桐乃「デレノート……?」:169


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169 名前: ◆kuVWl/Rxus [sage saga] 投稿日:2011/02/09(水) 00:41:52.23 ID:3l0Mt3l+o

その日、帰宅して玄関のドアを開けた俺は、ちょうど二階に上がろうとしてた桐乃に遭遇した。

「ただいま」
「……ん、おかえり」

桐乃は素っ気なく挨拶を済ますと、足早に階段を昇っていく。
こいつは最近、メシとか風呂とかの時間以外は、ずっと自分の部屋に閉じこもってやがる。
新しいエロゲにでもハマってんのだろうか?

俺はいつものようにキッチンに向かうと、冷蔵庫から麦茶のパックを取り出してコップに注いだ。
桐乃が部屋に籠ってばかりのため、せっかく兄妹仲の改善がみられていた俺達は、かつて冷戦状態だったときのように、会話を交わす回数が激減している。
まぁ、おかげで以前のように無理矢理エロゲやらされたりすることもなくなったので、受験生の身としてはありがたいんだけどさ。

俺は麦茶を飲み干すと、階段を昇り自室へ向かった。

自室のドアノブに手をかけたところで、ふと桐乃の部屋の方を見る。
部屋からは忙しくキーボードを打つカチャカチャという音が聞こえてきた。
少し迷った後、俺は桐乃の部屋のドアをノックした。

「おい、桐乃ぉ――」

そう呼び掛けると、キーを叩く音が止んだ。
ほどなくして近づいてくる足音が聞こえ、勢いよくドアが開く。
俺はあらかじめ軌道に手を構え、ドアを受け止めた。いつもこのパターンで頭打ってるからな。
獲物を仕留め損ねた桐乃は、チッと舌打ちをして不機嫌そうなツラを見せた。

「何か用? あたし忙しいんだけど」
「いや、用ってほどじゃないんだけど……」

あれ?そういえば、なんでノックしたんだろ?
迂闊にも俺は、これといって用事もないのに桐乃を呼び出してしまった。
とりあえず何か言わなければ……

「あー……えっと、最近お前っていつも部屋に篭ってるから、何やってんのかな~と思ってさ」

ああ、我ながらしょうもないことを言ってるぜ……
こんなこと聞いたって、桐乃の答えは決まりきってるじゃないか。

「別にあたしが何やってようが、アンタには関係ないでしょ?」

ほらね。そう返ってくると思ったよ。
俺は慌てて他の話題を探した。

「そ、そういえば、お前の学校の裏サイト?ってのが、いまウワサになってるらしいじゃねえか」
「へぇ~、あんたも知ってるんだ?」

苦し紛れに今日部室から聞いた“呪いの掲示板”の話を振ってみたところ、予想外に桐乃は食い付いてきた。

「あのウワサってすごいでしょ~~?もうスレ見た?」
「ああ、俺にはスレの奴らがどこまでマジでやってんのか分かんねぇけど……」
「マジだって!実際にあたしの学校でカップルになった人達がいるんだから。ネット上に存在する恋のキューピッド、すっごい素敵だと思わない!?」

どうやら桐乃は、あの掲示板のやり取りを信じきっているらしい。
この手の超常現象系には醒めた奴だと思ってたので、この反応は意外だった。

あれ?でも“恋のキューピッド”だと?そこは今日聞いた話とちょっとニュアンスが違うな。
黒猫曰く、あれは呪いらしいけど……
しかし、何となく今はそのことに触れない方がいいだろうという野生の勘が働いたので、俺はあえて指摘しないことにした。

「ああ、そうだな。……でもお前、変なことに巻き込まれてないだろうな?」
「はぁ?なに言ってんのよ」
「いや、だって無理矢理誰かとカップルにされるんだろ?」

俺がそう言うと、桐乃はいきなり目を輝かせ、嬉しそうにコケにしてきた。

「えっ? アンタ、あたしが誰かと付き合っちゃうと思って心配してんの?うひゃーキモキモ」

取り繕って出てきた話題ではあるけど、兄として一応心配して言ってやってんのにこの反応だよ。
ってか、“呪いの掲示板”を信じるのお前の方が不安がるべきじゃねーのか。

「安心しなって、あたしこれでも身持ちが固いからさ」

桐乃は馬鹿にしたように笑いながらそう言うと、俺が反応するよりも先にドアを閉めた。
そりゃ俺だって、こいつが誰かとどうこうなるとは思っちゃいないけどさ。

まぁ、こんなやり取りでも、随分久しぶりに兄妹でまともに会話を交わした気がするよ。



しかし、“呪いの掲示板”の話はまだ続いた――

次の休日、俺は意外な人物からの呼び出しを受け、とある喫茶店に来ていた。

「マネージャーさん、お休みの日に突然呼び出したりしてすみません」
「いや、別に用事もなかったし、気にしなくてもいいぜ」

そう、俺をここに呼び出したのは、以前メルルのコスプレイベントで知り合った
英国人のブリジット・エバンスという美少女だ。
俺は加奈子のマネージャーとしてイベントに参加していたんだけど、メルルコスプレの常連である
ブリジットとも見知った間柄になっていた。
この前日、ブリジットから相談事があるとのメールが届いたので、こうして会ってるわけだ。
俺達に共通事項はそう多くないので、おそらく加奈子絡みなんじゃないかと予想しているんだが。

「で、相談ってなんなんだ?」
「はい、実はかなかなちゃんのことで……」

どうやら俺の予想は当たっていたらしい。

「最近、かなかなちゃんの様子がおかしいんです」
「あいつが色んな意味でおかしいのは以前からだと思うけど――」

と、言ったところでブリジットはキッとこちらを睨み付け、俺は思わず肩をすくめた。
こいつ、ホントに加奈子のこと慕ってるんだな……

「まじめな話なんです。最近いつもボーっとしてて、心ここにあらずって感じで……」
「ボーっとしてる?」
「はい、携帯を見つめてボンヤリしてたり、ため息をついたり、イベント中もずっと無気力な感じなんです」

普段の加奈子はどうしようもないクソガキだけど、仕事に関しては異様にプロ意識が高いから、無気力に仕事をこなす姿はちょっと想像できない。

「ある時、誰かからかなかなちゃんに電話が掛かってきたんですけど、その時はびっくりするぐらい元気になってたんです。でも電話が終わった後は、また顔を赤らめてボーっとしてて……病院に行ったほうがいいって言っても聞いてくれなくて……わたし心配なんです」

ああ、なるほど。そこまで聞けば鈍感な俺でも分かるよ。
その症状は病院じゃ治せないだろ。

「それさぁ、あのガキが誰かに恋でもしたんじゃねえの?」

そう言うと、ブリジットは恥ずかしそうに俯いてしまった。

「……わ、わたし、そういうのはまだよく分からないんです」

まぁ、俺もそういう話は疎い方だけどさぁ
電話掛かってきて頬を赤らめボンヤリため息だなんて、いまどき漫画でも使われないほど分かり易すぎる恋煩いの症状だろ。

「だとしても、いつも元気なかなかなちゃんらしくないっていうか……」
「うーん、そうは言っても、俺も加奈子のことを特別よく知ってるわけじゃないんだけどなぁ」

最近あいつを見かけたのは桐乃達と下校してるところだった。
そういえば、やたらと桐乃にベタベタくっついてて、それはそれで元気そうに見えたけど。

「第一、あのかなかなちゃんが恋をしたとしても、そんな乙女な反応をすると思いますか?」
「た、たしかにそれは意外ではあるな……」

そんな根拠で納得される加奈子も大概である。
ブリジットは顔を上げると、コホンとひとつ咳払いをした。

「あまり様子が変なので、わたしなりに色々調べてみたんですけど――」

そこでブリジットはぐっと身を乗り出してきた。
俺は思わず息を飲む。

「いまネットでウワサの“呪いの掲示板”に関係してるんじゃないかって思うんですっ!」



ブリジットと会った翌日――

俺はまたゲー研の部室に顔を出していた。
先日、文化祭の出し物を決めていたゲー研は、その準備で活気に溢れている……ということは全然なく、俺が来た時点では二年の部員が3人でゲームをしながらダベっているだけだった。

そいつらと挨拶をかわし、俺は部室の隅の椅子に座った。部員達はまたゲームとお喋りを再開している。
部長達が居ないせいもあるけど、文化祭が迫ってるのにこんな調子で大丈夫なのかよこのクラブは……
まぁ、そういう緩さが、俺にとっては居心地のいいんだけどさ。

――と、そんなことを思っていたら黒猫がやってきた。

「待たせたかしら、先輩」
「いや、俺もいま来たばかりだ」

二年生達に軽く会釈をすると、黒猫はパソコン席に着き、電源ボタンを押した。
俺もパソコン席の隣に腰かける。

「……それで、話って何かしら?」

そう、俺は先日ブリジットから聞かされた話を黒猫に相談するために部室に呼んだのだ。

「――そう、あなたの妹さんの友人にまで“呪い”が……」
「ああ、まだ確定したわけじゃないが、ブリジットが言うにはそういうことらしい」

黒猫は、加奈子やブリジットと面識があるというわけではないが、コスプレイベントに行ったときに
観客として舞台の上にいた二人を見知っている。
そんな黒猫は、ため息をつき、俺の顔を見つめている。
いや、それは見つめたというよりも、なんだか観察するかのような視線だった。
しばらく沈黙していた黒猫だったが、カバンを膝の上に乗せ、その中からクリアファイルを取り出した。

「実はあの日以来、私は“呪いの掲示板”について、自分なりに調べていたのよ」

そういうと、パソコンのキーボードの上へと、無造作にクリアファイルに挟まれていた数枚の用紙を広げた。
そこには、黒猫による調査内容が丁寧に纏められていた。


・“呪いの掲示板”でカップルの話題が急増したのが1月中旬から}

・キラッらしき書き込みが最初に確認されたのが1月26日

・その後の1か月ほどで486人、243組が被害を受けている

・平日は朝、晩に書き込みが集中しており、日中の書き込みは稀

・当初の名前は「メルちゃん♪」であり、アニメ「星くず☆うぃっちメルル」を連想させるものだった

・当初は裏サイトの中学校の三年生を中心にカップル化されていた

・当初は顔写真の掲載は不要で、名前だけを条件にしていた

・そもそも当初は依頼を受けてからの呪い発動ではなく、キラッによる自発的なものだった

・数回、カップル化に失敗している
 →当人同士が顔見知りでない場合、および相手が遠方の人間だった場合は呪いが効かない模様


列挙されているそれぞれの事項について、関連する過去ログが引用されている。

「なるほど……よくまとめたな、お前」
「たいした事なかったわ。荒らしが増えたせいでスレ進行は早いけど、それでもまだ20スレ程度だし」

そうは言っても、20スレってことは……1000×20で2万レスを精査したってことだよな……?
どうやらこいつ、かなり本気でキラッについて調べているようだ。
黒猫は片手でバサッと黒髪をかき上げ、ちょっと得意気にしている。
ただ、それらの事項に関する考察は書かれていない。その点は黒猫らしくないな、と俺は思った。

「そんなことよりも……それを読んだ上での、先輩の意見を聞きたいわ」

また黒猫は俺の顔をじっと見つめる。
いつもとはちょっと雰囲気の違う、まるで俺の表情の変化を逃すまいとしているような目だ。
だけど、俺はその違和感を、自分の気のせいだと思うことにして、気にせず黒猫の問いに答えた。

「そうだな……こうやって見ると、キラッって奴はなんとなく脇が甘いというか……あまり考えずに行動してる感じを受けるな」
「ふぅん、それはどの辺りに?」

俺は黒猫の資料の一部を指差した。

「例えば、騒ぎの起こる最初の方では、三年生だけが被害を受けているけど、これって、普通に考えれば三年生に近い人物……または三年生の中にキラッがいる可能性があるよな」
「そうね、その後リクエストを受けるようになってから二年生や一年生、さらには他校の生徒も対象にしているわ」
「それにスレへの書き込みの時間帯も、いかにも学生って感じだし、あまりそういうの隠してないよな」

そう答えた俺の意見に、黒猫も同調しうなずく。

「そうね、もちろん偽装のためにあえてそうしている可能性もあるけど、こいつの書き込み内容を見る限り、そこまでの思慮深さを感じないわね」
「確かに、あまり知性を感じさせない書き込みばかりだよな……」
「それに、途中から写真を載せることを条件にしたのは、名前だけでは誰なのか判断できないからでしょうね。逆に言えば、名前だけでリクエストを受けてた同校の三年生は、写真なしでも判断できたということ」

そう、つまりキラッはこの中学校の三年生の中にいると考えるのが自然だ。
調子に乗って俺はさらに続けた――

「あと、やたらメルルネタを使ってるのが気になるよな。キラッってのもメルルの主題歌のネタだし」
「……そうね、1クールで終わった大きなお友達向けの凡アニメだというのに」
「いまどきメルルに執着する奴が、桐乃以外にも居るとは思わなかったよ」

あのアニメ、実は俺が思ってたよりも人気だったのかな?
呑気にそんなことを思っていた俺は、また黒猫からの観察するような視線に気付いた。
さっきから時折見せていた視線だ。

「なんだァ?さっきから妙に見つめてくるけど……」

怪訝そうにそう言い、俺はやや非難をこめた視線を返す。
すると、黒猫はフッと笑顔を見せた。

「……どうやら先輩は大丈夫なようね。安心したわ」
「大丈夫……って何がだよ?」
「いいのよ、気にしないで」

???
どういう意味だ?
なんだか訳が分からないが、とりあえずこの一連のやり取りで黒猫は何かを納得をしたようだ。
そして黒猫は、パソコンで件の中学校の裏サイトにアクセスし、現行のスレッドを開いた。

「この掲示板には、投稿者のIPアドレスの表示はなく、IDも表示されていないのだけど――」

IPアドレス……? ID……?
黒猫がさらりと言った言葉には、ネットに詳しくない俺にとって、少々ハードルの高い用語が含まれていた。
腕組みをして首をかしげている俺にやや呆れたように、黒猫が補足する。

「要するに、投稿者ごとに固有な識別番号、のようなものよ」
「ふむ…… 分かるような分からんような……。それがどうかしたのか?」
「つまり、どの書き込みを、誰が書たのか、書いた本人以外からは分からない仕組みなのよ」

そこまで聞いても、俺にはどうも黒猫の言わんとすることが分からない。
黒猫はマウスホイールを操作して、スレッドの最新の書き込み部分にスクロールした。


233 :学校の名無しさん:2011/02/21(月) 10:45:30
◎◎中の3年C組の如月竜司と相川真央のカップル化おながいします!
写真はここです[LINK]

234 :(・ω<)キラッ☆彡:2011/02/21(月) 12:18:10
>>233
はい、完了
お幸せに~☆

235 :学校の名無しさん:2011/02/21(月) 13:03:12
キラッUZEEEEEEEE
氏ねじゃなくて死ね

236 :学校の名無しさん:2011/02/21(月) 14:51:24
>>234
おお!マジであいつらカップルになってた!
すげえ!
キラッに感謝!!!

237 :学校の名無しさん:2011/02/21(月) 15:18:08
調子に乗るからやめろって!!!!

238 :学校の名無しさん:2011/02/21(月) 15:48:22
◎◎高、1年3組の相川歩と平松妙子をくっつけてください!
写真→[LINK]


「――相変わらずカップル依頼とやらが続いてるんだな」

俺はうんざりしたように吐き捨てた。
黒猫はそんな俺に見向きもせず、キーボードをカタカタと叩いている。
何を書いてるのかと思い、テキストが入力されているフォーム部分を注視する。

するとそこには意外な内容が――


名前: (・ω<)キラッ☆彡
E-mail: sage
内容:
>>238
ほい、完了したよ~


「うおおおおおおい!!お、お前っ!一体なにを!!?」

そのあり得ない書き込み内容に、俺は思わず大きな声を上げ、椅子から転げ落ちそうになった。
それと同時に、部室の全員の視線を一身に浴びていることに気付く。

「す、すまん、なんでもないっ」

俺は唖然としている二年生達に向かってそう言い場を取り繕うと、黒猫に顔を寄せて小声で囁いた。

「んで、なんなんだその書き込みはよ。 ま、まさかお前が――」
「……そんな訳ないでしょう」

黒猫は投稿ボタンをクリックしてスレへの書き込みを終えると、椅子を回して俺と向き合った。

「この一連の依頼のやり取りは、すべて私が“成り済まして”書いたもの。カップルの学校名も名前も写真も適当よ」
「ど、どういうことだ?じゃあ、ここのカップル化報告は……」
「もちろん嘘っぱちよ。私が書いたのだから」

どうも話についていけない。
これもスレ荒らしの一種だろうか?などと見当違いの発想をしていた俺だったが、黒猫は構わず言葉を続けた。

「今日、私は休憩時間のたびに、このPCを使って依頼者とキラッに成りすました書き込みをしていたのよ。さっき言ったように、この掲示板はIPアドレスもIDも出ないから、そういうことをしてもバレないの」
「お前、そんなことを……一体何のために?」

俺のその問い掛けを待っていたかのように、黒猫はしたり顔で答えた。

「キラッに対して揺さぶりをかけるためよ。他の人には分からなくても、キラッ本人がこれを見れば『自分に代わって誰かが成り済まして依頼を遂行した』と思うでしょう?自分と同じ能力を持つ者が現れた、とでも受け取ってくれればしめたものよ」
「そういうことか……」
「キラッがどうやって魅了<チャーム>の呪いを身に付けたのか、それは闇の眷属たる私にも分からない。
 だけど、こうやって揺さぶることで、手掛かりを掴むことができるかもしれないわ」

なるほど。確かに、依頼者の結果報告レスを偽っていても、キラッにはそれが事実か否かを確認する手段はないだろう。
この“呪いの掲示板”は、ネット上のやり取りだけで成立していたので、そこは盲点と言えるかもしれない。
黒猫は“第二のキラッ”とでもいうべき存在を、いとも簡単に作り上げたのだ。

「いつも通りならキラッは今晩このスレッドに現れるはず。フッ、どんな反応をするか見モノね」

黒猫は不敵な笑みを浮かべていた。


桐乃「デレノート……?」:240

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