俺がモデルになれるわけがない!! 11


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ソファーの上、あれから何分も経っていないのにキョウスケおにいちゃんはウトウトし始めていた、瞳に光彩が無くなりトロンとしている
リアはといえば、特にする事もなく、そしてキョウスケおにいちゃんみたいに睡魔に襲われる事も無く、ただその横顔をボーっと眺めていた。

それから何分経っただろうか、数えてはいないがそんなに経っていないのだけは言える。
なのにキョウスケおにいちゃんはもう完全に夢の世界に旅立っていた。
瞼は完全に閉じられ、規則正しい呼吸音だけが聞こえてくる

「お~い、キョウスケおにいちゃん?」

念の為に確認してみるも、反応は無し。
リアはそっと席を立つとキョウスケおにいちゃんの顔の前に座り込んだ

周りを見回して誰も居ないことを確認。うん、大丈夫、朝早いおかげで誰も居ない。

リアはキョウスケおにいちゃんの頬にそっと触れると、プニプニと突っつく
とっても柔らかくってスベスベだった、本当に男の肌かと疑ったぐらいだ。
多分リアよりも綺麗な肌だ。

ちょっとムカついたので今度は抓ってみる。
キョウスケおにいちゃんの肩がピクンッと跳ねた

眉間にもちょっと皺がよっていた

反応が一々面白くって思わず色んな悪戯をしたくなってくる。
リアが次はどんな事をしようかなぁ、なんて笑いながら考えていると視界の端に何かがチラついた

それは黒かった、凸みたいな形をしていて最近見慣れてきた物だった。

見間違いかな?、とも思ったがどうやら違うらしい。
さっきまでキョウスケおにいちゃん弄りに夢中で気づかなかったが、パシャリという音が聞こえてきたのだ。

ガバッと振り返るとそこには
「っ!?」

……カメラを構えたハンサムさんがいた

「おはようございます、リアさん。 あぁ私には気を使わずにどうぞ、続きをやってください」

バレたのにそれを意に返さず堂々とそんな事を言ってくる。
こんな状況で続きなんて出来るか!
っていうかバレたのになんでまだ写真撮ってんの!?

リアは溜息を隠すことなくつくと、ハンサムさんに向き直った

「で、なんのようなの? リアはキョウスケおにいちゃん弄りで忙しいんだけど?」
「あ、はい、もうすぐ朝食の時間ですので起こしに、と思いまして。
それにリアさんにはしっかり食べて体力をつけて貰わないといけませんから。今日は大事な事が起こりますから特に、ね」
ハンサムさんは言い終わると涼しげにニコリと笑う

そんな意味深な言葉を呟かれると気になるのは仕方の無いことで、リアは思わず聞き返す

「大事な事って…」
「まぁその話は置いといて、とりあえず朝食ですよ。それと、京介さんはリアさんが起こしてきて下さいね、15分後に集合ですから急いでくださいよ?」

だがその質問を言い終わる前にハンサムさんは無理矢理言葉を被せると、話を中断させた。
そしてそのまま何も言わせまいと階段へと早足で消えていってしまった。

こうなると残されたほうは悶々とするしか選択肢が無くなる、大事な事っていうのが何なのかを暫く考えるが当然分かるはずもなく、後ろ髪引かれる思いでやむなく考えるのを中断した
結局答えなんてのは言い出した人にしか分からないものなのだ。
リアはそう結論付けると、早くこの事を忘れようと頭を振った

さて、何はともあれ朝ごはんだ、ハンサムさんは15分後と言っていたからこれから結構急がなければならない。
まず第一にキョウスケおにいちゃんを起こして、第二にリアが風呂に入らなければならない。別に風呂なんか後でも良かったんだがどうにも汗をかきすぎて気持ちが悪い、折角の朝ごはんなんだからこのまま食べたくは無かった。
少なくとも今さっき悩んでた時間は2.3分はあったから、後は12分程度だろう。いくらリアが風呂にあまり時間を掛けない方だからといってもかなりキツイ事に変わりは無い。
これは風呂と言うより本当に汗を流すだけの湯浴みみたいになってしまうだろう。下手をしたらそれすら出来ない可能性だってある。

しょうがない、キョウスケおにいちゃんには悪いけど結構乱暴に起こさせてもらおう。そんな事で時間をかけている暇は無いのだ。

「キョウスケおにいちゃん!!、起きて!!」
リアは急いで駆け寄って思い切り平手打ちを食らわした
それに対してキョウスケおにいちゃんは泡を食った様に驚いてソファーから転げ落ちる

「え!?、なに!? あのアイス食ったのは俺じゃないよ!?」

そんな意味の分からないことを言っているキョウスケおにいちゃんにリアは「今から朝ごはんだから座敷に集合ね!!」という事だけを伝えると急いで自分の部屋へと向かった

部屋につくと急いで着替えのタオルを手に取る。これまでの所要時間は訳2分、と言う事は残り時間は後10分程度だって事だ。

間に合うかな?

リアは足に力を入れて風呂に向かって走っていったのだった






  ・・・・






「リアさん、人として時間は守らないといけませんよ?」


只今、リアは正座中だ。
皆がご飯を前にして思い思いの姿勢をしている中、リアは遅刻をした事に対してのお説教を受けていた。それもかなりの時間だ、ふと部屋の時計を見てみると訳30分近くお説教を受けている事が分かる

そんな中、皆も腹が限界になったのか口々に文句を言い始めた

「おいハンサム、いい加減食おうぜ? リアも反省してんだしもういいじゃねぇか」

キョウスケおにいちゃんはその後に「もう飯も冷め切っちまってんじゃねぇか」と愚痴を溢すとハンサムさんを睨みつけた
ハンサムさんはビビる事は無かったものの、肩を竦めると素直に謝った。

「すみません、ちょっと言い過ぎました、マネージャーの仕事柄かどうも時間には敏感になってしまいまして。でも遅刻が駄目なことに変わりはありません、リアさん、次からは気をつけてくださいね」

リアに一言言うのも忘れなかった。それに対しては完璧にリアが悪いので何も言い返せないし、言い返すつもりも無かった。
「はい」と返事をすると自分の席へと歩いていく

ハンサムさんが全員が座ったのを確認すると、手をあわせて皆で「いただきます」と声を揃える。
ご飯は冷めていたけど、ちゃんととっとかないと朝練まで体力が持たないので口の中に掻き込んだ


最後に余った漬物を口の中に入れようとしたら、先に食べ終わったのだろうハンサムさんが今後の予定について話し始めた。

「皆さん、食べていても構いませんので、耳だけこちらに傾けておいて下さい。この後なんですが、朝練はしません。皆さんはご飯を食べ終わったら風呂にでも入ってゆったりしていて下さい、練習はお昼からいたしますので、それまでは休憩です」
――――――――っ!?
「な、なんで!?」

ハンサムさんが言った事にリアは思わず我を忘れて大声で聞き返す
駄目なんだ、リアは練習しないと駄目なんだ。それじゃないと追いつけない!

今朝夢を見たせいか、どうしようもない焦燥感がリアの中で渦巻いていた。キョウスケおにいちゃんのおかげで少しは落ち着いたものの、完全に無くなったわけではなく、まだ心の中に残っていたモヤモヤした物が今さっきのハンサムさんの話で一気に弾けた

「何で練習しないの!?、早く、早くしないと何時まで経っても追いつけないよ!!」

皆がびっくりしてこちらを凝視しているが、それすら気にならずに必死にハンサムさんに訴えた。
とにかく練習しなくちゃいけないのだ、それじゃないと追いつけないどころか離される一方だ。



酷く焦る心に任せてハンサムさんに叫んでいると、リアの肩が誰かに強く掴まれる

「っ邪魔するな!!」

顔も確認せずに手を払いのけようとするが、いくらやっても手が離れる事は無かった
体力が無くなって荒い息を吐き出す

「何で……、邪魔するの」
「っま、まぁ落ち着けって。多分いくら言ったってこの決定には逆らえねぇからよ」
ちょっと間を空けて「分かってるだろ?」と聞いてくる

分かってる、分かってるけど!!
駄目なんだよ、と言おうとして顔を上ると、そこにはキョウスケおにいちゃんの顔があった

その表情を見ると、喉から出掛かっていた言葉が出ること無く、空気に溶けて消えてくのが分かる。

なんで………そんな顔をしてるの?

たまらず顔を背けるが、一度見て目に焼きついたその表情が私の記憶から消えることは無い
悲しそうで、辛そうで、苦しそうな、そんな…顔だったんだ。

誰のせいでそんな顔をしているの?
リアだ。

リアのせいで、キョウスケおにいちゃんは悲しんでいるんだ
「っく、ぅ」

思わず嗚咽が漏れてくる、たまらずキョウスケおにいちゃんの胸に飛び込んだ
ごめんなさい。
そう言いたかった、けど、口からでるのは嗚咽ばかりでその言葉が出る事は無かった。

「もう飯……終わってんだろ?、俺の部屋来いよ、話ぐらい聞いてやるから」

キョウスケおにいちゃんはリアの顔を隠すように腕をとると、短く溜息をついてそう聞いてくる。
本当はまだ漬物が残っていたがそんな事は最早記憶から消えていた。

リアが首をちょっとだけ動かして頷くと、キョウスケおにいちゃんはリアの腕に込める力をちょっとだけ強くしてリアを引っ張っていく。
ちょっとだけ体が軽くなった気がした。



部屋につくと、キョウスケおにいちゃんは「そこらへんに座っててくれ」と言ってお湯を沸かしにいった

この旅館はどれだけ日本を意識しているんだ、っていうほど日本用品が揃っていた。
急須 緑茶の葉 団扇 扇子 その他諸々etc

「なんじゃこりゃぁぁあ!!?」

急にキョウスケおにいちゃんが叫ぶ。
リアは何事!?と思って振り返るが、すぐに無駄な事をしたと後悔する事になった

「こ、ここ、これあ割烹着じゃねぇかあ!! こんな日本でももうあまり見ない物までそろってんのか!!?」

なんで叫ぶ必要がある。

と突っ込む気力も無くリアは机に突っ伏した。
それから、何分も経たない内にやかん独特のお湯が沸いた高い音がしてくる。

急須にお湯を注いでいるんだろう、部屋に独特の匂いと音が広がった。

凄いな、外国人のリアでもこの匂いには落ち着く。
ちょっとホウッとしていると湯呑二つと急須を持ってキョウスケおにいちゃんがリアの目の前に座った。

緑茶を両方の湯呑に注いでいく、注ぎ終わると今までの空気が嘘の様に、重たく張り詰めていくのが分かった

「で?、一体何があったんだ? こちとら今さっき叩かれまくった腕が痛いったら無いんだぞ? こりゃ明日になったら絶対青たんになってるね。うん、確実に。と言う事で、こんな被害を被った俺にはその理由を聞く権利が充分過ぎるぐらいにある。さぁ話せ、今話せ、全部話せ」

キョウスケおにいちゃんは腕に息を吹きかけ、すっ呆けた態度で理由を聞いてくる。
普通ならもっと怒っても良いのに。
自分でも面白いほど肩の力が抜けていくのが分かる

本当、キョウスケおにいちゃんは

「優しいなぁ」
自然と零れる笑みにちょっとだけ涙を浮かべながら思った言葉が知らず知らず口から出た

キョウスケおにいちゃんはちょっと頬を赤く染めて反論する
「う、うっせ。いいから早く理由を話せ、理由を」

リアはそっと息を吸い込む
キョウスケおにいちゃんのおかげでこんなにも軽い気持ちで話せる、思い出すだけでも辛かった話を、ちゃんと話せる。

「うん、大丈夫」

それが、とても嬉しかった。







リアが勝負をして、負けて、言われた事、言われて悲しかった事。
夢に出てくるようになった事

それを一から順番に丁寧に話していると、かなりの時間がかかった
時間にしてみると10分ぐらいだろうか、10分ぐらいと言うとかなり短く感じるか、喋ってみるとかなり長い事が分かる。

話し出して、途中からキョウスケおにいちゃんの顔を見れなくなって下に俯いてたので、顔は見ていないのだが、多分呆れているだろう。
相手の言葉にこんなにもうろたえて、焦っているんだから。

リアがキョウスケおにいちゃんの立場でも絶対に呆れる。

そんなことを思って、キョウスケおにいちゃんの溜息をついている想像しながら顔を上げる

そこには………

「……ぅくっ、くぁ」

首をカックンカックンさせながら寝ているキョウスケおにいちゃんがいた
「………へ?」

思わず口から変な声が出た
え……ちょ、マジ?

これが現実の事かさえ認識できなくなってきてリアはオロオロしてしまう
立ったり、座ったり、キョウスケおにいちゃんの周りを無意味に回ったり顔を覗き込んだり。

そんなことをしていると不意に襖が吹っ飛びそうな勢いで開かれた

ドォオオオオオン!!!!

耳を塞ぎたくなるような音が鳴る
続いて同じく耳を塞ぎたくなるような大音量がこの空間に響いた

「あぁぁぁぁにぃいぃぃぃぃきぃぃぃいいい!!!!!!!!」
「クソマネェぇえええ!!!!!」
「京介氏!!!!」
「マネージャーさん!!」
「……お兄さん…………!」

5人が桐乃さんを先頭に騒音と共に部屋に乱入してきた
目を瞠って思考停止していると
皆の後ろに居た黒猫さんと麻奈実さんが肩を竦めているのが見えた

「自業自得ね、軽い体罰だけで地獄の試練が無いことに感謝すべきだわ」
「う~ん、これは京ちゃんが悪いから助けれないかな」

そんな二人の言葉を皮切りに五人が地面を蹴った
リアの位置から足の裏がはっきりの見えた。

その五人の足の裏がどこに向かったかは言わなくても分かるだろう。

「っっぎゃぁあああああああ」

そんなキョウスケおにいちゃんの悲鳴が今までで一番大きくこの部屋を揺るがしたのだった。
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