無題:9スレ目784


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

784:◆NAZC84MvIo[sage sage]:2011/05/01(日)17:04:47.10ID:fomMeBZw0

俺の名は高坂京介。どこにでもいる普通の高校二年生だ。
取り立てて自慢できるような特技や能力など無いが、
相手が誰であろうと自慢できるものが一つだけある。
妹のあやせである。

容姿端麗にして性格は生真面目で面倒見が良い。
やや思い込みが強い部分があるものの、それは一途さ故のこと。
最近ではティーン誌の読者モデルなどでも活躍するまさにラブリーマイエンジェルなのである。
これで妹じゃなかったら本気で結婚してくれって言うくらいなんだけどな・・・

「お兄さん、起きて下さい。早く起きないとご飯さめちゃいますよ」
「う~ん・・・キスしてくれたら起きる」
「な、な、朝から何を言ってるんですかこの変態っ!ぶち殺しますよっ!?」
「あやせになら殺されてもいい」
「も、もう!いい加減にしてください!わたしは今から学校に行くんですから!」
「・・・今から?早すぎないか?」
「桐乃と一緒に行くんです。桐乃は朝練があるから朝早いんです」
また来たよこの展開が・・・
自他共に認めるシスコンの俺の(いや、こんな可愛い妹なんだから当たり前だろ?)
目下、最大の悩みがこの桐乃というクソアマの存在である。

新垣桐乃――容姿端麗にして成績優秀スポーツ万能、まさに絵にかいたような完璧超人だ。
だからとにかく凄く目立つ奴で、同級生であればその存在を知らない者などいない。
それは妹のあやせだって例外ではなかった――

まあそれだけなら問題ない。俺はそんな女に興味は無いし、あやせさえいれば十分なのだ。
だがしかし、ひょんなところからあやせと桐乃との関わりが出来てしまった。
実はこの新垣桐乃、前述の評価だけでも相当なものなのに読者モデルまでやっているのである。
つまり、あやせの仕事仲間ということだ。
それまではただ遠くから見るだけの存在だったのに、
あやせと桐乃はあっという間に仲の良い友人になってしまった。
それ以来、あやせはことあるごとに「桐乃は~」「桐乃が~」「桐乃に~」「桐乃の~」と連呼する始末。
くそ、こうなるんだったらやっぱりあやせがモデルをやるって言った時にもっと反対しておくべきだった!

そんなわけで俺はこの直接会ったこともない新垣桐乃という女に敵意を燃やしているのである。


「こんにちわ~」
「おじゃましまーす」
「ちーっす」
そんな日々を送っていたところ、ある日あやせが友達を家に連れてきた。
その中になんとあの桐乃が居やがった。なんでわかるかって?ふん見くびって貰っちゃ困る。
俺は妹の載った雑誌はすべてチェックしてるしその写真は全て切り抜いて保存してある。
だが困ったことに最近の写真ではこの桐乃と一緒に写っているものが多々あるのだ。
しかもあやせ本人はそれを嬉しそうに報告してくるからたまったもんではない。
おっと、話が逸れたな。つまるところ俺は桐乃の顔は知ってたってことだ。

「いらっしゃい」
だがしかし、内心どう思っていようと可愛いあやせの友達に邪険な態度などとれるはずもない。
にこやかに挨拶して部屋に戻ることにする―――――聞き耳をたてるためにな!


壁に耳を当てると、隣の部屋の会話が聞こえてきた――

『だからぁ~、そんなのいないってば!』
『うそだぁ~、じゃーケータイ見してみ?』
『だ、だめ、それはだめ。プライバシーの侵害だから』
何の話だ?

『もう、とぼけて!ねえってば!桐乃~相手はどんな男なのぉ?』
『だからぁ!あたしに彼氏なんていないってば!』
 ・・・・・ほうほう、これはつまり桐乃に彼氏がいるのではないかとあやせ達が問い詰めてる訳か。
あやせに彼氏疑惑が出ているわけではないんだな、ふぅ安心したぜ。
だが人の家に来てても話題の中心は桐乃なのか。ちょっと気に食わねぇ・・・

『そ、そうそう、ところであやせってお兄さんいたんだね?知らなかったよ』
『・・・う・・・そ、それが?』
『なんでそこで嫌そうな顔するの?優しそうな人だったじゃん』
お?なんか無理やり話題を変えにかかったみたいだな。
だがあやせよ、何故そこで嫌そうな顔をするんだ?お兄ちゃんは悲しいぞ。

『や、やさしいのは間違いないんだけど、わたしに構いたがりすぎて困ってるっていうか・・・』
『シ、シスコンなのっ!?』
『う、うん・・・たぶん』
こ、困ってたのか!?くそぅ、俺はこんなにもあやせのことを思っているというのに!
だが何で桐乃はあんなにシスコンに食いついたんだ?そんなに話題を変えたかったのか?

結局その日はこいつらが帰るまでひたすら壁に耳を当てていた――
おかげで新しいあやせたん情報を入手できたし、よかったよかった。
 ・・・興味もない話もさんざん聞かされたけどな。
だが冷静に考えれば敵のことを知っておくのはいいことだ。念の為メモっておくか。
あやせの事ならすべて頭に入るが、他のことは書き留めておかないと忘れてしまうしな・・・


そして夏休み――
今日、俺は東京ビッグサイトそばの国際展示場前に来ている。

最近、桐乃が構ってくれないと愚痴るあやせの付添だ。
今日はここで撮影があったのだが、モデルは現地集合で現地解散ということで、
一人であやせを行かせるのに反対した俺が荷物持ちとしてついて来たのだ。

撮影は順調に進み、午後から雨という予報だった天気も持ちこたえてくれた。
雨が降り出す前に帰りたいものだが、このビッグサイトの混みっぷりは何なんだ?
いくら東京といってもこんなに人がたくさんいるのは初めて見る――
しかも何か異様な恰好をした連中もちらほら見かける。何かのイベントだろうか?
何の気なしに見渡していると見覚えのある奴が目に飛び込んできた――

「・・・あれ、桐乃じゃねーか?」
「え?あ、本当だ!ねぇ桐乃~!!」
あやせはそのまま駆け出して行った。

「あは、やっぱり桐乃だ。やだ、なに、どうしたのー?」
「あ、あやせっ!?」
「ウソぉ、嬉しー。待ち合わせした訳でもないのに偶然会っちゃうなんて。すっごいよね!
 わたし達見えない絆で結ばれてるのかも・・・あ、わたしなんかストーカーみたいなこと言ってる?」
「う・・・ん!すっごい偶然・・・!」
喜色満面ではしゃいでるあやせと違って桐乃は見るからに困惑している。
そもそもこいつは一体ここで何をしていたんだろう?
ふと、周りを見るとひときわ目立つ“いかにもオタク”と言った感じの
ぐるぐるメガネをかけた背の高い女と、ゴスロリファッションに身を包んだ少女がこちらを見ていた。

「な、何か用か?」
「失礼しました。ひょっとするときりりん氏のお知り合いですか?」
「き、きりりん氏!?」
なんだそりゃ!?
いや、おそらくその音の響きと状況から察するに桐乃のことを言ってるんだろうが、
こんな奇妙な呼び方をする奴を実際に見たのは生まれて初めてだ。

「あ、あいつの知り合いかってことか?それなら答えはYESだ。
 いま桐乃と話してる女の子の兄だよ。妹は桐乃の友達なんだ。君達もそうなのか?」
目の前の女の子達からあやせ達の方に視線を移すと、
桐乃がこちらをやけに気にしているように見えた――

「い、いえいえ!違います!どうやら人違いだったようで失礼いたしました!」
慌てふためいた様子で手をぶんぶん振ると、そのままそそくさと離れていった――
何事?桐乃は少し安堵したような、まだ困惑してるような微妙な様子だ。
以前家で見かけた時の落ち着き払った態度とかけ離れている。
よく事態が呑み込めないまま、俺はあやせ達に近づく――


「偶然だな、今日はどうしたんだ?」
「えっ?あ、あやせの兄貴?そっちこそ二人でどうしたの?まさかデート?」
「はっはっは、嬉しいことを言ってくれるな!いかにもその通りと言いたいが違う」
「今日の撮影はここであったんだよ。桐乃はどうしてここに?」
「え、あ、あはは!え~っとね・・・」
特に変な質問でもないと思うのだが、なぜ答えないのだろう。
それとも聞かれたらまずいような事でもしていたというのだろうか?
さっき俺に声をかけてきた二人とも関係があるのかもしれない。

「さっきあそこの奴らに声かけられたんだけどお前の知り合いか?」
「し、知らないよあんなキモい連中っ!」
うわ・・・確かに俺もそう思ったけど、見ず知らずの奴にキモいとか性格わりーぞお前・・・
兄妹二人して軽く諌めるも、桐乃は『急ぐから』とこの場を離れようとするだけだった――


「――待って!!」
それを引き留めたのはあやせだ。ガッチリと桐乃の手首を握り逃がすまじというような様子で

「桐乃、どうして逃げるの?」
「べ、別に逃げたわけじゃ・・・」
「嘘、それは嘘」
断定。あやせは桐乃の言い訳を押し潰すように瞬時に否定をかぶせてきた。

「嘘、嘘、嘘。・・・嘘つかないでよ。・・・だって逃げたじゃない、逃げたでしょ?
 逃げたよね!?なんでわたしに嘘つくの?」
 ・・・な、なんだ突然この迫力は。これは本当に俺の妹のあやせなのか?
虹彩の消えた瞳に恐怖すら覚えながら恐る恐る声をかける

「あ、あやせ?あのさぁ・・・」
「うるさいっ!!」
「ヒィッ!!」
「お兄さんは黙っててくれます?今はわたしと桐乃が話しているところなので」
「ごめん・・・なさい・・・」
こ、怖い。セリフだけ見ると『わたし、ちょっと怒ってます』くらいに見えるかも知れないが、
実際は違うからね?ポツポツ降り出した雨とあやせの長い髪も相まって
まるでホラー映画の世界にでも迷い込んでしまった気分だ・・・
普段から妹にセクハラ連発して怒らせてる俺だが、こんな怒りは見たことは無いぞ?


「ねえ、桐乃は知ってたはずだよね?わたしが嘘が嫌いだってこと・・・
 嘘つく人が大っ嫌いだってこと!!なのにどうして嘘つくの?わたし達親友じゃなかったの?」
「ち、違う・・・」
「何が違うの?ほらまたそうやって黙り込む。桐乃らしくないじゃない。
 ショックだなぁ・・・親友だと思ってたのに」
「・・・その辺にしとけよ、友達だって言えないことの一つや二つあるだろう?手ぇ放してやれ」
あまりの様子にあやせを諌めて手を放させる。

「あっ、ごめんなさい。痛かった?」
「・・・ううん、大丈夫・・・」
とは言うものの桐乃の手は赤くなっていた。どんだけ強く握ってたんだよあやせ・・・

「でも、わたし桐乃のことがすっごく心配で!何か嫌な予感がするの!
 ・・・・・どうしても見過ごしちゃいけないような気が・・・・・」
「うぅ・・・」
「――その紙袋、何が入ってるの?」
その言葉が引き金になったのか、そのまま弾けるように桐乃は駆け出した――

「待って!!」
とっさに伸ばしたあやせの手がその紙袋にかかり、引き裂かれる――
雨の降りだす中、ぶちまけられた紙袋の中身に三人とも硬直する。

最初に動いたのはあやせだった。
散らばった本の中の一冊を拾い上げページをぱらぱらと捲る――

「安心して。誰にも言わないから。あなたみたいな人が・・・こういうものを・・・
 皆に信じてもらえるとも思えないし・・・。でもっ」

      バサッ

そのまま地面に落とすように本を手放し、抑揚の全くない声で言い放った。

「ごめんなさい、そういう人とは今後お付き合いできません。
 お願いですから学校でも話しかけないで下さいね――」
あやせはそのまま一瞥もせずに駅に向けて歩き出した――

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~疲れた~~~~~~~」
雨に濡れたままだったとか、荷物を持っていたとか、そんなことは全部二次的な要因にすぎない。
表情を固まらせたまま、一言もしゃべらないあやせと家に帰りつくまで――
その精神的な苦痛が今日一日の疲れを倍増させていた。
あんなあやせの様子は14年間あいつの兄をやってて初めて見たのだ。しかも絶交宣言だと?

今まで見たことの無いあやせの一面を引き出したのが桐乃だと思うと何か歯痒くて仕方ない。
だが、あの忌々しいクソ女(桐乃)とあやせが縁を切るのは大歓迎だと一人ほくそ笑む。

この時俺はまだ事態を軽く考え過ぎていたのかもしれない――


「ねぇ、京介。最近あやせに何があったの?」
「友達と喧嘩したらしいんだよ・・・」
「本当にそれだけ?もう一週間もあんな調子じゃない・・・」
最近の我が家の空気は暗い――それは仕方がない。我が家の守護天使あやせたんに元気がないのだ。
思春期の女の子なんだから悩み事くらいは当たり前だろうと言っていても、
一週間もあんな調子じゃあ、お袋も心配するってもんだ。

「あんたお兄ちゃんなんだから、何とかしてあげないさいよ」
「なんとかって言ってもなぁ・・・」
本音を言えば二人が仲直りして、またあやせが桐乃にばっかり夢中になるのは気に食わない。
だが今の状態がいいものと思えないのも事実――あの天使の笑顔が見れないのは俺も辛い。
てっとり早く立ち直らせるには仲直りさせるのが一番なんだろうなチキショー!

「わぁーったよ!!なんとかしてみる」
どうすりゃいいのか皆目見当もつかないまま返事が出来るのは、やっぱり愛しの妹の為だからかねぇ・・・


「とは言ったもののどうすっかなぁ・・・」
まず情報を整理してみよう。
あの時、桐乃があそこに居たのはコミックマーケットというイベントに参加するためで、
そのコミケとやらは同人誌といって素人が自分の創作物を売ったり買ったりするものらしい。
そして最大の問題は、桐乃があの時持っていたのは、その・・・いかがわしい物だったってことだ。
潔癖症のラブリーマイエンジェルには受け入れがたい物だったらしい。
女の子だろうとそういう物に興味を持つのは自然なことだ、とも思うが、
俺は中身を見てないんだからあまり無責任なことは言えないんだよな・・・

それにあやせはいわゆる“オタク”という人たちを犯罪者予備軍として見てるフシがある。
だからオタクの祭典に桐乃が参加していたって言うだけで相当ショックだったのだろう。

「はぁ~~~~~~~~どうすりゃいいんだろう?」
深いため息をつきながら近所をぶらぶらしていると、
見たことのある少女の姿が目に入った――

一目見たら忘れないだろう夏場にもかかわらずゴテゴテと飾り立てられた黒いドレスを着た少女。
あの日、俺に話しかけてきたぐるぐるメガネ女のツレだったはずだ――


「き、君っ!」
思いもよらぬ邂逅にセンチメンタリズムな運命を感じつつ話しかける――
アレ?なんか俺妙なこと口走ってる?

「なにかしら?」
振り向いたその少女の目は赤く、頭には猫の耳が生えていた。
何だこれは?俺はいつの間にワンダーランドに迷い込んでしまったのだ?

「その、覚えてないか?つい先日会ったと思うんだが・・・」
「ナンパ?ふっ、調子に乗らないで頂戴。
 この私に人間風情が気安く声をかけていいと思っているのかしら?」
「も、申し訳ない!だが大事なことなんだ。新垣桐乃という女のことで話がある」
非日常という表現がピッタリくるような雰囲気の女の子―黒猫と名乗った―に
あやせが知らない詳しい事情を聞くことにした――



ざっと纏めるとやはりこの子とあのぐるぐるメガネは桐乃の友人らしい。
それも“オタク友達”だということだ。
本人も自分の趣味が大きな声で言えないと思っていたらしく、
趣味の話はネットのコミュニティだけでしていて、そこで二人と知り合ったらしい。
家が近かったこともあり、あの日は三人でコミケに来ていたというわけだ。
学校の友人(=あやせなど)に趣味を秘密にしているという事を知っていた二人は、
出会った様子からそっちの知り合いと察してあの場を去ったという事らしい。
だがあんな怪しい確かめ方だとバレバレだと思うんだけどなぁ・・・

「私から言わせれば自業自得ね、自分の趣味をヘタに隠すからそうなるのよ」
「でも隠してなかったらそれはそれで大変だったと思うんだが・・・」
「違うわ。
 隠していたということは、誰というよりまず自分が自分の趣味のことを見下していたのよ。
 本当に好きなら開き直るべきよ。そう思わないかしら?」
「ん~まあそういう見方もできるか・・・」
俺自身、シスコンシスコンと周りの連中からからかわれることもあるが、
あやせ至上主義の俺からすればむしろ褒め言葉だしな。

「で、その桐乃の趣味って具体的にどうなんだよ?」
「どう?というと?」
「妹に聞いても『いかがわしいもの』の一言だけで要領を得ないんだよ」
「それは本人から聞いたらどうかしら?取り次いであげてもいいわよ?」
「本当か?それなら頼む!」
「妹さんの為に必死ねぇ・・・聞きしに勝るシスコンだわ」
どうなるか楽しみ・・・そう小声でつぶやいた黒猫の声は俺の耳には届いてなかった――


「久しぶりだな」
「・・・うん」
目の前にいる少女は新垣桐乃――のはずだ。
というのも以前から受けていた快活な印象は無く、あやせと同じように猛烈に沈み込んでいた。
こんな様子じゃ外で見かけても気が付かなかったかもしれない・・・

「えっとさ、話を聞きたいんだけどいいかな?」
「べつにイイケド・・・あんた何の為にこんなことしてんの?」
「あやせの為に決まってるだろうが!お前の変な趣味のせいであやせが落ち込んでんだよ!」
落ち込んだ様子があやせを思い起こさせて、その原因であるこいつが急に腹立たしくなった。
だが、俺の言葉に桐乃は猛烈に反応してきた――

「へ、変な趣味って何よっ!!少なくともあんたにだけは言われたくないわよっ!!」
「ああっ!?なんでそうなるんだよ!!大体あやせが落ち込んでるのもお前のせいなんだろーが!!」
「“それ”よっ!!あんたは何かにつけてあやせあやせって・・・バカじゃないの!?」
「なんだとっ!?俺のあやせへの思いをバカにすんじゃねーよ!!」
妹をとられたような思いがあった為か、ほぼ初対面にもかかわらず歯に衣着せぬまま怒鳴りあう。

「うっさい!!このシスコン変態バカ兄貴!!」
「シ、シスコン変態バカ兄貴だぁ・・・!?」
「何か間違ってる!?言っとくけどねぇ!
 あんたの度を越した変態行為はあやせから聞いてるんだからね!!」
「な、何を聞いてるっていうんだっ!!」
「お、女の子に何言わせるつもりなのよ、この変態っ!!」
「誰が変態だっ!?」
「自分の胸に聞いてみればいいでしょ!だ、大体妹相手に結婚しようとかふつう言う!?」
「う、うるせー!!そんくらい可愛いってことだろうが!!」
「うん。あたしもあやせはすっごくいい子だと思う・・・」
すると、桐乃はいきなりスっと落ち着いた様子に変わった――


「なんだよ、いきなりおとなしくなりやがって・・・」
「あんたって本当にあやせが大事なんだね。羨ましい・・・」
「・・・どういう事だよ」
「あんたんとこのお父さん、警察の人なんでしょ?結構厳しい人らしいじゃん」
「・・・・・まあそうだな」
「あたしのお母さんもさぁ、PTAの会長とか色々やってて厳しいんだよね」
「らしいな。ちょろっと聞いたことはあるよ」
本当は盗み聞きしてたんだけどな。

「しかもあたし一人っ子じゃん?おかげで親の期待通りにしないといけなくてさ、
 息苦しいったらありゃしないの・・・」
「それに何の関係があるんだ?」
家庭の悩みなんて多かれ少なかれどこにでもあるもんだろう。
そんなことで同情されるとでも思ってるのか。

「・・・・・兄貴がいるって知ってから、よくあやせがあんたの話をするんだよね・・・」
「そ、そうなのか!?」
「キモッ!!なんでそんな嬉しそうなのよ!!」
「す、すまん・・・」
「・・・まあいいけど。あやせは口では迷惑そうに言ってるけどサ」
「め、迷惑なのか・・・」
改めて聞かされるとやはり悲しい。だが迷惑と言われてもこの思いはどこにぶつければいいんだよ?

「でもさ、あたしはあやせがあんなにいい子なのはあんたのおかげだと思うんだよね。
 厳しいお父さんに色々言われたとしてもさ、
 あんたみたいに自分よりも妹を優先してくれる兄貴が居たら心強いと思うし、
 あたしも、ずっと頼りになる兄貴が居てくれたらなって思ってたから・・・」
な・・・なんて嬉しいことを言ってくれるんだ・・・!今はこいつが天使に見えるぜ!

「だから、あたしそういう本とかゲームとか集めてたの・・・」
「・・・・・は?」
「だから・・・も、もういい!とりあえず読んでみればいいでしょ!」
ドサッとテーブルの上に出されたのは数々の薄い本と『妹』の文字が輝く“何か”のパッケージ。

「なんだこりゃ?」
「あ、それPC版。最初はPS2から出てたんだけどPCに移植されてから別シリーズ化したやつね。
 名作ではあるけど、ちょっと古いし内容もハードだから初心者にはおススメしない」
いや、だれもそんなこと聞いてねーし。そもそもこの『妹と恋しよっ♪』って何よ?
素人にはお勧めしないってお前はプロなのか?何のプロだよ?
何か延々と語りだす桐乃に圧倒されるばかりだった・・・


「――で、どう?」
「ど、どうとは?」
「だから、その、感想。あたしの趣味を見た」
「び、びっくりした」
「・・・それだけ?」
それ以外にどんな感想持てばいいんだよ?
妹モノのエロゲーにハマってる女子中学生なんて初めて見たぞ。

「やっぱりおかしいかな、あたしがこういうの持ってるの・・・」
「・・・まあ、あやせは受け付けないだろうな」
「なによその盛大な自己否定」
「えぇっ!?」
「あ、あのねえ!
 言っておくけど兄妹で恋愛とか結婚ってのは神話の昔から語り継がれてる物語なの!
 ちょっとエッチな描写があるとかって言うのは本質じゃないの!!
 それにこれを否定するんなら自分達はどうだっていうのよ!?
 シスコンが犯罪ならあんたの存在もアウトでしょ!?それでもいいって言うの!?」
た、確かにその通りだ。俺は自分のこのあやせへのたぎる思いが悪だとは決して思わない。

「あ、あやせだってあたしと喧嘩して落ち込んでるって言ったじゃん!
 だからあんたが説得してよ!!大事な妹の為なら何でもするんでしょ!?」

「まさか出来ないなんて言うつもり?あんたの妹への思いってその程度?
 妹が毛嫌いしているアニメやゲームにも負けちゃうくらいショボイの!?」

次々と焚き付けてくる桐乃の言葉に頭に血が上る――

「見くびるなよ!!やってやろーじゃねーかっ!!!」

売り言葉に買い言葉?いいや違うね!!
桐乃の趣味を認めさせることは俺の気持ちをあやせに伝えることでもあるんだ!!


――近所の公園にあやせを呼び出す。初めのうちは桐乃に隠れていてもらう。
まず直接顔を合わせることくらいしてくれないと話しにならない。

「お兄さん、どうしてこんな公園で話なんてするんですか?家では駄目なんですか?」
「ああ、家だと親父が居るから大きな声で言えないこともあるだろ?」
「お父さんに聞かれて困る話をする方が間違ってます」
「いや、そういう事じゃない。お前の友達のことだ。
 なあ、あやせ。いい加減桐乃と仲直りしたらどうなんだ」
「・・・どういう事ですか?」
「あいつの趣味のことは聞いたよ。俺も正直驚いたし、お前の気持ちもよくわかる」
「じゃあ、話すことは何もないです」
「まてよ!!俺はお前に聞きたい!!俺の気持ちは迷惑か!?」
「な、何のことですか!?」
「俺が・・・あやせを思う気持ちだ。可愛いと思う。大事だって思う。愛してると言ってもいい!
 お前が生まれてから14年間ずっと見守ってきた・・・この俺の気持ちは気持ち悪いか?」
「に、兄さんはいつもそうです!!こっちの都合も気持ちもお構いなしに暴走するから・・・!!
 だから困るんです!!わたしの一言ですぐ傷付くし、落ち込むし・・・大喜びするし・・・」
「その通りだ、お前が落ち込めば俺も落ち込むし、お前が嬉しいなら俺も嬉しい。
 そしてお前が幸せなら俺も幸せなんだよ。お前はこの俺の・・・この兄の気持ちを否定するのか!?」
桐乃の頼みもあるが大半は自分の為だ。
どっちでも構わないと強がって開き直って、今まで聞けなかった妹の本当の気持ち。

「・・・教えてくれよ」
「兄さんみたいな人は・・・・・迷惑ですけど、嫌じゃないです」
「ほ、本当か!?」
「そ、そうやってすぐ一喜一憂するから言い難いんです!!」
「そ、そっかごめんな。でもさっき言った通りだよ。俺はお前が落ち込んでるととても悲しい」
「・・・・・はい」
「原因はわかってるよ、あの日からだもんな」
あやせはうつむいたまま答えない。

「あいつと友達になってから、しょっちゅう話題に出してただろ?それだけでわかるよ、
 お前があいつを大好きだってこと。――そしてそいつと喧嘩してるから辛いんだってこと」
「・・・・・」
「あやせが大好きな俺からすれば、お前をあいつに盗られるみたいでちょっとヤだけどな、
 お前が落ち込んでるよりずっといい」
「お兄さん・・・」
「いい加減仲直りしないか?」
「え・・・?」
物陰に隠れていた桐乃が出てくる――途端にあやせの表情が険しくなる。

「・・・どういうつもりですか?」


「・・・お前と仲直りさせるために呼んだんだよ」
「ひ、久しぶり・・・」
ひときわ緊張した様子で桐乃が出てくる。
思い返せばこいつが最後に会ったあやせはあの状態だったからな、緊張するのも無理はない。

「いまさら・・・何の用なんですか?新垣さん」
ぐ・・・、さっきの様子から説得できたと思ったのになんだこの態度の差は!

「あやせ・・・、お前が気持ち悪いって言った桐乃の趣味はさ、
 俺のお前への気持ちと同じようなものだろ?なんでそんな嫌がるんだ?」
「そ、そうよ!!よく読みもしないで人の趣味否定しないでよ!!
 いいじゃんあんたにはこんな兄貴がいるんだから!!」
「一緒にしないでっ!!!」
鬼の形相とでも言うような様子で桐乃を怒鳴りつける――

「わたしのお兄さんと・・・よく知りもしないでそういう話を好む人たちを一緒にしないで!」
「な・・・何よ」
「よく知りもしないのは・・・桐乃の方だよ!
 お兄さんがどれだけ私を大切にしてくれてるか知らないで・・・
 それをあんなのと・・・あんな汚らわしいものと一緒にしないで!」
「あ、あたしだってあんたの兄貴みたいな兄弟が欲しかったの!
 そういうのに憧れるのが悪いって言うの!?」
「うるさい!あんな犯罪者予備軍が書いたようなモノが良いはずがないでしょう!!」
もの凄い形相で桐乃を責めたてるあやせ――
これはきっと桐乃への思いの裏返しだ。さんざん聞かされてきた俺には分かる。
あやせは桐乃が大好きで、尊敬してて、友人であることを誇りに思ってたくらいだ。
だから、桐乃が自分が嫌悪するオタクという人種だったことが耐えられないんだろう――

涙を浮かべる桐乃――
第三者の俺ですら耳をふさぎたくなるような暴言――
そして、その言葉を発するあやせ――

あやせの心が桐乃への好意と憎悪で壊れそうになっている――
やめてくれ。もういいから!!もうわかったから!!!

「もうよせ!!あやせっ!!」


なぜか俺が泣きそうな顔で止めに入る――あやせは怪訝そうな顔で俺を見つめる。
さっきも言ったよな?俺はあやせが良ければ全てが良いシスコン変態バカ兄貴だって。
だから、自分が犠牲になることくらい屁でもねーんだよ!
あやせにこんな顔させてこんなこと言わせるくらいなら・・・、俺が地獄に落ちてやらぁ!!

「もう、それ以上友達を傷つけるな・・・」
「・・・あんな趣味を持ってる人なんて友達じゃありません!」
「・・・あれは桐乃の趣味なんかじゃないぜ」
「え・・・?」
俺の唐突な告白にあやせも桐乃も呆然とする。

「あれは俺のなんだ。俺が桐乃に頼んで買ってもらったやつなんだ!」
「・・・どういう事ですか?返答次第ではブチ殺しますよ?」
「へっお前にだったら殺されてもいいね!!もう一度言うぜ、あれは俺のなんだ!
 さっきも言ったが俺はなぁ、あやせの事が大好きなんだよ!愛してると言ってもいいね!
 出来ることなら結婚したいくらいだ!!
 でも世間でそんなことが許されていないことくらいわかってる!
 だから集めてたんだよ!兄と妹の許されざる愛の物語を!!
 お前を不幸にするわけにはいかないだろう!?
 だから俺はああいう本やゲームで自分を慰めていたんだ!!
 現実には出来ないことを想像して、報われた気になってたんだよ!
 気持ち悪い?犯罪者予備軍?どう言おうとお前の勝手さ!!
 だけどそれなら俺が何を思おうと勝手だろう!!
 俺がお前のことを好きな気持ちも、俺の勝手だろう!!
 この気持ちを誰であろうと・・・お前にだろうと否定されてたまるかよ!!
 いいかよっく聞け!!俺は妹が・・・妹が・・・
 大っっっ好きだーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
俺の魂の叫びとともにあやせの瞳から虹彩が消える――
おお、桐乃だけじゃない。俺もあやせにこんな表情させることが出来たんだな。

そんな呑気なことを考えていたらマイエンジェルのハイキックが飛んできた――

「な、な、な、何を言っているんですかっ!!この変態っ!!」

愛しの妹の声を聴きながら俺は気絶した――


―――――あれ以来、俺はあやせに口をきいてもらえない。
目すら合わせてもらえなくて寂しくて死にそうだ

「いいじゃん、そろそろシスコン卒業すれば」
「よくねーよ!!もとを辿れば完全にお前のせいだろうが!!」
「まーまー!あたしはわかってるから!それに感謝してるって!」
「お前に感謝されても嬉しくねーよ・・・本当に感謝してるならあやせの誤解といてくれ」
「それってまたあやせと喧嘩しろっていう事?」
「こ、このヒキョー者!!」
「へへ~、でもホントにアリガトね。おかげであやせと仲直り出来たしさ」
強引ではあったが、あやせは桐乃と仲直り出来たし、以前の元気も取り戻した。
それは喜ばしいことだ。だが俺の気持ちはどうなるんだっていう・・・

「そもそも親父やお袋に言われたらどうなるか・・・」
「あやせはそんな子じゃないよ。あんただって知ってるでしょ?」
「それはそうだが・・・今回に限れば自信がねーよ・・・」
内容が内容だから、俺を本気で気持ち悪いと思ってるかもしれない。
もしあのセリフが親父に伝わったら、冗談抜きで家から追い出されるだろう。

「いいじゃん、そうなったらうちの子になれば」
「意味わかんねーよ!」
「あたし、あんたみたいな兄貴が欲しかったんだよね」
「俺はお前みたいな妹欲しくねーよ!!」

                                         終わり
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。