「だからね、ご近所でも噂されてるのよ」
「だからそれは誤解だって言ったじゃん」
自由登校になった2月末。
あたしと京介はリビングでお母さんと向き合っていた。
「そうなんだけどさー、お母さん心配で」
そう言ってお母さんは困ったような顔で頬に手を当てる。
心配してくれるのは嬉しいけど、見当違いも甚だしいといい加減うんざりしてくる。
「あたしが京介とどうこうなんてあるわけないでしょ?」
「あんたはそーはゆーけどねー・・・」
お母さんはちらりと、京介を見ると、また一つ大きなため息をついた。
「もー、その為にこいつが一ヶ月一人暮らししたんじゃない」
そう、あれは10月初めのころ。
とある件で、お母さんにあたしと京介がただならぬ関係(キモッ!)ではないかと疑われたことがあった。
当然全くの誤解なので必死に弁解したんだけど、結果は芳しくなく、京介が一か月一人暮らしをする羽目になった。
その上、京介の部屋を自由に使っていいわけだから二重に万々歳だ。
でもま、そんなわけで。
「あれでチャラになったんじゃん」
「それはそうなんだけど・・・京介?あんたはどうなの?」
お母さんはまたため息をつくと、今度は京介に矛先を向けた。
むー・・・お母さんちょっとしつこくない?
「い、いやだから誤解だって言っただろ?」
どもんなバカ!
変に勘ぐられたらどーすんの!?
「こんなプリクラまで撮っておいて?」
お母さんはピッ!と指先に貼ったプリクラを見せてきた。
あ、そーだった!!
「だからそれは、桐乃への嫌がらせだったって・・・いてっ!つねんなよ桐乃!」
「うっさい!思い出したらムカムカしてきた!そーよ!あんたがあんなもん貼るからこんな事になったんじゃないっ!!」
こいつがこんなもん貼るから、あたしは京介と一か月も離れて・・・って違うっ!!
「い、いやだから悪かったって・・・」
「ふんっ!」
そんなもん謝罪になるかバカッ!
- 顔が熱いのは部屋が暑いせい!あーもーエアコンきき過ぎっ!!
「・・・まーねー、お父さんもこの件をこれ以上追及するなって言うんだけどねー・・・」
「ならもういいじゃん。ホントお母さんは心配性なんだから」
あたしが笑うと、お母さんもどうにか納得したのか、小さく息をついて笑顔を浮かべた。
「ふう、まあいいわ。あんたがそう言うんなら信じてあげる」
「ありがとうお母さん」
「す、すまねーなお袋」
誤解が解けてなによりなにより。
ま、本当に何もないんだから当然ちゃ当然なんだけどねー。
「はいはい。まあ、とりあえず・・・桐乃?」
「ん?」
「京介の膝から降りなさい」
「え?やだ」
あれ?なんで二人してため息ついてんの?
END
最終更新:2012年11月19日 00:55