111 名前: ◆odaAq0EgoE[sage saga] 投稿日:2012/12/07(金) 23:18:14.47 ID:kYdgp/fDO [2/6]
「ねえ・・これみて」
せなちーとの通信を切ってすぐ。
あたしは京介の部屋に行くと、さっき教えてもらったURLを京介のパソコンに打ち込んだ。
「・・・なんだこりゃ?」
ディスプレイを見ながら呟く京介。
そこにはさっきせなちーに見せられたのと同じホモ系イラスト・・・京介が桐乃くんとやらに襲われているシーンがデカデカと映し出されていた。
『突撃・乙女ロード!after』
「・・・お前はこれを俺に見せてどーしろと言うんだ?」
呆れたような声音で言う京介。
ま、まあそうだよね。
べ、別に疑ってたわけじゃないよ、うん。
セ、せなちーがあんまりにも断言してくるもんだから、ちょっとね。
ちょっとした確認みたいなものよ、うん。
まっさかせなちーのお兄さんとなんて・・・。
「・・・なんかおぞましいこと考えてないかお前・・・?」
「べ、別に!?」
あぶなーい!
どうやら顔に出ちゃってたらしい。
ドン引き気味な表情の京介から視線を逸らし、そっぽを向いて動揺を隠す。
「あの、さ・・・」
「ん?んだよ?」
「・・・せなちーのお兄さんとは・・・」
「なんか怪しいと思ったらやっぱりか!!なんもねーよ!?」
「だ、だよねー・・・あ、あたしは信じてるよ?」
「なにまだ少し疑ってます的な空気出してんのお前!?ホントに何もないんで勘弁してください!!」
ああ・・・このツッコみ具合は本当だ。
よかった・・・。
ウチの兄貴は、まだそっちにいってなかった。
「まだ健全だね・・・兄貴・・・」
「なんで泣いてるの!?俺はずっと健全だよ!?とりあえず戻ってこよーか妹!?」
「だって・・・せなちーがあんまりにも自信満々にゆーから・・・」
「あの女の脳みそは腐ってんだから信用するなよっ!!」
「だって・・・赤×京は世界を救うって言うし・・・」
「それで救えるのは腐海に沈没した特殊な世界だけだから!!てか、お前もそっちに行っちまってんじゃねーだろなっ!?」
本気で京介が心配してきたので、それはないと強く念を押しておいた。
「・・・まあいいや。んで?」
「え?」
「この不快なイラストはどーゆーことなんだよ?」
ピッと親指でディスプレイを指しながら京介が聞いてくる。
「ふ・・・不快って?」
「とぼけんな。これ・・・受け側どーみても俺だろ!?」
「うえっ!?」
京介の指摘に、あたしは思わず身構えるような体勢で一歩引き下がった。
す、するどい・・・。
思わずゴクリと喉が鳴る。
初めて見るホモ画像。
その片割れが自分だと見抜くなんて、とても普段のこいつからは考えられない鋭敏さだった。
今あたしは、とても恐ろしいことに気づいてしまった。
あたしはざっと引いた姿勢のまま京介にとりあえず聞いてみた。
「あ・・・あんた」
「んだよ?」
「なんでそんな簡単にホモ画像の自分を受け入れちゃってるわけっ!?」
「うおお、しーまったーっ!!!」
あたしの指摘に、頭を抱えながら明らかに動揺する京介。
その反応に、あたしの中の疑惑が確信に変わっていく。
「やっぱ・・・あんた・・・」
「違う!落ち着け!!これには深いわけが・・・!!」
ぶんぶんと必死に手を振りながら否定する京介に、あたしは・・・精一杯の優しい笑顔を浮かべた。
「ううんいいよ・・・京介。もういいんだ・・・」
「なにがもういいんだ!?てゆーか受け入れるなマジで!!とりあえず、その慈愛に満ちた泣き笑いの表情やめてください!!」
その後すったもんだあった挙句、どうにかあたしは京介の説明に納得がいったのだった。
「へえ。ガチホモRPG ねえ・・・」
「そーだ。そこで一回俺は、自分がモデルになったおぞましいイラストを見せられてるんだよ・・・」
聞けばあたしの留学中の話で、ゲー研にて黒いのとせなちーが、お互いに企画を出して競い合った時のことだとか。
「ちなみにどんなイラストだったの?」
「聞くな」
即答した京介は、なにやら頭を抱えてがたがたと震えている。
とりあえず、時折聞こえてくる「肉○器・・・輪○・・・」などの単語は華麗にスルーしとこう。うん。
「なるほどねー」
あたしは京介のベッドに倒れこみながら、今までのいきさつをようやく理解していた。
- しっかし、あんの腐海女子。人の兄貴になんてことしてくれてんのよ。
今度会ったら、それなりの目にあわせてやる。
具体的にはメル×アルのガチレズ本をこれでもかと読ませる。
決定。
「・・・でよう?」
「うん?」
あたしが密かにせなちーへの復讐を企ててると、ようやく立ち直ったのか、京介が再び声を掛けてきた。
「なに?」
「結局・・・このイラストはどーいうことなんだ?」
「あ」
そういえばそうだった。説明がまだだっけ。
んー・・・なんかもう面倒くさくなっちゃったなー。
せなちーのフォロー入れるのもなんか癪だし、とりあえず洗いざらい吐いちゃおう。
「いや実はね・・・」
あたしはせなちーが、乙女ロードで嬉々として話した、京介の人物像(腐女子補正有)についてとつとつと語ってみせた。
「なんだよ凄まじいまでの受けオーラって・・・ネコ耳着けたいとか、あいつの脳内で俺、どうなってるんだ・・・」
案の定京介は、ぐったりと疲れたように肩を落としてうなだれていた。
精神的にかなりキタのだろう。
幾分やつれたように見えた。
もしくはコーナーでぐったりと座り込んでる、ダウン寸前のボクサー。
「いやーホントあんたって後輩に恵まれてるよねー」
しかしあたしはそのまま追い打ちをかける。
なんでって?
楽しいからに決まってんじゃん。
「ああ・・・お陰様でな・・・」
応える声にも力がなく、あたしは益々ヒートアップ。
「邪気眼電波に腐れ脳の巨乳だもんねー・・・次あたり、高慢ちきな勘違いお嬢とか来るんじゃない?」
にやにやと笑いながらあたしはからかうように京介を嬲る。
ああ楽しい。
しかし京介はあたしの言葉に、
「・・・」
と、無言で視線だけを向けてきた。
「・・・なにその目?」
「いや別に・・・」
京介はなにやら意味深に、ため息交じりに呟いてから言葉を続けた。
「・・・あと、少し病み気味のモデルとタメ語上等のちんちくりんもいるな」
「あー確かに。いやーホントあんたって一癖も二癖もあるのばっかり周りにいるねー」
あたしはバタバタと足でベッドを叩きながらケラケラと笑った。
笑い過ぎて涙まで出てきた。
その時、ここぞとばかりに嬉々として京介をいじり倒しているあたしに、ぼそりと呟く声が聞こえた。
「・・・まあでも」
「ん?」
「全部お前の友達だけどな」
「うぎ!」
思わぬところからの反撃に、あたしは笑顔から一転、渋面を作る羽目になった。
うう・・・素で気づかなかったよ。
「そ・・・それはそうだけど・・・」
「良かったじゃないか。いい友達に恵まれてて」
ニヤリ、と笑って重ねられた言葉に、あたしはますます渋面を深くする。
「ぐ・・・あんた、さっきの仕返しね?」
「さあな」
あたしの反応に満足したのか、京介はもうすっかり元通りになっていた。
うー、くやしい!
もう少し弄りたかったのにっ!
115 名前: ◆odaAq0EgoE[sage saga] 投稿日:2012/12/07(金) 23:31:35.26 ID:kYdgp/fDO [6/6]
「しかしほんとに何してくれてんだろなあの腐れ姫は」
「腐れ姫?」
「赤城のこと」
「へーせなちーってそう呼ばれてんの?」
「いや直接じゃなく、ほかの部員の間での通り名みたいなもんだ」
「ああ。黒いのの邪気眼厨二みたいなもんね?」
「それはお前しか使わないし、お前は直接言ってるけどまあ概ねそんなもんだ」
兄貴はそう言うと、マウスを操作して件のイラストにカーソルを当てる。
しかし腐れ姫か。
なんというか、付けた人GJ.。
「しかしこれ、赤城の絵にしちゃ上手すぎないか?」
京介の言葉にあたしもイラストに視線を向ける。
「ああ。なんか凄腕絵師さん巻き込んで描かせたみたい」
「マジで?・・・意外にあいつのネットワークも広いのか?」
「まあ同好の士ってのは意気投合したら仲良くなるの早いからね」
「ああ・・・それはよくわかってるよ」
一瞬だけ兄貴が、優しげな眼差しであたしをみつめてきた。
その意図に気づいて、あたしはわざと大袈裟にそっぽを向いた。
「ま、まあ一般的な話だけどねっ!!」
「そうだな」
クスクスと笑いながら兄貴はあたしの言葉を軽く流す。
むー・・・なんかしてやられた感があって釈然としないんですけど?
「んでこれ消させたのか?」
「へ?」
あたしの返事に京介は言葉を重ねてくる。
「いやだってこれネットだろ?誰かに見られる前に消さねーと」
「あーそれ無理だって」
「な!?なんで!?」
落ち着いた様子から一転、ガタガタと椅子を蹴倒して京介が振り返る。
ああ・・・あたしも同じリアクションしたなー。
「んーなんかね?一旦ネットに流出しちゃうと、もう独り歩きして多岐に亘っちゃうんだって言ってた」
「ま・・・マジで?」
「マジで」
あたしがコクリと頷くと、京介は絶望したように頭を抱えた。
「あ・・・あんの雌ブタ・・・なんてことを・・・」
「まーどうせこれ見たって皆京介のこと知らないし平気じゃん?」
とりあえずありきたりの慰めの言葉を掛けてみる。
正直、今回こいつは理不尽な被害者なわけだし。
「そ・・・そうだよな。知り合いに見られることもまずないだろうし・・・見られても気づかないよな?」
「そういうこと。いくらこれが京介に似てたって、すぐそれって気づくのはよっぽどのことがない限り有り得ないって」
「だ、だな!腐った知り合いは赤城しかいないし、なら大丈夫だよな!」
ふー焦ったぜー、と安堵の息を吐きながら笑う兄貴。
その顔を眺めながら、あたしはにんまりと笑う。
なんだかほっこりとした気持ちを感じながら。
「まーね、あたしだってあんたと一緒のイラストに乗っかるのは嫌だけど、そこはまあ我慢するし」
「・・・はい?」
「ん?」
見ると、きょとんと京介があたしをみつめていた。
「・・・なんのことですか?」
「へ?いやだからコレ。あんたと一緒にいるイラストが流失なんて嫌だけど我慢するって」
「・・・」
「?どうしたの急に黙って?」
「・・・桐乃さん・・・」
「へ?」
「この俺を襲ってる相手・・・もしかしてお前なのかっ!?」
「ああああっ!!しーまったーっ!!」
あたしは思わぬ自爆に頭を抱えながら、どこかで聞いたような叫びを上げた。
NORMAL END
115続きその1
「お・・・お前まさか・・・俺に対してこんな・・・?」
「ち、違う!勘違いすんな!!こ、これはあたしの意思じゃなくて、あの腐った脳みその妄想だって言ったじゃん!!」
「に、にしたってよ・・・なんであいつが、俺を襲うお前なんてのに行きついちゃってんだ?しかもホモ画像に加工して・・・」
「そ・・・それは・・・」
ここであたしはぐっと言葉に詰まった。
だって言えるわけない。
『いやー実はせなちーとさーどっちの兄貴がよりシスコンか対決してさー延々京介のシスコンエピソード聞かせちゃったんだよねーwえ?どっちが勝ったかって?そんなのあたしに決まってるじゃーんwせなちーったら泣きながら『お兄ちゃんに言いつけてやるんだから!』なーんて捨て台詞残して逃げ帰っていったよーwきりりんだーいしょーりーっ!!www』
無理無理無理無理ぜったい無理。
絶対言えない死んでも言えない。
てゆーか言ったらあたしが死ぬ。
もう絶対に恥ずかしさで悶死する。
今更ながらに思う。
なんて危険なブツを抱えてしまったんだろう。
これは墓場まで持っていかないと・・・。
「おい・・・」
「え?な、なにっ!?」
不意にかけられた言葉にはっと我に返る。
いけないちょっとの間トリップしてたみたい。
落ち着け・・・落ち着けあたし。
「なにじゃねーよ・・・そこで言葉に詰まるってことはお前・・・やっぱり赤城に頼んで、これ描かせたんだな?一体どういうつもりで・・・」
「ち、違うっての!!」
思いも掛けない濡れ衣に、思わずカッとなる。
「こ、こないだせなちーと池袋行って、そんときにせなちーが『あたしのお兄ちゃんがシスコンで困るー』みたいなこと言いだしてきたの。うれっしそーにノロケ話添えて。そしたらあたしも『ウチの京介のがシスコンだけどねー』とか返すしかないじゃん?事実、そうなわけだし。そしたらさせなちーが『ウチのお兄ちゃんに比べたら先輩なんかシスコンじゃない』とか言い出すわけ!そうしたらこっちだってカチンとくるわけじゃん?『京介の方が絶対にシスコンだよ!』って言ってやったわけ。そーしたらあの腐女子なんて言ったと思う!?『お兄ちゃんは桐乃ちゃんのお兄さんみたく、他の女の子にふらふらしないであたし一筋だもん!』だって!!まあ、あんたが?あちこちフラフラしてるのは事実だし?それはあたしにも正直イライラしてるけど、それとこれとは話が別じゃん!?あんたがあたし好きなのなんてわかりきってるし?黒いのには悪いけど、あれでもうわかっちゃってるし?でもそんな言われ方したらカチンとくるってのよねえ!?だから言ってやったのよ!『兄貴、あたしがいないと死んじゃうって言ってアメリカまで迎えに来たんだよ?』って。あ、あとこないだ夜這いされかけたのも。そーしたらせなちーさー、涙目になって『お兄ちゃんに言いつけてやるー!!なんつって、泣きながら逃げ帰っていったわけ。チョー受けるw京介のシスコン舐めんなっての!ねえ!?・・・あれ?どうしたの京介?手で顔覆っちゃって?」
「お前・・・」
そう言ったっきり、京介は耳まで真っ赤にしながらあたしから視線を逸らした。
ん?耳まで真っ赤・・・?
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
そうしてあたしは本日2度目の絶叫を上げたのだった。
※
30分後
「・・・よーするにだ、これは、お前が俺のシスコンネタをさんざ赤城に暴露したことによる弊害ってわけだな?」
「うん・・・」
京介とあたしは、ベッドに並んで座りながら状況を整理していた。
て言っても、端にあたしが洗いざらい喋っただけだけどね。
「・・・はあ~・・・」
隣の京介が大きくため息をついた。
うう・・・嫌だなあ。
怒ってるのかなあ・・・。
あたしはどうしていいかわからず、チラチラと京介の顔色を横目で伺う。
「あ」
そんな事を繰り返してると、不意に京介と目が合った。
うう・・・睨まれてる気がする・・・。
「あ、あの・・・ごめん・・・」
「ったく・・・」
京介は不意にあたしの手を取ると軽く引っ張るように自分へと引き寄せた。
そのまま軽く持ち上げられて。
ポスン。
気が付けば、あたしは京介の膝の間に座っていた。
後ろから京介の手があたしの腰に回された。
お腹の辺りで組まれると同時に、頭の上に京介の顎が乗せられる。
京介が最近いつもしてくれる抱っこだ。
「京介?」
「・・・あーあー、明日っから俺どんな顔して赤城に会えばいいんだー?」
「う・・・だ、だってせなちーが自慢してくるから・・・その、あたしも・・・」
もじもじと両手の指を絡ませていると、京介が顎で頭をぐりぐりとしてきた。
「にしたって限度ってもんがあるだろー?お前まさかあたしの為に彼女と別れちゃったとか言ってないだろーな?」
すいません。言っちゃいました。
「桐乃・・・」
「わ、悪かったと・・・思ってる」
京介が頭の上でまた、ふうとため息をついた。
ううう・・・いたたまれないよう・・・。
でもそこで、不意に京介の声が柔らかくなった・・・気がした。
「そこまでしても・・・」
「え?」
「負けたくなかったってか?」
「・・・うん」
あたしは京介の言葉に素直に頷いた。
そう。あたしは負けたくなかった。
京介が今まであたしにしてくれたことは、世の中のどんな兄貴でもかなわないくらい凄いことなんだって言ってやりたかった。
そのまま会話が途切れ、あたしはどうしていいかわからず、とりあえず頭の上の気持ちいい感触を味わってると、不意に京介が吹き出した。
「京介?」
「いや・・・」
京介の顔が頭から離れた。
どうしたのかと見ようとしたら、今度は左の肩口に京介の顔が見えた。
その顔はもういつもの見慣れた京介の顔で、あたしはさっきまでの落ち込んだ気持ちなどどこへやら。あっという間に吹き飛んでいたりして。
そのまま京介はあたしの肩に顎を乗せると、少しだけ抱きしめる手を強くした。
「兄妹揃って同じようなことしてんなーって思ってよ」
耳に吐息がかかるくらい至近距離から言われて、ちょっと首を竦める。
「くすぐったいよ」
「ああ悪い」
言いながらも京介はあたしから離れず、あたしも安心して京介に寄りかかる。
「で?同じって何?」
「ああほら。こないだお前に写真送ってもらったじゃん」
「あー・・・あんたが負けたやつ」
「負けてねーよ。ツーショットプリクラすげー羨ましがられたし」
「あんまり見せびらかしてないでしょうね?」
「大丈夫。自慢したいけどグッと我慢してる」
「ばーか。・・・あたしまで貼ってるのせなちーにばれちゃったよ。かま掛けられて」
「あー・・・そりゃまた顔合わせづらい話が一個増えたな」
「まあせなちーにも、ほっぺにチュー話でお返ししといたからおあいこなんだけどね」
「はは・・・じゃあ、アレはばれないようにしないとな。ばれたら反撃どころじゃすまない」
「あんたが見せない限りばれないっての」
そうしてあたしは少し身をよじって携帯を取り出す。
ピピピと弄っていると、京介が声を掛けてきた。
「まさか待ち受けにしてないだろうな?」
「するか。もししてたらあんたもうこの世にいないし」
「・・・相変わらずですかあやせ様は・・・」
「むしろ悪化の一途を辿ってます」
「・・・俺、日々命がある幸福を噛み締めて生きていこう・・・」
「あたしが傍にいるんだから、それだけで超絶に幸せでしょうが」
「それが俺の命を危うくさせてるんですけどねえ・・・」
「確かに」
そうして二人で吹き出した。
「まあなるようになるか」
「まあなるようになるよ」
そう言って近づいていくあたしと京介。
そのあたしの手の中では、携帯のレンズをそれぞれ左右片方の目で見つめながら、今と全く同じことをしているあたしと京介の画像が画面いっぱいに表示されていた。
HAPPY END
115の続きその2
「お前!これはいったいどういうことなんだよっ!?お前が描かせたのか!?」
そんなあたしに向かって京介が詰め寄ってくる。
「さすがに看過できねーぞ、これ!?」
京介が怒るのももっともだ。
いきなり見せられたのが自分が襲われているホモ画像。
そしてその相手が、よりにもよって実の妹であるあたし(男性化)。
それは心中穏やかじゃないだろう。
全く本当に余計なことをしてくれる。腐れ脳みそめ。
- まあそれはそれとして、ここはきっちりと対応しなくちゃだ。
『今後の為』にも。
「知らないわよ」
「はあっ!?」
あたしはベッドから立ち上がると、ゆっくりと腕を組んでフンッと鼻を鳴らせた。
「知らないって言ったの」
「おまっ・・・現にここにこうして証拠がありますけど?」
「はあ?」
殊更小バカにする響きを含ませてあたしは応える。
「なんでそれがそこにあるだけであたしの所為になるわけ?そんなもの、あんたの後輩の腐れ姫の妄想の産物でしょ?あたしに関係なんか一つもないじゃん」
「ぐ・・・お、お前が何か言ったりしなけりゃ、こんなことにはならねーって言ってんだよ。そもそもお前が男として描かれている時点でおかしな話じゃねえか」
「はん?腐女子の脳内なんか理解できるかっての。大方あんたがあたしの下僕なのにインスピッちゃったんじゃないのー?」
「そ、そんなもん、赤城が知るはずないじゃねーか!」
「さあ?あたしそんなに接点ないからねー。案外あんたが自分で言っちゃったんじゃないの?僕は妹の下僕です、って」
ケラケラと笑いながら言うあたしの目の前で、京介の体がプルプルと震えだす。
「ん?心当たりでもあんの?まあねーあんたが口滑らすなんて日常茶飯事だもんねー。それをあたしの所為にされてもねー。どうせならもっとはっきり言っちゃえばよかったんじゃないの?」
あたしは一歩京介に近づくと、ひょいっと顔を覗き込むようにして言った。
「僕は毎晩妹に虐められて喜んでるドMの変態兄貴です・・・ってさ」
「んな自殺もんのカミングアウト誰がするかよっ!!」
言いながら京介は頭を抱えてぶんぶんと左右に振った。
「うああああああ!!!なんであいつ・・・俺がお前に攻められてるの知ってるんだよーっ!?」
そうなのよね。
せなちーのイラストは、実のところまったくの正解。
あたしと京介は『そういう関係』なのだ。
攻受の類いも含めて全て。
「・・・ほんっとーに、バラしたりしてないのね?」
「・・・当たり前だ」
あたしの問いかけに答えてくる京介。
だとするとさっきせなちーがスカイプで言っていた通り、こないだのあたしとの会話でインスピッただけってことか。恐るべし腐海人・・・ん?
「京介?」
「なんだよ?」
「・・・さっき、なんで間が空いたの?」
「?」
「あたしが本当にばらしてないのね?って聞いた時」
「・・・あ」
そう。なんか変だった。
ばらした覚えがないなら即答すればいいはずなのに、さっき京介は明らかに逡巡した。
「い、いや・・・その・・・」
「?」
あたしがジト目で睨むと、京介は作り笑いを浮かべて視線を彷徨わせる。
んー?なーんかおかしいなあ・・・ん?ははーん・・・。
あたしはニヤリと口元を歪めると、京介に体を摺り寄せるようにして密着する。
「お、おい桐乃・・・?」
その言葉を無視してあたしは京介の耳元へ唇を寄せながら、人差し指で京介の顎をなぞる。
「もしかして・・・期待しちゃったんだあんた?・・・どうした方がより一層虐められるかって?」
「!?そ、そんなことは・・・」
京介が喋ってる間に、フッと耳に吐息をかける。
瞬間、京介の体がゾクゾクっと奮えたのが伝わってくる。
そのまま囁くように言葉を紡ぐ。
「言い訳なんていらないよ・・・京介?」
「っ!!」
「・・・今夜は寝かせないから・・・ね?」
「お・・・はい」
恥ずかしそうにはにかむ京介の顔を見て、あたしの背筋にもゾクゾクとした快感が上ってくる。
「じゃ、とりあえず・・・あたしの部屋いこっか?」
「はい・・・」
従順に従う京介。
その姿を見ながら、あたしはペロリと唇を舐めると、今日の攻め方を色々と模索しだしたのだった。
※
「ん?桐乃ちゃんからメール?なになに・・・『せなちーGJ!!』・・・なんで?」
ADULT END
最終更新:2012年12月09日 06:50