無題:8スレ目702


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702 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/19(土) 23:55:28.45 ID:BTEDHaXWo [2/4]
「……すまん、よく聞き取れなかった。もう一度言ってくれ」
「ちゃんと聞いてて下さい! もう。……だから、私と一緒に死んでほしいんです」

軽く今の状況を説明しておくと、俺はいつものようにあやせにメールで「人生相談がある」と呼び出され、いつもの公園でいつものように人生相談を受けている最中だ。
だったのだが、それがどうしていきなり俺の命を差し出さねばならない状況になっているのか。
しかもあやせの言い草はまるで心中してくださいと言わんばかりだ。

「落ち着け、あやせ。俺はまだ死にたくない。いくらあやせの頼みでも心中は無理だ」

右手の手の平をあやせに向け、はっきりとNOの意思を伝える。心中ダメ、ゼッタイ。

「だっ、誰がお兄さんと心中すると言ったんですか!? けがらわしい!」
「他ならぬおまえだよ! 今さっき、私と一緒に死んでくれって言ったところじゃねえか!」
「ち、違います! 話を最後まで聞いて下さい!」
「だったら変なところで話を区切るんじゃない!」



それから、あやせの話をじっくり聞いてようやく話の全貌が理解できた。

「要は、俺にコスプレ大会に参加しろと?」

それも、おまえと一緒に。

「はい。その通りです」
「そりゃ、一体なんの冗談だ」
「冗談ではありません。私は本気です、お兄さん」

あやせが言うには、近々カップル限定のコスプレ大会があって事務所の方針でそれに参加しなければならなくなったらしい。
いったいどんな方針だ――とも思ったが、加奈子やブリジットを雇ったりしている辺り、あやせの事務所は本気でアニメ関連業界に進出しようとしているのかもしんねえな。
そして、冒頭の一緒に死んでくれとは、一緒に“社会的に”死んでくれという意味だそうだ。
あやせにとって、コスプレ大会への参加はそれほどの覚悟を必要とするようだった。
それもそのはずで今回の大会の様子を、あやせが普段モデルを務めるファッション誌が取り上げることになっているらしい。今、オタク系男子が熱い! という意味不明の煽り文付きで。

「っていうか、なんで俺なんだ。あやせの事務所にだって男のモデルはいるだろ」

自分で言うのも悲しいが、俺は地味面でスタイルだって普通だし、モデルとは縁遠い人種だぞ?

「じ、実はみんなコスプレに抵抗があるみたいで。そこで私が参加してくれそうな人に心当たりがあると……つい」

なんてこった。俺は「つい」で参加させられそうになっているのか。
まあ、自分のコスプレした格好がいつも自分が載っている雑誌に乗ったりするわけだからあやせや他のモデルさん的にはシャレにならんよな。
その恰好を大勢の人間、下手したら友人たちにも見られちゃうわけだろ? 
社会的に、というか、まず恥ずかしさで死ねる。その点に関しては俺も同意するよ。

ふむ、どうやらあやせの言うことに嘘はないようだ。でも、だからといって即座に「はい、参加します」とはいかない。

「その相談を受けることによる俺のメリットは?」

雑誌に載せられ、社会的に心中させられてしまうわけだから流石に今回ばかりはタダ働きは遠慮したい。
よほどのことがない限り俺は参加せんぞ。

「参加者はみんな、彼女をお姫様抱っこして登場する予定になっています」
「乗った!」
「この変態!」

俺の返事も早いが、その即答を受けての手刀はさらに早かった。首筋にきれいな一撃を頂きそのまま悶絶する。
なんせ、俺が「の」を喋った瞬間には腕が動き始めていたもの。もし「ノー」だったらどうしてくれるんだ? いや、実際はそうじゃなかったわけだけども。

「で、衣装のことなんですけど」
「ああ、そういえば俺は何を着ればいいんだ?」

とんでもない衣装はごめんだぞ。


703 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/03/19(土) 23:56:01.13 ID:BTEDHaXWo [3/4]
「はい! それなんですけど、今回はこれで行こうと思うんです!」
「うお」

あやせが急に大きな声を出すもんだから、ついついびびる俺。
瞳を爛々と輝かせたあやせが俺に見せつけてきたのは、どこかで見たDVDのパッケージだった。

「マスケラじゃねえか」
「あれ? 知ってるんですか?」
「ああ。俺の知り合いにマスケラが大好きな奴がいてな」
「じゃあ、話は早いですね。お兄さんには、この主人公のコスプレをしてもらいます」

DVDのパッケージの裏に描かれている変身後の主人公をあやせは指さした。
関係ないけどこのDVD一体誰のなんだろ。まさかあやせの――じゃないよね?

「あいよ。俺はそれでいいけど、あやせはどうするんだ?」
「わ、私は夜魔の女王にしようかな……なんて」

そう言ってあやせは、自分の指同士をつんつんさせながら恥ずかしそうに顔を背けている。
よほど今回のコスプレが恥ずかしいらしい。俺に対してこんな無防備な姿を見せちまうくらいだからな。
それにしても、ゴスロリあやせか。今から超楽しみだぜ。ふひひ。

「ところで、衣装はどうするんだ? 事務所が用意してくれるの?」

もしあれなら、俺の知り合いにちょうどこの衣装持ってるやつがいるから頼んでみてもいいけど。

「それには及びません。衣装に関しては、あとは最後の仕上げだけですから心配しないでください」
「仕上げ? まさか手作りなの?」
「あっ。も、もちろん事務所のスタッフさんの――ですよ!?」
「いや、それはわかってるけど。……どうした? 顔が赤いぞ?」

そんなに焦ってどうしたんだろ。何かまずいこと聞いちゃったのかな?

「な、なんでもありません!」
「い、痛い! いきなり怒り出すんじゃない! 落ち着けって!」
「もう! お兄さんは大人しく私をお姫様抱っこしてくれればいいんですっ!」



おわり
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