クリスマス小編


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クリスマスも本番となると街の賑わいはいや増していた。
クリスマス曲のダダ流しやイルミネーションやらは気の早いことに12月の頭からだったが、
こうして当日を迎えてみれば自然と高翌揚感が湧いてくるのがわかる。

そんな話をしながら、例によって隣に並ぶ加奈子の手を取り歩く。

「でもちょっと寒すぎじゃね、今夜」

ロングコートに身を包みマフラーを巻いてもまだこたえるらしく、弱った調子で加奈子は声を震わせた

「確かに、12月後半になって一気に冷え込んだな。そんだけ寒がるくらいなら手袋も着けときゃいいのに」
「…このままがいい」

言って繋いだ手をすこし強く握りなおす。
べつに、手袋したら手を繋げないってこともないだろうによ?

「おまえ、本当にスキンシップ大好きっ子だよなー。一年前は想像もできんかったもんだ」

軽くからかう台詞を投げかけるも、加奈子は俺の腕を絡め取って返事に代えた。


「じきにつくから、もうちょっとの我慢だ」

中央駅付近の雑踏に揉まれつつ、履き慣れない靴に苦戦する加奈子をほとんど抱えるようにして進む。
もっとも、歩きづらいのは俺も似たようなものだ。革靴なんて数ヶ月ぶりで窮屈さは否めない。
ようやく目的地のレストランにつく頃には、思わずふぅ…と一息洩らしたりした。

「それにしても京介、シーズンどころか直前によくこんな店の予約とれたなー。知り合いにコネでもあったの?」
「いやいや。地道に訪ねてキャンセル待ち頼んで回ったさ」
「ふぇぇ……やるじゃん。でも、電話じゃダメだったわけ、キャンセル待ち予約って」
「そこはホラ、下見も兼ねてだな。空くかどうかわからなくても店の雰囲気なんかは確かめときたかったし」

意外とマメだね、と加奈子が笑う。
そう言ってくれるなら無理を承知で歩いて回った甲斐もあったってもんだ。


事の起こりは数日前。
当初は俺のアパートでまったりするのも乙かと意見が合い、特別どうこう考えてなかったものの……
周りのクリスマスムードに当てられてか、こういう日にはそれっぽい過ごし方をしてみるかと気が変わり今に至る

「今更だけど、こんな洒落た店に連れてこられるなんて思わねーし、正直驚いた」
「まーな。お前とならファミレスだろうと焼肉屋だろうと楽しめそうだけど、
 そこは一応、俺ら二人初めてのクリスマスなわけだもんな、って思ってよ」

我ながら気取りすぎかと心配も無くはなかったが、加奈子の心証はまずまずのようで、ほっと胸を撫で下ろす。

「驚いたといえば、こっちこそ。ちゃんとした服装で来てくれとは言ったが、まさかドレスでめかしこんで来るとか」

ここの店ってドレスコード指定するほど堅いとこじゃねーんだけど。
加奈子が言うには、姉貴がむしろ気負いこんで送り出してくれたそうな。
お陰で俺のほうも出発直前に一度しか袖を通してないスーツを引っ張り出す羽目になった、という顛末だが…


「お~、勿体ぶってただけあって良い雰囲気じゃん」
「だろ? たまたま空席ができたのはツイてたよな」

ガラス張りの壁面からは夜景が広く見渡せる。
控えめの照明も相まって、俺達ぐらいの年にはやや不釣り合いな落ち着いた風情を醸し出していた。

「高かったろ、ここ。言ってくれりゃあたしも割勘したのに」

野暮を言う加奈子に丁重な断りを伝える

「その気持ちだけで十分だ。俺がほとんど一方的に決めたんだし、たまには格好つけさせろ」
「そーゆーもん…?」
「おう」

俺だってバイトで幾らかの収入はあるし、まして3つも年下の恋人をクリスマスデートに誘うのに割勘はねーわ。

席にかけ、軽く談笑をしつつコートを上着掛けに移す。
肩先まで露出した加奈子のドレスに、そりゃ上着羽織っても寒かったろうなと改めて納得。

その加奈子。
小さい子が背伸びしたような印象が関の山だろうと思い込んでたが、こうして眺めてみれば、なかなかどうして。
少なくとも小学生じみたとか俺の妹のようなとか、普段のそんなイメージは鳴りを潜めていた。

「なんだよ急にマジマジと…『無理めの服着てきたなー』とか言うなよ、本人もわかってんだから」

珍しく謙遜を覗かせたりもする。
ンなことは思ってもないんだが

「いや悪くねーって。お前の姉さん、見立ては間違いないと思うぞ」
「あんましおだてんなっつーの」

照れて視線を落とす姿に悪戯心が刺激された。
さりげなく手を取り、呼びかける。

「加奈子」
「な、なにさ?」

おずおずと視線がこちらへ戻るのを待たずに、愛しい恋人の唇をついばむ。
触れるだけのキス。

離れ際、面食らっている加奈子に「綺麗だ」と言うと
加奈子は盛大に表情を崩して、か細く「ばか」と呟いた。

<終>
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