「俺が妹と夫婦なわけが無い」ex01


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~エピローグ~

「も、もう一度聞かせてくれるかしら?」
「だから!ぶっちゃけいつになったら手を出していいかってことだよ!何度も言わせんな恥ずかしい!」
「わ、私の方がよっぽど恥ずかしいわよ!そもそも別れた女にそんなこと聞くなんてあなた正気なの!?」
説明しよう。俺は今、元彼女から正気を疑われている。いや、そうじゃない。それは本題ではない。
元彼女と言ったがそれはつまり、今は別の子と付き合っているからなんだ。
元妹で、元妻で、現恋人の桐乃。詳しい説明はここでは省こう。
俺はその子との付き合いで現在非常に悩んでいることがある。

「だ、だいたいあなた私と付き合ってる時はそういう素振りをほとんど見せなかったじゃない」
「あの頃と比べるなよ!俺もう23だぜ!?」
高校生の時は、まだ早いんじゃないかという思いと、
桐乃との関係がぎくしゃくしかけたこともあり、次の一歩を踏み出す勇気が持てなかった。
今思い返せば相当プラトニックな付き合いだったと言えよう。

「ヘタレだと思ってたらただの変態だったわ」
「ちょっ!?ひどくね?俺、わりと本気で悩んでんだけど・・・」
「そんなの知らないわよ、今さら私にそんなこと相談されても困るわ」
「お前以外に誰に相談すればいいんだよ」
「・・・あの新垣さんって人は?」
「あいつにこんな話したら殺されるわ!」
「というか、なんで本人に相談しないのよ。あなた達今さら遠慮する仲でもないでしょう?」
「そう見えるか?」
「見えるわね。私がどれだけ惚気を聞かされてきたか知らないのかしら?」
「しかし実際俺は拒否られっぱなしなんだけど・・・」
迫るのが急すぎたのかもしれない。
桐乃への気持ちを自覚してからも、約束の日までは兄として振る舞おうと決心した。
その反動からか、晴れて恋人となった日からは多少タガが外れてしまったかもしれない。
だが、待っていたのは俺だけじゃなく桐乃もだと思ってたんだが・・・

「そうね。私もちょっと意外だわ」
「あいつ・・・お前のこと気にしてるのかな?」
「それは無いわ。それこそ今さら遠慮する仲でもないから」
「それだとやっぱり純粋に俺とするのが嫌ってこと?」
「そうなんじゃない?」
「違うと信じたいっ!!」
「じゃあ何か別のことが気になってるんでしょう」
「別のこと?」
「そう。私だって好きな人とは触れ合いたいと思うわ。それを拒否するなら何か理由があるんじゃない?」
「理由ねぇ・・・」
「あの子、毎年この時期に不機嫌になってないかしら?」
「へっ?」
黒猫の唐突な指摘に素っ頓狂な声が出てしまった。
桐乃が?毎年?この時期に?

「鈍いのは本当に相変わらずなのね・・・」
「わからん!知ってるならもっとヒントをくれ!」
「先輩は自制するのに必死であの子の気持ちを思いやる余裕がなかったのかもしれないけど――」
「――けど?」
「あの子は先輩が思ってるよりずっと乙女チックだわ」
「・・・は?」
「それが答えよ。後は自分で考えなさい」
「おい、ちょっと待っ――!」
恥も外聞も捨てて一縷の望みを託した相手は、理解不能な暗号だけを残してさっさと帰ってしまった――





「桐乃がこの時期になると不機嫌になってるだって?」
言われてみればそんな気もする。
親父とお袋の命日が過ぎ、季節が夏に移ろうかというこの時期。
妙に不機嫌そうなあいつの顔が浮かぶ――

「つまり時期が悪いってだけか・・・?」
桐乃の二十歳の誕生日に一世一代の告白をしてから
何度かデートもしたし、いい雰囲気になったことだってある。
この3年間あいつの方から誘惑してくるような場面も多々あった。
にもかかわらず、あの態度――その訳は何だ?
思い出してみよう、先日のやり取りを――

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「なあ桐乃、明日出かける時間あるか?」
「へ?ナニ?突然。ご飯作らなくていいなら午後から出られるケド?」
「ああ、作らなくていいよ。桐乃の手料理もいいけど明日は外で食おうぜ」
「デ、デートのお誘い?ふ~ん、そんなにあたしと出かけたいんだ?」
「当たり前だろ。せっかくの休みなんだし、彼女と出かけたいって思って何が悪い!」
「ちょ、何でそこで開き直るのよ!こっちが恥ずかしいんですけどっ!」
「お前が俺の分まで恥ずかしがってくれるからかな」
「バカ!」
クククと笑いをこらえながら彼女を見つめる――
桐乃からすれば俺の態度がいきなり変わったようなもんだから、こうやって戸惑うこともしばしば。
俺が必死こいて兄妹しようとしてた時には桐乃から誘ってくれることがほとんどだったんだがなぁ。

「いいだろ?ちょっと出かけようぜ」
「うん、まぁ出かけるのはいいケド・・・どこに行くか決めてるの?」
「ああ。だけど今は内緒だ」
「ふ~ん、わかった。それじゃ明日はデートね」
「おう」
行き先は決めてる。渋谷だ。
むかーし桐乃と取材デートした時、高くて買えなかったあのアクセサリーショップ。
109地下二階の『SAMANTHAMcBEE』
今さらながらあの時買えなかった自分の甲斐性が情けないやら、
桐乃にちゃんとそういうプレゼントをしたことがまだないっていうのも引っ掛かってて、
この度、同程度(3万くらい)のアクセサリーをプレゼントをしなおしてやろうと思い立ったわけだ。





     ――次の日――

「相変わらずすごい人だかりだな」
「まあ渋谷だしね」
「ん?気に入らなかったか?」
「別に。ただあんたがこんな人が多い所に自分から行こうとしてたのが意外だっただけ」
「まあどっちかっつーと渋谷は桐乃に誘われてくることが多いな」
どちらかというと俺は賑やかなところより静かなところの方が好みだ。
なんせ俺の周りには黙ってても騒がしい連中がウヨウヨしてるからな。環境くらいは静かなところがいい。

しかしこの桐乃の様子・・・

「ひょっとして二人きりになれるところが良かったのか?」
「ばっ、バカ!何言ってんのよ!このスケベ!変態っ!」
「いて!わりぃ!冗談だよ、冗談!」
前にお前の方から二人っきりになろうと誘ったこともあっただろと突っ込みたいが、
わざわざ火に油を注いで険悪な雰囲気にする必要もあるまい。今日の目的はプレゼントだ。

「じゃ、食事の時間まで適当に街を見て回ろうぜ」

久しぶりの渋谷の街を二人で見て回る。
取材デートのあの冬の時とは違い、もう夏の日差しが降り注いでいた――


「え?本気?」
「ああ、欲しいのがあれば言えよ。買ってやるから」
適当にウィンドウショッピングを繰り返しながら自然と109地下二階へ訪れた。
ま、あの時の思い出話をしてりゃここに来るのも必然というものだが。

「さすがにあの時買いそびれたやつはもうないか」
「当たり前じゃん。あれクリスマス限定のやつだったし」
「ちょっと残念だな」
「え?なんで?」
「あの時買ってやれなかったのがな、今さら気になってんだよ」
「でもこのピアス買ってくれたじゃん」
そう言って髪をかき分け、耳に光るあの時のピアスを見せてくる。
あの時半ば無理やり買わされたプレゼントなのに、
こうやって何かの時には必ずと言っていいほどつけてくる。

「それを大事にしてくれるのは凄く嬉しいんだがな、それとは別にちゃんと俺からプレゼントしたいんだよ」
自分の意志で自分の好きな子に――何かをあげたいと思う。
あの時とは違う気持ちを込めたプレゼントをしたい。
それはとても自然なことだろ?

「えっ、えっと、そ、それじゃあ・・・」
顔を赤くしながら商品をのぞきこむ。
なんというか、素直に愛おしいと思う。

「なんだったらそこのピアスでもいいぞ」
ちょっとお高めの綺麗なピアスを指さして提案してみるが、ピアスは今持ってるのがあるからいいと断られた。
経緯はどうであれあの時買ってもらったこのピアスは今でも大事な宝物なんだと。
ちなみに指輪は俺が却下した。
理由は婚約指輪と結婚指輪を買う予定が既にあるからだ。
これを聞いた後、桐乃のやつ首まで真っ赤にしてたな。


「似合うかな?」
「ああ、すっげー綺麗だぞ」
「も、もう!そんな褒めなくていいってば」
買ったのはネックレス。
そんな派手なものではないが、丁寧に細かい装飾が施されたそれは上質なアクセサリと言えよう。
首から胸元にかけて桐乃を飾り立てる光が何とも形容しがたい。
ついつい胸にも視線が行ってしまうのは仕方無いんだ勘弁してくれ。

「じゃあ、もうそろそろご飯にしよ?」
「ああそうだな」
会計を済ませて店を出る。
桐乃は自然と腕を絡ませてくる。

この時俺は「ああ、俺は桐乃と恋人になったんだ」ってつくづく思ったね。






「いらっしゃいませー」
ウェイトレスの明るい声が響く――
どこで食べようか迷ったが、ちょっと贅沢をしたい気分だったので、ホテルのレストランに行くことにした。
ちょうど夕食の時間のせいか宿泊客と思しき先客がチラホラ。
でもまあこの程度ならあまり長く待たされることもないだろう。

「――あとこれとこれを二つずつ」
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
「桐乃もこれでいいよな?」
「うん」
「それじゃお願いします」
「はい。かしこまりました」
オーダーを済ませてグラスに手を伸ばす。
結構歩いて回ったから、さすがに喉が渇いていた。
それは桐乃も同じみたいだ。

「――っふぅ」
「途中どっかで飲み物買えばよかったな」
「そだね、今日は結構暑かったし。減点3ってとこかな?」
「おい」
「あはは!京介って昔っから詰めが甘いもんね」
からかいながらも上機嫌で笑みを見せる桐乃――
うん、これはいいカンジじゃね?

「もう一つ言うなら食事はあらかじめ予約入れておいてくれた方が良かったかな」
「んだよダメ出しばっかか?」
「んーん、そんなことないよ。ホラ、よく言うじゃん!好きなゲームこそ不満を口にするって」
「『~さえなんとかなればなぁ』ってやつか?」
「そう、それ!合格点に達してるから逆に減点が目立ってるだけ」
「じゃあ、今日のデートは合格か?」
「・・・うん。これも買ってもらったし」
頬を赤らめながらネックレスを弄る――
よほど嬉しかったのだろうか、今日の桐乃はよく喋る。

「それにさ、もうはっきり言って諦めてたんだよね!去年もおととしも何にもなかったでしょ?
 ああ、もう京介は全然気にしてないんだなーって思ってたから!」
「お、おう」
「今日、休みとってくれたのもデートに誘ってくれたのも――それだけですっごく嬉しかった」
「そ、そっか。それは何よりだ」
「それに・・・プレゼントも貰ったし。これだけで十分合格・・・」
「いや、そんなに喜んでもらえると逆に困るな。ただあげたかっただけだし!」
さっきから何かよくわからない理由で上機嫌になられても対応に困る。

「彼女にプレゼントするのに理由なんていらないだろ?」
「・・・え?」
「いや、だから、買う時も言っただろ?ちゃんとプレゼントしてやりたいって思ったって。
 そんな深い理由なんてないからそんな褒めるなよ――」
謙遜するようなセリフを並べつつ桐乃の顔を見ると、さっきまでの笑顔が消えかけていた。

「えっと・・・それ、本気?」
「え?ああ、そ、そうだけど・・・?」
「じゃあ、なんで今日デートに誘ったの?」
「そ、それはせっかくの休みだし・・・」
「今日の休みって、京介が自分からとったんじゃなかったの?」
「ああそうだよ。先輩に今度の水曜に用事があるからシフト入れ替えてくれって頼まれてさ」
「じゃ、じゃあ今日あたしと出かけれるようになったのってただの偶然?」
「偶然って言えば偶然だけど、俺は――」
「お待たせしましたー!!」
ちょうど会話を遮るようにウェイトレスが食事を持ってくる。
それっきりレストランでの会話は終わってしまった――





「・・・なあ、ひょっとして美味しくなかった?」
「え?美味しかったけど?」
「そ、そっか。ならいいんだ」
じゃあなんで無言で食べてたんだと聞きたい。
食べ始めから会計を済ませて外に出るまでほぼ無言だったのは何故なんだと。
いや、食事のせいじゃないことくらい俺にもわかる。
不味いどころかどちらかと言えばおいしい部類に入る味だったと思うし、
桐乃の様子が変わったのは食べ始める前だ。
なら原因は別のところにあるハズなんだが・・・さっぱりわからん。

「だいぶ暗くなってきたなぁ」
「そうだね。・・・今日のデートでは綺麗な夜景とか見に行かないの?」
「あんまり遅くなるのは、な」
「あ、そうだね。あたしと違って京介は仕事で朝早いしね」
「ちょっとくらいなら平気だぞ?遠慮するなよ」
「ううん、いい」
手だって繋いでるし、普通に会話もできる。怒ってるわけではいようだ。
だが、あのハイテンションはどこに消えたんだ?
地雷を踏んだというよりも、
無自覚にツボを押さえていたが、それをうっかり放してしまったというところか?

「今日はライブはやってないのかな?」
「よく知らないバンドのライブなんて、わざわざのぞかなくてもいいじゃん」
「取材の時に知らないバンドのライブにムリヤリ連れてった奴が言うなっての」
「あ、そっか」
うーん・・・、これはいけるんだろうか?
や、ぶっちゃけていうとそろそろいいかなぁ~?なんて思ってるんだよね。
桐乃も20だし、ちゃんと付き合ってるし、同棲してるし、結婚の約束もしてるし。
手を出したとしても倫理的に咎められる様なことは何一つないと思うんだよね。
俺だって男だし、もう23だし、いいかげん未経験という事実に焦りも出てきはじめてるし。
こう、上手いとこそういう流れに持っていけないだろうか・・・

「あ、ここお前がいきなり水かぶってびっくりした場所じゃね?」
「よく覚えてるね」
「まあ、印象に残る出来事だったしな」
「理由はそれだけ?」
「――なんだかんだで妹と二人で出掛けれたのが嬉しかったからな。あの日のことはよく覚えてるさ」
「シスコン」
「ほっとけ!」
口元に手をやってクスクスと笑う仕草がとても可愛らしい。
          • 血が繋がって無くてよかった。うん、ほんとに。
当時は色々パニくったり悩んだりしたけど、今となっちゃあこれで良かったってのが本音だ。

「それで今日はあの時と同じところに行ってたんだ?」
「まあそうだな。ダメだったか?」
「どうかな・・・ダメじゃないかも・・・」
桐乃だって覚えてるはずだ。あの時最後に寄った場所を。
ダメじゃないかも、だと?これはOKサインと受け取っていいんだな!?

「あ~、その、なんだ。どうせならあの時行った場所全部によってってみるか?」
「え・・・?」
ちょっとだけビックリした様子でこちらを見る。
俺は恥ずかしいやら緊張するやらでまともに桐乃の顔を見れないまま、つないだ手に力を込める。
立ち止まったまま動く気配はない。俺も何も言えないまま立ち尽くしている。
だが桐乃に意味は伝わってるはずだ!わかるってるんだろう?返事を聞かせてくれ!

「・・・・・いいよ」
普通なら街の喧騒にかき消されて聞こえないようなか細い声で、しかしはっきりと「いい」と言ってくれた。

「あの時と、意味が違うけど、いいんだな?」
返事は無い。かわりに桐乃はしっかりと頷いた。
その後、思わず早足になってしまったのは言うまでもない!
期待と不安と緊張で、俺の鼓動はMAXまで高まっていった――






目の前にそびえたつのはラブホテル――恋人たちの憩いの場だ。
以前、ここに入った時もそうとう心臓がバクバクいってたが、今日のはあの時の比じゃない。
幸い今日は平日、特別なイベントの日でもないので空室も多く、すんなり入ることが出来た。
今になって思えばクリスマスの夜に渋谷のホテルだなんて、よくあの日は空室があったなぁ・・・

ま、そんなことは今更どうでもいい。
それに本日をもって、この日は俺の童貞卒業記念日に決定されるわけだからな!

「俺、先にシャワー浴びてくるわ」
「あ、うん」
桐乃の顔をまともに見れないまま浴室に向かう。
服を脱ぐ時、やけに汗でべたついてもどかしい。
この汗の量は今日の暑さのせいだけでは説明できない。
ゆっくりしっかり気を落ち着かせながら汗を流していく――
まだだ・・・!静まれ・・・・・っ・・・・・俺のリヴァイアサン・・・・・っ!


「あ、あがったぞ」
「そ、それじゃあたしも入るね!」
そそくさと浴室に入っていく桐乃――あいつが今度あの扉を開けた後は・・・

ぶっちゃけ二人並んでエロゲーやってる時よりも“まとも”な状況なんだろうが、
今となっちゃあっちの方がまだ緊張しないで済みそうだ。慣れって怖い――

「で、電気は暗くしておくのがベターだよな」
よくわからない明りの調整に悪戦苦闘しながら部屋を暗めにする。
十分明るいよっ!って言われそうなのは、出来ることなら明るい所で見たい男の本音のせいだ。


「お、お待たせ・・・」
浴室からバスローブを羽織った桐乃が出てきた。
おそらくその下には何も着けていないのだろう。あの時のピアスと今日のネックレスだけをのぞいて――

「や、やっぱ桐乃って美人だな」
「ば、ばか」
「ほんとだぞ」
我慢できずに立ち上がり、桐乃を抱き寄せ、キスをした。――これでキスは何回目だっけ?
濃厚なものから軽いものまで全部含めれば、あの告白以来最低一日一回はしてるから・・・
まあいいや。慣れた行為のおかげで少し落ち着いてきた。それは桐乃もそうだろう。

「な、なんか当たってるんですケド・・・」
「この状態で欲情するなってのが無茶な注文だ」
「変態」
「彼女に欲情するのは当たり前だろ?」
あの時とは違う――もう、妹じゃないんだからな。そう心の中で付け加える。
桐乃の体をベッドに横たわらせてその上に覆いかぶさる――

「俺、今日のことは忘れられねーな、きっと」
そんなことを呟きながら桐乃の体をきつく抱きしめると、その体は硬く強張っていた――

「・・・やっぱヤダ」
「え?」
「ゴメン。やっぱりまだしたくない!」
よくわからないまま俺は突き飛ばされた。

「うわっ!な、何だ?どうしたんだよ?」
「ゴメン。やっぱり今日は無理!」
突然の拒絶に俺の思考は混乱した。

「ななな・・・!なんで!?」
「うっさいなぁ!嫌なものは嫌なの!」
「でもさっきまで・・・」
「ア、アレが急に来たの!だから仕方ないでしょ!!」
「は、はぁ!?」
「もういいから出よう」
「ちょ、ちょっと本当かよ!?」
ベッドから飛び起きてそそくさと服を着はじめる。
なになに?どーゆーこと?

「わ、わけ分かんねーよ!一体何があったってんだよ!?」
「だから生理が来たんだってばっ!
 今日出来なくなったのも、情緒不安定なのも、そのせいなの!
 そーいうことにしておいてって言ってるの!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あの日の回想はこれで終わりだ。その後のことはよく覚えていない。
二人してほぼ無言で帰路に着いただけだったと思う。

次の日からはまたいつも通り。
ただ、“そういうこと”をしようとすると目に見えて機嫌が悪くなるようになった。






「・・・・・やはりわからん」
思い出してみたところでどこでどう間違ったかイマイチわからん。
もういい。ここまで来たらもう一つくらい恥をかいてもいいだろう。

prrrrrr… prrrrrr… prrrrrr…

『はい、もしもし?』
「よう沙織か?俺だよ。久しぶりだな」
『そうでござるか?』
「そうだと思うけど?」
『いや、これは失敬。京介氏のお話はきりりん氏からよく聞いてるもので、つい』
「そ、そうか!それは好都合・・・」
『? どういう事ですかな?』
「いや、あいつ最近どうなのかなって」
『一緒に住まわれてる京介氏がそれを拙者に聞きますかっ!』
「社会人になってからは今までみたいに時間がとれなくってさ」
『すれ違いがちだという事ですかな?』
「すれ違ってるかどうかもよくわかんないんだけど、あいつ俺の事お前にはどう話してんの?」
『それはもう聞いてるこっちが恥ずかしいほどの惚気っぷりで、
 この前も京介氏に買ってもらったというネックレスを自慢げに・・・』
「それだっ!!」
『な、な、なんですか突然!?』
「そのネックレスがらみのことを詳しく聞きたい!あいつなんて言ってたんだ?」
なんという僥倖・・・!自分から切り出さずとも話題に上るとは!

『なんと、と言われても嬉しそうに自慢されただけですぞ?』
「そ、それだけ?」
『それだけでござる』
「おっかし~な~・・・」
あの日のことなんだから、何かしらダメな部分があれば何かしら愚痴ってそうなんだけどな・・・

『――そう言えば』
「何か思い出したか?」
『気のせいかもしれませぬが、はしゃぎっぷりが多少演技じみていたような・・・』
「本当に喜んでいるようではなかった、と?」
『と、言うより、口で言うほど満足していないような様子ではありました』
「やっぱりそうか・・・」
『何か心当たりがおありでも?』
「や、そのネックレスを買ってやった日のデート中にな、桐乃の機嫌が急に悪くなったことがあってさ」
『また無神経なことを言って怒らせたのではありませぬか?』
「怒らせたんなら怒られればそれで済むんだけどな・・・」
『? よく意味がわかりません』
「俺もよくわからないんだ」
『ならば本人に聞くのが一番でしょう』
「やっぱりそうなる?」
『拙者たちに聞いて解決したところで、その話はきりりん氏に筒抜けになりますぞ』
「そりゃそうだ。わかったよ、ありがとう。またな」
『いえいえこちらこそ。また皆で遊びましょうぞ!』
「そうだな」

―プッ
電話を切る。本題に入る前に切り上げたのは正解だったかもしれない。
この問題は要するに「あの時なんで桐乃は不機嫌になったのか?」
それがわからないことにはどうしようもない――




「ただいまー・・・っと、桐乃!?」
「おかえり京介」
家の玄関を開けるとそこには桐乃が待っていた。

「どうしたんだよ?」
「なによ、愛しい彼女に出迎えてもらって嬉しくないの?」
「いや、嬉しいけど」
「ならもっと嬉しそうにしてよ~」
あれー?何この態度?
ここ最近のどこかイライラしたようなオーラはどこに消えた?
ご飯にする?お風呂にする?とどこぞの新妻よろしく甲斐甲斐しく世話を焼いてくる。
最後に『それともあ・た・し?』が来なかったのが残念だが、
理由もわからず拒否られて、また理由もわからずOKされるようじゃ
ますます混乱するだけだからホッとしたけどね。

「・・・機嫌、直ったのか?」
「え~、何のこと?」
「お前、なんか最近不機嫌だったろ?」
「そんなことないよ」
ニコニコしながら皿を並べて夕食の準備をする桐乃――やっぱり変だ

「いや、そんなことあるね」
「ないってば~」
甘えた声で抱きついてくる。
その時、俺の目と鼻に二つの情報が同時に飛び込んできた――

桐乃の口からはっきりと伝わるアルコールの臭いと、
夕飯の準備の後かと思いきや、台所に残された空の酒瓶。
この二つの符号が示す事実はただ一つ――!!

「酒くせえ!!お前何飲んだんだよ!?」
「酔ってないもーん」
誰もそんなこと聞いてねえ!!完璧に酔っぱらってやがる!



「お前まさか酒飲んで料理してたのか!?」
「そんなことしないもん!京介が帰ってくるの待ってただけだもん!」
よく見れば手の込んだ料理が並んでる。
逆に言えば帰ってくるタイミングに合わせて完成させるのは相当難しいだろう。
作り終わって飲みながら待っていたってことか・・・

「じゃ、桐乃もまだ食べてないんだな?」
「一緒にたべよ?」
「その前に桐乃は水を飲め!この様子で何か食べてもすぐ吐くぞ!」
「やっ!!」
コップに水をついで持っていくも拒否られた。

「いいから飲めって!」
「やーだー!」
「頼むから飲んでください!」
イヤイヤと駄々をこねる桐乃をたしなめつつなんとか酔いを醒まさせようとすると
口を少しとがらせて顔をこちらに向けてきた。

「ん」
「な、なんだよ?」
「京介が飲ませて」
「だ、だからそうしてるだろ」
「ちーがーうー」
「違うって何が!」
「コップじゃなくて、京介が飲ませて」
「ば、バカ、何言ってんだ!!」
「やなの?」
しゅんと顔をうつむかせて口元に指を当てて上目使いで聞いてくる――
コイツ・・・狙ってやがる・・・

「お水ちょーだい?」
「ああ、もう!わかったよ!!」
ぐいとコップの水を口に含み、そのまま桐乃の唇に押し当て少しずつ桐乃の口内へと流し込む。

「っん、っん―――はぁ・・・」
「酔いはさめたか?」
「もう一杯ちょうだい」
「――っな・・・!ああクソ!!わかったよ!!」
もう一度コップに水をついで同じことを繰り返す。
桐乃の酔いを醒まさせるはずが、これじゃあ俺がのぼせちまいそうだ。



「京介、かお赤いよ?」
「お前のせいだろ!」
ニヤニヤしながらコップを片付ける俺の方を見てる。

「んふふ」
「ったく。なんだよ、楽しそうに」
「たのしいよ?京介と暮らすの」
「へ?」
「一緒にごはん食べるのも、一緒にかいものするのも、
 おへや掃除するのも、京介の服あらうのも、ぜんぶ楽しいよ。」
「いきなり何言い出すんだよ」
「京介は?」
「俺?」
「うん。京介はたのしい?」
くそ、この酔っ払いめ!いきなり何を聞いてくるんだ。


<続く???>
ツールボックス

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