俺がモデルになれるわけがない!! 2

次の日、俺は空っぽに近い100円が入った財布を見て悲しんでいた

まぁ、最初からそんなに持っていなかったからこんな事になっているんだが…。
それでも悲しいものは悲しいのだ。

涙目なりながら俺はため息をついてもう一つの問題を思い出した、はっきり言ってこっちのんが俺の精神を蝕んでいる。それも現在進行形でだ。
前回、知っていると思うが、俺は怪しい奴ら(ハンサムさん)にスカウト(誘拐)されてモデルになった、何でかって?、そんなの知るか!

とにかく、俺はモデルになったのだ。
だけど今回の問題はそこじゃない、学校だ。
あのおっさ……、ゴホンッ、碇指令の野郎が俺をスカウトしたその当日に、何と、俺しか載ってない雑誌を売りやがったのだ。そのおかげで俺の噂は一気に広まっちまった
今さっき、俺がちょっと歩いているだけで太った豚、もといクソババアが俺に襲い掛かってきたくらいだからな

ここまで言ったら大体想像がつくと思うが、結論を簡単に言うと、俺が学校に行ったら襲われる。
いや、マジだって。

学校に行って自分が襲われるところを想像して俺が背筋を凍らしていると、何時ものように、何の前触れもなく俺の部屋の扉が開かれた

「兄貴?、飯だって」
そう言ってヒョコッと顔を覗かせる桐乃

ノックをしなさい、ノックを。
ったく、成績が悪かったらプライバシーは無くなるのか?

今回こそは言ってやる!、俺はそう意気込んで口を開く
「ノックして下さい」

決定的な格差がこの言葉に滲み出ていた。

「はいはい、分かったから早く用意して降りてきなさいよ」
桐乃は呆れたような顔をしてそう言うと、出て行こうとするが、俺はその行動を遮る様に言った

「いや、俺、今日は学校休む」
「はぁ!?、あんた何言ってんの!?、何で休むのよ!?」

俺が言った事が信じられないのか、怒っているというよりも、驚いてる桐乃が凄い勢いで聞き返してきた

「だ、だって、言ったら襲われるかもしんないじゃん」
俺が正直にそう返すと、まるで時が止まった様に桐乃がポカンとした

な、何か可笑しな事言ったか?

すると、桐乃はなにかが切れたように大爆笑しだした

「プッ…くく、あ、あんた何言ってんの?、一介のモデルがそんな事になるんだったらうちの中学校なんか潰れてるっつの…っくく」
「ま、マジで?」

「はあっ、ひぃ、あ、あんた絶対アニメの見すぎだって!!、プックク、おっかしぃ!!」
お前がそれを言うか、お前の脳内の方がアニメ祭りだろうが!
とも思わない事もなかったが、確かに、モデルのこいつが言うと説得力があるな

第一、あの天使、もといあやせが襲われてないんだから俺みたいな奴が襲われるわけがなかったのだ

そんな事を思いながら、そして俺がどんだけ自意識過剰だったのかを思ってちょっと恥ずかしくなりながら俺は朝食を食べにリビングに向かったのだった。
ってか桐乃、いい加減笑うのを辞めやがれ!




    ・・・・




「桐乃の……、嘘吐き野郎」

現在時刻はお昼時、俺は目の前にある一日じゃとても食いきれない量のお弁当を見てそう呟いた
あれから学校に向かった俺は散々な目に会っている

朝、何時も通り俺は麻奈実と待ち合わせしているあの電柱の場所に行った
「あ、おはよぉ、京ちゃん」

そしてこれも定番の麻奈実の安心する一言
俺が、やっぱり朝はこいつの声を聞かないと始まらないなぁ、何て思いながら麻奈実と取り留めのない話をしていると、今日の第一関門が待っていた
それは俺が一人の女子に話し掛けられた事から始まったのだ

「あ、あの……、サイン下さい!!」
そんな事を目の前の女の子が顔を赤くしながら言ってくる

熱でもあるのかな?、と思いながらサインなんか持ってないと言おうとしたら二人目の女子がこちらにサイン色紙を差し出していた

この時にはもう俺の顔に冷や汗が浮かんでいたのは言うまでもあるまい。
それからはもう話すのも疲れる、俺は永遠に自分の名前(フルネーム)を色紙に書き続け、そうしている間に麻奈実は何故か「もう置いて行っちゃうからね!!ぷんぷん!」と言って先に行ってしまった、相変わらず擬音語を口にしていたが、今回はかなり怒っていたらしく本当に先に行ってしまった
おかげで俺は遅刻ぎりぎり、チャイムが鳴ると同時に俺は教室に滑り込んだのだった

続いて第二関門、それは俺が教室に入って最初の休み時間に起きたのだった
授業終了のチャイムが鳴り、俺は赤城にこの前借りてたマル秘本(妹物)を返しに席を立とうとした、正にその瞬間俺は……包囲された。

さすがに近くにいた麻奈実も驚いたのか
「きょ、京ちゃん、悪い事したの?」
と目を潤ませながら聞いてきている、いや、俺はそんな事をした覚えは無いぞ?
も、もしかしてこの前図書室に俺がエロ本を隠したのがばれたのか?、た、確かにあれは俺が悪かったが皆に怒られるのは理不尽だと思うぞ!?

弁解をしようと皆の顔を見るが、皆はとてもじゃないが話しを聞いてくれる雰囲気では無くなっていた

ゴクリ……

俺は唾を飲み込むと逃走ルートを必死に探す、だがそんな道は一つも無かった
もう駄目なのか……、なんて事を考えてると、また一人の女の子が話しかけてきた

あれ?、登校中に一番最初に話しかけてきたのも確かあんただよな?

クラスメイトの顔も覚えてないのか?、と聞かれると非常に答えづらいのだが、俺ははっきり言って関係のある奴しか覚えていない。

「あ、あの!、一緒に写真撮ってもいいですか!?」
ちょ、辞めてくれ、そんな血走った目で俺を見ないでくれ、怖いから。

俺が怖くて返事を出来ないでいると、相手はどうやら返事を待っていなかったらしく勝手に俺の腕を取って手に持っていたカメラで撮ったのだった
ていうか、返事を待たないなら最初から聞くんじゃねぇ!
なんて内心では凄んでいるものの、現実ではただされるがままだった。情けないと思うが仕方ない、多分あの血走った目を一度でも見たならそんな事は言えなくなるさ。

その後の事で話す事なんて無いね、ただ引っ張り回されただけなんだから、見ろ、制服の肩の下がほつれてるじゃねぇか。


そしてその次、名称は黒猫風に言ったら『最後の暗黒門(ラストデスゲート)』こんな感じだろうか
これは俺の前に積み立てられているこの弁当の原因だ

それは一瞬の出来事だった、俺は何時も通り昼飯を食べようと麻奈実の席に移動しようとした、その瞬間俺の顔面に何かがぶち当たった
何なんだ?、と思いながら目を開けるとそれは弁当で
恥ずかしくて目を閉じている女の子が俺に向けて放った一撃だった。

おいこら、ちゃんと目を開いて見ながら渡せ

そんな気持ちを視線に乗せてジトーっと見ていると、やっと自分が何をやっているのか気づいたのか慌てて俺に弁当を手渡して去っていった
その女の子の行動が皮切りとなって俺が合計十数個の弁当を貰って現状に至るのだ

「あ、あのっ、これ食べて下さい!!」
「こ、こ、こ、これどうぞ!!」

思い出して見ると、うむ、何ていうか、皆必死だなぁ
まぁ、非常に可愛いのは認める、近所に住んでる体脂肪率100%のクソババアに襲われかけた時と比べれば天国と地獄だな。
でも俺は女の子にモテた事が無い、ラブレターを貰った事も無いし?、校舎裏に呼び出されて告白された事も無い、俺の前に突然許婚が現れる事も無ければ?、昔気まぐれで餌をやった猫が人間になって俺に恩返しをしに来た事も無い
平たく言えば恋愛経験が無いに等しいのだ

はぁ、どうしたもんかねぇ

なんて事を考えながら弁当をパクついている時、俺はふと麻奈実を見た
今日の麻奈実は何故かとても機嫌が悪い。見てみろ、頬をまるでリスのようにプクーっと膨らませているじゃないか

今日は麻奈実のお婆ちゃんオーラで是非和みたい気分なんだが、どうやらそれは叶いそうに無いな。

俺は弁当を3個目の半分まで食べると、はしたないとは思うが「ケプッッ」っと一息ついた
もはや俺の腹は限界を通り超えて漫画の様に膨れてしまっている
皆俺が男子ってことで多めに作られていて、とてもじゃないが十数個なんて俺の腹の中に入りきるはずが無く今のこの状態になるわけだ。

「ふぅ、なんでこんな事になったんだか…」

俺は普通を愛してるっつーのに、なんでこう最近は慌しいんだ
誰かこの現状をどうにかしてくれないかなぁ、何て虫の良い事を考えて俺はもう一度ため息をついたのだった。





時は過ぎ、放課後


俺の下駄箱は朝も絶滅したと思われていたラブレターで一杯だったが、放課後、俺がもう一度開くとどういう仕組みなのかまたもや一杯になっている
さすがに漫画の様に開けた瞬間手紙が溢れ出す事は無かったが、変わりに俺が見たのはもっと見たくない、非常に汚い現実だった

潰れてるのだ。手紙が。

つっかえていたのを無理矢理押したのか、奥にあった手紙はもはや形を失って紙くずと化している。

俺はこんな現実見たくない!、と言わんばかりに走り出す
だが俺はそのまま走り続ける事は出来ずに、目の前に居た障害によって派手に後頭部からすっ転んだ

それは相手も一緒なのか俺が倒れきる直前に『ゴンッッ』という派手な音が聞こえてきていた。


「な、何だってんだよ……」
俺はズキズキと痛む後頭部をさすりながら立ち上がる
すると目の前に徐々に見えてきたのは……

黒猫だった。


わぁお、これは色々と……、おっと鼻血が。

今の黒猫はどんな勢いで転んだのか、スカートは太ももの付け根部分まで捲り上がり、目元からはよっぽど痛かったのか涙が流れていた、そして極め付けに胸元のボタンが何故か取れているという事実!
何て芸じゅ……、もとい官能……ゴホンッ、はしたない格好なんだろうか。

「と、とにかく起こさないと…」
周りの目も集まってきた事だし、早くこの状況を打破しなければならない
高校生になっても思春期を脱していない奴らには少々目の毒だ。

俺はなるべく加減して黒猫の頬をペチペチと叩いた
が、それでも中々起きる気配が無く、仕方なく俺は黒猫の肩を持って揺すぶった
でも考えてみてほしい、胸元が開いた女の子がとても大きな動作をしたらどうなるか。見えそうで見えないチラリズムに俺は滅法弱いんだ。

と、とにかく早く起きてくれ、黒猫!

いくら俺といえどもこの状況は非常に恥ずかしい、嫌でも顔が熱くなってしまう
俺が最後の理性を失うまで後5秒という所で黒猫の表情に変化があった

「ん……ぅ、ん?……先輩?何をしているの?」

俺は返事をせずに黙って黒猫の胸元を指差す、黒猫は最初「何をやってるのかしら?」と俺を訝しげに見ていたが俺の指先をたどり、自分の胸元に行き着くと……、一瞬で沸騰した
始めて見たぜ『ボフンッ』という効果音がつきそうな場面を。

「こ、この変態!、その汚らわしい目つきを今すぐ辞めなさい!」
黒猫は慌てて胸元を両腕で包むように隠すと真っ赤な顔で俺を睨んできた

え?そんなに俺目つき気持ち悪かったか?
と、とにかく落ち着いて頂かなければならないよ!?
このままでは俺が無理矢理襲った、ってな感じの在らぬ噂が広まってしまう
その噂が学校の奴らにだけ広まるならまだ良い
でもその噂が桐乃やあやせに伝わったなら俺は確実に社会的生命や実質的命を刈り取られてしまうだろう。

そんな事態は絶対に避けなければならない

「く、黒猫!!、落ち着いてくれ!!頼む!!」

俺は涙を流して懇願したのだった。





「お、落ち着いたかしら?先輩」
「おう」

只今下校中、俺は本当なら慰める立場なんだろうが何故か逆に慰められていた。
こうやって無事に下校できているのも俺の頼み方が良かったからに違いない
ていうか、あの時は大変な事になったから聞けなかったけど、何であんな所に黒猫がいたんだろうか

まぁ大体想像はつくけれども一応聞いておこうか?

「なぁ、黒猫、何であんな場所にいたんだ?、俺に何か用事でもあんのか?」
できれば他の理由であってほしいが、まぁあんだけ大騒ぎになってんだからあれしか無いな

「そ、その、貴方がモデルになったって聞いたものだから……」
予想的中、最近はこの質問ばっかりだから嫌でも分かってしまうのは仕方が無いだろう。無いに違いない。
でもやっぱり黒猫は他の奴らとは違うみたいだな、他の奴らが聞いてきた俺の心を抉る様な質問はしてこない

「どうしたら貴方のような地味面が………って」
やっぱり聞くのか黒猫よ、お前だけは違うのかな?何て期待した俺がバカだったよ!

まぁ、答えない訳にはいかないんだけどさ…。

俺はその後大体の経緯を黒猫に話した。あの碇社長の口癖とか如何にキモいかとかを重点的に。
「気持ち悪いわね……、その社長さん」

よく伝わったみたいで何よりだ。

「それはそうと先輩?、一つ聞きたい事があるんだけどいいかしら?」
「何を改まってんだ?いいから聞けよ」

俺は即座に返事をする。
だってこれ以上別に聞かれても困る質問なんてないしな。

「それじゃ聞くけど先輩はもう部活には来れないのかしら?、できれば今回作っているゲームの製作を手伝ってほしいんだけど」

困る質問があったらしい
この質問ばっかりは俺にもなんて答えたらいいか分からない、だってあの野郎共は俺の予定なんて関係無く突然来やがるからだ
あいつらは全員桐乃だと思ったほうが良い。

…………………ほらな?

「こんにちわ、京介さん」
俺達の目の前にワゴン車が止められ、その扉が開いたのだった。
もう俺は驚く事は無く、至って冷静に現状を受け入れている

「さて、行きましょうか」

そう言ってハンサムさんは二人の手を引き……?
「ちょっと待て、おいハンサム?何で黒猫の手を引っ張っているんだ?」

「そ、そうよ、その薄汚れた手をお放しなさい!」
黒猫もちょっと遅れてハンサムに向かって叫んだ

それに対してハンサムさんは何時も通りとてもクールな対応で切り返す、まるで黒猫の剣幕が効いていない
「貴方には京介さんの衣装作りを頼みたいんですよ、コスプレの」

「せ、先輩の……?」
おい、黒猫、反応が違うぞ、ここはふざけるな!!と怒るところだ
そんな風に頬を染めてウジウジするところじゃないんだ。

「く、黒猫?、まさか付いて来る気か?」
是非遠慮していただきたい、こいつらの事だ、黒猫が馴れてきたら「採用☆」の一言でモデルにしかねん。

「あ、衣装選びは沙織さんにお願いしていますので」
そうハンサムさんが言った瞬間沙織が扉から顔をだして「おや、京介氏も黒猫氏も奇遇ですなぁ」とか言い出しやがった

またとんでもない事をさらりとしやがって、これだったら殆ど桐乃の裏表の友達が勢ぞろいじゃねぇか
いっそ黒猫を連れて逃げてやろうか…、交番に。

なんて事を考えているとやっぱり表情に出てしまうらしい、俺の頭に紙パックのジュースが当たった、当然中身も俺の頭に被っちまってる
人間が怒りの臨界点を超えると逆に冷静になるっていう噂は本当ならしく、俺は無言で頭から落ちて道端に転がっているジュースを見た

ドロリッチだった。

「加奈子ぉおおおおぉぉおおお!!!!」
もはや限界だった。俺は地面を思い切り蹴り上げると加奈子に向かってジャンプした

そして加奈子に焼きを入れれる一歩手前
正に触れるちょっと前、その瞬間だった、あの事件が起きたのは。

俺の前に突如現れた靴裏によって俺の顔が蹴られたのだ。

力なく倒れる俺

「お、お前なぁ、そ、その……そういう事はもっとムードのある所で、その、あの…分かるだろ?」
加奈子よ…、お前は何を言っているんだ?
仕返しは皆の前でしないでくれってか?そんな都合の良い事言うなよ、見ろ俺のドロリッチでベトベトになった髪を。

「こ、こ、こ、この変態!!、何行き成り加奈子に襲い掛かろうとしてんのよ!!」
何言ってんだよ桐乃、あんな事されたら誰だって襲うだろうが。女なら何でも許されると思ったら大間違いだぞ!!

俺は意識が朦朧とする中、必死で言葉を言おうとしたが出る事はなく
最後に桐乃が蹴った直後に見えたの縞パンを思い出しながら意識を手放したのだった



あれは……いつの事だったけか…
そうあの時の俺は赤いランボルギーニカウンタックに乗っていた、海沿いの道をスピードなんて気にせずかっとばし
流れる景色に思いを馳せていた

だが俺の意識はある一瞬で奪われた、ガードレインにもたれ掛かっていたあやせに見とれて

その時のあやせはまるで天使の様に白いワンピースに白い帽子を着ていた。それに相反するように黒い髪、黒い瞳。
…全てが美しく見えた

俺は急いで車を止めるとそのあやせの元に走って行った

「お、おい、こんな所で何してんだ?」

ここは道路の真っ只中、当然わいてくる質問だ
俺が手始めに、と思って聞いた質問にあやせはこっちをちらっと見て素っ気なく答えた

「別に、ただの散歩」
「そうか、でもここからだと帰るのは苦労するだろ?、送って行こうか?」

すかさず俺は提案する、こっからだと帰るのに少なくても20分はかかる、確実に。断る事は無いだろう。
だがそあやせの答えは俺の予想と反していた

「いえ、私の家はすぐそこなの」
「な、何言ってるんだあやせ……」

俺は思わずあやせの手を握る、あやせの目はその瞬間に光彩を無くした
「離せ……」

身震いしてしまう程怖いが俺は手を離さない、離したら居なくなってしまう気がした。

「離してくれないなら……」
そう言って持っていた鞄の中を探りだすあやせ、手は探っていても目はこちらを見ていた、まるで今ならまだ間に合いますよ、と言わんばかりに

あやせはため息をつくと、俺の前にある物を突き出した。
銃だ。

あやせは俺の顎に銃口をつけて
もう何も感じないかのようにいとも簡単に引き金を引いたのだった


バァアン!!


「ウワフゥ!!」
「あ痛!」

もはや意味が分からなくなっていると思うが、今のこの状況を簡単に説明すると、俺が悪夢から覚めて跳ね起きる、跳ね起きた勢いであやせの顎に俺の頭が当たった
……そんな感じだ。

あやせは俺の事を恨めしげに見ている、いや、睨んでいる。
「な、何するんですか…」

掠れた涙声で言ってくるが俺は全く気にならなかった、だって考えてみろ?俺が起きた瞬間頭があやせの顎に当たるって事は……どういう事だと思う?
……そう、膝枕だ。

「ついにデレ期が来たんだな!!あやせぇえええぇえ!!」
「近づかないで下さい!!」

あやせはそう叫んでくるが、こちとらもう跳んじまってるから止まれるわけもなく……『撃たれた』。あやせよ、銃刀法違反だぞ。





すぅっと俺は目を開く、そこには我が妹、桐乃がいた
やはりあれは夢だったらしい、さもないと妹がこんな所にいるはずがない。チッ、ダブル罠だったのか。
なんで二回もあやせに撃たれにゃならんのだ、どうせなら片方ぐらいは幸せな夢を見せてくれればいいのによぉ。

っていうか桐乃、何でお前が俺を膝枕してんだ?
まぁ大体想像はつくけどな、どうせ皆で俺を押し付けあってジャンケンで負けた桐乃が俺を膝枕した。…そんなとこだろう。

なんて事を考えてちょっと半泣きになっていると、俺が起きた事に気がついたのだろう、ハンサムさんが話しかけてきた

「あ、起きられましたか、京介さん、もうすぐ到着なので用意していてくださいね」

了解と言おうとしたら、俺が言うより早く俺は桐乃に突き落とされた。

「あんた起きたんならさっさとどきなさいよ!!、このシスコン!!」

俺を膝枕するのがどんだけ嫌だったんだ、そして何故俺に怒りをぶつけるんだ、ここは押し付けた俺以外の人に当たるべきだろう
だからそんなに顔を真っ赤にしてまで怒らなくてもいいじゃないか。

どうやって俺が言いたい事を伝えようか悩んでいると加奈子が話しに割り込んできた

「じゃぁ次からは桐乃の参加は無しな!、クソマネの所有権をかけたジャンケン!!」

何が所有権だ、俺は物じゃないんだぞ
っていうか何だその人身売買は、人権の侵害にも程があるわ!!

俺達がそんな風に騒いでいると、ある一人がゴソゴソと身じろぎをした
「ふわぁ……、一体何なんですか~?この騒ぎわ」

そう言ってさっきまで寝ていたのであろうブリジットが起き上がった
まだ眠たいんだろうか、目は虚ろとしていてまるで操り人形の様だ

「マネージャーさん!、また何かやったんですかぁ?、そんなマネージャーさんにはこうです!!」
そんな意味の分からない事を変に間の抜けた口調で言ってきて、ブリジットは行き成り抱きついてきた。子供のくせに何故か発育のいい胸が俺のお腹の部分に押し当てられた。実にけしからん。

っていうか辞めろ、お前はどっかの酔っ払いか!
「ブ、ブリジット!?、は、離れてくれ!」

「や~で~す!、ムヒャヒャ」
制御不能だ。
だがありがたい事に他の皆も何を思ったのか急いでブリジットを引き離そうとしてくれている

「むひゅー、離しません!」
辞めろブリジット、そんな力で抱きしめられたら俺の腹の中身が出てきてしまう
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)[sage saga]:2011/04/18(月) 11:13:59.34 ID:h/8Ufx8H0

皆もそれが分かったのだろう、ひとまず離して何かを話し合っている
何か作戦が決まったにか、桐乃がいきなり叫んだ

「よし、皆!、爪を引き剥がすのよ!!」
「辞めろ!!」

一体何をどう間違えたらそんな結論になるんだ?、不思議にも程があるわ!

「それとお前らもマジになってんじゃねぇ!!」
桐乃が言った一言を本気で実行しようとしている皆に思いっきり叫ぶ。こいつらマジ怖えぇ。

「じゃぁどうしろってのよ!、このままじゃ絶対離れないわよ!?」

何をいきり立っているのか、桐乃が怒りで顔を真っ赤にして叫んでくる

「いや、分かんねぇけども……。なにか交換条件でも付けて起こしたらいいんじゃね?」
「そんな単純な手に引っかかる訳ねぇじゃん」

呆れた様に言い返してくる桐乃

「うっせ、分かんねぇだろ?そんなの」
ちなみに俺だったら起きる。

でも条件っつったって何が欲しいんだ?ブリジットは。
服?、……いや、なんか一杯持ってそうだもんなぁ。ご飯?、いや加奈子じゃねぇんだから。

やっぱり女の子なんだしアクセサリーか……?。それしか思い浮かばんな…。

あまり自信はないがそれしか思い浮かばなかったので、取り合えずアクセサリーに決定。
反応してくれなかったらまた別の条件をつければいいのだ。

「おーい、ブリジット?、今起きてくれたら今度空いた時にアクセサリー買ってやるぞ?」
「起きました!!」

早い、さすがは俺といった所か……、自分の才能が怖い…フッ。
って痛い!、何?、何すんの!?

俺が笑っていると桐乃を先頭に皆が俺の脛に集中攻撃を仕掛けてきた。

「な、何すんだ!、ちゃんと離れたじゃねぇか!!、これは俺のおかげだぞ!?」

俺が正論を言ってもこいつらは全く反応しなかった、今現在も俺の脛にブーツやらハイヒールやらで攻撃を仕掛けてきている
辞めろ、立てなくなったらどうする気だ?、仕事が出来なくなっちまうぞ?

「京介さんの言うとおりですよ、皆さん辞めて上げてください。それに…」

そう言って何故か間を空けるハンサムさん

「もうすぐスタジオ(戦場)に着きますから」

あぁ、無情。

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最終更新:2011年12月23日 19:21
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