桐乃「デレノート……?」:95


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

95 名前: ◆kuVWl/Rxus [sage saga] 投稿日:2011/01/29(土) 01:47:34.15 ID:p1/0FVLpo

学校に着くと、3年C組の教室の前には人だかりができていた。
三年生が多いけど、二年生や一年生も混じっているようだ。
あたしは人だかりに近づくと、その中にあやせの姿を見つけた。

「おっはよ、あやせ。どうしたのこれ?」
「あっ、おはよう桐乃~♪」

あやせはあたしの手を両手で握り、頬を染め、上目遣いで見つめてきた。
いや、今はそういうのはいいから……
あたしは手を振りほどくと、人だかりを指差して、あやせに回答するよう促した。

「うーん、なんかね。C組の◎村くんと△川さんが急にラブラブになっちゃったみたい」

ああ、なるほどね。
そりゃあたしがさっきデレノートに書いたから、当然の結果なんだけどさ。
周りを見回すと、皆は教室の中に視線が釘付けになっていて、その視線の先には、見事に相思相デレ状態となった◎村くんと△川さんの二人の姿があった。
昨日まではそんな素振りを見せてなかった二人のデレデレぶりに、辺りは騒然としている。

「――あの書き込みは本当だったのかよ」

人だかりの中の誰かがそう呟いた。
その声を受けて、また別の誰かが聞き返す。

「書き込みってなんだよ?」
「今朝、あの二人をカップルにするって予告があったんだよ。うちの学校の裏サイトに!」
「それどころか、最近カップルが異様に増えてるのは、そいつの仕業らしいぜ」

キ、キ、キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!
これよ、これ!あたしが求めていた展開になってきた!
ようやくあたしという恋のキューピッドの存在に気付いたようね!

「カップルにするって……どうやって??」
「知らねーけど、恋の魔法がなんとかって書いてあった」
「……お前、マジで言ってんのかよ?」
「じゃあ、あれをどう説明するんだよ!急にあんな状態になっちまってるんだぜ!?」

喧喧囂囂の言い合いが続き、その周りの人達も戸惑いながらやり取りを見守っている。
しばらくすると、ざわめきを掻き消すように予鈴が鳴って、皆それぞれの教室に戻り始めた。

「いいから、お前らも裏サイト見てみろって!携帯からでも見れるだろ」

散り際に聞こえてきた声に、みんな携帯を取り出して一斉に操作を始めている。
あたしはニヤニヤを抑えるのに必死だった。



その日、校内は一日中、裏サイトの掲示板の話題で持ちきりだった。
教室に居ても、耳を澄ませばいつでも裏サイトについて話す誰かの声が聞こえてくる。
でも、まだみんな半信半疑のようで、あたしの書き込みを単純に信じる人もいれば、トリックがあると疑っている人もいて、受け止め方はまさに人それぞれみたい。
中には、カップルになった二人による自作自演じゃないかって説を唱える人もいたらしい。
とはいえ、当人達を問い詰めてもデレ状態の二人では要領を得ないし、演技とは思えない二人の豹変っぷりは、あの書き込みに信憑性を持たせるのに十分だったようだ。

唯一真実を知るあたしは、そんな周囲の喧騒に対して言い知れぬ優越感に浸っていた。
ネットの世界に舞い降りた、愛を結ぶ謎のキューピッド……嗚呼、カッコよすぎるわ。

「桐乃?……なんだか今日はずいぶんご機嫌だね」
「そ、そんなことないってば、あやせ」

いかんいかん、ついつい表情がニヤけてしまうわ。

ただね、想定外なことがひとつだけあってさ――
あ、ホラ、今またクラスの男子が噂話してるんだけど……

「掲示板のあいつ、スゲーよなぁ」
「俺はあんなの信じないけどな。えっと、なんて奴だったっけ?」
「ええっと……なんだったっけ……?」

だから“メルちゃん”だってば。名前欄に書いてたでしょ!
あたしは恋の呪文を使う、魔法少女メルルだよっ☆

「ああ、たしかキラッとかいう……」
「あっ!そうだそうだ、キラッだよ!」

ノオオオオオオ!
違うっ!そこじゃないってば!
確かにそれも書いたけど、それは単にメルルの歌の合の手で、キメ台詞的に書いただけなんだって。

そんなあたしの心の叫びが届くはずもなく、裏サイトの謎のキューピッドの呼び名は、みんなの間であっという間に“キラッ”で定着してしまったようだ。

「キラッって、一体どんな奴なんだろうなぁ~」
「だからヤラセだって!キラッなんてあり得ないって」

……ああ、もういいわ。キラッでいいわよ。


学校が終わり、あたしは足早に帰宅すると、着替えるよりも早くパソコンの電源を入れた。
裏サイトにアクセスして例のスレッドを開くと、今朝までの寂れようとは打って変わり、あたしの書き込みに対するレスが並んでいる。
どうやら皆、待ちきれずに学校から携帯使って書き込んだみたいね。
ふふっ、こうじゃなくっちゃ。


530 :メルちゃん♪:2011/01/27(木) 06:41:11
ちょwwwお前ら無視すんなしwwwwwwwww
しょうがないから、今から3年C組の◎村くんと△川さんをカップル化してやんよ
これであたしの力を信じなさいよ!

(・ω<)キラッ☆彡

531 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 09:21:17
うおおおお!マジだ!!!!!
◎村と△川が急にベタベタになってた!!!!

532 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 09:31:52
おいおい、俺も見てきたぞ
どういうことだってばよ・・・?

533 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 10:02:09
記念パピコ

534 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 10:50:18
>>530
なんでカップルになるって分かった?

535 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 11:01:32
え?これどういうこと?
意味が分からない…

536 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 11:03:47
>>530
リクエストしたら他の人もカップルになるのか?

537 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 12:15:23
キラッの人!
2年A組の川上哲也と末永康子をカップルにしてください!

538 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 12:45:03
キラッの人って誰なの?

539 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 12:47:37
はいはい
ヤラセ乙

540 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 12:55:30
ここに名前を書いたらカップルにしてくれるの?>キラッ

541 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 13:02:09
なにそれこわい

542 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 13:11:20
キラッ様!
3年E組の本山哲と石田可奈をカップルにするの希望します

543 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 13:21:22
記念真紀子

544 :学校の名無しさん:2011/01/27(木) 13:29:01
>>530
お前誰なんだよ?


『ククク……すっかり話題の中心になってるじゃないか』

リュークも興味深げにモニタに映し出された掲示板を眺めている。

「ホラ見て、結構カップル化のリクエストがきてるよ」

でも、さすがに写真まで載せている書き込みは無いので、どうやらあたしが実際に調べて、当人の顔を見に行かなければいけないようだ。
この辺がデレノートの不便なところよね。
とりあえずあたしは掲示板に書かれていた何組かの学年・組・名前をメモに控えて、手帳に挟んでおいた。
さっそく明日顔を見に行って、デレノートに名前を書いてあげよっと。



その日を境に、裏サイトにある恋愛スレッドは、キラッ専用スレッドと化した。

あたしは毎晩スレッドの書き込みをチェックし、カップル化の要望があればデレノートに書き、カップルを作ってみんなの反応を楽しむことを日課にしていた。
顔が分からないときは仕方ないので教室まで行って確かめていたけれど、最近では顔写真付きで依頼するルールが浸透したおかげで、あたしの手間は随分少なくなり、ますますカップル作りは加速した。
“目指せ人類総カップル化”ってとこね。このノートがあれば少子化も怖くないわ。

『ククク……毎日カップル作りに精が出るじゃないか』
「あったりまえじゃん。あたしは恋のキューピッド“キラッ”なんだからね」
『たが気を付けろよ。カップルになった奴等はノートの力で能天気にデレてるからいいが、身近な人間のカップル化を快く思わない奴もいる』

リュークは不敵な笑みを浮かべている。

『カップルになった二人を妬む奴、想いを寄せてた相手を取られた奴、そんな奴等も居るってことだ。そういう奴等にお前の正体がバレたら大変なことになるだろうな…… ククク……』
「あたしはそんなヘマしないって。だからネットを利用してるんじゃん」

こいつってデレ神なんて恥ずかしい神様やってるくせに、結構性格が悪いんだよね。
でも、キラッの正体があたしだとバレると、色々と面倒なことになるのは確かだ。
用心のためにノートは部屋から持ち出さないようにしているし、普段は家族にも内緒にしているあたしのコレクション置き場の一番奥に隠してあるので、バレる可能性は無いとは思うけど。

「ってか、万一バレたところで別に犯罪やってるワケじゃないしね。それに名前を書くだけでデレデレにさせられるノートだなんて、誰も信じないよ」
『だが、デレノートに触った人間には俺の姿が見えてしまう。そうなれば否応なく、人智を超えた力を宿すノートだと知ることになるがな』

あっ、そうか。それはそうかも。
確かに他の誰かにこのおぞましい姿のデレ神を見られたら、ちょっと言い訳できそうにない。
それは今まで以上に用心しないとね……



だけど、そう思っていた矢先にトラブルは起きてしまった――

写真と名前さえあれば誰でもカップルになれる、という評判が評判を呼んで、学校の裏サイトには、あたしの学校以外の、近所の中学校や高校からも書き込みが集まるようになっていた。
あたしの知らないところで、キラッのウワサはどんどん広がっていたみたい。

ただ、困ったことがあって……
以前は写真なしで依頼がくることばかりだったので、実際に顔を確認しに行くついでに、カップルにして大丈夫かどうかの妥当性ってやつを一応判断するようにしてたんだよね。
二人の雰囲気とか、釣り合うかどうかとか、まぁ、あたしの勘によるところが大きいんだけどさ。
あからさまなイタズラは却下するようにしないと当人達が可哀想じゃん?

でも、写真掲載がメインになってからは、その辺がちょっとテキトーになってしまってたの……
そして、あたしがカップルにしたある一組について、こんなクレームの書き込みが寄せられてしまった。


341 :学校の名無しさん:2011/02/21(月) 18:12:21
おいおい、昨日カップルにされた◎高の田端と大山はそれぞれ彼女・彼氏持ちだぞ?
明らかに誰かが嫌がらせで書いたんだから無効にしろよ!!
酷すぎるだろ!


えええ、マジで~~?
でも無効にしろっていわれても、そんな方法知らないっての。

「リューク、間違ってデレさせてしまった場合、もう一度書き直したら効果が上書きされるかな?」
『デレノートの効果は、一度発揮されたら変更は効かないし、取り消しもできない』

だよねぇ……
でも、そもそも全然知らない人達なんだから、恋人居るかどうかなんて分かりっこないし。
これって不可抗力じゃん。
そういうものだと思ってもらうしかないよね。


342 :(・ω<)キラッ☆彡:2011/02/21(火) 18:30:00
>>341
ありゃ、ごめんね~
まぁ、本人達は幸せになってるからもういいじゃん?
なんなら余った者同士でくっつけてあげるからさ


と、あまり深く考えずに書き込んだこのレスによって――スレッドは大荒れになってしまった。



◇ ◇ ◇

“呪いの掲示板”って知っているかしら――

その日、文化祭の打ち合わせのため、久しぶりにゲーム研究会の部室に顔を出した俺は、ふいに黒猫からそんなことを尋ねられた。

「呪いって……、なんだそりゃ?」
「いまネット上で話題になってる掲示板のことよ。
 そこに顔と名前を晒されると、誰かと無理矢理カップルにさせられてしまうそうよ」

“呪いの◎◎”――実に使い古された、なんとも安っぽい表現だ。
くだらない怪談や都市伝説なんかに出てくる、こんなにもネタ臭さの漂うフレーズが他にあるだろうか。
だが、黒猫は少し頬を上気させ、目を輝かせている。
こいつがいわゆる“厨二設定”が好きなのは知ってるが、オカルト系も守備範囲だったっけ……?

「えっと、無理矢理カップルって……意味が分からないんだけど……」
「ウワサによると、不思議な力が働いて、ラブラブの色ボケ状態にさせられてしまうそうで、まるで抜け殻のようになってしまうの。うちの学校にも被害者が居るらしいわ」
「……不思議な力って、そんなことあり得るのかよ」

どこから突っ込んだらいいんだよ。
と、俺が怪訝な表情を見せると、黒猫は深くため息をついて、呆れたような視線を返した。

「凡庸な人間風情には理解できないでしょうけど、これは古から伝わる魅了(チャーム)の呪い。
 ――つまり闇世界の住人の仕業よ」

なるほど、そっちに持っていくわけか……だから活き活きしてるんだな。
黒猫の言動に俺は今更驚きもしないが、近くで聞いていた瀬菜は顔をしかめつつ会話に入ってきた。

「五更さん、相変わらず痛々しい発言を振りまいているんですね」
「……ほっといて頂戴」

黒猫は瀬菜を一瞥すると、くるりと背中を向けてパソコンに向かった。
馴れた手付きでキーを叩き、なにやらウェブサイトを検索しているようだ。

「さぁ、御覧なさい。このサイトよ」

振り返って俺と瀬菜にモニタを見るよう促す黒猫は少し得意気だ。
俺達は黒猫の後ろからモニタを覗き込む。
そこにはどこかの学校に関する口コミ情報のサイト――いわゆる学校の裏サイトが映し出されていた。

「このサイトに、五更さんの言う“呪いの掲示板”とやらがあるんですか?」
「ええ、そうよ。近くの中学の裏サイトらしいけれど、今もここで呪いの儀式が執り行われているわ」

呪いってのは、五寸釘の藁人形とか魔方陣とか水晶玉とか、そういう演出が付くイメージなんだけど、ネット上の掲示板でお手軽に呪いねぇ……これが時代ってやつだろうか……
黒猫にバレないよう、俺は小さくため息を吐いた。

だけどその時、サイトのタイトルに書かれていた中学校の名前に、俺は見覚えがあることに気付いた。

「この中学校って……桐乃の通う学校じゃねーかよ」
「あら、そう言えばそうね。気付かなかったわ」

桐乃の奴、こんな変なウワサ話に巻き込まれてやしないだろうな――?
まぁ、あいつのことだから、邪鬼眼乙の一言で片付けそうだけどさ。

「ええと、恋愛系の……あったわ。このスレッドだわ」

そう言うと、黒猫は掲示板の中の沢山のリンクテキストの中からあるスレッドをクリックする。
そこには罵詈雑言の嵐とも言うべき怒りのレスがあふれていた。

「なんだこりゃ……」
「これは呪いによって友人や恋人を奪われた者たちの叫びね。当初は好き合ってる同士のカップル化を後押しするスレだったようだけど、そのうちイタズラや成りすましが横行して、本人の意思とは関係なくデレさせられてしまう、恐ろしいスレになってしまったらしいわ」
「ええぇ……本当なんですかねぇ……」
「ほら、ここに書かれている名前と――そしてこのリンクは顔写真ね。これが呪いの依頼よ……フフフ」

俺と瀬菜は無言で顔を見合わせる。
うーむ……、黒猫が電波受信中なのは間違いないが、ここのスレッドの奴らも相当なモンだ。
一体どこまで本気でやってるんだろうか。

「そして、このふざけた名前の奴が呪い騒ぎを起こしている張本人よ」

黒猫がモニタ画面を指差すと、そこにはこの殺伐としたスレッドの流れにそぐわない
緩いテイストのコテハンによる書き込みがあった。


719 :(・ω<)キラッ☆彡:2011/02/28(月) 17:50:11
あんたたち、スレを荒らすんじゃないわよ!
あたしは頼まれたからカップルにしてやっただけじゃん!
悔しかったらあんたたちも相手を見つけてここで依頼しなさいっての


「……なんだこいつは?」
「キラッと呼ばれてる、このスレの主。そして依頼を受けて魅了の呪いを掛けている者よ。
 正体は明かしてないけれど、私同様、闇の眷属が人間の姿で世を忍んでいるのでしょうね」

そう呟く黒猫の瞳が怪しく光った……ような気がした。
黒猫ほど素直にスレのやり取りを受け入れられない俺は、正直どう反応をしたらいいのか分からなかった。
現実的に考えると、こういうやり取りをネタで楽しんでるスレッド、ってことなのかもしれない。
ただ、それにしては罵詈雑言のレスに切羽詰ったシリアスさを受けるんだよなぁ……

「フッ、人間界に過度の干渉をしてはならないことは闇世界の住民の常識だというのに。この所業、見過ごせないわね……」

そんな黒猫の言葉にツッコミを入れるよりも早く、部室には部長の声が響いた。

「おーい、そこ何やってんだ。 文化祭の打ち合わせを始めるからこっち集まれ~」

俺達は慌ててパソコン席から離れ、部員の輪の中に加わった。
そして、その日の“呪いの掲示板”話は、なんとなくそこでお終いになったんだ。


桐乃「デレノート……?」:169

ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。