無題:11スレ目119


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119 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2011/06/22(水) 09:22:58.36 ID:XAGqdI4eP

 PiPiPiPi PiPiPiPi

「はい、沙織です」

 とある日の夕方。学校から出された課題も終わり一息ついていたころ。私にその連絡が入ったのはそんな時でした。

『沙織お嬢様、鈴木でございます』
「鈴木さん? どうかなさいましたか?」

 室内の子機の電話に出ると、相手は鈴木さんでした。
 鈴木さんというのは、私の家の所謂執事をされている方です。
 普段学業や趣味、家庭の事情などで家を空け気味にしている私に代わって、家の管理をしてくださるとても頼りになる方なんですよ。
 鈴木さんはとても優秀な方で、私が何もしなくてもほとんどのことを問題なく処理されてしまわれるんです。後で自分で処理しようと思っていた案件もいつの間にか処理されていて、つい手持ち無沙汰になることもしばしば。
 そんな鈴木さんが私に直接連絡してくるなんて珍しい。何か問題でもあったのでしょうか?

『連絡差し上げたのは他でもございません。『観測』の結果についてでございます』
「――何か変わったことでも?」

 『観測』というのは、槙島家に代々伝わる、所謂お役目のようなものです。
 実は世界には不思議なチカラを持つ人が数多く存在します。多くの方はそのチカラを持っていてもそれに気付かず、それを振るうことはありません。
 しかし時折そのチカラを自覚し、それを生業とするのがTVや雑誌に載るような霊能力者や占い師と言った方々になります。とはいえ、そういった職業の方でも実際にそういう力をもった方はせいぜい数%。本物は極々少数だったりします。
 仮に自覚していないとしても、そういったチカラを潜在的に持っているとそれだけで回りに影響を及ぼしたり、本人の知らぬ間にそれを発揮して事業などで成功を収めたりすることがあります。それは持つチカラが強いほど顕著になりがちです。
 少し話がそれましたが、『観測』というのはそういった方々をこちらで把握し、そのチカラを悪い方向へと使わないように管理することが目的です。
 しかしこの『観測』もなかなか難しかったりするんですのよ……。先ほどそういった方々を把握するといいましたが、これがまた厄介だったりするんです。
 チカラというのは不思議なもので、常に回りや自身に影響を与えているのにも関わらず、ただ漠然と見るだけでは発見することもできません。
 そういったチカラを持つことを疑い、注視して、慎重に観察することで初めてそのチカラを把握することができます。
 一度把握してしまえば、槙島家に伝わる専用の機器で観測できるようになるのですが……中々上手くいくことはありませんね。難しいものです。

『はい。つい最近、こちらである人物を観察していたところ、その方がチカラを持っていることが判明いたしました』
「あら、ほんとうですか?新しくチカラをもっている方が発見されるのは久しぶりですね」
『はい。ですがその方はチカラを自覚しているわけではないようです』
「そのほうがいいでしょう。チカラを自覚することが幸せに繋がるとは限りませんから」
『そうでございますね』

 自身のチカラを自覚してしまったが為に破滅した人もなかにはいました。
 まあ、そういった方は大体がよくない目的でチカラを使おうとしたがためでしたが。

「それで、そのチカラを持ったかたというのは?」
『沙織お嬢様のご友人であられます、桐乃様でございます』


120 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2011/06/22(水) 09:24:29.23 ID:XAGqdI4eP
 その答えに、私はやっぱりですかという思いに至りました。
 きりりんさんの活躍は本当に素晴らしいものばかりです。学業優秀、容姿端麗、運動神経も抜群。モデルでの仕事の成功や陸上での成績を残されていること。それらがきりりんさんの努力の賜物であることは知っていますが、それでもそういった結果がチカラによるものもあるんじゃないかとは思っていましたし。ああ、もちろんそのチカラも立派なきりりんさんのもつものの一つなのですから、それに対してなんら恥じるものはありませんのですけど。チカラもただじゃありません。努力したからこそ、そのチカラがいい方向へと働いた結果なんですから。

『ですが、その桐乃様のチカラに関してどうも今までとは違った結果が出たために、色々とこちらで他にも調べてみましたところ……』
「違った結果?」
『はい。その観測結果は後ほどお伝えしますが、桐乃様以外にもチカラをもつ方を発見いたしました』
「本当ですか?」
『はいにございます。桐乃様のご友人であられます、五更様御姉妹方。新垣様、来栖様、御鏡様、赤城御兄妹様……』
「ちょ、ちょっと待ってください! 本当にそんなに沢山の方がチカラを持っているんですか!?」

 流石に私も取り乱さずをえませんでした。それほどまでにチカラをもつ方というのは珍しいんです。こんなにも沢山のチカラを持つ方々が一同に会しているなんて前代未聞です。

『はいにございます。こちらといたしましても信じがたい結果ではございますが、全て真実にございます』
「……そうですか。ですがそれにしてはおかしくありませんか?これだけチカラをもった人が一箇所に集中しているのに何事もないというのは考えられません」

 先ほども言いましたが、チカラは無意識のうちに周りにも影響を与えます。それが強ければ強いほど、集まれば集まるほど何かしらの怪奇現象となってそれが現れるのが普通です。怪談話や幽霊の話などはこういったもののせいであることがほとんどだったりもします。ですがこの辺りではそういった話は一切聞いたことがありません。どういうことでしょうか。

「……もしかして、先ほどおっしゃった今までと違う結果というのが?」
『さすが沙織お嬢様。その通りにございます。先ほどは伝え切れませんでしたが、先ほどの名前に更に田村様、伊織様の名前を付け加えさせていただきます』
「……まるでチカラのバーゲンセールのようですわ」
『心中お察し致します』

 なんなのでしょうこれは。これではまるで何かによってたかってるようじゃ――――まさか

「きりりんさん」
『左様です。桐乃様のチカラが、全ての答えにございます』
「詳しい説明を」

 流石にこの規模の問題は放っておくには問題があります。状況の把握を早急にしないといけません。

『了解いたしました。まず、桐乃様のチカラが回りに多大な影響を与えてることはまず間違いないでしょう』
「そうですわね」
『恐らくですが、桐乃様のチカラにあてられて周りの方々もチカラに目覚めたのでは、とこちらでは推察しております』
「きりりんさんのチカラに?」
『はい。桐乃様のチカラはこちらで観測している中でもかなり大きなものになります。加えて、ご自身もそうですが、回りに与える影響が他を比にしないほど強いこともわかっています』
「それほどに強い影響が……」
『更に追加いたしますと、桐乃様は強いチカラを持つ人を本能的に察知、引き寄せているのかもしれません』
「どういうことですか?」
『……桐乃様のご友人に、ハグリィ一族とエヴァンス一族の御息女を確認いしました』
「な……っ!?」

121 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2011/06/22(水) 09:25:46.72 ID:XAGqdI4eP
 あの、ハグリィ一族とエヴァンス一族の!?
 ハグリィとエヴァンス。この2家は代々強いチカラをもつことでこちらでも常に観測を続けている一族です。
 強いチカラを持ってはいるものの、自覚をしたことは今までに確認はしていないのですが、そのチカラの程はよく知っています。決して無視できないほどの影響力を持っているのは確か。まさかそんな所にまで繋がりを持っていたなんて……。

「本当に、ありえないほどのチカラが一箇所に集中しているのですね……」
『…………』
「それで、それほどにまで集中したチカラが何も事件を起こしていないことと、きりりんさんの何の関係が?」
『…………』
「鈴木さん?」

 何かを言いよどむように黙ってしまった鈴木さんに、私は嫌な予感を感じ取っていました。

『事件は……怪奇は今なお起き続けています。世界に落とされた一つの矛盾。それを、世界からの修正を受けないように他のチカラを持つ方々から得続けることによって支えている。それが桐乃様のチカラの正体です』
「矛盾?」
『そうでございます。私としてもこれは信じられないことではございました。そして、沙織お嬢様に伝えるべきか否か、それを迷うほど残酷な真実が隠されていたのでございます』
「残酷な、真実?」

 気がつけば喉がからからに渇いてるのに気付きました。まるでこれから伝えられることを予見しているかのように、背筋に冷たい汗が流れます。

『――今からおよそ五年前、三人の子供が事故にあっております』
「鈴木さん?」

 突然関係ない話をしだした鈴木さんに私は困惑しましたが、鈴木さんはそれを知ってか知らずか話を続けます。

『男子一人に女子二人。当時中学生の男子女子一人ずつに小学校4年生の女子が一人。事件はひき逃げ。犯人はすぐに捕まり、処罰を受けております』
「……それで、その子供は?」
『確認いたしましたところ、女子二人は無事だったようです。命の別状はなく、怪我も擦り傷程度にすんでいたようです。しかし、その場にいた男子一人は――女子二人をかばったのでしょう。怪我が酷く、懸命の処置もむなしく他界されております』
「――それが、何か?」

 聞いてはいけない。心の中の私がそう叫んでいるのに、私は子機から耳を離すことが出来ません。

「その時事故にあわれた子供のお名前は――」

 そして私は

「田村麻奈実様。高坂桐乃様。そして――」

 どこまでも残酷な真実を

「亡くなった男の子のお名前は……高坂京介様にございます』

 世界から突きつけられた。


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