無題:9スレ目938


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938 :◆NAZC84MvIo [sage saga]:2011/05/04(水) 00:00:56.78 ID:iWfXVOwW0

「はいこれ」
「なんだこりゃ?」
「エロゲー」
「ふざけんなっての!!」
あらためて自己紹介しよう。俺の名は高坂京介、どこにでもいる普通の高校生二年生だ。
取り立てて自慢できる特技や能力など無い男だが、唯一、自慢できるものがある。
妹のあやせである。身も心も美しい俺の妹はまさに地上に降りた天使と表現するに相応しい。
そんな妹を持つ俺は、14年間兄として妹を守り続けていた――そう、あの日までは・・・

「一応、あんたのモノってことになってんだからさあ、一通りやっとかないとマズいっしょ?」
「俺は本来こんなものに興味なんてねーんだよ!!」
さっきから話しているのは新垣桐乃――ラブリーマイエンジェルあやせたんの親友である。
この桐乃という女、俺の妹に負けず劣らず凄い奴で、
成績は県でトップクラス。スポーツも万能で海外留学の話も来るほど。
その上マイエンジェルと同じく雑誌の読者モデルをつとめるくらい外見は美しい――中身は最悪だけどな!

「へぇ~、逆らうんだ?もう学校でのあやせの話は聞きたくないの?」
「ぐ・・・!この鬼!悪魔!」
ワケのわからない脅迫だと思うか?まあ、普通はそうだろう。順を追って説明してやる。
実はこの桐乃、普通にしてれば人生勝ち組間違いなしの多才な女には人には言えない趣味があった。
――エロゲーである。
なんとこの女、何をトチ狂ったか知らないが“妹モノのエロゲー”が大好物で、
そういったゲームや同人誌などを買い集めていた“オタク”という奴だったのだ!
まあそれだけなら別に問題ない。当然その趣味は隠していたし、俺に実害があったわけではないからな。
問題はそれがあやせにバレたという事だ。
忌々しいことこの上ないが、桐乃はあやせの親友である。
あやせは桐乃のことが大好きで、尊敬してるといってもいいほど敬愛していた。
その桐乃がこんないかがわしい趣味を持っていたことで俺の天使は猛烈にショックを受けた。
その落ち込みぶりは凄まじく、俺は何とか立ち直らせようと奔走し、ついに最終手段をとったのだ。

『これらのモノは桐乃の趣味じゃない、俺が桐乃に頼んで買ってもらったものだ』

どうだ?最悪な言い訳だろう?
妹に向かって、妹いかがわしいことをするゲームや本などを集めるのが俺の趣味だと、そう言ったのだ!
その結果、あやせと桐乃は仲直りできたのだが、俺があやせから口もきいてもらえなければ
目も合わせてもらえなくなるほど嫌われてしまうことは、火を見るよりあきらかだった――

「週明けまでにコンプしておくこと、感想聞くからね。そしたらまたあやせの様子教えてあげる」
「いっぺん地獄に落ちやがれっ!!」
あやせ依存症にかかっている俺は定期的なあやせたん成分の補給が無ければ発狂してしまうだろう。
だが、先ほどの理由から、俺は家の中でもまったくあやせと触れ合えない。完全に無視されている。
そんな俺が唯一あやせたん情報を聞くことが出来る相手が、嫌われる原因になった桐乃とは何の皮肉だろう。
しかもこいつはそのことを盾に俺に自分の趣味を押し付けてくるのだからたまったもんではない!
だがしかし、現状、俺に選択肢は無かった――

「京介氏もお人好しでござるなぁ」
「沙織ほどじゃねぇよ」
今日、俺は桐乃の家に来ている。メンバーは俺と桐乃のほかに黒猫と沙織――桐乃の“オタク友達”だ。
あいつをフォローする訳ではないが、桐乃のオタク趣味は妹モノのエロゲーだけじゃない。
女の子向けのアニメ『星屑うぃっちメルル』の大ファンでもあるのだ。
今日はそのアニメの良さを教える為に鑑賞会を開くということで4人が集まった。

兄妹の恋愛モノが好物の桐乃は、俺みたいな兄貴が欲しかったと言って何かにつけ俺を引っ張りまわす。
さっき言った通り、あやせのことを取引材料にしてな。
だが悪いことばっかりじゃなかった。桐乃に振り回されてオタクの集まりに何度も顔を出した俺は、
オタクという連中が世間で言われているような奴らじゃないってわかってきた。
そりゃあ率直に言って変な奴らだよ。でもな、悪い奴じゃあないんだ。
好きなものに夢中になってるだけの、そんな連中だったんだよ。こんな集まりを開くくらいにな。

「そうね、こんな低俗なアニメの鑑賞会に付き合うというだけで、私も沙織も十分お人好しだわ」
「はぁ~?あんたまだメルルの良さがわかってないの?どんだけ厨二病こじらせてるのよ」
「あら?あなたこそマスケラを見てもまだその考えを捨てないなんて、どこまでもお子様なのね」
「なんですってぇ!?」
「まあまあ、せっかく今日は京介氏もご一緒ですので、それぞれのアニメの良い点だけを語り合おうではありませぬか」
――この調子だ。
最近わかった事だが桐乃と黒猫はよく好きなアニメのことで討論する、そして大体ケンカになる。
だが決して仲が悪い訳ではなく、お互い『好きなものは譲れない』というだけで、実はむちゃくちゃ仲がいい。

「で、あなたはどちらが面白いと思ったのかしら?」
「・・・俺はもともとこういうのに興味無いんだからわかんねーよ」
「ふう・・・、それならあなた何のためにここに来たのかしら?相変わらず妹の為?」
「それ以外に何がある」キリッ
「シスコン変態バカ兄貴」ボソッ
「お前が言うんじゃねーよ!!」
「可哀想に・・・この女のせいで愛しの妹君との仲を引き裂かれてしまったのね」
「くぅっ・・・!お前はわかってくれるのかっ!?」
「ええ、だから私が代わりに妹になってあげてもいいわよ?・・・兄さん」
「やっぱりからかってるだけだなお前もっ!」
万事この調子だ。
桐乃も黒猫も同じように俺を兄貴呼ばわりしてからかいやがる。冗談もほどほどにしろってんだ!

 ・・・だが、少しありがたいというのも事実なんだよなぁ。
あやせが口をきいてくれなくなってもう2ヶ月以上が経つ。
季節と同じように俺の心が冷え込んできてるのを、かろうじて食い止めているのがこいつらの賑やかさだ。
なんだかんだで桐乃はあやせの様子を逐一教えてくれるし、今日みたいな集まりに引っ張り出されては
こいつらの世話を焼くことで、かろうじてあやせに手を出さずに済んでいる。・・・変な意味じゃないぞ?
妹の為に何かしてないと落ち着かない俺は、もともと結構な世話焼き体質だったみたいなんだ。
そこらへんがあやせたんと同じなのも、きっと仲のいい兄妹だからに違いない!ああ、違いないとも!

「はぁ・・・もういいよ、実際お前ら手のかかる妹みたいなもんだしな・・・」
「兄貴もわかってきたじゃん!ご褒美にメルルのDVD貸してあげる」
「いらねーよっ!!」
「いいからいいから!せめてタナトスちゃんが出るまでは見ないと絶対損だって!!」
――こう言われて俺は桐乃から無理矢理押し付けられたメルルのDVDを家に持って帰るハメになった。
だが、わざわざ見る必要なんて無いだろう?別に興味なんて無いんだから。
だからこのDVDは、俺の部屋のベッドの下のダンボールで眠りにつくことになったのだ――

「「「いただきます」」」
「はい、召し上がれ」
――最近の我が家の食卓は静かである。理由は簡単であやせがしゃべらないからだ。
あの日以来なんとかあやせと仲直りしたいと思ってる俺は、ずっと機会をうかがっていて
こういう食事の時の家族の会話にチャンスを見出していたのだが、
あやせはそれを避けるために、ついに食事中はまったくしゃべらなくなってしまった。
親父がもともと寡黙な人間だったこともあり、お袋も心配していたのは始めのうちだけで
ほどなく、この状態が『当たり前』になってしまったのだ・・・

だが今日は違った。
カチャカチャと食器の音だけが響く食卓に、数週間ぶりに会話が飛び出したのだ――

「ねえ、そういえばお母さんが子供の頃ってどんなアニメがあったの?」
「なあに突然?」
「わたしの友達がね、最近小さい子向けのアニメをまた見てるんだって」
「へぇ~、年の離れた妹でもいるのかしら?」
「そうみたい。別の友達から勧められたみたいで一緒に見てるんだって」
「ふ~ん、面白いのかしら?」
「妹と見てる人の方はね、全然面白くないって言ってるんだけど、勧めてる人はすっごく良いって言ってるの」
「両方ともあやせの友達なの?」
「うん、片方は最近知り合った人なんだけどね」
「それじゃあ大変ねぇ、どっちに話を合わせてもケンカになるんじゃない?」
「そうなの。だから自分でも見てみようかと思って」
「なんてアニメなの?」
「星屑うぃっちメルル」
ブゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!

「きゃあ!!」
「な、なによ京介突然!?」
「ゲホッゲホッ!!す、すまん!!味噌汁が気管に入ったんだ!!」
思わず味噌汁を盛大に噴出してしまった。
今、あやせは何て言った?星屑うぃっちメルル?何故その単語があやせの口から飛び出してくるんだ!
だが、困惑する俺を尻目にあやせは黙々と食事を続けるだけだった。
なんで?どうしてそのアニメの話題が桐乃からじゃなくあやせから出るの?
こんなの絶対おかしいって!!わけがわからないよ!!
怒られる俺を放っておいて、あやせはすぐに食べ終わり部屋に帰っていった――


ほどなくして俺も自室に戻るが、心中は穏やかでない。先ほどのあやせの爆弾発言が耳から離れないのだ。
大体あやせからあのアニメの名前が出ること自体、異常事態だ。
一つの懸念から俺は自分のベッドの下を調べ始める・・・・・無い、無い、アレが無い!!

「なんで?どうして?なんでなくなってるの?」
思わず声が出る。大体アレは桐乃の物で、なくしたとなったらあいつから烈火の如く責められるのは目に見えてる。
下手をすると、もう学校やモデル活動中のあやせたんのことを教えてもらえなくなるかもしれない!
涙目になりながらもう一度探し始めると、部屋のドアのきしむ音がした――

「探し物はこれですか?お兄さん」

不意にかけられた声に驚いてドアのほうを向く――そこには表情の消えた俺の天使が立っていた。
何ヶ月ぶりかに正面から見れたあやせの顔は相変わらず美しく、そして恐ろしかった。
その手には俺が桐乃から押し付けられた『星屑うぃっちメルル』のDVDが握られていた。

「どうしたんですか?質問に答えてください。これはお兄さんの物じゃないんですか?」
久しぶりに話しかけてもらったというのに、その内容がこんな尋問だなんてあんまりです神様。

「黙っていたところで無駄ですよ、先ほどの様子からお兄さんがこのアニメを持っていたことは明らかです」
「・・・・・持ってちゃおかしいか?」
後から言い訳できるくらいにははぐらかしながら答える。そして確認しなければならない。
もし、このアニメが桐乃のモノだとわかった時、あやせがどう反応するのか?
仮にあのエロゲーや同人誌と同じようにこのアニメにも嫌悪感を示すのであれば、俺のものだと言い張らねばなるまい。
でないと何の為にこんな役回りを買って出たのか―――――くぅ!今更ながら桐乃が憎いっ!!

「おかしいと思ってるから、桐乃に頼んで買ってもらってたんでしょう?」
「えっ?」
「男子高校生よりも女子中学生の方がこういうモノは買いやすいと思った気持ちはわかります。
 それに・・・・・このアニメは桐乃自身も見てるそうですし」
こ、これはどういうことだ?ひょっとしてさっき夕飯の時に出た話は半分マジなのか?

「し、知っていたのか?桐乃がメルルを見ているってこと・・・」
「お兄さん・・・最近ずいぶん桐乃と仲が良いみたいですね?」
「だ、ダメか?あいつと仲良くしてちゃ・・・」
「ダメに決まってるじゃないですかっ!!
 同じアニメが好きなだけならまだしも、あんな本やゲームを桐乃に買わせるなんてっ!!
 どうして最近桐乃の様子がおかしいのか、やっと理由がわかりましたっ!!
 お兄さんが桐乃を悪の道に引き擦り込んでいたんですねっ!!!」
ち、違うぞ!あやせ!それはむしろ逆だ!!桐乃が俺を変態の道に引き擦り込んでるんだ!!
しかし本当のことを言う訳にもいかず、反論できない。
今更ながらあやせの中で桐乃>>越えられない壁>>俺の図式が成立しているのを実感して泣きたくなった。

「そ、そもそもお兄さんがこのアニメを好きな理由だって寒気がします!!
 純粋に楽しんでるだけならまだ許せましたけど、アレは許容範囲を超えてます!!」
「きょ、許容範囲ってなんだよ!?」
「うるさい!それ以上しゃべるな変態っ!!これはこのまま没収します!!」
な、なんだってーーー!?もし捨てられでもしたら俺が桐乃からどんな目にあわせられるか!!

「待て!待ってくれ!!わかったから!!それはそのまま持ってっていいから!一つだけ頼みを聞いてくれ!!」
「そんなことを言える立場ですか?」
「ど、どうせ処分するくらいなら桐乃にあげてくれ!!あいつもこのアニメは嫌いじゃないみたいだし、
 迷惑かけたお詫び代わりにあいつに渡してやってくれ!!」
必死の頼みが功を奏したのか、なんとかメルルのDVDは桐乃のもとに戻ることになった。
だが、その交換条件として、今後あやせの許可なく桐乃に近づくことを禁止されてしまった。
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