優柔不断√:10スレ目368


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368 ◆5yGS6snSLSFg [sage saga] 2011/05/20(金) 21:04:34.91 ID:D8fOFD+Io
「……京介氏、今のこの状況を説明していただけますかな?」

深刻な(眼鏡で眼は見えないが、多分そうであろう)表情をした沙織が俺の顔を仰ぎ見る。
俺よりも身長が高いはずの沙織が俺の顔を仰ぎ見ている理由は、今現在、沙織はがっくりと項垂れており、一方の俺が膝立ちで辺りを見回している最中だったからだ。

「俺とお前が手錠で繋がれている」

現状を端的に、しかし的確に示す。

「その通り。しかし、それでは50点でござる」

だが、沙織はそれでは不満なようだった。
沙織は、やれやれ――といった感じでこめかみを抑え、首を横に振る。

「さらに言えば、“手錠の鍵と思われる物”があそこに落ちている」
「う~む、75点。もう一声!」

これでも不満なのか。
それにしたって、沙織は何でこの状況でこんなに落ち着いていられるんだ。

「壁に隣接した太いパイプがあり、俺側の手錠から延びる鎖は、パイプと壁の間にある細い隙間を通ってお前側の手錠へと繋がっている。……これでいいか?」

ちなみにパイプの裏の隙間はとても狭いため人間は行き来できない。

「ブラボー! おめでとう京介氏! 100点でござる!!」
「何もめでたかねえよ!」

何なんだよこの状況は!? 
俺は自分のベッドで寝てたはずだろうが! それが何で目を覚ましたらこんな状況になってるんだよ!?
あれか? 昨日寝る前に、あやせたんでちょっとフヒヒな妄想しちゃったのが悪かったのか!?
だとしたらあんまりだ! 夜な夜な俺の枕元に現れるあやせたん(幻想)を前に健全な男子高校生が我慢できるわけが――
いや、落ち着け。落ち着くんだ京介。今、大事なのはそこじゃない。
大事なのは、この現状をいかにして打破するかだ。
それに、そんな理由で俺がこんなところに連れてこられたのだとしたら沙織まで巻き添えをくってる説明がつかねえ。
これが沙織だけなら身代金目的にの誘拐なんだろうけどさ。

「その通りでござる。京介氏がそのあやせたんとやらでどんな妄想していたのかは存じませんが、これはもっと別の――そう、いわば我々は選ばれてしまったようです」
「選ばれた……だと……?」

会話しているうちに項垂れた状態から幾分か復活を遂げた沙織が、現状で得られる情報、そして自らの推察も交えて、今俺たちが置かれている状況を語っていく。
なかなか現状を冷静に把握できない俺は、ただただ沙織の話を聞くことしかできなかった。

「そうでござる。わざわざ、こんな手の込んだ仕掛けを用意したり、拙者たち本人にすら気づかせないままここへ移送する手際の良さから考えて、これは用意周到な計画的犯行と言わざるをえません」
「あ、ああ。確かにな」
「そして、こんな風に綿密な計画を立てる犯人がこの状況に陥れる相手を適当に選ぶでしょうか?」
「いや、普通はそいつらのことを調べるなりなんなりして、それから――」

と、ここまで喋ったところで沙織が持ち前の明るい大きな声で俺の話を遮った。

「その通りでござる! 拙者たちは犯人による調査の結果、まさに“選ばれた”のでござるよ!! いわば大当たりでござる!!」

選ばれた。
沙織がこれまでに何度か繰り返したフレーズ。
普段ならば抽選に当たったとか、誰かと付き合うようになったとか、壮絶な死闘の末に討ち倒されたかに見えた魔女が実は精神体として生き残り転生のための器としてごく普通の少女に云々、そんなときにお目にかかるフレーズだと思う。
だが、俺たちがおかれている状況は、とてもじゃないがそんな幸せそうな状況とは無縁に見える。

「犯人の目的はわかりませぬが、わざわざ拙者と京介氏を“選んだ”ということはまず、間違いないでござる。そして、一見何の関係性も持っていそうにない凡庸男子高校生と美人お嬢様をセットにするからには少なくとも犯人は“拙者たちの関係”を知っていると見るべきです」

まさにその通りだった。非の打ちどころのない完璧な推理だ。
こんな状況でも冷静さを失わない。さすが沙織。
沙織の推理を聞いて、俺もようやくまわりが見えてきた。なので、ふと湧いた疑問を沙織にぶつけてみようと思う。

369 ◆5yGS6snSLSFg [sage saga] 2011/05/20(金) 21:05:33.93 ID:D8fOFD+Io
「ところでさ」
「なんでしょう?」
「なんでおまえが、俺があやせで妄想してた知ってるの?」
「そこですか、京介氏…………」

再び――いや、さっき以上にがっくりと力なく項垂れる沙織。
沙織はこんなリアクションだが、俺にとっては重要な問題なんだ。
ここから無事に帰ることができたとしても、このことが外部、特にあやせ本人や桐乃にバレた場合、最悪俺の人生は終わりを迎える。比喩的な意味ではなく。

「どうなんだ、沙織……!」

目覚めて10分ほどで早くもこの状況が生み出す狂気に支配された俺は、じりじりと沙織に詰め寄っていく。
幸い――いや、この場合は不幸にも、が正しいだろうか。沙織と俺は手錠によって繋がれており、沙織は逃げることすらままならない。
恐らく、この時の俺はとんでもない悪人面をしていたのだろう。

「ひっ……や、やめ……やめて……くだ……さい…………京介さん」

沙織はいつものぐるぐる眼鏡をかけているにも関わらず、お嬢様モード全開で完全に怯えてしまっている。
沙織の目の焦点は定まらず、視線を左へ右へとせわしなく動かしている。
その姿が、わずかに残っていた俺の良心にぐさりときた。俺は、何をやっているんだ。

「……すまん、沙織。俺、どうにかしてたみたいだ」
「えっ?」
「すまん、俺が悪かった。……言い訳になっちまうけど、そんな怯えさせるつもりはなかったんだ」

俺の謝罪の言葉で沙織がホッと胸を撫で下ろしたのがはっきりとわかった。
こんな状況においてさえ、沙織は“沙織・バジーナ”を演じていたから忘れていたんだな。……言い訳にもならないけどさ。
こいつの素の顔は、引っ込み思案で、超絶照れ屋で、友達思いのお嬢様なのだ。
いきなりわけもわからずこんな所に連れてこられた不安は俺の比ではなかったろう。
それなのに、こいつは、俺を不安にさせまいと“いつもの沙織”を演じてくれていたのだ。
もしかすると意図的に“選ばれた”等のポジティブなイメージの単語を使って現状を説明してくれたのかもしれない。

「よかった……いつもの京介さんに戻ってくれたんですね。……ほんとうによかった」

そして、俺を責めることもなく――ただ、笑って許してくれる。

「すまなかった。この通りだ」

精一杯の謝罪の念をこめて頭を下げた。今の俺にできることはこれしかなかったからだ。
そして、ここから無事に帰ることができたら――その時に、改めて謝罪と口止めをさせてもらおうと思う。
そう。今は沙織がなぜ俺の妄想を知っていたか、なんて些細なことに過ぎないのだ。後でしっかり追及はするけども。

「あ、頭を上げてくだされ京介氏! ……それに、もとはと言えば拙者の言が原因でござるゆえ、ここはお互い手打ちということで」
「ありがとな。そうしてくれると助かる」
「いえいえ。あ、ちなみに京介氏の疑問に一応答えておくと――」
「あれ? 教えてくれるの?」

これは以外な展開だ。だが、それゆえに僥倖とも言える。
ついでに口止めをしてしまおう、そうしよう。口止めはできるだけ早い方がいいもんな。

「ええ、もちろん。それはですね…………単に京介氏が心の声をダダ漏れにしておったのが原因でござる。」
「ダダ漏れ!? 全部!?」

どの辺りの話だ!? と、思ったがここへ来てからそれを声に出してしまった可能性があるのは、現状把握を行って沙織に100点と褒められた直後くらいだが。
……ふぅ、なんだ、脅かすな。それなら大した情報は洩れてないな。……いや、十分に恥ずかしすぎる事態ではあるんだけどね。

「はい。『ふひひwwwあやせた~んwww今行くよ~』から、『おいおい、口では嫌――」
「ストオオオオオップ! そこまで!? そこまでダダ漏れだったの!?」

俺、そこまで声に出してたの!? ここへ来てからは妄想自体はしてないのにそこまで!?
って言うか、なんだよそのシチュエーション!? 1つ目は覚えがあるが……2つ目がけしからん! 今度使おう。

「ごほん」

わざとらしく咳払いを一つ。勿論、俺がだ。
これ以上この空気に耐えられない!

「さて、この状況。どうやって脱出しようか。沙織君」

まずは形からということで、口調だけでも知的な紳士を装ってみたのだが、一向に名案は湧いてこなかった。
当然といえば当然の結果だけどな。

「まずはあの鍵を入手しないことには、なんともしがたいでござるな」
「ああ。悲しいが、その通りだな」

370 ◆5yGS6snSLSFg [sage saga] 2011/05/20(金) 21:06:39.06 ID:D8fOFD+Io
鍵の方へと向きなおる。
鍵は俺たちの正面にぽつんと置かれており、鍵までの距離はざっと10mくらいだろうか。
次いで俺たちを繋いでいる鎖を見る。こちらも長さは10mくらいだろうか。

「俺たちのどちらかが壁にぎりぎりまで寄って、もう一人が手を伸ばせば届くんじゃね?」

ごく普通の、誰でも思いつくような提案。
この作戦を図解するとこうなる。




 _       _
|パ|     |パ京
| |     | 
| |   ⇒ | 
| |     | 
沙 京     | 
        | 
        |
        |
        沙
鍵        鍵



「とりあえずやってみるでござる」
「おう、そうだな」

そして、俺たちはおもむろに立ち上がり――二人とも壁に密着し腰を下ろした。

「おまえが行くんじゃねーのかよ!?」
「行くわけないでござろう!? 罠かもしれぬというのに、京介氏はあれをか弱き乙女に取りにいかせるのですか!」
「誰がか弱き乙女だ! それは眼鏡をはずしてから言え! だいたいリーチだっておまえの方が長いじゃねえか!」
「なっ!? 拙者だって好きで大きくなったのではありません! 気づいたら大きくなっていたんです!!」

今、外野から突っ込みが入るのが聞こえたぞ。沙織は女の子はお嬢様なんだからお前がやれだと?
馬鹿いうな。さっきこそは沙織の優しさに感動したもんだが、それとこれとは話が別だ。
沙織は、今、沙織・バジーナであって槇島沙織ではないのだ。
それに、こうして騒いでいた方が不安も紛れるんだよ。沙織もわかって付き合ってくれてるんだろうぜ。
そのまましばらく互いに文句を言い合っていた俺たちだったが、この不毛な争いは沙織のある行為によって、いとも簡単に幕を下ろすことになる。

「京介さん。お願いしますわ」
「…………ちくしょう……それは反則だろ」

そうひとりごちて、立ち上がり、鍵の方へ歩いていく。
改めて辺りを見回したところ、新たに気づいたことがあった。

「あれ? あそこにあるのって出口じゃね?」

俺たちが先ほどまで座り込んでいたパイプとちょうど反対側の壁。俺たちの正面にドアらしきものがちらりと顔を覗かせている。
今まで気づかなかったのは反対側の壁一面には様々な物が雑然と置かれており、うずたかく積み上げられていたからだ。
さらに言うならば、きょろきょろと辺りを360度見回しても窓およびそれとおぼしきものは確認できなかった。

「鍵さえ入手できれば脱出はできそうだな」

勿論、あのドアがロックされていなければの話ではあるが。
そんなことを考えながら歩いていき、鍵の目前せまったところで、突然、がくんと手錠の嵌った方の腕を引っ張られた。

「うおっと。沙織か? どうし――」

振り返って見てみると、沙織の腕がパイプにぴっちりと押し当てられている。
当然、手錠を嵌められた方の腕が、だ。

「沙織? まさか……」
「そのまさかでござる。この手錠を繋ぐ鎖、どうやらぎりぎり鍵に届かない長さにしてあるようです」
「ははは、まさか。大丈夫。頑張れば届くって」

俺は務めて、そしてこの場には不釣り合いなほど明るくそう言い放ち、じりじりとすり足で鍵ににじりよる。
ぎしっ。
手錠が嫌な音を立てて軋む。ここからでは手を伸ばしても届きそうにない。
念のため、足を伸ばしてもみるがやはり届かない。
鍵まではここからさらに1mほどの距離があるため、沙織のリーチをもってしても届くことはないだろう。

「くっそ……ぐぬぬぬ」

力を込めて手錠で拘束された腕を引く。なんとしてもあの鍵を手に入れて脱出しなければ。
そんな思いが俺を突き動かしていた。
が、しかし――

371 ◆5yGS6snSLSFg [sage saga] 2011/05/20(金) 21:08:00.36 ID:D8fOFD+Io
「いっ、痛いです。京介さん」
「へっ?」

再度振り返って見てみれば、沙織が苦悶の表情を浮かべていた。
し、しまった。何も考えてなかった。
俺が引っ張れば引っ張るほど手錠は沙織の腕を圧迫していたのだ。

「それに拙者、こういうプレイは初めてでござるゆえ……ここは一つ。…………もう少し……優しく……してください」
「こんなときに何言ってんだおまえ!?」
「あ、もちろんこういうプレイに限らず拙者は色々と未経験でござるよ?」
「誰もそんなこと聞いてねえ!」

ガタタン!
沙織のアホな台詞に反応したかのように、俺の背後、つまり出口の方から大きな物音が聞こえてきた。
バッと振り返ってみるが、積み上げられた荷物が崩れたとか動いた気配はない。
となると――
何かいる!

「お、おい! 誰かいるのか!?」

声を大にして呼びかけるが一向に返事はない。
返事がないとうことは動物か何かだったのだろうか。あるいは、俺たちをこんな目に合わせた犯人――だろうか。
どちらにせよ、返事がこない以上協力は望めない。
自分たちの力でどうにかしてあの鍵を手に入れなくては。

「…………あっ」
「どうされました、京介氏?」
「ふっ、名案思いついちゃったぜ」

ぐっと親指をたてたポーズで沙織を見る。
そして、俺はおもむろに――
服を脱ぎだした。

「きょ、京介さん!? 一体何をなさるおつもりですか!?」
「うん? 見てわかんないか?」
「ひっ!? あ、あああ、あの! ……私色々初めてでその……まだ早いと言うか……と、とにかく落ち着いて下さい!」

なぜか沙織の慌て振りは相当なもので、いつものぐるぐる眼鏡はずり落ち、もはや完全に素のお嬢様状態に戻ってしまっている。

「何を慌ててるんだおまえは。シャツを脱いだだけだろ」

淡々と服を脱ぎ、てきぱきと作業をこなす俺を尻目に沙織は部屋の隅で小さくなって震えている。

「ううっ…………ごめんなさい……きりりんさん、黒猫さん」

目をきゅっときつく閉じ、なぜだか知らないが桐乃と黒猫に謝っていた。
ただ、一つ気になるのはさっきから“フーッ、フーッ”という獣が威嚇するような、あるいは黒猫に『桐乃は実は隠れブラコンである』という設定の漫画を見せられた時の桐乃のような息遣いが聞こえてきていることだった。

「まじでなんかいるんじゃねえだろうな、ここ」

早く脱出しなくては。

「さっ、準備できたぞ」
「ひっ!? お、お父様お母様。結婚まで操を守ると言う教えを守れず申し訳ございません。でも私、京介さんとなら……」

向こうで完全にトリップしている沙織を放置して、手錠が沙織を苦しめない範囲で鍵に接近する。
そして、シャツで作った投げ縄を鍵に向かって投げた。
もちろん裾の部分は掴んだままだぞ。遠くに投げてしまって回収不能なんて馬鹿なことはやらないからな。

シャツは袖の部分が互いに結ばれており、袖と襟裳の部分で輪っかができている。
その輪っかの内側の部分に鍵を引っかけてずるずると引っ張りこちらへ引き寄せようと言う腹積もりだ。
もちろん、即席の輪っかな上に元がシャツなので鍵は思うように引き寄せられはしないだろうが、地道にやれば問題ない。
とりあえずの目標達成はすぐそこまできている。

するっ。

「ん?」

一瞬鍵を輪っかの内側に捉えたかに見えたのだが、俺が投げたシャツは鍵をとらえることはなかった。

372 ◆5yGS6snSLSFg [sage saga] 2011/05/20(金) 21:08:48.77 ID:D8fOFD+Io
「ははは、俺も沙織に続いておかしくなったかな?」

シャツを手繰り寄せ手元に回収し、もう一度投げてみる。
が、今度は完全に届かない。
そして、これはできれば認めたくないのだが……先ほどまでと比べて明らかに鍵が遠ざかっている。

「なんだこりゃ!? 鍵が逃げた!」

我ながらアホな台詞だったと思う。だが、事実なのだから仕方がない。

「くっそおおお! 負けてたまるか!」

謎の対抗心を燃やした俺は、あろうことかズボンまで脱ぎ捨てシャツに結んでいく。
今の俺の恰好は、俗に言うパンイチである。

「ふはははは! これでリーチはさっきの倍以上! 俺から逃げられると思うなよ!」

首を洗って待ってろよ、鍵たん!
スイッチがすっかりONになってしまった俺は、意気揚々と“輪投げ”を再開する。
距離が少し離れたせいか少しばかり命中率が悪い。
しかし、3回目の投擲にてついに、鍵を捉えた。
――かに見えたのだが、鍵はまたしてもするりと輪っかを回避し、さらに遠くへと逃げて行った。

「があああ! やっぱり逃げやがった! 犯人か? 犯人の仕業か!?」

パンイチで絶叫する俺。
隅っこできつく目を閉じ震えている沙織。
実にシュールな光景だが、こっちはそれどころではない。

「沙織! お前も脱げ!」

こうなったらお前の服も貸してもらう!

「わかりました京介さん。……私も、覚悟を決めます」

俺の暴走っぷりが最高潮に達しようとしたその時、特大の声が室内に響いた。

『こ、この変態! ちょっと待てっての! ……いや、待ちたまえ!』
「だ、誰だ!?」

慌てて辺りを確認する俺。
まるで犯行に及ぶ寸前でヒーローに邪魔された犯罪者さながらの対応である。

『我々が何者か……そんなことはどうでもいいのだよ』
「我々?」
『あっ』
『ば、莫迦。ちょっと変わりなさい』

どうやらこの声は室内のどこかに隠されたスピーカーから流れてきているみたいだった。
聞き取れる声は変声機のようなものを通しているのか、おかしな声色となっている。ほら、よくテレビとかである“プライバシーのため声は変えてあります”の時に聞こえてくる声みたいな感じだ。
そのため声の主が男か女かすら判別できない。
ただ、恐らくこいつが俺たちをこんな状況に陥れた犯人と見て間違いないだろう。

「ふむ」

奴らは“待て”と言った。これはこちらの行動が奴らに筒抜けであることを窺わせる。
どこかで見ているのだろうか。ならば犯人は意外と近くにいるのかもしれない。
そして、“我々”と名乗ったことから犯人が複数犯であることも確認できた。
その直後にもう一人の犯人にたしなめられていたことから、その言はこちらのミスリードを誘うものではないはずだ。
犯人の横槍によってスイッチがOFFになった俺の頭は落ち着きを取り戻し、その思考は冴えに冴えていた。

「ふっ、らしくなってきたじゃないか」

こんな状況だと言うのに、恐怖は微塵も感じない。犯人がどこか間抜けっぽいのもその原因の一つだろう。

『お待たせしたわね』
『ちょっと、口調』
『あ……ま、待たせたな』

な? 間抜けっぽいだろ?
あと、今の口調からして犯人のうち少なくとも一人は女だな。いや、オカマの線もあるけどさ。
沙織は犯人を“綿密な計画を立てる”と評したが、これなら案外どうにかなるんじゃないかと思うんだ。

「おまえらの望みはなんだ! こんなことをして何が望みだ!」

ここぞとばかりに強気に出る俺。
少しくらいは沙織に頼りになるところも見せたいしね。

373 ◆5yGS6snSLSFg [sage saga] 2011/05/20(金) 21:09:34.15 ID:D8fOFD+Io
『君たちには、いや、実際に参加するのは君だけだがね、高坂京介君。君にはあるゲームに挑戦してもらう』

俺の名前を知っている? やはり沙織の推理通り、犯人はこ俺たちの素性についてある程度の知識を持っているようだ。
同時に、俺と沙織が選ばれたのには何かしらの意図があることになる。

「……ゲームだと?」
『そう、ゲームだ。なに、難しいことではない。君と共に天上への扉を開くに相応しい人物は誰なのか……君自身に選んでもらうのだよ。それが終われば君たちは解放しよう』
「天井への……扉?」

屋根裏的な?

『違う! 天の上と書いて天上だ!』

何キレてんだよ。
それに、えらく分かりにくい言い回ししやがって。おまえは黒猫か。

『こほん。……では、そのゲームを始める前にまずやってもらいたいことがある』
「な、なんだよ」
『……ふ、服を着なさい』
「げっ!? 忘れてた!」


――――――――

「おい、準備できたぞ。早くゲームとやらの説明をしろ」

そそくさと着替えを終え、わざと居丈高な態度を取る。
別に誰かの真似をしているわけじゃないぞ。
俺がいつまでも不安がっていたら沙織までも不安になってしまうだろう。ゲームとやらに参加するのは俺だけだと言うのだから、せめてその俺が不遜に振る舞うことによって沙織を不安がらせないようにと考えたのだ。
だから、俺がこんな態度を取るのはあくまでもそういう理由からで、パンイチでかっこつけてたのが恥ずかしくて誤魔化しているわけじゃあない、ということを理解してほしい。

「京介氏……」
「心配するな沙織。どんな無理難題がこようとおまえだけは守って見せるさ」
「……はい。せっ……いえ……私も京介さんを信じています」

ふっ、決まったね。こりゃあ沙織も惚れちまったかもしれねえな。

『……………ふん、その態度がどこまで続くか見物だな。さっさとゲームの内容を発表させてもらうぞ』

俺たちの芝居じみたやりとりが気にくわなかったのか、いきなり不機嫌な態度になる犯人。
意趣返しってわけじゃないが、少しだけ犯人にやりかえすことができた気がして少しすっとしたぜ。

『ふふふ、ルールは簡単だ。君は“ある順番”で人物の名を告げていくだけでいい』
「ある順番?」
『そうだ。今から挙げる人物を“君が君自身の人生に必要だと思う順番”に並べ替えてその順位を下から発表してもらう。どうだ? 簡単だろう?』

なんだ? “俺の人生に必要だと思った順番”って。

「おい、“必要だと思った順番”ってどういう意味だ?」
『チッ……察し悪いなぁ。そのまんまの意味』

俺が問い返すと、さきほどまで喋っていた奴とは別の奴が口を挟んできた。
恐らく、最初に『我々』というワードを口にしてしまうことで、複数犯であるということを俺たちに悟らせてしまい窘められた方の犯人だろう。

「だから、そのまんまの意味ってなんだよ。そもそも、どういう基準で選べってんだよ」

俺がさらに詰め寄ると、犯人はイライラを爆発させた。

『そんなのはあんたが勝手に決めなさいよ! せっかくこっちは一位に選ばれた人間を祝福してやろうって決めたのに!』

……なんだろう。この、胸に広がる懐かしい苛立ちは。
目を閉じれば、まるで誰かの顔が目の前に浮かんでくるようじゃないか。
オラ、こいつと話してるとなんだかイライラしてくるぞ。
ともあれ、今の犯人との会話は俺に、“必要だと思う順番”考える上での重要なヒントをもたらしてくれた。
深呼吸をして軽く気分を落ち着けてから、俺はこう切り出した。

「一位になったやつは祝福されるって言ったな? そりゃ、どういう意味だ?」
『あっ』
『……まったく、あなたはひっこんでなさいな』
『ぐぬぬ』

露骨な、あっ。これほどわかりやすい奴もそういないだろう。
そして、またしても相方らしき人物に窘められている。
これ以降、便宜的に怒られた方の犯人を犯人A、窘めた方の犯人を犯人Bと呼ぶことにする。
どうでもいいけど、こいつらのやりとりって、どっかで聞いたような気がするんだよなあ。それも身近なところで。
……まあ、今はそれは別にいい。それよりもはっきりさせておかねばならないことがある。

374 ◆5yGS6snSLSFg [sage saga] 2011/05/20(金) 21:10:54.47 ID:D8fOFD+Io
「祝福って一体何をされるんだよ」

ぎりっ、と拳を強く握り犯人たちに問いかける。
どこか間抜けっぽい印象を受けるとはいえ、人攫いをやっちまう程の連中だ。
祝福と言えば聞こえはいいが、実際何をされるかわかったもんじゃない。

『こほん。それは私から説明しよう。なあに、物騒な話じゃない。呼んで字のごとく、本当にただの祝福だよ。おめでとうと言ってあげてもいいし、関わるなと言われればもう君たちの前に現れることもしない。君と君が選んだ人物には手を出さないと誓おう』
「その言葉、本当なんだな?」

犯人の意思を再確認する。こんなことをしても大した意味なんてないのはわかっていたが、それでもせずにはいられなかった。
すると、なぜか犯人はどこか悲しげな声で『……ああ』と答えたのだった。

「じゃあ、選ばれなかった人間は?」

続いて質問をする。これが一番大事な質問だ。
俺に“選ばれた人間”が安全だとしても、その裏では“選ばれなかった人間”がいることになる。
数の問題ではないが、人数的に“選ばれた人間”よりも多いと予想される“選ばれなかった人間”の安全だけは絶対に確認しなければならない。

『安心したまえ。我々はそちらにも手を出したりしない。大事なのは君が“誰を選ぶか”なのだから』

犯人の言葉を信じるなら、これでこのゲームとやらで俺の周りの人間が傷つけられる心配はなくなった。
もちろん完全に信用はできないし、そもそも他に何ができるというような状況にもないのだが。

『ただ――』
「ん?」
『選ばれなかった人物の心が強くなかった場合、その人物身の安全は保障できかねる』
「なっ!? 話が違うじゃねえか! さっき手を出さないと言ったばかりだろ!」

当然のように抗議する俺。こんなことをして犯人の怒りを買うことにでもなったら一大事なのだが、体が勝手に反応してしまっていた。
だいたい、心が強くなかった場合ってなんなんだ。意味がわからねえぞ。

『我々は手をださんよ。全てはその人間自身が決めることだ』
「くっ……わけわからねえこと言いやがって」

くそっ、犯人の目的がさっぱりわからねえ。
俺にもそのまわりの人間にも手を出さない癖に身の安全は保障しないと言う。
一体どういうことなんだよ。

『あ、ちなみに』

俺が犯人の目的について頭を悩ませていると、犯人Aが声をかけてきた。

『ある人物に関してだけど、その人物が選ばれなかった場合、あんたの身の安全が保障できなくなるからそのつもりで』
「おいちょっと待て! さらりと大事なこと言ってんじゃねえよ!」

なんだそりゃ!?
これって、ひょっとしてそのある人物とやらを無事に当てるゲームなの!?
俺の突っ込みはむなしく響くばかりで犯人側からの返事はない。
心臓はバクバクだ。

「黙ってないで説明しろって!」
『うっさいなあ。つまり、Nice boat.ってことだって』
「なんだよナイスボートって!?」

“いいボート”ってなんですか!? 俺は湖に遊覧にでも出掛けるの!?

『それでは、ゲームを始めよう』

俺の質問を完全に無視して進行しようとする犯人B。

「待ってくれ! せめてナイスボートについての説明を――」
『却下』

追いすがる俺を犯人Aがばっさりと切り捨てる。そのままがっくりと項垂れる俺。
こうして、少々――いや、かなり理不尽ではあるがようやくゲームが開始されたのだった。


―――――――――――――

『では、君に選ばれる候補となる人物の名を教えてあげよう』
「……」

一体どんな奴らが候補に挙げられるのだろうか。
家族か、クラスメイトか、それとも得難い友人達か……。
いずれにせよ、俺はそいつらに優劣をつけることを強要されることになる。
俺の人生においてあいつはこいつよりも必要ない。そんな判断を下さねばならない。
今までそんなこと考えたこともないし、できることなら考えたくもないことだった。

『一人目は高坂桐乃――君の妹だ』
「……っ! てめえ、桐乃は無事なんだろうな!?」

375 ◆5yGS6snSLSFg [sage saga] 2011/05/20(金) 21:12:50.49 ID:D8fOFD+Io
淡々と妹の名を告げる犯人B。
その言葉を聞いて、頭に血が上っていくのがわかった。気が付けば俺は拳を痛いほど握りしめている。

『……何ニヤついているの』

あ? 誰がニヤついてるって!? 今、俺はどこからどう見てもキレて……

『えっ!? だ、誰もニヤついてなんかないってば!』
「は?」

聞こえてきたのは犯人Aの素っ頓狂な返事。

『……まあ、いいわ』
「おい、今のはなんだ。それと、桐乃は無事なのか?」
『……さあ、次の人物だ』
「待て、話を逸らすな!」

俺にとっては大事なことなんだよ!

『も、もう。しつこいってば! 元気にしてるから大丈夫!』

犯人Aが早口でまくしたてる。
くそっ。今はこいつの言葉を信用するしかないのか。

『さて、二人目だが……黒猫、と言えばわかるかな?』
「黒猫だと!?」

沙織は俺と一緒に拘束され、桐乃の名前が出てきた以上、黒猫の名前が出て来ることは半ば必然と言えた。
まさか、いつもの4人組がターゲットにされることになるなんて……。

「念のために聞いておくが、あいつも無事なんだろうな?」

できるだけトーンを低くした恫喝するような声色で尋ね、何かあればただじゃすまさない――ということを言外に匂わせる。
こちらが圧倒的に不利な立場なのを全く意に介さない喋り方だ。
こちらはまだ犯人の目星すらついていないというのに。

だけど、そう言わずにはいられなかった。かっこつけたかったとか、正義感だとか、そういう理由じゃない。
みんなが無事に元の生活に戻る。そのために、今するべき最大限の努力をするべき。そう思った。

『……っふ、無事さ。今のところはね』
『ニヤけんなっての』
「……」

どうやら犯人Bもニヤついているらしい。犯人の目には、こんな状況で強がる俺が滑稽に映っているのかも知れない。
いや、実際のところかなり滑稽だろう。だが、そんなことはどうでもいい。
大事なのは、みんな無事に元の生活に帰ることなのだから。

『これから名前を読み上げるたびに“無事なのか”と確認されるのは面倒だ。だから先に断っておく。先も言ったが、我々は君たちに以外には手を出していないしこれからも出すつもりはない。これを理解しておいてくれ』

どうやら、俺の行動はお見通しらしかった。
こう言われなければ、俺は確実に名前が挙がる毎にその人物の無事を確認したことだろう。

『では一気に名前を挙げてしまおうか。ふふ、しっかりと魂に刻み込みたまえ』

厨二病にかかっているような電波がかった台詞。
おまえはどこの黒猫だ、と思わず突っ込みたくなる。

『先の2名と、槇島沙織、田村麻奈実、新垣あやせ、そして……』

ここまで一息で喋った犯人は、なぜかそこで名前の列挙をストップさせた。

『……どうする? 入れておく?』
『あ~、どうしよ。この人たちって脈あったっけ?』
『私に言われてもわかるわけないでしょう』
『じゃあ、一応入れといたらいいんじゃん? どうせ名前借りるだけだし』
『それもそうね』

謎のやりとりをする犯人Aと犯人B。
何を入れるって? 脈がある? 
……はっ!? まさか、脈がない=死んでるってことじゃないだろうな!?

「おい! おまえら――」
『ああ、さっきの脈云々は生死に関係ないから安心なさい』

どうやら、俺の思考回路は本当に筒抜けのようだった。

376 ◆5yGS6snSLSFg [sage saga] 2011/05/20(金) 21:14:20.33 ID:D8fOFD+Io
『では、君に選んでもらう人物を改めて発表しよう。高坂桐乃、黒猫、槇島沙織、田村麻奈実、新垣あやせ、来栖加奈子、ブリジット=エヴァンス、赤城瀬菜、伊織・F・刹那――以上の人物を君の人生に必要な順に並べ替えてくれ』
「……多いな、おい」
『あんたが優柔不断なのが悪いんじゃん』
「なんで俺のせいになるんだよ」

その人物をチョイスしたのはおまえらだろうが。

『では、君にしばしの猶予を与えよう。よく考え――』
「その必要はないぜ」
『えっ?』
「俺の心はもう決まってる」
『う、嘘……』
「嘘じゃねえ。確かに、以前までの俺なら迷って決められなかったさ。だけどな、俺は誰かさん達に教えられたんだよ」

だから、あいつらを見習ってみようと思う。
自分の欲しい物を全て手に入れようとして何が悪い。あっちを立てればこっちが立たないなんて知ったことか。

「よく聞けよ! 俺の人生にはなあ…………今名前が挙がった人間全員が必要だ!!」
『『「はあ!?」』』

驚きを隠せない犯人たち。なぜか沙織まで驚いている。

「その中の一人でも欠けたら俺の人生はつまんなくなっちまう。だから、俺はそんなのは認めねえ。何かを諦めるなんてことは絶対にしねえ! いいか! 俺はな、優柔不断なんじゃなくて強欲なんだよ!! わかったか! ふははははは!」
『『「…………」』』

絶句する犯人たちと他一名。
無茶苦茶な言い草なのはわかっているが、これがあいつらと一緒にいて得ることができた俺の答えだった。

『はあ……何ソレ。まあ、あんたらしいけど。あ~あ、結局失敗じゃん』
『優柔不断も言い様ね。実にあなたらしいわ』
「まったくです。ですが、そこが京介氏のいいところ――と言えなくもないでござる」
「えっ? おまえら、何言って……」

がちゃり。

「えっ?」

混乱する俺に追い打ちをかけるように、既に手錠が嵌められた方の腕とは反対側の腕に手錠がはめられる。
そちらを見てみれば、そこには“手錠をはめていない”沙織が立っていた。

「えっ? ……ええっ!?」

事態の展開に頭がついていかない。
どういうこと!? いつの間に沙織は鍵を手に入れたの!?

「その顔。まだわかっておられないようですな」

こんな口ωをして、にやーと笑う沙織。

「ど、どういうことだ?」
「ふふふ。全ては狂言。あるいは幻想。……要するにお芝居でござる」
「はあ!? 今までの全部がか!?」
「はい! いやあ、京介氏も中々かっこよかったでござるよ。“心配するな沙織。どんな無理難題がこようとおまえだけは守って見せるさ”(キリッ」
「うわああああ! 殺せ、いっそ殺せえええ!」

いつぞやの瀬菜のように発狂しだす俺。
ようやくあの時のあいつの気持ちがわかったよ。そりゃ悶絶もするわ。

「はっ!? じゃあ、まさか犯人ってのは……」
「きりりん氏と黒猫氏です」
「うおおおおおおおおお!」

この世に神はいないのか! このままじゃ恥ずかしさで死んじゃう!

「おまえら、いったい何の恨みがあってこんなことをしたんだ!」

恨みを晴らしたいなら殴るとかで肉体的に晴らしてくれ! 精神的に追い詰めるのは止めろ!

377 ◆5yGS6snSLSFg [sage saga] 2011/05/20(金) 21:16:10.14 ID:D8fOFD+Io
「いやいや、何も京介氏に恨みがあってこんなことをしたわけではありませぬ。……そりゃあ、いつまでもはっきりしない京介氏をちょっとくらいは恨んだりしたこともないわけではないですが……。あ、ちなみに黒猫氏の口調の先生はフェイトさんという方だそうですぞ」

あの人も一枚噛んでたのかよ!
……よくよく考えればこの茶番に気付くべきヒントはそこかしこにちりばめられていた。
犯人の片方は時々ギャルっぽい口調で喋ったりするし、もう一人は厨二病を患ってるし、犯人たちのやりとりは桐乃と黒猫のやりとりそのまんまだし、その上沙織は何故かやたらと落ち着いてるし……。
極めつけはこれだ。この部屋の出入り口には“内側から”ドアを隠すように障害物が雑然と置かれている。
これは、ドアを閉めた後に“室内の”人間が障害物を積み上げたことを意味する。
そして、室内には俺と沙織だけ。答えはもう明白だ。

そしてこれは今気が付いたんだが、ちらりと見えるこのドアを目を細めてよく見てみると、蝶番が“室内側”についている。つまりこのドアは室内側に向かって開くドアなのだ。
だから、ドアを閉める前に積み上げてからドアを閉めるなんて方法はとれなくなっている。これも“沙織共犯説”を裏付ける証拠といえるだろう。

「うふふ。ごめんなさいね、京介さん」

気が付けば、沙織は眼鏡を取り髪を下ろし、沙織・バジーナから槇島沙織へと変身していた。

「これは、私からのお詫びの印です」

そう言って沙織は、頬に軽く触れるだけのキスをした。

「なっ!?」
『ああっ! あんた今何した!?』
『沙織! あれほど抜け駆けはなしといったでしょう!?』
「あら、これも“当たりくじ”を引いた人間の役得というものですわ。そう。言わば私は“選ばれた”のですから」
『『ムキー!』』

勝ちほこる沙織と、悔しがる桐乃&黒猫。実に珍しい構図だ。

「あ、京介さんはもう少しそうして反省してて下さいね」

沙織はそう言い残すと、がらがらと障害物を排除しそのまま部屋を出て行った。
沙織の不意打ちによって思考停止状態に追い込まれていた俺は、沙織を呼び止めることもできず、静かに沙織を見送った。

「……いったい俺に何を反省しろってんだ。ちくしょおおおお! 誰か助けてくれええええええ!」

ようやく意識を取り戻した俺は、覚えのない罪で罰せられる自身の身の不運を嘆くしかなかった。




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