういう雰囲気も出してるだろうし。ただ、場違い感が半端無いけど。

「じゃあさ、今度教えてくれよ」
「わたくしが?」
「ああ。こういうのってさ、やっぱ自分で作った方が愛着湧くだろ?それに、沙織なら先生として適任だしな」
「ふふっ、わかりました。ですが、わたくしの指導は厳しいですわよ?」
「……なるべくお手柔らかに頼むぜ」

355 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/09(水) 15:05:52.32 ID:aphiU9Ato [15/21]
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さて、沙織とアキバを散策してから一時間以上が経過している。少し早いが、ここらで昼飯にしようと思ったんだ。混むのは嫌だしな。

「沙織、ちょっと早いけどメシにしないか?」
「そうですね。わたくし、行ってみたいお店があるんですけれど、よろしいですか?」
「おう、いいぞ」

そう言って案内されたのは、意外や意外。ラーメン屋だった。

「ここ……なのか?」
「はい。わたくしだけだと、なかなか入りづらくて……」
「沙織が良いんなら、俺は構わないけど……」
「じゃ、早速」

店内に入ると、席は七割ほど埋まっていた。コレがもう少し後なら、完全に満員だったな。
俺は入り口にある券売機で二人分の食券を購入し、席に着いて店員に渡した。
程無くして、俺達の前にラーメンがやってきた。ちなみに俺は味噌、沙織は塩だ。鉢からは湯気と一緒に食欲をそそる香りが漂ってくる。

「「いただきます」」

両手を合わせ、割り箸を取って、俺達は麺を啜る。
味はなかなか良く、次回もまた来たいなと思うほどだった。

「うまいな」
「そうですね。わたくし、あまりこういうものは食べたことが無かったのですが、美味しいです。今度、きりりんさん達も誘ってみようかしら?」
「あー、それはやめとけ」

あの妹様はこういうのにはとかくうるさいのだ。きっとゴネるに違いない。もっとお洒落な店に行こうと言うに決まっている。
沙織もそれはわかっているらしく、俺の忠告を簡単に聞き入れてくれた。
しかし、こういう時でも沙織はお嬢様なんだなと実感する。俺なんか音を立てて麺を啜っているのだが、沙織は音は立てないし食べ方は綺麗だし。
まるでラーメンという名の高級品を食べてるみたいだ。それでも、スープは跳ねるみたいだがな。

「沙織、動くなよ」
「え?」

俺はハンカチを取り出すと、沙織の口周りについたスープを拭いてやった。
沙織はおとなしく、俺のされるがままになっているが、頬が赤かった。やっぱ、恥ずかしいよな。小さい子じゃねえんだから。ま、俺がしたかったから許せ。

「おし、キレイになった」
「あ、あの……、ありがとうございます」
「いや、気にするな。それに恥ずかしかったろ?」
「その……少し……」

沙織は顔を赤らめたまま俯いちまった。やりすぎたかな?
それはそうと沙織さん。あんまり放置すると、麺が伸びちまいますよー。

356 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/09(水) 15:06:20.43 ID:aphiU9Ato [16/21]
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食事を終えた俺達は、再びアキバの街に繰り出した。まあ、普段桐乃たちと行ってるようなところを回っただけなんだけどな。
同人ショップにフィギュアショップ、ゲームショップやアニメ関連グッズのショップ。ショップばっかりだな、オイ。
途中で家電やPCなんかも見たりしたけどよ、やっぱ普段と変わらない。
色々見て回って、その都度会話して、俺達は笑い合った。桐乃や黒猫と一緒にいるのも楽しいけど、こうやって二人きりってのも良いな。
携帯の時計を見ると、時間は三時を回っていた。結構時間が経ったな。

「沙織、まだ帰るには早いけど、この後はどうする?」
「そうですね……。もう見て回るものはほとんど回ってしまいましたし……」

沙織も、今日はもう見たいものは見尽くしたようだ。これでイベントなんかがあれば、そっちに行くんだろうけどな。
俺もまだ帰りたくなかったし、何かないかと考えていると、沙織が閃いたようだ。

「カラオケなんていかがですか?わたくし、少し疲れてしまいました」
「カフェとかじゃなくてか?」
「はい。それに、京介さんの歌を聞いてみたいですし」
「う……。別にいいけど、上手くないぞ?」
「構いません。上手い下手は関係なく、京介さんの歌が聞きたいんです」

ここまで言われて引いたんじゃ、男が廃るってもんだよな。
俺は覚悟を決めて、沙織と一緒にカラオケ店へと向かった。


カラオケ店に来た俺達は、フリータイムで入室した。部屋に入った後は内線で飲み物を頼み、席に着く。
はぁ~、今日はほとんど歩き通しだったからな。座っちまうと一気に疲れが来る。

「ふぅ~」
「ふふっ、京介さんったら。おじいちゃんみたい」
「ほっとけ。お前は疲れてないのか?」
「もちろん疲れてますよ。でも、それ以上に楽しかったですから」
「そりゃ良かった。俺も楽しかったけどよ、疲れとは関係ないと思うぞ」
「そうですか?」

今日の沙織はよく笑う。いや、いつもの沙織もよく笑うけどね。ぐるぐる眼鏡かけてωな口をしながらだけど。
つか、お嬢様モードの沙織とこんなに長く接したことってあったか?少しは慣れたけど、やっぱ美人の笑顔は破壊力あるわ。毎回ドキドキするもん。
店員が飲み物を運んできて、俺達はそれを手に取る。俺はアップルジュース。沙織はジンジャーエールだ。
俺がアップルジュースを飲んでいると、沙織がいきなり俺にもたれかかってきた。

「あのー、沙織さん?」
「申し訳ありません。わたくし、思っていたよりも疲れてしまったみたいです」

いや、それはいいんですけどね。あなたがそういうことをすると、俺の理性とか理性とか理性とかがやばいんですよ、ホント。ええい、何か他の事を考えるんだ俺!
あー。沙織のヤツ、背は高いのに座高は俺より低いのか。頭が肩のとこに来てるし。座るとちょうど良い感じ?
それに髪は綺麗でさらさらだし、いい匂いはするし、可愛いし、スタイル良いし……。そういやあの時の俺、沙織の裸を……違う違う!今はそういうことを考えるんじゃない!

「少しだけ、このままでもよろしいですか?」
「お、おう」

あー、どうすんだよ。ホントにやばいんだって。
なんでこういう時にしおらしくなるんだよ。抑え込むのも大変なんだよ?コイツ、自分が可愛いって自覚があるのだろうか?いや、無い!(反語)
でなきゃ、こんなに無防備な姿を晒さないだろ。常識的に考えて。
結局、それから一時間くらい、俺の肩は沙織に占拠されてたわけだ。

357 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/09(水) 15:06:47.91 ID:aphiU9Ato [17/21]
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時刻はもうすぐ六時を回ろうとしていた。
俺達はカラオケ店をすでに退室し、今はUDX内のカフェで一服中だ。一応言っておくが、俺も沙織も非喫煙者だからな。

「今日はとても楽しかったです。京介さん、ありがとうございました」
「俺も楽しかったよ。行くトコ全部、沙織にまかせっきりにしたのは悪かったと思ってる」
「いえ、わたくしがお誘いしたのですから当然のことです」

元々は俺が原因でこんなことになっちまった上に、ここは普通なら非難されるところなんだろうが、そんなことは関係なく沙織はいつもフォローしてくれる。
それは、コイツが良いヤツであり、良い女であり、良い人間だからなんだろう。
槇島沙織だろうと、沙織・バジーナだろうと関係ない。全部ひっくるめて「沙織」という人間なんだ。そして、俺はそんな沙織を好いている。
それが「大切な友達」としてなのか、「一人の女の子」としてなのかは……今はまだわからないけど。

「もうこんな時間ですのね。そろそろ、お開きにしましょう」

関係を持ったから、こんな気持ちが芽生えたわけじゃない。遠因にはなるかもしれないが、それは原因じゃないんだ。
だからさ、時計を見た瞬間、沙織が少し悲しげな表情になったのも見逃さないし、それを払拭してやりたいと思うのは当然だろ?
俺は困ってるヤツは見過ごせない。それが妹だろうと、友達だろうと、知らないヤツだろうと関係なく、な。
シスコンである前に、俺は超が付くほどのお節介焼きなんだ。なら、俺がこの場で掛ける言葉は決まっている。

「なあ、沙織」
「はい?」
「また、どこか出かけないか?今度も二人きりでさ」
「え?」

沙織は俺の言葉が理解できないのか、きょとんとしている。結構ストレートな誘い方だと思うんだがなぁ~。

「あの……それって……」
「次のデートのお誘いだよ。言わせんな恥ずかしい」

なんとなく沙織の顔を見ていられなくて、俺はコーヒーを飲むフリをして視線を外した。
沙織は今、どんな顔してるんだろ?さっきの寂しげな表情が消えているといいな。……あれ?何で黙ってるの、沙織さん?
俺は沈黙に耐えられなくて、沙織に答えを催促した。

「で、良いのか?嫌なら無理には……」
「い、嫌じゃありません!」

いきなり沙織が声を荒げるもんだから、周りの人がこっちに注目し始めやがった。こっち見んな。
沙織もそれに気付いたらしく、頬を赤らめながらも笑顔で答えてくれた。

「嫌じゃありません。とても嬉しいですわ」
「そっか。じゃ、今度は俺から連絡するよ」
「はい。お待ちしてます」

早速で悪いんだが、前言を撤回させてもらう。どうやら俺は、沙織のことを「一人の女の子」として好きなようだ。
だってさ、沙織が笑えば嬉しいし、泣いていればこっちも悲しくなる。今の俺は、最高に嬉しいと感じているんだ。
この気持ち……まさしく愛だ!
だからと言って、愛を超え、憎しみも超越し、宿命となることは無いけどな。断じて無いからな!!

358 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/09(水) 15:07:21.55 ID:aphiU9Ato [18/21]
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カフェを出た俺達は、八時間ぶりに秋葉原駅電気街口に戻ってきた。こんなに長い時間一緒にいたのに、なんだかあっという間だった気がする。

「今日は本当に楽しかったです」
「ああ、俺もだよ。別れるのが惜しいくらいにな」
「もう、またご冗談を……」
「本心だよ」

そう、これは俺の本心だ。まだ沙織と別れたくなかったけど、ガキみたいな我侭言っても仕方ないだろ?
それに、今生の別れじゃない。会おうと思えば会えるんだからさ。だから、今日はここでお開きだ。

「近いうちに連絡するから」
「絶対ですよ。忘れたら怒りますから」
「男の誓いに、訂正は無い」
「ふふっ」

さあ、今度こそ本当にお別れだ。駅の改札口に向かう沙織を、俺は手を振りながら見送った……。あれ?沙織さんが引き返してきますよ?

「どうした?忘れ物か?」
「はい。大事なものを忘れていました」

沙織が悪戯っぽく笑った次の瞬間、俺の唇に柔らかいモノが触れた。え……?なに、今の?
状況を理解できない俺は沙織の顔を見た。あれれ?頬が赤いですよ、沙織さん。

「これで大丈夫。それでは、また」

そう言って沙織は、改札口を通って駅の中に入っていっちまった。俺はと言うと、未だに状況が飲み込めず、呆然と突っ立ってたよ。
なんとか現実に戻ってきた俺は、その時決心したんだ。次に沙織と会ったら、自分の気持ちを伝えよう、ってな。

359 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/09(水) 15:07:52.11 ID:aphiU9Ato [19/21]
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「ふぅ……」

京介さんと別れ、電車の席に着いたわたくしの口からは、自然と溜息がこぼれていました。
疲れたから、だと思います。肉体的にと言うより精神的に、ですけれど。それに、別れ際には軽くですけれど、その……キスもしてしまいましたし……。
今思うと、結構恥ずかしいことですよね。わたくしったら、なんてはしたないことを……。思い出すだけで顔が熱くなってきました。
でも、あのくらいしないと、鈍感なあの方のことです。わたくしのことを意識はしてくれないでしょう。

「それにしても……」

今日一日で、京介さんの心中は変化したのでしょうか?果敢にアタックしているのですが、あの方の鈍感さは筋金……いえ、鉄骨入り。
コロニー落としくらいの衝撃がなければ気付かないのでは、と思うぐらいですから。
今日のわたくしの行動で、陥落までは行かなくても、外堀を埋めることぐらいは出来ているといいのですが……。
たとえ出来ていなくても、次があります。ほかならぬ、京介さんがチャンスを与えてくださいましたから。

けれど、あの件を実行したときは、まさか次があるとは思っていませんでした。
京介さんが酔い潰れてしまったあの日、わたくしの家に運んで、服を脱がせて、その隣でわたくしも眠りについて……。そう言えば、わたくしも裸でしたね。
実際はなにも無かったんですけれど、それを利用して今日のデートに漕ぎ着けて、わたくしのことを意識していただこうと思っただけなのですが……。
これは、京介さんがわたくしに傾いてきているということでしょうか?でしょうね。うん、そういうことにしておきましょう。そして、次こそは決めます!
だから、京介さん……。

「覚悟しておいてくださいね」

わたくしは、自身を奮い立たせる意味もこめて、そう呟いたのです。


【俺の妹の友達がこんなに狡猾なわけがない】





おわり
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