無題:11スレ目924


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924 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/11/13(日) 06:42:22.31 ID:hMM60VVZo [2/15]

誰もいない公園のベンチで独り、俺は沈み行く夕陽に我が身を重ねて眺めていた。
これから一体どうしたらいいもんかね。
家に帰れば桐乃がいるし、かといって公園でこのまま夜を明かすわけにもいかねえだろ。
夏ならまだしも、十一月も中旬となれば下手すりゃ凍え死んじまうもんな。

桐乃があれ程までに激怒するとは思わなかったんだ。
俺の親切心がたまたま裏目に出ちまったと言えばそれまでなんだけど、
結局は桐乃の一方的な剣幕に押されて、仕方なくこの公園へ避難して来たってわけさ。
あのまま家に居たら今頃、俺は全殺しになっていてもおかしくはないかも。

何が原因だったのかって?

別に大したことじゃないんだ。
アルファ・オメガのコスプレで有名なブリジットが、今日は俺ん家に泊まることになったんだ。
親父さんの仕事の都合らしいけど、俺もはっきり言って詳しいことは知らねえんだよ。
初めはあやせが同じ事務所の先輩としてブリジットを預かろうとしたらしいんだが、
ブリジット大好きの桐乃があやせを言いくるめて、無理やり家に連れて来ちまったんだ。

大きなお友だちに熱狂的なファンがいるとはいえ、俺から見れば所詮はまだ子供さ。
今日も秋葉原でのコスプレショーをこなしてきたらしく、可哀想にすっかりお疲れのご様子だ。
純粋な気持ちで俺はブリジットを風呂に入れてやろうと思ったんだよ。

俺はブリジットが疲れているだろうと思っただけで、猥褻な気持ちなんかまったくなかったんだ。
大体、年端もいかない女の子に、そんな気持ちを抱くほど俺は変態じゃねえ。
それなのに、桐乃はてめえの兄貴をつかまえて、ロリコンの変態って抜かしやがったのさ。

まだ十歳のブリジットに、健全な高校生のこの俺が欲情するとでも思ってんのかね。
ブリジットだって桐乃が凄い剣幕で怒鳴るもんだから、可哀想に怯えていたじゃねえか。

925 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/11/13(日) 06:42:57.35 ID:hMM60VVZo [3/15]

どうして桐乃が激怒したかと言えば、こういうことなんだ。
俺がブリジットを脱衣所へ連れて行って、鼻歌まじりにブラウスとスカートを脱がしてやったんだ。
日本人の子供と比べれば、ブリジットは十歳にしては確かに発育は良かったさ。
しかし、やっぱり子供は子供なんだな。
俺が思ってたとおりブラじゃなくてキャミソールを着ていた。
キャミソールは後回しにして、先にパンツを脱がそうと俺が指を掛けたところで、
桐乃が血相を変えて脱衣所に飛び込んで来たんだ。

「なっ、あああ、あんた! ブ、ブリジットちゃんに何してくれちゃってるわけ!?」

「何って、見りゃ分かんだろ。ブリジットちゃんを風呂に入れてやろうとだな」

「あんたがロリコンだったのは知ってたけど、よりにもよってあたしのブリジットちゃんに――
 この家からすぐに出て行って! 二度と帰って来ないで! このロリコンの変態!」

よくもまぁ兄貴に向かってそんな口汚く罵れるもんだよ。
俺だってブリジットがいくら幼女とはいえ、恥じらいがあることくらいは知ってるんだ。
だから、事前にちゃんと手は打ってあるんだよ。

「桐乃、とにかく落ち着いてよく見てみろよ。
 ブリジットちゃんが俺と風呂に入っても恥ずかしくねえように、ちゃんと目隠ししてんだろうが」

「……あんた、自分が何言ってるか意味分かってんの?
 ブリジットちゃんにだけ目隠しさせて、あんたが目隠ししないってどういうこと?」

「どういうことって、ブリジットちゃんだって俺の裸なんか見た――」

桐乃は俺がまだ言い終わらないうちに、いきなり顔面に平手打ちを喰らわせてきやがった。
挙句の果てに腰にタメを作りやがって、今にも俺を蹴り殺さんばかりの勢いだったよ。
そんなわけで、俺は今公園のベンチで黄昏ているってわけさ。

926 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/11/13(日) 06:43:28.97 ID:hMM60VVZo [4/15]

「あ……あの……マネージャー……おにいさん」

「ん? なんだ、ブリジットちゃんじゃねえか。
 そっか、桐乃が俺に帰って来てもいいって言ってるのか?」

「……い、いいえ……きりのおねえさんから伝言で……おにいさんに早く死ぬようにって」

「そっか、桐乃が俺に死ねってか――
 ところでブリジットちゃん、あの後、桐乃に風呂に入れてもらったのか?」

ブリジットは俯き加減で、小さく首を横に振った。

「なんだ、桐乃はブリジットちゃんが風呂に入る途中だったこと、すっかり忘れてんだな。
 よっしゃ、じゃあ俺が健康ランドへ連れてってやっから、今日はそこで一緒に風呂に入ろう、な」

ブリジットは健康ランドが何のことか解らない様子で、小首をかしげながら俺の顔を見ていた。
イギリスから来た十歳の女の子に健康ランドを一言で説明するのは難しい。
何か、いい例えでもあればいいんだが……

「健康ランドっていうのは……あっ、ほら、浦安にあるディ○ニー・ランドは知ってるだろ?
 ちっとばかし趣は違うんだけど、あれのお風呂版っていったところさ」

ディ○ニー・ランドと聞いた途端、ブリジットの瞳がパッと輝くのが分かったよ。
幸いにもズボンのポケットには財布が入ってたから手ぶらでも構やしねえ。
タオルだとかはあっちで買えばいいし、今どきの健康ランドは下着だって売ってるもんな。
というわけで俺は、ブリジットの手を引いて駅前に出来た健康ランドへと向かった。

927 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/11/13(日) 06:44:11.64 ID:hMM60VVZo [5/15]

ブリジットはこういった施設が初めてのようで、俺の手を握ったままかなり戸惑っていた。
最近は夜になるとめっぽう冷え込むし、歩いても来られるここの健康ランドはかなりの賑わいだ。
何はともあれ、先ずは券売機で入浴券を買わなくちゃいけねえ。

「ブリジットちゃんは、こういう所は初めてだったみてえだな。
 何も心配はねえから。俺が一緒に入って、ちゃんと身体も洗ってやっから、な」

「誰の身体を洗ってあげるつもりなんですか、お兄さん」

「そんなの決まってんだろ、ブリジッ――
 げっ! あ、あやせ! な、何でお前がこんな所に!?」

「それはわたしの台詞です。
 どうしてお兄さんがブリジットちゃんと健康ランドに来てるんですか?
 ちゃんと、わたしにもわかるように説明してください。
 桐乃も一緒なんですか? まさか、二人だけで来たなんてことはないんでしょうね」

分かるように説明しろって言われても、見たまんまさ。
健康ランドには風呂に入りに来てるわけだし、桐乃と三人で来られる状況なら、
そもそもここに来る必要がねえだろっての。
家にはちゃんと風呂があるわけだし、現に俺は、ブリジットと入ろうとしてた最中なんだからな。
しかしそれをあやせに言えば、俺が生きてここを出られる保障はねえような気がしたんだ。

「いや、別に大したことじゃねぇんだよ。
 家の風呂が急に壊れちまってさぁ、それも、桐乃が入った後ブリジットちゃんが入ろうとしたらな。
 それにしても、あやせはなんで健康ランドなんかに?」

「わたしの家でも給湯器を新しいものに変えようと今朝から工事をしてたんですが、
 なんでも部品に手違いがあったとかで、今日だけお風呂が使えなくなってしまったんです。
 お母さんたちは帰ってくるのも遅いですし、取り敢えずわたしだけでもと思って」

「ふーん、そういう偶然ってのはあるもんなんだな。
 話は変わっけど、俺はブリジットちゃんと一緒に入るつもりだったんだけどさぁ、
 そうなるとあやせが一人になっちまうし……いっちょ奮発して、貸切の家族風呂にすっか?」

おっと、地震か? 最近の地震は太腿に激痛が伴うようになったのか?

928 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/11/13(日) 06:44:53.08 ID:hMM60VVZo [6/15]

「お兄さん、今何かおっしゃったようですけど、わたしの空耳でしょうか?」

「なんでもありません」

いくらなんでも公衆の面前で蹴らなくたっていいじゃねえか。
桐乃の場合は怒鳴りながらだから俺だって身構えることも出来っけどさ、
あやせは表情一つ変えずにいきなり蹴りを入れてくるからたまったもんじゃねえよ。

「冗談は顔だけにしてくださいね。
 お風呂に入る前から顔を赤くして何を言ってるんですか。
 大体、お兄さんが何を考えているかなんて、わたしにはわかるんですから」

「そう言うなって、あやせと貸切の家族風呂なんて冗談に決まってるじゃねえか。
 まあこんな所でいつまでも話しててもしょうがねえしな。
 あやせは女風呂だからあっちだろ……。俺たちはこっちだから」

「健康ランドに来たのに、死にたいんですか?」

それまで俺とあやせの会話を黙って聞いていたブリジットが、不安そうな顔で俺に訊いてきた。

「あ……あの……家族風呂とか女風呂って何なんですか?」

「うーん、どう説明すればいいかなぁ……」

「お兄さん、もしかして、ブリジットちゃんがこういう所のお風呂が初めてだって知ってて、
 騙して一緒に入ろうとしてたんですか?」

俺がブリジットと一緒に風呂に入るのが、そんなにおかしなことなのか?
昔はよく一緒に……いや、俺がブリジットとなんてあるわけねえか。

929 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/11/13(日) 06:45:41.81 ID:hMM60VVZo [7/15]

「すまねえな、あやせ。冗談だから、気ぃ悪くしたらごめんな」

俺は受付で入浴券と下駄箱の鍵を渡し、係りの人に言ってタオルを購入した。

「ほら、ブリジットちゃん、これタオルな。……石鹸とかシャンプーは中にあるから。
 あとこっちのバスタオルは借り物だから、帰りに返すことになってるんだ。
 ごめんな、一緒に入れなくなっちまって……今日は、あやせと一緒に入ってくれないか」

本当は俺が一緒に入ってやりたかったんだが、これ以上あやせの怒りを買いたくはねえ。
あやせは俺のことなんか大嫌いかもしれんけど面倒見はいいヤツだから、
ブリジットもあやせに任せておけば大丈夫だろう。

「じゃああやせ、ブリジットちゃんのことは頼むな」

「お兄さん、ちょっとだけここで待っていてください」

あやせはそう言い残し受付まで小走りで走ると、係りの人と二言三言話をしてから戻ってきた。
受付で何か買ったらしく、小さなタオルくらいの包みを持って。

「貸切の家族風呂がまだ空いていたので、思い切って借りてみました。
 一時間だそうですけど、わたしとブリジットちゃんと……お兄さんの三人で入ります。
 お兄さんに異存はありませんよね」

「俺に異存はねえけど、あやせに――」

俺が言い掛けると、あやせはそれを遮るように手にした包みを俺の目の前に突き出した。

「ご心配なく。受付で湯浴み着を買ってきましたから。
 ブリジットちゃんの分も買いましたけど……お兄さんは湯浴み着はご存知ですよね」

「何でそこまでして……」

「別に、いいじゃないですか。時間がなくなってしまいますから早くしてください」

あやせはブリジットの手を引くと、スタスタと建物の奥にある家族風呂へと歩いて行った。

930 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/11/13(日) 06:46:26.88 ID:hMM60VVZo [8/15]

この健康ランドには大浴場やサウナの他にも、貸切にできる家族風呂が幾つかあって、
中から鍵さえ閉めてしまえば他の客に邪魔されることもない。
それこそ、その名のとおり家族水入らずで風呂が楽しめるってわけだ。

あやせはそのうちの一つの前で足を止めると、俺に先に中に入るように促した。
中に入ると先ずは四畳半ほどの脱衣所があり、その奥のガラス戸の向こうが風呂場らしい。
ブリジットがやや緊張した面持ちで入ってきて、あやせがその後に続いて入ってきた。

「あやせ、俺は別に――」

「お兄さんは黙っていてください。
 それと、わたしとブリジットちゃんが湯浴み着に着替えるまでの間、後ろを向いててください」

あやせは緊張のせいか多少言葉が上擦ってはいるものの、別に怒っている様子はなかった。
一体、何がどうしてこうなったんだろう。
俺があやせの機嫌を損ねるようなことを言った憶えもない。
そんなんだったら、あやせが俺と一緒に風呂へ入るなんて言い出すわけがねえし。
いや、自分でも気付かぬうちに俺が何か言っちまったのかもな。
あのとき、あやせが急に思い立ったように受付へ小走りで走って行ったんだから。

「お兄さん、もう前を向いてもいいです。
 わたしたちは先にお風呂に入ってますから、お兄さんも服を脱いだら来てください」

二人の着ている湯浴み着は、かなりゆったりとしたキャミソールとでも言えばいいのかな。
光沢のある淡いピンク色の薄手の生地だが、その割りには透けることもないらしい。
お揃いの湯浴み着に着替えたあやせとブリジットは、まるで仲の良い姉妹のようだった。
二人ともちょっと恥ずかしそうだが、其の実けっこう気に入ってるみたいだ。
それにしても、湯浴み着を着ているとはいえ、すぐ下は二人揃ってスッポンポンなのかと……

931 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/11/13(日) 06:47:16.49 ID:hMM60VVZo [9/15]

あやせは、湯浴み着の裾が思ったよりも短いのをしきりと気にしているようだった。
俺から見ればいつもあやせが着ている制服のミニスカートと変わりがないように思うが、
さっきからひっきりなしに裾を引っ張っている。

「お兄さん、一つだけわたしと約束していただけませんか?」

「ん? 何を約束すればいいんだ?」

「今日のことは、わたしとブリジットちゃんと、お兄さんの三人だけの秘密にしてください。
 わたしもブリジットちゃんも、こんな格好でお兄さんの目の前にいるなんて
 本当は恥ずかしくて死にそうなんですから」

「わかった。あやせがそう言うなら……」

「ありがとうございます。わたし、お兄さんのことは信じています」

ブリジットが待ち切れないとばかりに風呂場のガラス戸を開けると、
白い湯煙がうっすらと脱衣所の中まで立ち昇ってきた。

「あ……あの……あやせおねえさん……」

「ごめんねブリジットちゃん」

あやせはブリジットに待たせたことを詫び、二人揃って湯煙の中へと消えていった。
そんな微笑ましい二人の姿を見て、俺もぼうっとしてる場合じゃねえよな。
何しろ一時間しか時間がないってことだし、俺もとっとと服を脱いで風呂に入らねえと。

それにしても、さっきから何かおかしいんだよ。
ブリジットはまだ子供だって分かってるし、俺にロリコンの気は毛頭ないからいいとしても、
あやせのあんな艶姿を見ても俺の身体が何の反応も示さないとは。
まさかゲー研の瀬菜の影響で、俺の性癖がそっち方面へ移ったわけじゃあるまい。

932 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/11/13(日) 06:48:02.47 ID:hMM60VVZo [10/15]

俺が腰にタオルを巻いて風呂場へ入ると、二人は仲良く並んで身体を洗っていた。
どこかでこんな光景を見た憶えがあるなと思いながら、俺はブリジットの隣りに腰を掛けた。
家の風呂と違って、こういった所は独特の匂いがあって新鮮な気分だ。
ブリジットも場に慣れたのか楽しそうに身体を洗っていたんだが、ふとその手を止めてしまった。

「ん? ブリジットちゃん、どうかしたのか?」

「あ……あの……背中が洗えないんです。
 いつも、背中だけはパパに洗ってもらっていたんで……その……」

ブリジットを挟んで隣に座っていたあやせを見ると、ちょうど髪の毛を洗い始めたところだった。
あやせもブリジットちゃんの話を聞いていて一瞬だけ困った顔をしたんだが、
すぐに俺の顔を見て小さく頷いた。
この俺にブリジットの背中を洗えってことか……?

「背中だけはパパに洗ってもらっていたんで……あの……」

「じゃあブリジットちゃん、今日だけは俺がパパに代わって洗ってもいいかな?」

俺は背後に回って、ブリジットの手から石鹸の泡だらけになったタオルを受け取った。
そこで俺は気付いたんだ。
いや、それまで気付かなかった俺が馬鹿なのかも知れんけど……。
ブリジットの背中を洗ってやろうと思ったら、俺がブリジットの湯浴み着の中に手を突っ込むか、
それともなけれが湯浴み着をめくり上げるしかねえだろ。

そんな俺の戸惑いなんぞお構い無しにブリジットは、自分で湯浴み着をめくり上げると、

「お……おにいさん、おねがいします」

鏡に映るブリジットは、子供らしい無邪気な顔で笑っていた。
あやせはと見れば、俺と眼を合わせないようにがむしゃらに髪の毛を洗ってるし……。

933 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/11/13(日) 06:48:44.33 ID:hMM60VVZo [11/15]

ブリジットの背中を洗ってから、俺がシャワーで洗い流してやっていると、

「お、お兄さん……ブリジットちゃんの次は、わ、わたしの背中もお願いします」

「ま、まさか、あやせも普段はパパに洗ってもらってるなんて言うんじゃ――」

「ぶち殺されたいんですか? ――なわけないじゃないですか。
 こ、こんなこと滅多にないことですし……できれば一度くらい……お兄さんに……」

今度はあやせの背後に回り、何の考えもなしにあやせの湯浴み着をめくり上げたときだっだ。
あやせは一瞬声にならない声を上げ、慌てて両手で自分の胸を隠した。

「す、すまねえ。そんなつもりじゃなかったんだけど……」

「い、いいんです。……でも、お兄さん……見ましたよね?」

「いっ、いや、何にも見え……ごめん、少しだけ見えました」

「うふっ、正直なんですね。別に怒ったりしませんから安心してください。
 元はと言えば、わたしからお兄さんにお願いして頼んだことなんですから」

あやせの背中はブリジットと変わらないくらいに色白で、肌のキメが細かくてすべすべとしていた。
俺が洗い始めると、あやせはキュッと肩をすぼめて緊張していることが分かる。
しかし、肩越しに鏡に映るあやせの顔を見ると、顔を真っ赤にしながらも嬉しそうに笑っていた。
あやせの背中を洗わせていただけるなんて、結婚でもしないかぎり無理かと思ってたよ。

「あやせの背中って、きれいなんだな……」

「そう言っていただけると、たとえお兄さんでも嬉しいです」

「たとえお兄さんでも、ってのが余計だけどな」

「わたし、一人っ子だから……兄妹で一緒にお風呂に入ることなんて一度もなかったし、
 お兄さんに背中を流してもらえるなんて、考えたこともありませんでした。
 ドラマなんかでそういうシーンを見ると、わたしにも兄妹がいればなぁ……なんて」

「そっか、そういうことだったったのか……」

934 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/11/13(日) 06:50:14.88 ID:hMM60VVZo [12/15]

あやせは勘違いしているようだが、兄妹だからって一緒に風呂に入るわけじゃねえ。
ましてこの歳でそんなことを口にしたら最後、俺の命はないものと覚悟しなければならん。
最後に俺が桐乃と一緒に風呂に入ったのだって、遠い記憶の彼方だし。
それにしても、女子中学生の背中を男子高校生が流している光景って一体……。

「わたしの次は、ブリジットちゃんとわたしでお兄さんの背中を流してあげますから」

「俺は別に……まぁあやせがそうしてくれるって言うなら」

妹がいる奴なら分かるだろうけど、この歳になって一緒に風呂に入りたいなんて思わんよ。
たとえ兄貴から入ろうと言っても、妹の方から拒否されるのは目に見えている。

「じゃあ、今度はお兄さんの番ですから、そこの椅子に座ってください。
 今日は特別ですから正座じゃなくてもいいです」

その言い方だと、俺はあやせの前ではいつも正座してるみたいじゃねえか。
ブリジットが石鹸をつけたタオルを持って、俺の隣りで今か今かと準備していやがる。
あやせも言ってたけど、こんなこと滅多にないことだし……まいっか。

それは俺が椅子に腰を掛けて、少しだけ上体を前に屈めたときに突然やってきた。
視界が急に薄暗くなり、世界がぐるぐると回り始めちまったような、そんな感覚だった。

「あ、あやせ……何だか分かんねえんだけど……身体の調子が変なんだ。
 ゆっくりでいいから、二人とも風呂から上がって誰か呼んで来てくれねえか」

「お兄さんどうかしたんですか? ……何だか、顔色が真っ青。
 今、すぐに係りの人を呼んできますから待っててください」

「あやせ、本当にゆっくりでいいから。
 二人とも裸同然の格好なんだし、落ち着いて着替えて、ちゃんと髪を乾かしてから……」

「お兄さんしっかりしてください。ブリジットちゃんはお兄さんを見ていて」

俺がまだ言い終わらないうちに、あやせがガラス戸を開けて飛び出していく姿が見えた。
ブリジットが不安げな顔で心配そうに俺を見ている。
すぐに廊下側の扉が開いた音がしたかと思うと、バタンと勢いよく閉まる音が聞こえた。
ゆっくりでいいってあれほど言ったのに。……あやせ、髪の毛が……濡れたままじゃねえか。

俺の意識は、そこで途切れた。

935 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/11/13(日) 06:50:55.75 ID:hMM60VVZo [13/15]

俺が瞼を開けたとき、先ず目に入ってきたものは白い天井だった。
ゆっくりと眼だけを動かして周囲を窺えば、左右と足元は淡いクリーム色のカーテン。
どうやら俺は、医務室か病院のベッドにでも寝かされているらしい。

「あっ、お兄さん……気が付いたんですね。桐乃! お兄さんが目を覚ましたよ」

あやせの呼び掛けにカーテンの隙間を開けて入って来たのは、あろうことか桐乃だった。
苦虫を噛み潰したような、それでいて少し安心したような複雑な顔をしてやがる。

「……肺炎に罹る一歩手前だったらしいよ。
 ったく、夕方頃から何か様子がおかしかったもんね。
 何でまた急にブリジットちゃんをお風呂に入れようなんてしてたのよ」

「き、桐乃……お兄さんも大丈夫そうだし、わ、わたしももう帰るね」

「あやせに感謝しなさいよね。
 たまたまあやせが家族と一緒に健康ランドに来てて、ほんとに運が良かっただけなんだから」

あやせのヤツ、桐乃に嘘つきやがったな。
たしかにあの状況を桐乃に説明することなんか、さすがのあやせだってできやしねえ。

「あっ、あやせ、ちょっとだけこの馬鹿を見ててくれる?
 病院の外まで行って、お母さんに電話してくるから。病院の中じゃ携帯使えないし」

「あ、うん……気をつけてね、桐乃」

一方的に話をする桐乃と、そわそわと落ち着きのないあやせ。
二人の会話を聞き流しながら、調子がおかしかったのはどうも今朝からだったと思い出した。
朝起きたときから身体が重だるかったし、昼もそれほど食欲がなかったような……。
挙句の果てに、ブリジットに目隠をして一緒に風呂に入ろうとしたり。

936 名前: ◆Neko./AmS6[sage saga] 投稿日:2011/11/13(日) 06:51:51.65 ID:hMM60VVZo [14/15]

桐乃が病室を出て行ったのを確かめて、あやせはベッド脇の椅子にそっと腰掛けた。
カーテン越しじゃ、隣りのベッドに他の患者がいるのかは分からねえけど、
あやせは俺に顔を近づけて囁くような声で話し始めた。

「お兄さん、本当にごめんなさい。
 お兄さんの体調が悪かったなんて、わたし全然気付かなくて……」

「あやせが悪いんじゃねぇから、俺だって気を失うまでは分からなかったんだしな。
 それよりもあやせ、ありがとうな。
 桐乃に連絡したり大変だったろ……どう話したのかは聞かねえけどさ」

さっきの桐乃の話じゃ、あやせは家族と来ていたことになっているらしいし、
俺が腰にタオルを一枚巻いただけの姿で意識を失った後、ここまでどうやって来たのか。
訊きたいことは山ほどあったけど、無理に訊けばあやせが可哀相だしな。

「……お兄さん、あのときの約束は覚えていますよね?」

「ああ、誰にも言ったりしないから安心してくれ」

あやせは小さく頷いてから俺の手にそっと触れると、少しだけ頬を染めて俯いた。

「それともう一つだけ……わたしと約束していただけませんか?」

「俺にできることならな」

「あのときわたし、まだお兄さんの背中を流す前でした。
 いつかきっと……一度だけでもいいですから、わたしの願いを叶えさせてください」


(完)
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