とあるアキバの休日:11スレ目690

690 名前: ◆36m41V4qpU[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 02:17:41.45 ID:rzqpG+Kh0 [1/8]

私はゲーム研究会の部長である三浦絃之介。
年齢は秘密だがもうお酒も飲めるお年頃だ。

今日は私の後輩にして忠実な後輩である真壁と巨乳メガネっ子で腐女子なのが
玉にきずな美少女赤城瀬菜を連れてアキバに繰り出している。

名目上は部で次に作るゲームの参考にする為の資料集めと言う事だが実際は
真壁が赤城とデートしたいが誘う勇気がないので協力してくれと言われて
協力してるのに近い。
神聖な部活動を色恋に利用しようなど不届き千万だとは思うがまぁ高坂という
これまた不届き者の例もあるし真壁には世話にもなったので出来る事なら
やってやろうと言う親心なのである。

三人でアキバに集合し頃合いを見計らって2人を残し今はゲーム屋で面白いゲームはない
か物色し終わった後外に出た時私は少し懐かしさが蘇ってきた。
そう言えばここら辺が高坂に初めて会った場所だったなと…。

瀕死の妹のお願いで早朝からエロゲー買う為に列に並び私の愛車を借りて
ここから千葉まで帰った猛者、私もエロゲーに賭ける情熱は誰にも負けないつもり
だがヤツだけは別格だった。

…強敵と書いて友、好敵手と書いて兄弟。

そういえば高坂は五更に振られたらしいが元気でやってるのか
一度は同じ釜の飯を食った仲だから多少気にはしている。

もう夏は段々とその姿を消し始め秋がそこまでやって来ていた。
天気はあいにく曇りだがこの季節の黄昏が好きで今の私の
気持ちと何となくとても似合ってると思うのはやはり感傷か…。
さてそんな感慨に耽っていると目の前で巨大な影が胎動している
のが目に入った。

「熊か?」


691 名前: ◆36m41V4qpU[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 02:21:17.74 ID:rzqpG+Kh0 [2/8]

秋葉原に熊が、狸が東京に闊歩してるのはよく聞く話だが
まさか熊が秋葉原に出没するとは…私の恐怖と好奇心がせめぎ合う。
結局いつも好奇心が勝って痛い目を見るのが私の人生でもあるのだが…クソゲーと
呼ばれるものやエロゲーの魅力に取り憑かれたのも好奇心だし高坂に私の愛車を
貸したのも好奇心からだし、そうやって好奇心に負け続けてきた自分は嫌いじゃない。

そうやって熊に接近すると「あsdfghjh」と言ううめき声
と同時に熊が動き出した「ぎゃああああ、熊…?じゃないのか」
巨大な影は幸か不幸か熊ではなく人のそれだった。
しかし相当のデカさだしこの巨人が何故うずくまってるか確めたい
好奇心はまだ終わってなかった。
取り合えず私はその巨人にコンタクトを取ってみる

「あんた、大丈夫か?」

「熊とは随分な挨拶ですのね」

あれ巨人が可愛らしい声で返事した。

「女…な…のか」「悪いですの?」

「いや、別に悪くはないが天下の公道で何やってるかと思ってな」

巨人もとい女は何か言おうとしたが咆哮でよく聞き取れなかった。
よく見れば女の周りは荷物らしきものが散乱し女は右手を押さえたまま尻餅をついて
呆然としている。

「ちょっと見せてみろ」

私は素早く女の荷物を集めると女のバックらしきものに入れて
女の手を握り観察した。暗くて正確には分からないがどうやら
転んで指先をすりむいたか切った程度だろう。
しかし背丈もそうだが手もなかなか大きいな…って感心してる場合ではない。

私はハンカチを取り出すと傷口には触れない様にして
切っている指の根本をしっかりと縛った。


692 名前: ◆36m41V4qpU[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 02:24:08.30 ID:rzqpG+Kh0 [3/8]

手を握ったままでいると女が「きゃ」とまた図体に似合わない声を出す

「ちょ、ちょ変な意味じゃないから」

私は悪くないのに狼狽してると、さきほどの鉛色の空から雨粒が降ってきて
私や女の髪を濡らし始めた。
雨のお陰で幾分冷静さを取り戻した私は鞄からお気に入りのエロゲー

〝もうお兄ちゃんのお嫁さんに絶対なるんだもん3〟

の特典だった傘を広げると女を近くに有ったベンチに座らせて痛めてない方の手に握らせた。

「少し待ってて、ちょっと薬草買ってくっから」と

私の渾身のギャグを笑顔で言い残すと女が何か言ってる言葉を無視して速攻でコンビニ
に走りミネラルウォターと絆創膏を買って女の元に戻ってきた。
女の指を水で流して清潔にした後に絆創膏を2重に強めに張って
血が漏れてない事を確認してやっと落ち着く事が出来た。

「あ、ありがとう御座います」

「ああああ、べべべつ」

私はまたもや狼狽してしまった。だって熊か巨人族だと思ってた女が超美少女だったん
だもん、
何か身勝手な予感や希望抱いたって人助けしたんだから許して頂きたい。
も、もちろん相手が巨人族でもちゃんと助けるつもりだったんだからね!

「久々に買い物に一人でお買い物に来てたんですの」

で、ですの?デスノ?

「そうしたら転んでしまって」

「そ、それは災難でしたね、お嬢さん、キリ」

「…さきほどは熊と聞こえた気がしましたのですけど」

「いやぁ…お困(熊)りですかと言ったつもりなんですがねははははは」


693 名前: ◆36m41V4qpU[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 02:26:30.21 ID:rzqpG+Kh0 [4/8]

”しら~”と言う声が聞こえてきそうな気まずい沈黙。
美少女のお嬢さんは目をしかめて私の顔を見ていたが
ぷぷぷ…あははははと豪快に笑い出した。

「大丈夫です。口の悪い友人のお陰でなれてますから」と微笑んだ。
ヤバイ私は天使を見てしまったのかもしれない。

次に何を言うか思案してると…
”もうお兄ちゃんのお嫁さんに絶対なるんだもん3”の着信音が

『もうお兄ちゃん!あの子とあたしとどっちが大事なの!』
とか
『お兄ちゃん、あの子と別れてくれないきゃ絶対ヤダ、ヤダ、ヤダ』

とか…目の前のお嬢さんは虚空は見ながらきょとんとしてしまった。

別にエロゲーをやる事を恥じとは思ったことはないが
流石に同じアキバの住人でも趣味が違えば引くのはしかたがない。

「すいみません、ちょっと」と言って電話に出る。

『部長何やってるんですかぁ!?部の資料集めなんだから
部長が居てくれないと困りますよぉ』と瀬菜の声。

『部長…助けてください、赤城さん僕と居ても絶対に”男女”の
話にはならないんですよ(泣)』

さらに後ろから『真壁先輩は部長とセットじゃないと萌えません』
と言う死刑宣告に等しい瀬菜の声が…。
2人のいる場所を聞いて電話を切る…真壁…残念だったな。

雨は更に降りしきり段々とつよくなってきた。

「ごめんなさい、人を待たせてるので」と私は言う。

もしさきほどのこの子の呆気に取られた様な顔を見なければ
もしかしたら違う台詞を言ってたかも知れないが。

「え?そ、そうですか…」残念そうに見てるのは気のせいだよな。

「傘は差し上げます。傷口が濡れたら悪化するだろうし。
気を付けて帰ってください」と言い残すと走り出した。

「待ってください…」と言う言葉にも振り返らない。

「絶対にお返しするからまた」なんて幻聴聞こえちゃって
我ながら…まだまだ修行が足りないと反省した。


694 名前: ◆36m41V4qpU[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 02:28:33.07 ID:rzqpG+Kh0 [5/8]

「ハックション」

私は大きなくしゃみをした。

「部長大丈夫ですか?」とこちらも元気無さそうな真壁が私を
心配して声をかける。

「ああ…ただの風邪だよ」頭は熱っぽいし悪寒もするし胸の鼓動は
早くなり、あの美少女の事ばかり考えてる。

これは風邪だ風邪なんだ。しかし風邪薬を飲んで2,3日しても
最後の症状だけは治まらなかった。

そんなある日『お兄ちゃん、ずっとあたしのものなんだからね!』
と言う着信音…電話の相手は五更だった。

「おう、久しぶりだな…色々元気か?」

『はい…あの部長、あの今日の午後って時間ありますか?』

「おいおい、そんな事言ってたら高坂が泣くぞ?」

『……………煉獄の炎に焼かれろ、下郎』

「おいおい、オレも泣くぞ」すでに泣いちゃってたけどね!

そんなわけで五更に呼び出された場所は偶然にもあのベンチの目の前だった。
五更は新しい学校の制服で隣はグルグルメガネの女の子が立ってた。
確か誰だっけ…確かバジーナ大尉か。私は記憶を探るが五更と同程度の痛い奴という
認識しか浮かばなかった。

2人は私の顔をジロジロ見て何やらヒソヒソ話を始めた。
かなり居心地が悪い…多分悪口言ってるな。

そしておもむろに
『お兄ちゃん、好きって言って!わたしは何度でも言えるよ!』
とまた着信音。
この前の事があったので流石に少し恥ずかしかったが

「五更、また何かの儀式か?」
五更は何も答えずに大尉の顔を見て何度か頷き合ってた。


695 名前: ◆36m41V4qpU[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 02:30:14.66 ID:rzqpG+Kh0 [6/8]

五更は無言で近くにあるマックに…大尉も続いたので
私はしょうがなく続いた。
3人ともしばらく無言だった。

「五更、新しい学校では上手くやってるか?」
別に先輩面するつもりも無く私は遠く離れた仲間の事が
多少気になってたので聞いてみる。

「はい…」

「そうか。オレは学校が違ってもおまえは
うちの部員だと思ってるからな。だから気が向いたらいつでも
遊びに来いよ。まぁオレの兄弟にもそう言ってあるしな」

「はい…」

五更はこういうヤツなので私はそれ以上
何も言わなかったが取り合えず伝えられて良かった。
するとまたもやおもむろに

「では部長…失礼します」「く、黒猫氏…」と初めて大尉が
口を聞いたかと思うと

「ク、ククク…せいぜい頑張る事ね、お嬢さん」
と言って消えていってしまった。

また沈黙…五更が何を考えてるのか未だによく分からない。
そして大尉が何を考えてるかもさっぱり分からない。

まぁ伊達に酒が飲める年ではない私は年上の男性が年下の女の子に
接する場合どんな時にも使える台詞を抜群に活用して

「えっと…あんたはガンダム好きだったんだよな?」
と…これが嵐の前の静けさを打ち消す火蓋だった。

「そ、そうでござるな。一言でガンダムと言ってもガンダム
の何が好きなのか?その定義によって変わってるくると思いますぞ」

あ~典型的なオタク子だな、まぁ多少気が楽になった
私は特に意識せずに話し始めたのだが…


696 名前: ◆36m41V4qpU[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 02:34:03.85 ID:rzqpG+Kh0 [7/8]

「ちょっと部長さん、それは偏見ですぞ、訂正して貰わねば!」

「オレの中のガンダムは"V"までなんだよ!まぁもちろん"UC"を
認めるのは吝かではないが…ここは譲れない、そして最強は"V2AB"なのも譲れない!」

まるで2ちゃんだな。

「そもそもバジーナってシャアはファーストまでだろ!アズナブル大佐にしろよ、そこは」
これは禁句だった…大尉は下を向いて震えだした。

あ、ヤバイ私は勢い余って年下の子を泣かしたのかと思ったのだが
大尉のグルグルメガネがいつのまにかレイバンのサングラスに変わっていた。

「おい、貴様いい加減にしろよ!」「ひょ?」

これからずっと大尉のターンだった…恐い、恐い。
まぁ私は意見の相違はあったがここまで好きなモノに情熱のある
大尉に多少親密さを覚えていた。

「いやはや面目ありません…。黒猫氏達とは仲は良いのですが
ジャンルが微妙にズレておりまして、啓蒙しておりますから
きっと立派なガノタにして見せますぞ」

私は口の形をωにした大尉を見ていると風邪の事はすっかり忘れてた。
時間を忘れて話し込んでいたが、相手は女の子だし
あんまり遅くなると不味いと思い

「今日はあんたと話せて楽しかったぜ」と私が言うと大尉はモジモジし始めた。

「ま、まさかまた変身したりしないよな?」私は冗談で言ったのだが

「部長さん…いきなり失礼なお願いだとは思うのでござるがもし良ければメガネ外して
貰っても?」

私はそんなに視力がよくないのでメガネを外すと近距離でも
相手の像がぼやけてしまう。まぁ別にメガネ詐欺でもないだろうと
軽い気持ちで言われた通りにやると…。


697 名前: ◆36m41V4qpU[sage] 投稿日:2011/09/25(日) 02:36:40.24 ID:rzqpG+Kh0 [8/8]

「忍法口寄せの術ですの」と芝居じみた声が聞こえた、デスノ?
何をやってるのかよくは見えなかったがテーブルの上に何かを
置いてる事だけは分かった。

「もう大丈夫でござるですの、あ」

と言う声…何か意識は五里霧中
なのだが…いや半分は分かってるのだがどうしても大尉の今の
姿のせいで記憶に靄がかかる。

私がメガネをかけてテーブルの上を見ると傘とハンカチが置いてあった。

「あ、あんた?」

「えっと、まだ勇気がありません。ごめんなさい…でももし良ければお、お、お、お友達になって貰っても大丈夫でござるか?」

私は自分の方が恥ずかしくなってしまい「だ、大丈夫でござる」と口調がうつってしまう。


大尉は嬉しそうに、でも恥ずかしそうに「ニンニン」と私に笑いかけた。

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最終更新:2011年10月16日 05:06
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