「願い」破6


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                   【破】 6章 

高坂家 リビング
PM 2:10

<<桐乃side>>

「さっきはごめんなさいっ!!」

あたしはリビングに入ると、お母さんとお父さんに深々と頭を下げる。
しかし、その雰囲気や声には先程までのドロドロとした暗さは微塵も感じられず、
逆に潔ささえ感じられるものだった。

「もう、急に飛び出すもんだからビックリしたわよ。
 でもその様子ならもう大丈夫そうね。」

「うむ。桐乃も事故にあって精神的に疲れていたのだろう。」

「そうかもしんない。ほんとごめんね?」

二人から優しい声をかけられて、正直ホッとする。
叫んだ理由は事故とは関係ないのだが、説明するとまたややこしくなるので、
そういうことにしておこう。

「桐乃も明日から学校なんだから、今日はちゃんと休んどきなさいよ?」

「そう言えば俺って確か高3だったよな。
 明日から学校とか行ったほうがいいのかな?」

お母さんがあたしに学校の話を振ると、京介は自分の状況を思い出したのか、
明日からの予定に首を傾げる。

「うむ、その事だがさっき母さんとも話し合ってな。
 記憶が戻らないようなら無理に学校に行く必要はない。
 今は学校も受験前で特別授業になっている上に、すぐに冬休みに入るから問題はなかろう。」

「そうだよ、無理したら逆に体に毒だよ?」

落ち着くまでは家にいるよう京介に促すお父さん。
正直なところ、あたしも記憶が無い京介が学校に行くのは望んでいなかったので、
その提案には全面的に賛成する。

「あ、そっか。もうそんな時期だもんな。
 っていうか1月のセンター受験とかどうしようか?」


今が12月の終わりで受験間近ということに気付いて対応を聞いてくるが、
京介自身も実感がないのか、どこか他人事のような喋り方だ。

「記憶を無くした状態で受ける必要もないだろう。
 今のおまえはとにかく自分の記憶を戻すことだけを考えればいいんだ。
 勉強なんぞ、その後でゆっくりやっていけばいい。
 子供に1年や2年ぐらいゆっくりさせてやる甲斐性は持ちあわせているさ。」

「父さん…。」


「あ、それじゃお父さん、あたしも…「桐乃は学校に行きなさい。」…はーい。」

お父さんの頼もしい言葉に、京介は尊敬の眼差しを向ける。
それならばあたしも一緒に家に居たいと願い出ようとしたところを、
即座にお母さんに却下されて渋々頷く。

「明日から京介が家にいるなら色々買いに行かなきゃね。」

「うむ。昨日は買い物に行く余裕もなかったからな。
 荷物が多くなるようなら車でいくか。」

「それじゃあ桐乃と京介は家で待っていてね。 
 桐乃、母さん達が買い物に行ってる間に家の中を案内しといてちょうだい。」

「はーい。
それじゃ行こ?京介。」

お母さんから食料品や日用品などの買い物に出掛けている間に、
京介に家の中を説明しておくように頼まれる。
それに快諾すると、すぐ後ろに立っていた京介の手を握ってリビングを後にする。




「ここがお風呂で、あっちがトイレでね…。」

この家は狭くはないのだが、歩きまわるほど広過ぎもしない極一般的な住宅だ。
お風呂やトイレの場所を案内するのにそこまで時間はかからなかった。
お父さん達が車庫から車を出す頃には、ザッと一階の配置を案内し終えてしまう。

「ん。大体の場所は覚えたかな。」

「それじゃ、次は2階のあたし達の部屋だね。」


あたしを先頭に2人で階段を上がり、まずは階段のすぐ上にある京介の部屋の前で立ち止まる。

「ここが…俺の部屋か。」

その扉には【京介】と名前が書かれたプレートが吊るされている。
自分の部屋を前にして、京介は少し緊張した面持ちでゆっくりと部屋の扉を開ける。

5畳程の京介の部屋は、その主が1日居なかっただけで人気の無さが強まっているように見える。
目立つのは飾り気のないベッドと勉強机程度で、
机の上にも目覚まし時計やコンポが申し訳程度に置かれているだけだ。
椅子には数着の服が掛けられているが、
これらは金曜日にあたしが京介の服のコーディネートをあれやこれやと選んだ名残だ。

「なんていうか…思ってたよりずっと質素なのな。」

キョロキョロと部屋を見渡しながら、京介が呟く

「そだね。京介って趣味とかあんまり持ってなかったし。
 少し音楽を聞くぐらいだったかな。」

「んー。でもCDの数とかもそんなに多くないしな。
 ポスターとか雑誌もないし、俺って一体どんな高校生活送っていたんだよ。」

京介はコンポの横に置かれている何枚かのCDを手に取りながら、
記憶を失う前の自分が心配になったのかションボリと肩を落とす。

エロゲーにハマってたよ?と言おうかとも思ったが寸前で思い留まる。
ちなみに、京介に貸していたPCは定期チェックのために金曜の夜からあたしの部屋に戻っている。
べ、別に京介の履歴チェックとかじゃないからね?

「服は…ちらほらオシャレなのがあるんだな。
 これってもしかして桐乃ちゃんが選んでくれたやつなのか?」

「あ、それはねぇ、前にあたしと一緒に渋谷で買ったやつだね。」

「やっぱそうだよな。
 クローゼットにある他のとは全然雰囲気が違うもんな。」

「京介の服のセンスってすっごい地味だからねー。
 ちょっと派手なぐらいが京介には似合ってるって。この前もさぁ、……。」

服の話から始まり、話題は段々とあたしと京介が普段どう接していたかという方向に移っていく。

「へー。お互いの部屋で遊ぶことも多かったんだな。
 まあ、桐乃ちゃんとは仲が良かったみたいだし、部屋も隣同士ならそんなもんか?」

「あと京介は重度のシスコンだったからねー。
 あたしじゃないとダメなんだ!みたいなぁ?」

「ははは、そこまでいくと俺も相当重症だな。」

仲の良さを強調する京介に、あたしは悪戯好きなシャム猫のように笑顔を浮かべて茶化すが、
本当のことと信じていないのか無邪気に笑って応える。

「それじゃあ桐乃ちゃんの部屋はどんな感じなんだ?」

「えぇ~。あたしの部屋見たいのぉ?
 京介がどおしても見たいって言うんなら見せてあげるけどぉ?」

「へいへい。私めは重度のシスコンなので、
 どうか可愛い可愛い桐乃様のお部屋を見せて頂いてもよろしいですか?」

「ん。素直でよろしい♪」

二人でそんなコントをしながら、ワイワイと京介の部屋を出てあたしの部屋へと向かう。
彼氏を初めて部屋に連れてきた時のように、
ふわふわと浮わつこうとする心を抑えながらドアノブに手を伸ばす。

『そういえば部屋にちゃんと戻るのって金曜日以来だな。
 さっきは部屋に入っただけで電気もつけなかったし。』

そんなほんの些細なことがふと頭を過り……


―――――――――っ!!!

その時桐乃に電流走る。


そう、そうだ。あたしの部屋には土曜日の朝から誰も入っていない。
その前の金曜日には、シスカリの体験版が楽しみ過ぎてテンションが上がってたあたしは

メルちゃんグッズを部屋に出したままにしていたのだ。
例えば、メルちゃん抱き枕はスヤスヤとベッドの中で眠っており、
机の上にはメルちゃんフィギュアが可愛らしいポーズをとっている。
だけどこれだけならまだなんとかなる。
強引だが、友達からもらったものだと言い張れば何とかごまかすこともできるはずだ。

問題は、積みゲーをこなす為に机の上に置きっぱなしになっているエロゲーだ。
その名も

『鬼畜兄妹~でも大好きだから~』

内容にはストーリー性やオチなんてものは一切無く、ただただお兄ちゃんと妹がヤりまくるゲームだ。
そんなゲームなので、中身はもちろんパッケージも他人様には決して見せられるようなものじゃない。

そして、京介は記憶を無くし、あたしがオタクだということも忘れてしまっている。
つまり、今の京介はオタクの知識も免疫も全く無い、俗にいう一般人なのだ。
もし京介があたしの部屋で〝そんなもの〟を見てしまったら……、



『な、なんだこれはっ!?』

『京介、実はあたしね、エロゲーとかアニメが大好きなの。
 ううん、愛してると言ってもいいっ!』

『………ない。」

『え?』

『俺の妹がこんなにオタクな訳がないっ!!(ダダッ)』

『京介っ!?京介ーーー!!』


第3部  完



サアッとあたしの頭から血が一気に引いていく。

京介は記憶が無くなる前には、
あたしがどんな趣味を持っていても笑ったりしないと言ってくれていた。

だが、今の京介はどうだ?
もしかしたら前と同じように、あっさりと趣味を受け入れてくれるかもしれない…。

『……駄目駄目駄目っ!!』

都合のいいほうへ傾きかける頭を無理矢理矯正する。
そんな博打を打つのは、余りにもリスクが高過ぎる。
それで京介から幻滅されようものなら本当に目も当てられない。

「ん?どうしたんだ桐乃ちゃん?」

ドアノブを掴んだまま固まってしまったあたしを不思議に思ったのか、
京介があたしの顔を覗き込んでくる。
その言葉で妄想の世界からハッと立ち直ると、
慌てて振り返って京介の胸を押し、一歩でも部屋から遠くに遠ざける。

「や、やっぱりダメッ!!」

「ど、どうしたんだ、急に?」

「どうしてもっ!今部屋は見せられないの!」

「……はっはーん。
 さては部屋を全然掃除してなかったんだろ?
 別に俺は桐乃ちゃんの部屋がちょっとくらい汚なくても構わないぞ?」

『そんな可愛らしい理由じゃないっつーーの!』

態度が急変したあたしに最初は驚いていたが、何かを納得する素振りを見せると、
したり顔で汚くても大丈夫だとニヤけてくる京介を、心の中でバカやろーと叫び声をあげて罵る。

「あー!もういいから!京介はちょっと自分の部屋に戻ってて!!
 あたしがいいって言うまでは絶対に出てこないでっ!」

「あはは、わかったわかった。
 それじゃ邪魔者は退散しとくよ。」

「いい!絶対入ってきたら駄目だかんね!?」

あたしの慌てる姿が余程おかしかったのか、笑いこける京介の背中を押して、
無理矢理部屋に押し込む。
扉の向こうの京介に再度言付けると、バタバタと慌てて自分の部屋に向かう。



すぐに自分の部屋に戻ったあたしは問題のモノに目を走らせる。
今のところ、目につくのは抱き枕とフィギアとエロゲーの3つ。
それらを確認すると、ババッと本棚の荷物をベッドの上にぶちまけて
その後ろに隠された襖を開く。
オタクグッズで一杯になっている押入れにエロゲーとフィギアを強引に突っ込んでいく。

『あーもうっ!なんでこんなに邪魔なのが一杯あるのよ!』

押入れの中はエロゲーやフィギアなどで溢れかえっており、
思った以上に嵩張る等身大メルちゃん抱き枕はなかなか入りきってくれない。
なんとか無理矢理に押し込むと奥のほうで何かが崩れ落ちる音がしたが、
今はそんなことを気にしてはいられない。

『今の京介には〝こんなもの〟見せられないよね…。』

押し入れの中はオタクグッズと大きく形が歪められた抱き枕でぎゅうぎゅうになっている。
原型を留めていないメルちゃん抱き枕の目が、どこか怨めしそうにあたしへ向けられている錯覚に陥る。

『う…目を合わせられない…。
 浮気した男の人ってこういう気分なのかな…?
 ごめんね、みんなっ!京介の記憶が戻るまでの辛抱だから。』

そんなつまらないことを考えながら、隠し扉に手をかける。
心の中で謝罪の言葉を並べつつ、何かから逃げるようにピシャッと勢いよく扉を閉める。

『これでよしっと。後はこの荷物を戻せば大丈夫!』

ベッドの上にぶちまけた物を急いで本棚に戻していく。
このときには、既に意識は京介を部屋に呼ぶことで一杯になっていた。
こうしてあたしのオタクの扉は封印されたのだった。


<<京介side >>

時間は桐乃が本棚を元に戻しているときから少し遡る。


「仲がいい兄妹に汚い部屋を見られたくないなんて可愛らしいなぁ。」

桐乃ちゃんに自分の部屋へと無理矢理追いやられた俺はどこか場違いな感想に浸っていた。


「さて…それじゃあこっちも急がないとな。」

先程、というよりもこの家に入ってからずっと懸念したことを思い出し、
気合いを入れて指をポキポキと鳴らす。
それは、自分の部屋に隠された〝いかがわしいブツ〟をどうするかということだ。

俺も高校生だし、所謂そういうことに興味津々な年頃だ。
長い高校生活の中で18禁の本やら何やらをコレクションしているのはほぼ確定的だろう。
もし、記憶を戻すために俺の部屋で思い出の品を探そう、なんて流れになってしまうと、
家族に俺のコレクションと性癖を御開帳する危険性が出てきてしまう。
そんな恥ずかしくて死にたくなるようなイベントを回避するためには、
俺が家族の誰よりも早くそれを発見し排除するしかないのだ。

記憶は失なっているが、所詮以前の俺と今の俺は同一人物に過ぎない。
思考や性格が大きく変わることはないだろう。
つまり、俺が〝獲物〟を隠す場所を一番よくわかっているのは俺なのだ。
その考えに行き着くと、狩人のように鋭い目でザッと部屋の中を見渡して、
危険な香りがする場所に何点か当たりをつけていく。

「まずはベッドの下…。
 隠し場所としては定番中の定番だな。」

どこぞの傭兵のようにササっと床に伏せるとすぐに、
ベッド下の隅に小さめの段ボールが置かれているのを発見する。
それを慎重に光の下へ引き摺り出して中身を確認する。
箱の中には薄い写真集が何冊か敷き詰められているが、マニアックな類いは一切無く、どれもノーマルなもので一先ず安堵する。

「眼鏡をつけた美女の写真が多いな…。
 我ながらいいチョイスだぜ。』

記憶を無くす前の俺のセンスに称賛しながら、
その本をクローゼットの隅で埃をかぶっていた中学の教科書の束の中へ紛れ込ませる。
非常に勿体無いが、この本はこの後にでも処分しておく必要があるな。

「ここは……鍵が無いか。」

机の引出しで唯一鍵がついている一番上の棚に目を付ける。
しかし、周りに鍵は見当たらず、少し隠されていそうなところを探しても見つからない。
鍵が無ければ仕方がないか、と鍵の探索を断念する。
念のため、他の引出しの中を一つ一つチェックしていが、
引出しの中は文房具や高校のプリントなどが入っているだけで、大きな異常は見られない。

「他は問題無さそうだな…………ん?」

一番下の引出しも問題が無いことを確認して閉じようとすると、その奥にふと違和感を感じた。
うまく偽装はされているが、引出しの奥の壁がほんの少しだけ厚いのだ。
よく観察すると、薄い板がピッタリと付けられているが、ごく僅かな隙間が見える。

「ふふふ…甘い甘いぞ、以前の俺!
 このような小細工が俺様に通じるわけがないだろう!?」

そんなバカなことを呟きながら、その板に指を引っかけて少し強めに力を込める。
すろとカタッという音と共に、板が少しだけ前にずれる。
その隙間に手を伸ばすと指先に紙の感触が伝わり、それを慎重に手繰り寄せていく。

「なっ!?」

『なんじゃこりゃっーー!!!?』

口から思わず叫び声が上がりそうになるのを、理性で必死に押さえ込む。
出てきた〝ブツ〟はエロ本だが、ただのエロ本ではない。
あまりに衝撃的な品のため、無意識に両手を突き出して題名を再度確認する。


『妹シリーズNo. 117
 お兄ちゃんの妹観察日記』


題名も題名だが、表紙を飾っている女性が
どことなく桐乃ちゃんに似ているのが更に危険度を高めている。

『……ぅおいおいおいおいっっ!
 シスコンてレベルじゃねーぞ!!
 こんなもん爆弾どころか、核爆弾級じゃねーか!?』

中身をチラ見すると、桐乃ちゃんそっくりな女の子が兄貴役の男から
猥らな姿を視姦されるという非常にマニアックなシチュエーションがテーマのようだ。
妹のいる兄貴がこんなエロ本を隠していたことを家族にバレでもしたら……


『京介!あんたって子はっ!!』

『キモ過ぎ。近寄んないで…。』

『  死  ね  。』


「――俺、記憶と一緒に家族も失っちまうぞ……。
 これはさすがにシャレになんねえよ。さっさと処分しないと…。」

あまりにも危険な〝ブツ〟のため、エロ本を持つ手が無意識に震えてしまう。
家族には、特に桐乃ちゃんだけにはこんなものを見せるわけにはいかない。
見られた時点で俺の人生やら何やらが終了してしまう。

「どうする、どうする!…「京介ー。お待た…せ………?」…。」

「「――――――――っ!?」」

お互いの時間が一瞬にして凍りつく。
あまりに動揺し過ぎた俺は桐乃ちゃんが部屋に近づいてくるのに気付かず、
その桐乃ちゃんも扉を開けた状態で固まってしまった。
桐乃ちゃんの視線の先は俺、正確には俺の手にある雑誌に定まっている。
その表紙には丸っこい文字で『妹観察日記』と書かれており、
桐乃ちゃん(に似ている女)の裸の写真がデカデカと載っている。


「…………………。」

パタン…
トントントン
バタンッ

無言で部屋の扉が閉められて、桐乃ちゃんが階段を降りる音が響く。
最後にリビングの扉が閉められる音で麻痺していた俺の意識も覚醒する。


お、落ち着け。落ち着くんだ高坂京介!
クールになれ!状況を整理しろ!!
まず妹が兄貴の部屋の扉を開けた。
すると自分の兄貴が妹系のエロ本を手に突っ立っていた…。

えっと…なんだ、その………



「正直すまんかったーーーーっ!!!!」


事態を把握した俺は超高速で階段を飛び降り、
リビングに飛び込むと勢いそのままに頭を床に擦り付けながら土下座を決める。
ジャンピング土下座の世界大会があれば優勝間違いなしの完璧な土下座だった。

「…………。」

「いや、あれはっ…その、違うんだっ!
 ただ部屋を探してたら出てきたから俺のじゃなくてっ、けど俺の部屋だから俺のもので、
 それでも決して桐乃ちゃんを意識して入手したようなものじゃないんだ!?」

相当ショックだったのかソファに俯いたまま体育座りをしている桐乃ちゃん。
それに対して、土下座をしながらあたふたと器用に身ぶり手振りを加えて
言い訳にもなっていない言い訳を半泣きになりながらも繰り返す俺。

その後5分程言い訳を続けていると、桐乃ちゃんは、うーーと呻き声を上げながら、
耳まで真赤になった顔を上げて怨めしそうな眼で俺を睨んでくる。

「ほんとごめんっ!!
 あんなもん見せちまった俺が言うのもなんだけど、
 どんなことでも言うこと聞くから機嫌を治してくれないか?なっ!?」

「………なんでも?」

俺の何でもやる発言に反応して、桐乃ちゃんがようやく口を開いてくれる。
手を合わせて謝る俺はそれを好機と見て、なんとか機嫌を直してもらおうと、
桐乃ちゃんを真正面から見つめて語気を強める。

「あ、ああ!俺のできる範囲ならなんでもやる!
 永久奴隷でもサンドバックでも何でも言ってくれ!!」

「それじゃあ…付き合ってよ……。」

「―――え…?」

全くの予想外の答えに面食らった俺は思わず聞き返してしまう。
そんな俺に桐乃ちゃんは何も答えず、少し潤んだ瞳で見つめ続けるのだった。




                   【破】 6章  完
ツールボックス

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