桐乃「デレノート……?」:326


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326 名前: ◆kuVWl/Rxus [sage saga] 投稿日:2011/03/29(火) 13:16:56.66 ID:hM7nxnHAO

あれから一週間が過ぎようとしている。

この間、この事件にはちょっとした変化が訪れていた。
俺が黒猫の指示を受け、キラッの正体――つまり桐乃であることを暴いたあの日を境に、キラッはなぜか“呪いの掲示板”に現れなくなったのだ。
キラッが桐乃だったという事実は、俺にとって正直かなりショックなものだったけれど、黒猫の言いつけ通り、俺は桐乃に対して特別な反応は示さないよう努めてきた。
だから、俺たちがキラッの正体を見抜いたということは、まだ桐乃に知られていないはずなんだけど……

そうなると、キラッが現れなくなったのは、黒猫のもうひとつの作戦が効いたってことか?
あの日、黒猫は“成りすまし&自作自演”という揺さぶりも掛けてたからな。

とは言っても、それに対するキラッの反応は――


324 :(・ω<)キラッ☆彡:2011/02/21(月) 19:31:08
>>234>>240
何者?
あんたもノート持ってんの?


この意味不明な1レスだけだったけど。
“ノート”ねぇ…… 普通に考えれば紙を束ねて綴じてある、あのノートだよなァ
それとも何かの隠語になっているのだろうか?
あーっ!チクショウ、実にもどかしい!
隣の部屋をノックして、あいつから直接聞き出せりゃあ、どんなに話が早いだろう。



学校の昼休憩、俺は黒猫と二人で部室に居た――

キラッの正体が身内だと判明してからは、他の部員がいる放課後は話しにくくなったため、俺たちはほぼ毎日、誰もいない昼の部室でキラッ事件について話し合っている。
もっとも、ここ数日は何の進展もなく、俺たちの捜査は行き詰まり気味だ。

「まずいわね……」

黒猫は腕組みをして呟いた。

「まさかキラッが掲示板から姿を消してしまうなんて……これじゃ探りようがないわ」

正体を知った今でも、俺たちは犯人のことを指して“キラッ”と呼んでいる。
俺にとっての妹、黒猫にとっての親友――お互い、桐乃を犯人として扱うのは抵抗があるからだ。
傍から見ればただの現実逃避かもしれないが、それが俺たちの暗黙のルールになっていた。

「ニセモノの出現で、警戒されたんじゃねえか?」
「……これまでキラッがあまりにも無警戒だったので、ああいう方法を採ったのだけど、こうもあっさり動きを停められるとは……正直失敗だったわ」

黒猫は悔しそうに顔をしかめている。
“面倒だから、もうあいつをふん縛って白状させようぜ”と、よっぽど俺は提案しようかと思ったが、黒猫に一蹴されるのは目に見えているのでぐっと堪えていた。

「……だけど、もしニセモノを警戒して身を潜めているということであれば、それが新たなヒントにもなるわ」
「ヒント?」
「キラッは自分以外の人間が、自分と同じ能力をもつ可能性を否定できないってこと。……あえて拡大解釈をすれば、この能力は私達が思うよりずっと簡単に、人に備わるものなのかもしれない」

なるほどな。
だけど、それは俺にはある程度予想ができていた。

少なくとも今年の始め頃までは、桐乃は“ただの桐乃”だった。
様子がおかしくなったのは、それ以降のことだ。
あいつに何が起きたのかは解らねえが、きっとあいつ自身が望んで手に入れた能力なんかじゃなく、意図せず誰かに能力を与えられ、唆されて、キラッなんかになっちまったんだと思う。
だからこそ、もうこんなことはやめさせたいのだが……

「このまま大人しくしててくれりゃあ、それでもいいのかもな」

俺の呟きに、今度は黒猫が反応する。

「駄目よ。手口を明らかにして抑止策を講じないと。あの気紛れな娘に生殺与奪を握られている状態なんて危険すぎるわ」
「そ、それもそうか……。でもどうやって?」

黒猫は考え込んでいる。

「――この状態が続くようなら、こちらからアクションを起こす必要があるわね」

……そのアクションって、どうせ俺にやらせるんだろ?
頼むからあまり無茶なことはさせないでくれよ。



◇ ◇ ◇

退屈――

それが今のあたしの中の大部分を占めている感情だ。

偽キラッが現れてからというもの、あたしは用心のため、カップル化作業も掲示板への書き込みも控えている。
あたしが最後に書いたのは、偽キラッに探りを入れるレスだったんだけど、向こうから反応は返ってこなかった。
そして偽キラッの方も、あの日を限りに現れていない。

二人のキラッが居なくなったため、結果としてスレッド上には手付かずのカップル化依頼が溜まり、スレ住民達も戸惑っているみたい。
まぁ、なりすましの偽者が出現してたってことは、当事者間でしか分からないことなので、他の人達は気付いてないだろうけどね。
はぁ……、めんどくさいことになっちゃったなぁ……

「ねぇ、リューク。あたしどうしたらいいと思う?」
『あん?……なんのことだ?』
「だから、こないだの偽キラッのことよ」
『あー……』

リュークはあまり関心なさそうに、ノーパソへ向いたまま生返事を寄越した。
このデレ神、あたしが冗談半分にエロゲを薦めたらまんまとハマっちゃって、いまでは昼夜問わずプレイしている。

「ちょっとぉ!話をするときぐらいゲームはやめなさいよ」

パタン、と横からノーパソの画面を閉じてリュークから取り上げる。

『おいおい、りんこルートのクライマックスだったのによぉ』
「あんた、何のために人間界に来たのよ……」

リュークは渋々といった感じで、あたしの方へ向きなおした。

『ニセモノなんか気にせず堂々としてりゃいいじゃねえか』
「だけど気になるじゃん。何のためにわざわざキラッに成りすましたのか……気味悪いって」
『案外、仲間になってくれるかもしれないけどな。キラッが増えれば、お前の人類総カップル化計画も大きく前進するじゃないか』

うーん、二冊目のノートなんてホントに存在するのかなぁ……
こいつ、適当なこと言ってるんじゃないの?

『なぁ、それよりシスカリ対戦しようぜ~』

駄目だこのデレ神……早くなんとかしないと……

そんな話をしていると、机の上の携帯電話が着信を知らせた。
ケータイを手に取り、液晶モニタに目をやると、そこには“非通知着信”と表示されている。
不審に思いながらも、あたしは応答ボタンを押す。

「……もしもしぃ?」

どうせ掛け間違いだろう。
そう思ったあたしは、とても迷惑そうな声で応じた。
だけど直後に、あたしは非通知の電話なんかに出たことを後悔するハメになってしまった。

『――こんばんは、突然電話してすみませんね』

その電話の主は、丁寧な口調で話した。
ただ、その丁寧さに反して異様だったのは、その声が妙に甲高く機械的なもので、明らかにボイスチェンジャーを通している音声だったことだ。
なにこれキモッ!イタ電!?

「な、なんなの? 切るからねっ!」

嫌な予感がしたあたしは、一方的に電話を切ろうとする。
しかし、スピーカーから聞こえてきた次の言葉によって、あたしの全身は金縛りのように強張り、電話を切ることができなくなってしまった。

『あ、ちょっとちょっと!まだ切らないで、高坂桐乃さん……いや、キラッと呼ぶべきですか?ふふふ……』



携帯から聞こえてきた機械的声が、あたしの中で何度も響いている――

『高坂桐乃さん……いや、キラッと呼ぶべきですか?ふふふ……』

一体……なぜ?
どうしてあたしがキラッだと……
あまりの驚き、そして動揺で、まともに呼吸することさえできない。
あたしは全身から汗が噴き出していることを感じた。

『高坂さんー?大丈夫ですかぁ?』

電話の声の主は、こちらの驚きようを見透かしているかのように呼び掛けてきた。

「……あ、あんた誰?……何者?」

あたしはようやく声を絞り出した。

こいつはあたしの携帯に直接電話を掛けてきた。
どうやって番号を調べたのか?それとも元々あたしを知ってる人物……?

『あはは、わざわざ声まで変えて電話してるのに、そんなこと教える訳ないじゃないですか』

その嘲笑い混じりの声は、ボイスチェンジャーによってひときわ甲高く変換され、とても耳障りな音として届いた。

『それに、キラッに名前を名乗るほど、あたしは間抜けじゃないですよ』
「……アンタさぁ、さっきからキラッ呼ばわりしてるけど……何の証拠があってそんなこと言ってンのよ?」

動揺しつつも、なんとかまともに話せるようになったあたしは、敵意をむき出しにした口調で問い返した。
だけど、電話の相手はまったく動じない。

『あららら、その台詞って、追い詰められた犯人が口にする定番の台詞ですね』

まずい、あたし空回りしてる?落ち着かなきゃ……
冷静になって慎重に対応しなければ、後で取り返しのつかないことになってしまう。
だけど、次に電話から聞こえてきた声が、あたしの中にわずかに残ってた冷静さを完全に奪い去ってしまった。

『――証拠はあります。なんならあの掲示板に、証拠を添えて、キラッの正体を暴露してもいいですよ?』
「ちょ、ちょっと!?」

コイツ、なんて恐ろしいことを言い出すのよ!?
あそこにはキラッのアンチがウジャウジャいるし、中には脅迫めいたことを書き込んでる奴もいる。
もし正体がバレたりしたら、あたしはもう家から一歩も出られなくなる……

『まぁ、そんなことしたら、高坂さんは社会的に終わっちゃうでしょうねぇ~、ふふふ』

どうやってこのピンチを切り抜ける――?
あたしは咄嗟にリュークに視線を送り、目で救いを求めた。
だけどリュークは、あたしが電話中なのを幸いとばかりにエロゲを再開中。こちらには目もくれない。
うん、まぁ、どうせそんなこったろうと思ったわよ。……後でコロス!

電話の相手はなおも続けた――

『まぁ、わざわざボイスチェンジャーまで用意して、あなたに直接電話を掛けてるのだから、それだけでも確証なしにできることじゃないって分かるでしょ?』

確かにその通りだ。
それに、もしこいつが握ってる証拠が弱いものだったとしても、嫌疑が掛かった時点であたしの負けだ。
あのスレで一度でも犯人扱いされたらアウト。潔白の証明なんてできやしないし、そんな状態では危険すぎて、キラッの活動を続けるのは難しくなるだろう。
ダメだ、あまりにも状況が悪すぎる……。

『とにかく、あなたは正体をバラされたらそれで終わり。それを握っているのはあたしだということ』

その言い方で、ようやくあたしはコイツの中に含むものがあると気づいた。

「アンタの目的は何?……正体をバラすつもりなら、電話なんかせず、さっさとスレに書くはずよね」
『あはは、それもそうですね。……でも話が早くて助かります』

こいつの要求が何であろうと、いまのあたしの立場では受け入れるしかない。
そう覚悟は決めていたが、電話の相手は予想以上にとんでもないことを要求してきた。

『他人をカップルにする方法、それをあたしにも教えてください』
「はぁっ!? 方法って、そんなこと言われても……」
『隠そうとしたり、嘘をついたりしても無駄です。高坂さんが今年に入ってからその能力を身に付けたことは知っています』

クッ、こいつ……。
これは……どうすればいいの?
馬鹿正直にデレノートについて話すべきではない、そんなことはあたしだって重々承知している。
となると、ここは適当なことを言って煙に巻き、こいつの正体を暴く時間を稼ぐべきだろう。
顔と名前さえ分かればどうにでも……

あたしはこの場を凌ぐため、そんな対応策を考えていた。
だけど、どうやら駆け引きでは相手の方が一枚上手だったようだ。

『言っときますけど、1週間以内にあたしが“カップル化の呪い”を使えるようにならないなら、それがいかなる理由だとしても、あたしはキラッの正体を暴露します』
「なっ……!?」 
『他人に教えられない性質のものだとか、こちらにその呪いを使う適性が無いとか、そういうやむを得ない理由だったとしても、あたしは絶対に絶対にキラッの正体を暴露します』

こ、こいつは何てコトを言い出すのよ!
キラッの正体を暴露しても、こいつ自身に何のメリットも無いはず。
こいつの目的がキラッに成り代わることなのであれば、むしろそれはデメリットかもしれないのに。
……そう分析したところで、こいつが損得勘定だけで動く保証などどこにも無い。
「バラされたら終わり」という大前提は、依然としてあたし達の間に高くそびえているのだ。

結果として、あたしにはこの無茶苦茶な脅しに抗する手立ては見つけられなかった。

電話の声は、少し得意気にトドメの一言を見舞った。

『ほらほら、選択肢も拒否権もありませんよ』


――そして、あたしはデレノートを失うことになった。



◇ ◇ ◇

その日、学校に着いた俺は、異様な光景を目にすることになった――

教室、廊下、階段……校舎の至るところでカップルがいちゃついていたのだ。
ある者は頬を寄せ抱き合い、ある者はパートナーを膝に乗せ語らい、またある者は――
いや、具体的に文字にするのは憚られる……まぁ、そんな具合だ。
一緒に登校した麻奈実も、目をぱちくりさせている。

「なんだか……みんなすごく仲良しになっちゃってるね……」
「ど、どうなってるんだ……これはまるで――」

キラッの呪いじゃないか、と、俺は麻奈実に聞こえないぐらいの小声で呟いた。

教室に入って自席に着くと、ちょうど教室の出入り口に黒猫の姿が見えた。
駆け寄る俺を見て、黒猫は安心したようにほっと息をつく。

「どうやら先輩は無事のようね」

一年生の黒猫が俺の教室までわざわざ来るのは珍しい。
今はそれほどの異常事態ってことだ。

「こりゃ、一体どうなっているんだ?」
「一年生のクラスでもカップルが急増していて、ここに来る途中に覗いた二年生の階も似たような感じだったわ」
「なぁ、これってやはり……」
「ええ、どう考えてもキラッの仕業よ。ついに再開したようね」

黒猫は廊下の窓から外を眺めながら言った。
俺がそれに倣って外の様子に目をやると、そこには何組かのカップルが仲睦まじく寄り添っている様子が見てとれた。
クッ……あいつら屋外でまで……

「それにしても……これは酷い……」

以前にも、うちの学校にはキラッの呪いを受けたと思われる何組かのカップルがいた。
だが今日の状況は、あまりにも規模が大きく、なによりそのカップルの“性質”がまるっきり違っていた。

「あの莫迦女、まさか新しいジャンルのエロゲに手を出したのかしら」
「まさかな……。しかし酷い光景だ」
「ええ、凄まじいわね……」


「なぜ男同士で――」


そう、学校内で繰り広げられているカップル達の睦み合い
――それはいずれも男同士のものだったのだ。


「とりあえず教室に戻るわ。また昼休みに」

そう言い残し、黒猫は自分のクラスへと戻って行った。
それと入れ替わるように、ちょうど登校してきたクラスメイトの赤城浩平が俺に話しかけてきた。

「おいおい高坂、なんか学校の雰囲気がおかしくねえか?急にホモっぽくなってるぞあいつ等」

念のため、俺は赤城をまじまじと観察する。
うむ、どうやらこいつは呪いに掛かっていないようだ。

「ああ、俺が来たときにはもうこの状態だった」
「な、なんておぞましい光景だ……」

赤城は辺りを見回して青ざめている。
家庭の事情で、俺なんかよりよっぽどホモに耐性のあるこいつがこの反応なのだから、今の状況がどれだけ異様かってことは、“推して知るべし”だろう……



その日の昼休み――

俺は教室を飛び出すと、一目散に部室へと向かう。
部室の戸を開けると、すでに中では黒猫がパソコンに向かっていた。
俺は黒猫の隣に腰掛ける。

「なぁ、今日のこの状況、キラッだとしても何かおかしいと思わねぇか?」
「――先輩、その前にちょっとこれを見て」

黒猫は俺の問いには答えず、パソコンのモニタを指差す。
そこにはいつもの“呪いの掲示板”のスレッドが映し出されていた。


299 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 08:47:37
県立千葉弁展高だけど、今朝から校内がホモカップルだらけになってる!
キラッがやったのか・・・?

300 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 09:07:11
同じく
やばいこわい

301 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 09:31:39
アッー!

302 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 10:01:00
俺も千葉弁展高校
何が何だかわからない……

303 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 10:03:56
すまないがホモ以外は(AA略

304 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 10:19:22
俺のダチがなぜかホモになってしまった@千葉弁展
ここの奴のせいか?答えろよ!!

303 :学校の名無しさん:2011/03/10(木) 10:24:04
俺もホモにされたらどうしよう(((;゚д゚)))


「これは……うちの学校の奴らが書き込んだのか?」
「ええ、おそらく学校から、携帯で書き込んだのでしょうね。ただ気になるのは、うち以外の学校からの報告が今のところない点……」
「そういえばそうだな……」

いままでも呪いの影響範囲の偏りはあったが、それはキラッ――つまり桐乃が身近な対象に呪いを掛けていた当初のことだ。
そのときは桐乃の中学校を中心にカップルが量産されていたのだが……

「それと、以前のように掲示板でカップル化の依頼を受けるやり方ではないわね。今日起きているカップル化は、キラッ自らの判断で行っているみたい」
「そうだな、キラッを名乗る書き込みは相変わらず無いようだし……」

あの自己顕示欲の強い奴が、ホームグラウンドとも言うべきこの掲示板をシカトして
黙々とカップル化を進めるだろうか?
それになんといっても、新たに呪いを掛けられた連中は、ことごとく男同士でカップルになっている。
あいつにそんな趣味があったとは思えないのだが……一体どうしちまったんだ?

「逆に女同士のカップルがいるわけではないし、どうやら意図して男同士のカップルを作っているようね」

ハァ……
あいつ、マジでホモゲーとかに手を出したんじゃないだろうな?
絶対にありえないと言い切れないところが、兄として情けないぜ……
俺は独り言のように、ぼそっと呟いた。

「……これ、本当にあいつの仕業なのかな」

そういう言い方をしたのは、桐乃=キラッ説を未だに受け入れられない往生際の悪い兄、という風に受け取られたくなかったからだ。
まぁもちろん、俺の呟きに対する黒猫の反応を待っていたのだけど。

「そうね、私も疑問に思ってるわ。手口があまりにも違うから……まるで別人になったような……」

そこまで言って、黒猫は口をつぐみ、考え込んでしまった。
どうやら黒猫も俺と同じことを考えているようだ。

少なくともこの無差別なホモカップル化を、桐乃がやってるとは思えない。
もし本当にうちの高校だけで起きている現象なのだとしたら、いつものような名前や顔写真のタレコミも無しで、桐乃の奴がうちの生徒達を把握できるはずが無いからだ。
今、カップル化を行っているのは桐乃ではない。それが今回の推理の大前提になる。

じゃあ、誰がやっているのか?
こんなことできる奴が、桐乃以外にもいるのだろうか?
桐乃のように、ある日突然能力を身に付けたのか? それは誰から、どうやって?
……そう考えると、どうしてもそこで推理が行き詰ってしまう。
なぜなら、俺達は“呪い”のシステムについて、あまりにも無知だからだ。
どんな方法で呪いを掛けているのか、どのような条件が必要なのか、どうやってそれを会得するのか……等々。

しばらく黙り込んでいた黒猫も、同じ結論に辿り着いたようだ。

「やはり魅了<チャーム>の呪いについて知らなければ、どんなに推理を巡らせても結論は出ないわね」
「そうだな、同感だ」

だが、どうやって……
目の前で呪いを掛けてもらえれば話は早いが、そんなことは不可能だろう。
そうだな、ここは黒猫の妙案に期待したいところだ。

「そうね、先輩。 こうなったら――」

黒猫は俺の瞳をまっすぐに見つめ、不敵な笑みを浮かべた。
こういう時のこいつは、俺には思いつかないような素晴らしいアイデアを練り出してくれる。
俺も一緒に不敵な笑みを浮かべ、黒猫の次の言葉を待った。

「――あの女の部屋に忍び込んで、なにか呪いの痕跡を見付けてきて頂戴」

うおおおおおおい!!
俺は思わず椅子からずり落ちてしまった。

「期待したのにっ! 何だよその大雑把な作戦はよ!」

ずっと慎重にコトを運んでいたというのに、いまさら家捜しとか……それって思いっきり本末転倒じゃないか!?

「しょ、しょうがないでしょ。もう他に手が無いのだから」
「そうだけどさぁ……俺に妹の部屋に忍び込めってのかよ……」
「いままでは悠長に構えていたけれど、キラッの無差別攻撃が始まったからにはやむを得ないわ。先輩だっていつターゲットになるかも知れないのよ?」
「ターゲットって?」
「つまり……その……貴方もホモカップルの片割れに……」

クッ、なんて嫌なことを言いやがる……
俺は渋々、この高難度かつ不名誉なミッションを拝領することになってしまった。


桐乃「デレノート……?」:421

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