無題:10スレ目257


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257 名前: ◆XUsplk79ik[sage] 投稿日:2011/05/14(土) 01:47:02.97 ID:XXOBhpbIo


「ところで拙者、みなさんに人生相談があるのでござるが」

いつものように俺の部屋で4人で遊んでいたところ、沙織が唐突にそんな言葉を切り出してきた。

「へえ、なんかあったの?アタシらでよかったら全然相談に乗るケド」

桐乃の返事に俺も黒猫もこくんと頷く。すると、沙織がにはは、と頭を掻きながらはにかんだ。

「そのですな、拙者、自分の性格をもっとオープンにしたいのでござる」
「オープンに?」
「さよう。その、拙者は今でこそこうですが、コレを外してしまうと……ですな」
「……ああ、そういうこと」

俺たちは一様に納得した。沙織はいつもの眼鏡によって自己暗示とも言うべきものを帯びていて、目線を隠すことで自分がなりたいようなキャラを『演じる』ことができるのだ。
逆に言うとそれをしていない沙織は非常に内気で見つめあうことすらままならないという有様である。
ふと、俺はかねてから思っていた素朴な疑問をぶつけてみた。

「なあ、その眼鏡って俺達からは沙織の目は見えないけど、そっちからは俺達はどう映ってんの?」
「……言われてみればそうね。こっちから見えなければ貴女からも見えないのではなくて?」
「ああ、そういえば説明したことはなかったでござるな。実はこれは特注品でして、外からは見えませぬがこちらからは素通しになっているのです。平たく言えばマジックミラーのようなものですな」
「へぇ。アンタんとこはやっぱり面白いもの作ってるのねー」

桐乃がふんふんと顎を揺らしている。槇島家脅威のメカニズムとでも言うべきか、そもそもそんな風に眼鏡を作る理由がそもそもないわけではあるが。まあいい、話を戻そう。


「で、だ。性格をオープンにするってのは、具体的にどのへんまでにしたいんだ?」

俺や黒猫なんかはお世辞にも陽気とは言えねえし、桐乃はいろいろと規格外で参考にならない気もする。

「んー、オープンにするというのは言いすぎでしたかな。早い話が、コレを外しても人と話ができるようにしたいのでござる」
「……それこそ気の持ちようじゃないかしら?大体、何をそんなに恥ずかしがる必要があるの」

黒猫がもっともな意見を述べる。彼女が『変身(メタモルフォーゼ)の域』と評した通り、素顔の沙織は今のコテコテのオタク姿からは想像のつかない程の美貌だ。

「それは……その……」

沙織が胸の前で人差し指同士をくっつけつつ言葉に詰まる。

「……まあいいさ。じゃあとりあえず、俺達の間ぐらいでは外していられるようにしようぜ。何事も急にはできないからな」
「……理由、聞かないでよろしいのでござるか?」
「話したくないことを無理に聞き出すほど野暮じゃねえさ。おいおい話してくれりゃいいよ」

大方お見合いでとか、かつての姉貴のサークル時代にとか何かがあったんだろう。あれほどの美貌にスタイルにお嬢様だ、悪い虫が寄ってこないほうがおかしい。
俺だってこの沙織を知っていなかったらどんな対応をしていたかわかったもんじゃないしな。

「では、ちょっと気恥ずかしいので皆さん後ろを向いててもらえませぬか?」

言われるままに俺達は後ろを向く。たかが眼鏡を外すだけなのにえも言われぬ背徳感が背骨を突き抜ける気がした。
すぐさま右に座っていた桐乃から肩にストレートが飛んでくる。痛ぇ!
「……なんかキモい想像してたでしょ」
小声に対してちらりと桐乃を一瞥すると、俺は否定も肯定もしなかった。代わりにばつの悪い顔でごまかす。
「……まったく、盛りのついたはしたない雄ね」
黒猫の黒さ当社比増しの嫌味も左から聞こえてきて俺は内心泣きそうだった。


そうこうする内に、といってもそんなに時間がかかるわけもなかったのだが、沙織の声が背中から聞こえてきた。

「……こっちを向いてもいいですよ、皆さん」

促されるままに俺達は振り向くと、相変わらず女神のような微笑みで俺たちを見つめていた。こいつ本当に俺の2つ下なのか。いや、なればなのか。
と思ったのも束の間、俺と目が合うやいなや見る見るうちに沙織の顔が紅潮していき、しまいには顔を両手で覆って指と指の間から俺達を見るような格好になった。

「……や、やっぱり恥ずかしいです」
「と、申されましてもな……。見た感じ桐乃や黒猫は大丈夫そうだったが?」

自分で言ってて悲しいことこの上ないが、まだ俺は沙織に好かれていないということか。

「い、いえ。桐乃さんや黒猫さんにも恥ずかしさは感じるのですが、京介さんはもっとというか……」
「そっかー……どうしたもんかねぇ?」

わりと素直に出た感想だったのだが、

「「…………」」

両サイドから来る視線があまりにも冷ややかで俺はぎゅっと肩をすくめた。なんなんだお前ら。悲しいのは俺のほうだろ?

「アンタの視線がセクハラじみてるからじゃないのォ?」
「……そうね。獣のようないやらしさを感じるわ」

お前ら二人してヒデェな!なんでそこまで酷評されなきゃいかんのか!
半分泣きそうになりながらふと思いついた提言をしてみる。


「じゃあ俺の目線に慣れれば大丈夫ってことか?にらめっこでもしてみるか」
「え……」

沙織の反応が微妙だったのを見て、即座に俺は否定しようとしたが、

「い、いやなんでもn」
「……そうですね、やってみましょう。構いませんか?二人とも」
「……別にいーケド……」「……構わないわ」

え?何この流れ?なんで沙織こんなに乗り気なの?
頭に疑問符がいっぱいついた俺をよそに事態は先へ進んでいく。
沙織が俺の近くに身を寄せてきてきっちりとこっちを見つめてくる。こいつ本当はやればできるんじゃないのか?

「では、互いに目を瞑りましょう。京介さんが合図をしてください。あと、さっきみたいに手で顔を隠さないようにわたしの手を取っていてください」
「え、あ、お、おう……」

そう情けない返事を返すと、俺は目を瞑って沙織の華奢な手首を掴む。沙織の体が一瞬跳ねるのに心臓が飛び出そうになった。

「に、にーらめっこしましょ、わーらうーとまーけよ、あっぷっぷ」

沙織と俺の目と目が逢い、心臓の鼓動がバックンバックンになるのを自分でありありと感じた。
というかあまりに近くで彼女の顔を見すぎて視線を動かすこともままならない。
さっきのように沙織の顔がかぁーっと赤く染まっていき、さらには瞳が潤んできてまでいる。
すると沙織は見開いていた両目を少しずつ閉じながらこちらに顔を近づけてきた。

(え、ちょ、)

突然のことに頭が働かず動きも取れない。
言葉も出せぬまま沙織の吐息がかかる寸前まで近づいて――

「ストーップ!!やめやめ、やめーい!!」

桐乃の叫びで俺は我に返ると同時に桐乃と黒猫が俺たちを引き剥がしに来た。この際黒猫に羽交い絞めにされたのは役得というべきか。感触を味わう余裕も余韻もなかったが。


「ア、アンタ、どさくさにまぎれて何いたそうとしてんのよこの監視の中で!」
「あ、あまりに静かに動くものだから危うく見過ごすところだったわ……」

2人して肩で息をしているのに何故そこまでと訝しがったが、あのままでは間違いなく間違いが起きていただろう。ややこしい文章だが。

「やっぱり、京介さんは桐乃さんや黒猫さんとは違うみたいです。京介さんで慣れることができれば他の人たちとも自然に話すことができるかもしれませんわ」
「……さいですか」

ああ、さっきのは間違いでやっぱり俺はその他大勢と同じ認識なんだなぁ……と肩をすくめていると、妹と後輩からすっごいガンが飛んできた。なんでさ!

「そういうわけで、京介さんにはこれからよろしくお願いしますね」

ぎゅっと手を握られてこんな風に美女に囁かれたらノーと言える男なんていないだろう。誰だってそーする、俺もそーする。
だが両サイドの反応を見るに、まだまだ苦難が待っているのは確定のようである。誰か俺に爆弾処理の方法を教えてください。
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