チキンと地味子の急展開:9スレ目625


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626 :チキンと地味子の急展開 [sage saga]:2011/04/25(月) 10:58:10.42 ID:lGAVlfkj0


その日も俺は深く考えずに田村屋に向かい、麻奈実の部屋に入った。
特にやることも無いので、仕方なく参考書を開き、幼馴染み様にご教授の程を賜っている。

「ふわ~あ……結構時間経ったか?」

「うん。きょうちゃんも今日は、集中してやってたね」

「ああ、なんだかんだでテストも近いしな。今のうちに積み重ねとこうと思って」

「きょうちゃん偉いね~。いい心掛けだと思うよ」

「まあ、麻奈実と一緒じゃないとこうはいかないんだけどな」

 自分で言った通り、俺は幼馴染みが居ないとロクに勉強をしない傾向がある。
もし麻奈実が居なければ、テスト直前にひーこら言いながら必死に勉強している
だろう。

 改めて言うのもなんだが、俺の幼馴染みは本当に素晴らしい。
俺のことを気遣ってくれるのはもちろん、その時その時に必要なモノを的確に与えてくれる。
それはねぎらいの言葉だったり、厳しい指摘だったり、たまには甘いお菓子だったりする。
そんな幼馴染み様に、俺は昔から甘え続けていた。

 ただ、それはあくまでも幼馴染みという関係であり、決して男女の関係ではない。
よく周りから付き合っているのか、と聞かれるが、俺はその質問にノーと言い続けている。
その答えに周りは嘘だ、と言うが事実なのだからしょうがない。
そしてその後に必ず続くのが、付き合う気はあるのか、という質問だ。

 この質問に関しては、俺はごまかし、はぐらかしながらやり過ごして来た。
正直、答えられないのだ。俺と麻奈実が付き合う?
それは手を繋いだり、キスをしたり、あんなことやこんなことをしたりするというのか。
そんなピンク色のイメージが出来ないから、俺は麻奈実と付き合わないのだろう。

 ただ、麻奈実が俺以外の誰かと付き合うというのには、非常に抵抗がある。
非常に抵抗がある、なんて格好付けた言い方をしたが、はっきり言って嫌だ。
っていうか信じられねえ。麻奈実が? 俺以外の男と? あんなことやこんなこと?
ふざけんな、と言ってしまいたくなる。

 ああ、どうしようも無い我が儘なんてことはわかっている。
恋人でも家族でも無い俺が、麻奈実の恋なんかに口を出せるわけが無いからな。
それでも俺は、麻奈実が誰かと付き合うのを許せない。
じゃあ、やっぱり好きなんじゃないかって?
……違うんだ、何って言ったら良いかはわからないんだが違うんだ。
こう、うーん……独占欲……じゃなくて、ジャイアニズムでもない……ええっと……。
ああ! もういい、とりあえず麻奈実が誰かと付き合うのは嫌だ!
理由無し、考え無し、ただの男子高校生の理不尽な我が儘と受け取ってくれ!


「きょうちゃん、なんだが眠そうだね」

「ああ……ちょっと最近夜更かしが続いちまってな」

「へえ~、何してるの?」

 妹に色々するエロゲーです!

……なんて言えねー、絶対言えねー。
さすがの麻奈実でも、これには苦笑いどころかドン引きするだろうな。
くそっ……桐乃のヤツめ、また新作が出たとかでエロゲーを五本も寄越しやがって。
「全部コンプしなきゃ許さないから」、じゃねーよ!
何が悲しくて夜な夜なエロゲーに勤しまなきゃならねえんだ!
ふざけるな、私は一人で寝させてもらうぞ、なんて台詞はもちろん言えない。
ただただ、妹様から賜った至高のエロゲーを涙を流しながら夜更かししてクリアする。
そんなんで学校に行くわけだから眠いのも無理は無いよな。

「まあ……色々あってな」

「そっか~、大変なんだねえ」

「そういうことにしといてくれ。……しかし眠い。なあ、麻奈実」

「なに、きょうちゃん?」

「ちょっと寝させて貰ってもいいか?」

「えっ!? え~っと……うーん……」

「ああ、さすがにダメだよな。悪い悪い、じゃあ家帰ってから寝るから今日は」

「だ、ダメ! 帰っちゃうのはダメ!」

 あれ? 今日の麻奈実さんはなんだかいつもと様子が違いますよー?
こんな大声聞いたのは久しぶりかもな。

「あ、ご、ごめんね。急に大声出しちゃって……」

「い、いや、別にいいんだけど……どうしたんだ?」

「あの……今、眠いんだよね?」

「ああ、だから寝たいから帰ろうかなあなんて」

「だ、だから……その……」

 なんだろう、この目の前でモジモジする生命体は。幼馴染み科の新種だろうか。
なんてふざけた事考えてる俺も、少しは動揺してるのかもな。
しかし、その後の麻奈実の台詞にはさすがに動揺を隠せなかった。

「一緒に……寝よう?」

「……へっ?」

 上目遣いの幼馴染み様はトンデモ発言を宣われました。


……あれ? 桐乃のヤツ、妹もの以外にも幼馴染みもののエロゲーも混ぜてたのか。
つまりこれはエロゲーなんだな、きっと。
まさか麻奈実が上目遣い+赤い顔+ちょっと涙目+眼鏡なんて完璧なコンボを…
…って麻奈実はもともと眼鏡だろうが!


「きょ、きょうちゃん? 黙っちゃってどうしたの?」

「はっ……! いや、何でもない。ところでおまえ、今……」

「あの……ほら、きょうちゃん前もわたしの部屋で寝ていったし、前に泊まったりもしたから。
 だから別にわたしの布団で寝てもおかしく無いよね?」

「いや、今おまえ、一緒にって言ったよな?」

「そ、それは……わたしも眠いんだけど布団はちょっと今は一つしか無いから……」

「じゃあやっぱり俺は帰るとす」

「それはダメ!」

「……えー」

「うう……えっと、だからやっぱりわたしと一緒に……」

 どうやら麻奈実は俺と一緒に布団で寝たいらしい。
これだけ書くと物凄くアレなんだが、麻奈美と俺の関係ならコレもありなのではとも思える。
なぜなら、何も起こらないという確信があるからだ。
むしろ落ち着いて寝られるかもな。こいつの近くに居ると落ち着くし。

「はあ……わかったわかった。狭くなるかもしれんがご一緒させてもらうよ」

「えっ、本当に?」

「本当に本当に本当だ。ほら、さっさと寝てバッチリ睡眠取るぞ」

「う、うん!」

 そんなこんなで俺は麻奈実の布団に一緒に入ることとなった。
まあそれが間違いっちゃ間違いだったんだけどな。


「よいしょ……やっぱり狭いねー」

「だから言ったじゃねえか」

「うん、でも悪くないかも」

「……意味が良くわからんがほっとこう」

「あ~ひどいよ。それにしても、きょうちゃん逞しくなったね」

「ああ……? まあ逞しくって程ではないけど、成長はしてるからな」

「成長期だもんね、いいな~」

「いいな~……って、なんだよ。おまえも成長したいのか?」

「う、うん。女の子には色々悩みがあるんだよ」

「女の子? お婆ちゃんの間違いじゃねーの」

「きょうちゃん、相変わらずひどい……」

「はいはい、さっさと寝ようぜ」

 そう言ってから俺はすぐに眠りにつくことが出来た。
麻奈実もおそらく一緒ぐらいのタイミングで寝たのだろう。

「……ううん、おー、寝たなあ……」

 有り得ないくらいリラックスして寝ていた、とは起きてからわかった。
おかげで疲れもいい感じに取れ、なんだか体も軽い。ちょっと左腕が痺れてるのが不思議だけどな。
もしかしたら我が幼馴染みからは、リラックスさせる何かが発せられているのかもしれない。
さて、その幼馴染みは……。

「まだ寝てるか……気持ち良さそうに寝てるな」

 こいつ、眼鏡をかけたまま寝ちまったのか。
って気付いたら俺の腕が枕にされてるよ。ちょっと重いと思ったのはこれが原因だな。

「ううん……きょうちゃん……」

 ……寝言か。夢の中でも俺を呼びやがって。二人で縁側でお茶飲んでる夢でも見てるのかもな。
十人並みとは前に言ったが、寝顔はなかなか可愛……いかんいかん、寝起きだからか変なことを考えてしまった。

「……きょうちゃん……」

 はいはい、きょうちゃんはここに居ますよー。それにしてもこいつ、本当に気持ち良さそうに――、

「……すき……」

 ……はい? 何か聞き慣れない単語が聞こえたような気が。

「……きょうちゃん……すき」

 鍬? 鋤? 隙? なるほど、夢の中で俺と麻奈実は農業をしている。
そして俺の鋤の使い方が隙だらけだ、と言いたいのだろう。
ハハハ、こやつめ、なかなか愉快な夢を見やがって。

「きょうちゃん……だいすき」


 ……ああ、薄々は感づいていたさ。
その「すき」は「好き」なんだろうって。
いくら俺でもこの「好き」の言い方を取り違えたりはしない。
これは、Lの次がOの「好き」だろう。

 思えばそういう雰囲気が無かったわけじゃない。
クリスマスを一緒に過ごしたこともあるし、修学旅行や運動会、卒業式なんかも一緒だった。
そんな長い時間を過ごして、いわゆる男女のいい感じな雰囲気がゼロだったなんてことは無い。
なんとなく見つめ合ったり、手が触れたり、そんなことも一度や二度では無かった。

 それでも俺達は、この「幼馴染み」という関係を続けてきた。
この関係は非常に楽だ。お互いを気遣いながらも下心という下衆なモノが一切無い。
打算なしの緩くて暖かい関係、それが俺と麻奈実の全てだった。

 ただ、そんな関係がいつまでも続くとはもちろん思っていない。
いつか二人のどちらかに恋人というものが出来れば、この関係を今まで通りに続けることは不可能だ。
何も気にせず、かつ心配し合う。これは今しか出来ない。
だからこそ、俺達は「幼馴染み」として二人で歩き続けた。

 その二人が、もし「恋人」という関係になってしまったら。
はっきり言おう、俺はそれが怖い。
今までみたいな関係が終わってしまう、なぜだかそんな考えを俺はいつからか持つようになった。
俺のことに関しては勘のいい麻奈実のことだ、きっとこんな俺の考えも気付いているかもしれない。
それでもこいつは何も言わず、ただ俺と「幼馴染み」を続けてくれた。

 ああ、寝起きだからな。こんな変なことを考えちまったのかもしれない。
でも、多分これは正解だ。今の俺の素直な気持ちがこれなんだろう。

 さて、自分の気持ちに気付いたところで、俺は何をすればいいのだろうか。
自覚したばかりだが、俺は相当なチキン野郎だ。
いきなりこの関係を変えることは出来ないだろう。
改めてその麻奈実の顔でも眺めてみるか。

「……すー……」

 うんうん、人の気も知らないで良く眠ってるよコイツ。
なんだろう、なんだか無性に悪戯したくなってきた。もちろんそういうのじゃ無いヤツだぞ。
まずはこの鼻でも……おおっ。

 俺の視線は今、一点で止まっている。
その場所は、麻奈実の唇だ。
なんだかプリッとしていて触ると気持ち良さ……ああ! マズい、意識したら余計にマズいぞ!
……でも、もしこの唇と俺の唇が……うおお! 落ち着け、落ち着くんだ!
一度麻奈実への思いを確認した後にこれは拷問だ。生き地獄と言ってもいい。

 ……ダメだ、もう麻奈実を起こして帰ってから水を頭から被るしか無――、

「きょうちゃん……すきだ……んっ」

 気付いた時には遅かった。目の前に麻奈実の顔がいっぱいに広がっている。
その距離は数センチ、そして唇と唇に至っては――ゼロ。

 ああ、悪いか、悪いよな。俺は寝てる幼馴染みにキスしちまったんだよ。
本当にチキンだな、俺。我慢出来なかったとはいえ、これは無いよな。

 ……悪い、麻奈実。いつか必ずちゃんと言う。それまでこれは秘密にさせてくれ。
そう思いながら俺は、麻奈実の頭の下から左腕を抜き、布団から出た。
寝た状態から座った形に変わり、立ち上がろうとしたその時。
後ろから声が聞こえた。

「きょうちゃん……キスだけでやめちゃうの?」



「ま、麻奈実!?」

「……ごめんね。わたし、起きてたんだ」

「えっ……? ってことはまさか」

「うん……あれは寝言じゃないよ」

「あ、ああ!? しかもそこから起きてたって……つまり」

「……キスって、気持ちいいね」

 そう言った麻奈実の頬は赤らんでおり、いかにも照れくさそうだった。

 なんてこった……あの寝言は全部意識的にやったもので、しかもキスしたのももちろんバレている、なんて……。
恥ずかしさと何とも言えない気持ちで叫びたくなってきた。っていうか叫ばないとやってらんねー!
そんな感じであー、だとかうー、なんてやってた俺に麻奈実はさらに追い討ちをかける。

「えっと……キスしたってことは、きょうちゃんもわたしと同じ気持ちなんだよね?」

「うっ……」

 痛いところを突かれた。
この状況でそれは否定出来ないし、否定しないイコールそれはつまり俺も麻奈実を好きっていうのと一緒なわけだ。
いや、確かにぶっちゃけ好きですよ? ああ……ついに好きって自覚しちゃったよ。
なんとなく意識の中でも「好き」って単語は出したく無かったんだけどな。
ただ、自覚したばかりのこの気持ちを今すぐ麻奈実に言う気にはなれない。
何故かって? 俺はチキン野郎なんだよ、察してくれ。
そんなチキン野郎を幼馴染み様は逃がそうとはしない。

「違うの?」

「あー……その、ほら。キスってどんなもんかなあって、興味湧いてさ!
 で、ちょっと魔が差したっていうかそういうヤツでな。決して好きとか……」

 何このヘタレチキン。キスしといて魔が差したなんて良く言えるよな。
まあ、俺なんですけどね! ……いや、本当に気が動転しただけなんだよ。

 多分、麻奈実はこう言ってしまえば「そっか~」っで終わらせてくれるはずだ。
とりあえずこの場はこれで終わらせておきたい。
でも、そんな事許されるわけが無い。さすがの麻奈実もこれは無理だってわけだ。

「きょうちゃん……わたし、そんな都合のいい女の子じゃないよ」

「……えっ?」

「一緒に居たい時に居て、キスしたい時にキスする……。
 そんな、きょうちゃんの都合だけでいいようにされるような女の子じゃない」

「麻奈実……」

「わたしは……きょうちゃんとこういうことがしたかった。
 ううん、きょうちゃんとじゃなきゃ嫌。他の男の人なんて考えられない……」

 麻奈実は少し目に涙を浮かべながら俺に言った。
その目は真っ直ぐに俺を見つめ、微動だにしない。

「きょうちゃんは……どう? わたしが他の男の人とキスしたりするの、想像できる?」

「俺は……」

 ここまで麻奈実に言わせちまったんだ。
いくらチキン京介と言えども、もう自分に嘘は吐かない。


「……嫌だ、麻奈実が他の男と一緒に居るのなんか見たくねえ。
 俺以外の男と二人っきりとか絶対許さない。っていうか無理だ。
 しかも、おまえが俺以外の男とキス? ……ふざけんな! そんなの想像できるわけねえだろが!!」

 一気にまくし立ててみたが、これは酷いな。
醜いってもんじゃない、自分で言ってて吐き気がする。

悪いな、麻奈実。
おまえの幼馴染みは独占欲と我が儘が強いヘタレチキンの最低野郎だったみたいだ。
それでも、麻奈実はそんな汚い俺を相変わらずの笑顔で受け入れてくれる。

「そっか……わたし、嬉しいよ。きょうちゃんもわたしと同じこと考えてくれてたんだね」

「……ああ、そうだよな。おまえはいつでもそうやって、俺を包み込んでくれてたんだ」

「わたしも……きょうちゃんが隣に居るから、こうしてきょうちゃんの前で笑顔
で居られるんだよ」

 なんだ、簡単なことじゃねえか。
俺と麻奈実は変わらない、変わるわけがないんだ。
「幼馴染み」が「恋人」に変わろうがそんなのどうでもいい。
俺が居て、まが居る。それだけで俺達は十分だった。
もう迷うことも恥じること波も無い。ただ、ありのままを伝えよう。

「麻奈実……」

「……うん」

「おまえは、これからも俺の側に居てくれ。そして笑っていて欲しい。
 俺もおまえの側にずっといる。……だから、俺の我が儘を受け入れて欲しい」

「……いまさらそんな当たり前なこと言われても、何もわたしは変わらないよ。
 ずっときょうちゃんの側に居続ける。今までも、そしてこれからも」

「……ありがとう」

 そう言って俺は再び麻奈実との距離をゼロにした。
今度は……間違って無いよな?

「……えへへ」

「はあ……言っちまったよ。でも、なんかいいな……こういうの」

「そうだね。ところできょうちゃん……」

「ん? なんだよ」

「えっと……さっきのって、ぷろぽーず、なのかな?」

「なっ……!」

 そんな感じで俺の顔が真っ赤になって、麻奈実はそれを見て笑った。
おそらく、こうやって今まで通りに過ごして行くのだろう。
うん、悪くない。むしろ最高だな。

「ねーねー、どうなの~?」

「うるさいっつうの!」



    end
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