お昼休みは恋人と:9スレ目89


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

89 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/28(月) 19:40:32.93 ID:gqKd6v2y0 [2/7]

「ウチの教室の外にすげえ可愛い子がいたぞ!」


昼休みになってから少しして、購買から戻ってきた俺のクラスの男子が若干興奮気味にそんなことを言いながら入ってきた。
それを聞くと、他のヤツラも何かに理由を付けて教室から出て行く。
無論、テキトーな言い訳をつけて教室から出て、その子を一目でも見ようと企んでいるのである。

「マジだ!可愛い!」「誰かの彼女?」「いや、ウチのクラスにそんな甲斐性のあるヤツなんて…」
「ありゃ多分俺らの学年じゃねえな」「何年の子だろう…」

帰ってきた連中の間からこんな声が聞こえてくる。
そこまで言われちゃ俺も気になってきちゃうじゃないか。

どれどれ、そんなに可愛い子がいるなら、俺もちょっと拝ませてもらおうかね。

そう思って俺は『購買に行ってくるぜ宣言』を行った。
たとえ自分に彼女がいたとしても、「可愛い子がいるぞ!」と言われれば見たくなってしまうのが男の性だ。
それは俺も例外じゃない。

若干ドキドキしながら教室の戸を開ける。
すると、確かにそこには噂に違わぬ美少女が立っていた。


雪のように白い肌に清楚な顔立ち。
均整のとれた体型に艶のある長い黒髪。
これなら皆がドキッとしたのも頷ける。

しかしその子を見た瞬間、俺は皆とは違う意味でドキッとしてしまった。
いや、確かに可愛いが、コイツは――


「…く、黒猫!?」

そう。
皆さんのお目当ての可愛い後輩とは、他でもない俺の彼女だったのだ。
今日は何故か赤い巾着袋を両手で大事そうに持っている。

自分の彼女が友達から高く評価されていたことを考えると嬉しいやら気恥ずかしいやら。
だが、今はそんなことを気にしてる場合じゃない。
俺は慌てて周りの視線でガチガチに固まって俯いてしまっている黒猫に近付いた。

「や、やっと現れたわね…」
「おい!お前、こんなとこで何やってんだよ!?」
「何って……」


「なっ!?高坂が“あの子”と普通に話してるぞ!?」

この、驚きを全く隠しきれていない大声によって、俺たちの話は一時中断されてしまった。

気がつけば何かすごく注目を浴びてしまっている気がするんだが…。
まあ…そりゃそうか。話題の彼女が同じクラスの男子と話してりゃな。
それにしても、この空気は無理だろ!は、恥ずかしすぎる………

「と、とにかく、ここじゃマズいから移動するぞ!」
「ちょ、ちょっと!」

雰囲気に耐えられなくなった俺は急いで黒猫に小声でこう告げると、その手を引いて足早に教室を離れた。




90 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/28(月) 19:43:17.46 ID:gqKd6v2y0 [3/7]

☆☆☆☆☆


「…随分と遅かったわね。待ちくたびれてしまったわ…。」
「遅かったって……教室の外で黙って待ってられてもわかるわけねえだろ!?」
「ふ、ふん!壁一枚挟んだくらいで主の気配すら察知出来ないなんて、使えない隷属…」
「ムチャクチャ言うな!」

たった今、俺たちは場所を“例の”校舎裏のベンチに移動したところだ。
まあその………俺たちにとっては、所謂『思い出の場所』だったりするわけだけど…。
暖かくて微風が吹いているようなとても麗らかな天気なのだが、周りにはまったく人影が見えない。
人がいないからこそココを選んだってのもあるんだが。

…それにしても、こいつの言い分聞いたか?何だって俺が責められなくちゃいけねえんだ!?
俺の言い分は間違ってないと思うぜ!?『気配を感じろ』って、そんな超能力者じゃあるまいしよ…。
しかも俺のことを隷属扱いしやがって!ここはハッキリ否定させてもらうぞ!?

心の中に変なプライドが発生してしまった俺は強い口調で言った。


「つか、俺はお前の隷属じゃねえ!俺はお前の――」

…ダメだ!この続きは恥ずかしくて面と向かっては言えねえ……………
ああそうだよ!どうせヘタレだよ!笑うなら思いっきり笑え!
しかも、赤面地獄に陥った俺が言わんとしていたことを察知したのか、黒猫も少し顔を赤らめて俯いちまってるし…。
これじゃ完全に自爆だよ。また居づらい雰囲気になっちまったな…。


「そ、それにしても、お前いつから教室の前にいたんだ?」

俺は何とか無理に平静を装って話題の転換を図った。
我ながら、声が上ずっていて無理矢理感が溢れ出ている。


「あ、貴方が教室から出てくる2,3分ほど前よ。」

でもこころなしか、向こうも無理に平静を装って返しているような気がするな…。
この調子で行けば何とか俺のペースを持ち直せるかも!?


「なんだ、たった2,3分か。よかった。ならそんなに待たせたわけじゃ…」
「思い上がらないで頂戴。」
「………は?」
「さっきも言ったはずよ。『待ちくたびれた』と。
 私は随分待たされたわ…。貴方のクラスメイトからの、まるで異世界の者を見るかのような視線に耐えながらね。
 今度私にあんな辱めを受けさせたら…塵として滅するわよ?」

どうやら回復能力は相手が上だったようだ。
先程までの動揺を感じさせない見事な厨二返しを食らっちまったぜ…。
そして俺には言い返す言葉が見当たらない…と。うん、見事に完敗だな。
いや、でもこれは仕方ないだろ!?
俺のことを馬鹿にするヤツは、『塵として滅するわよ』って言われた後の神懸かり的な返し方を是非教えてくれないか?

…とにかく、情けない話だが俺の実力じゃ調子を取り戻したコイツには勝てない。
こうなったら、おとなしく本題に入ろうかね。


「…それで?俺になんか用か?お前がわざわざ教室まで訪ねてくるんだから、そこそこ大事な話なんだろ?」

話題転換の下手さは仕様だ。誰が何と言おうと仕様なんだ!
しつこいようだが、『塵として滅するわよ』と脅された後に普通の話題を上手く切り出せるような文句があるなら………って、黒猫…?

「……………」
「ど、どうした?」

俺の問い掛けに黒猫は俯いて黙ってしまった。何か考え込んでいる様子にも見える。
こいつがこうなった時は、たいていこの後に意味深な一言を言うんだけど…。


そして黒猫はしばしの沈黙の後、小さな声で逆に俺に問い掛けてきた。




91 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/28(月) 19:44:36.45 ID:gqKd6v2y0 [4/7]

「私は………何か用事がなくては、貴方に会いに来てはいけないのかしら?」
「えっ?いやっ、別にそんなことはないが…」

それはおよそ黒猫らしくない言葉で、口調もどこか寂しげだった。

でも、言われてみれば確かにその通りだよな。なんせ俺とこいつは…つ、付き合ってるわけだしよ?
本来であれば『どうしても貴方に会いたくて来てしまったのよ…』なんて言われてもおかしくない関係なのかもしれん。
でもそんなこと黒猫は絶対に………いや、一応聞くだけ聞いてみても……………

「も、もしかしてお前さ……ただ単に、俺に会いたかったから教室まで来てくれたのか?」
「なっ………勘違いしないで頂戴!だからといって、私が何の用事もなしに来たとは言っていないでしょう?
まったく、これだから人間風情は………」
「わかったよ!うん、俺の勘違いだった。わかったからそんなに興奮するなって!」


やはり、俺の彼女がそんなに可愛いわけが…なかったか………。
でもそんなにムキになることもないと思うんだけどな…。顔真っ赤にしちゃってさ。これ、絶対怒ってるよな?
…あれ?なんだろう?やけに読者諸君からの冷ややかな視線を感じるんだが……………



「…と、ところで先輩。先輩はもう昼食を済ませたのかしら?」

こりゃまた唐突な質問だ。しかも、この変に声が上ずった感じは…さっきの俺と全く同じじゃないか。
さては、こいつも無理に話題を変えようとしてるな?
まあ俺も言えた義理じゃないから心の声に留めておくけど…。黒猫よ、お前もなかなか話題作るのヘタクソだな…。


「いや、昼飯はまだだよ。誰かさんが急に訪ねて来たもんだから食いそびれちまってな」

俺はちょっとしたさっきの仕返しのつもりで軽い嫌味を入れてみた。
まあ実際のところ、一応購買でおにぎりは買ってあったから嘘をついたわけじゃないけど。
だが思いのほか、黒猫はなんだか安心したような素振りを見せている。
俺が飯を食いそびれたのがそんなに嬉しいんだろうか?


「そんな言い方………でも、それなら丁度いいわ。」

そう言って黒猫は、さっきから手に持っていた大きめの巾着袋に手を突っ込んだ。
教室の外で見かけた時からずっと持ってたから俺も地味に中身が気になってはいたんだよな。
おそらくこの巾着袋も手作りなんだろう。その証拠に、こいつお得意の黒い猫の刺繍がされている。

「これを…」
黒猫が取り出したのは、これまた大きめなサイズのプラスチックで出来た長方形の容器だった。
至ってシンプルなデザインだが、この箱の感じには何度も見覚えがある。
そしてこの流れからすると、これはもしかして…いや、間違いなく………

「…これって弁当箱………だよな?まさかお前、俺のために弁当を…」
「違うわ!」

俺がほのかに寄せた期待は即座に否定されてしまった。
が、ここはさすがに俺の見当違いじゃないはずだぜ?もう少しだけ粘ってみることにしよう。

「いや、でもこれどう見ても…」
「くどいわ、先輩。これは…魔道具の一種・“常闇の匣(ハコ)”よ。疑うのなら開けて御覧なさい。そうすれば手っ取り早いわ。」
「そんなにムッとした顔で言わなくてもいいじゃねえかよ!?
へいへい…それじゃ、開けさせてもらうぜ?」

これはどう考えても弁当だ。俺にとっては人生初の愛妻弁当どころか初めての彼女の手料理だ。
それはもちろん素直に嬉しいのだが、重大な疑問があることも確かである。

こいつの作る弁当には一体何が入っているんだ…?
変にキャラにこだわって黒魔術の食材みたいの入ってないだろうな?トカゲとか。
いや、そんなもの一般市場では手に入らないか…
うーむ、まったく予想できん…。


俺は期待半分・不安半分で箱を覆っていたゴムバンドを外し、蓋に手をかけた。




92 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/28(月) 19:46:11.77 ID:gqKd6v2y0 [5/7]


「おお…」

だが、蓋を開ければ先程までの不安はどこへやら、俺は思わず感嘆の声を上げてしまった。
蓋を開けるとまず中心に梅干を据えた白米ゾーンが目を引き、その脇を焼き鮭や漬物や卵焼きや煮物などの和食ベースのおかずが固めている。
更にはやけに厚底だとは思っていたがこの弁当箱は二層式となっており、下層には唐翌揚げ等の肉類から大学芋まで、バラエティ豊富な料理が用意されていた。
黒魔術の食材なんてとんでもない。こりゃちょっとした花見用の弁当みたいだぜ。
香りもとても食欲をそそり、今すぐにでも食べてみたくなるような気持ちにさせる見事な出来だ。
しかもこれを黒猫が俺のために作ってくれたんだと思うととても嬉しかった。

俺が若干感動しながら弁当の中身を眺めていると、隣から強い視線を感じた。
どうやら黒猫が俺の顔をチラチラ覗き込みながら反応を気にしているようだ。
そんなに心配そうにしなくても……俺の第一印象は最高評価だぜ。

「これ…本当にお前が作ったのか?」

黒猫は返事の代わりに、恥ずかしそうに無言でコクンと頷いた。

「すごいよ………。
 もう見た目だけでもメチャクチャ美味そうだぜ!これ…作るの大変だったろ?
 それをわざわざ俺のために……………」

俺の賛辞の言葉を聞くと黒猫は安堵したような表情を見せ、機嫌も何だかさっきよりも良くなったような気がする。
いつもこんな感じだったら可愛げがあんのになぁ…。まっ、そうなったらそうなったで調子狂っちゃうかもしれないんだけどさ。

「ふふふ……。匣(ハコ)から溢れ出る闇のオーラに圧倒されているようね?」
「ああ、確かに予想以上にボリュームあったし美味そうだし圧倒されたけど……これはどう見ても弁当箱…だよな?
でもホント嬉しいよ。こんな美味そうな弁……」
「違うわ。夜の世界に古より伝わる魔道具・“常闇の匣(ハコ)”よ。」
「いや、まったく闇要素の欠片も感じられないんだが。むしろお前の温かな愛情を…」
「ま、まだ言うつもり?違うと言っているでしょう?
私と契りを結んだということは即ち、共に闇の眷属として生きるということに他ならないのよ?つ、つまり……」


ここで黒猫は言葉を詰まらせた。
なんか必死に言い訳を探してるように見えるのは俺だけか?設定が不完全のまま見切り発車するなんて、こいつにしては珍しいな。
いや、こいつがこうやって誤魔化してるのは照れ隠しだってことは薄々わかってるよ?
わかってはいるけど、少しからかってみたくなっちまったのさ。
それにしても、焦って厨二台詞を搾り出そうとしている黒猫は何だか新鮮で可愛くて、思わず応援したくなってくる。


…お?あの顔は、そろそろベストな暗黒理論が閃いたのか?
黒猫は勝ち誇ったかのように口元をニヤッとさせると、怒涛の反撃を開始した。


「つまり!貴方も…あ、貴方も、最低一日に一度は夜の住人に相応しい食事を摂る必要があるわ!
そうしなければ先輩の身体は日の光によって犯され、やがては消滅という末路を辿ってしまうでしょうね……。
この“常闇の匣(ハコ)”は私の魔翌力を凝縮して閉じ込めた魔道具。 これは私達の母なる暗闇空間であるあちら側の世界、つまりは永遠に続く夜の世界のことなのだけれど――」

「お、おう」

「――そこに存在するありとあらゆる種の禁忌の果実を無尽蔵に供給し続けることが出来るわ。
よって、この匣(ハコ)の中身を食すと、こちら側の世界の昼間においても我々の種族の宵闇の力を増幅・貯蓄させることが可能になるの。
更には漆黒の結界を張って貴方の肉体を浄化の光から守護することも………これでこの魔道具の利便性が理解できたかしら?」

「へえ…そりゃ…すごいな………。」

「そして最も重要なことは…“常闇の匣(ハコ)”を食すのは夜の従者の義務である、ということよ。当事者の生存意欲に関わらずにね。
これを拒むということは即ち極刑に値するわ。
先輩もまだ、『磔にされた状態で蠢く獣影達に魂を貪り食われる』に不様な死に方はしたくないでしょう?
いいえ、“死”というよりは、『精神がなくなっても朽ち果てた肉体だけが残っている』という抜け殻に近い存在になってしまうと言った方が正しいわね…。」

「う、うん…」

「とにかく!これは我々の世界の絶対的な掟、ルシファーと夜魔の女王である私が定めた崇高なる規則なのよ!
だから細かいことは言わないで…だ、黙って“常闇の匣(ハコ)”を受け取りなさい!」


93 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/28(月) 19:46:46.69 ID:gqKd6v2y0 [6/7]


うん、溜めただけあっていつもよりだいぶ長いな…。照れ隠しのためにここまで頑張るヤツなんてなかなかいないと思うぜ?
そして、抑え気味の声量だったとはいえこれだけの厨二台詞を一気に語ったせいか、さすがの女王様もゼエゼエと少し息切れしてしまっている。
そんなに必死にならなくても…。
まっ、いつも通り意味はよくわからないけどよ…。なんか俺が処刑されることになってた気がするが気のせいかな?
これは英文翻訳とはまた違った難しさがあって、何度聞いても一発で詳細は理解出来ない。
まあでもアレだろ、最後の部分から察するに…要約すると『とりあえず黙って食え!』ってことだよな?多分。


「ま、まあ、闇の世界の掟についてはイマイチわからんが………とにかく、お前が俺のために弁当作ってきてくれるなんて嬉しいよ。ありがたく頂くぜ。」

隣ですかさず黒猫が「だからそんなものではないと…」と呟いていた気がしたが聞かなかったことにした。
皆曰く俺は鈍感らしいから断定は出来んが、ここは多分深く突っ込んじゃいけないトコだろう。
また困らせてもかわいそうだし、意地になって更なる超暗黒理論が襲い掛かってきても厄介だしな。


「それじゃ、いただきます。」

そんなこんなでようやく実食タイムが訪れた。俺が黒猫をからかわなかったらもう少し早く食べられたのかもしれないが。
しかし、すでに見た目でかなり期待が持てるとはいえ、作った本人を前にして食べるのはなかなか緊張するものだ。
チラッと横目で隣を見ると、その作った本人である黒猫も、やや緊張気味に俺の箸の動きを目で追っている。

俺は最初に白ご飯を軽く口に含み、焼き鮭をかじった。


――うん。やっぱり美味しい。
しょっぱ過ぎず薄過ぎず、尚且つ鮭本来の旨みが感じられる絶妙な塩加減だ。ご飯にもちゃんと合う。
しかも鮭の大きい骨はちゃんと取り除いてくれていて食べやすい。
次は卵焼きに箸を伸ばしてみる。
これは……なんか甘い味がするな。砂糖で味付けしてるのかな?
ウチのとは違うけど、でもこれはこれで全然アリだ。普通にイケる。卵焼きもやはり見た目に違わない味だ。
どうやら黒猫の料理の腕は本物みたいだな。こんなに料理の上手い彼女を持てて俺は幸せ者だぜ!


俺は夢中になって生涯初の愛妻弁当を黙々と食べ続けた。いや実際、普通に美味しくて箸が止まらなかったんだよ。
だが黒猫は、感想すら一言も口にせずただひたすら食べ続ける俺に対してどうやらしびれを切らしたらしい。
俺の顔色を伺いながらいつもの調子でこう切り出してきた。

「どう?この匣(ハコ)に込められしは純粋な闇。漲るような魔力を感じるでしょう?…それと……………」

ここまでは完全に、いつもの愛すべき厨二病患者・“黒猫”モード。
だがこの続きは一気にトーンダウンして、素の“五更瑠璃”が見え隠れしていた。

「貴方の…口に合うかしら………」

この、期待と不安を兼ね備えた、思わず抱き締めたくなるような俺の彼女の表情といったら!不覚にも一瞬ときめいちゃったよ!
付き合ってる俺が言うのもなんだけどさ、“黒猫”からの“五更瑠璃”は反則だと思うんだよね。ギャップ萌えってヤツ?
…お前ら、そんな目で見なくてもいいじゃないか……。俺だってたまにはノロケたくなる時だってあるんだよ!

「うん。すげえ美味しいよ!味付けもなんか俺好みでどんどん食べたくなってくるっていうか…。
お前は手先が器用なだけじゃなくて料理も得意なんだな。その…なんか惚れ直したよ。」
「あ、貴方は何を言っているの!?ここは学校よ!?また莫迦なことを…。」

黒猫は俺を罵倒しながらも目に見えてホッとしていた。
きっと俺から『美味しい』って言われるのを、ずっとドキドキしながら待ってたんだろう。
いや~、可愛い。うん、可愛い。どうだ!こいつ、俺の彼女なんだぜ!?
薄々わかってはいたけど、こいつから厨二病を取ったら至って普通の乙女になるんだな…。


「ところで、このくらいの量で足りるかしら?今まで父以外の男性には作ったことがなかったものだから……」
「ああ、全然大丈夫だぜ。十分十分。」

むしろ少し多いくらいだ、と思ったが言わなかった。まあ食いきれない量じゃないし。
おそらく、量が足りなくて俺が空腹にならないように多目に入れてくれたんだろう。こういうところからも黒猫が持つ細やかな配慮が感じられた。

――こいつはきっと、将来いい嫁さんになるだろうな。



94 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/28(月) 19:47:26.63 ID:gqKd6v2y0 [7/7]


さて、一通りのおかずに順番に手を付けたところで、俺は一旦箸を止めた。
…ん?お味はいかがでしたか、だと?愚問だな。もちろんどれも美味しかったさ。お世辞抜きでやみつきになっちまうレベルだぜ?
本来なら『お前らにも食わせてやりたい』と言いたいところだが、やっぱり食わせたくないな。なんせこれは俺専用の“常闇の匣(ハコ)”だからさ!

俺は一通り食べた感想と再度のお礼の言葉を言おうと隣を見た。
すると黒猫は相変わらずただひたすら俺の顔色を気にしている。
そんなに自分の料理食べてる俺の反応が気になるのか?こいつも素直で可愛いとこあるじゃねえか…。
でも…そんな黒猫の様子を見たら………俺的にはちょっと気になることが出てきたんだよな。

その結果、実際に俺の口から出てきたのは感想でもお礼でもなく、こんな疑問だった。

「そういえばさ………お前は、昼飯食わないのか?」
「!?」

黒猫はわかりやすくギクッとして動きを止めた。
その挙動からは、『イタいとこを突かれた!』って感じがありありと溢れ出ている。

「まさか、これ…本当はお前の分の弁当だったんじゃないだろうな?」
「そ、そんなわけないじゃない。それは貴方の分よ。」
「じゃあ、お前の分は?」
「もう…さっき食べてしまったのよ………」

何か様子がおかしい。こいつ絶対に嘘をついてるな?
それにさっきから何かを我慢してるような気がするんだよなぁ……………

俺が胡瓜の漬物を食べながらあれこれ思案していたその時、突如として校舎裏に、最近では聞き慣れない不協和音が響いた。


ぐぅ~きゅるるるるる………………………


…何だ?この漫画の効果音みたいなのは!?これは俺じゃないぞ!?
だが、今ここには俺たち二人しかいないはずだ。
ってことは……………




(続く)
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。