過ぎ去りし遠くの日々への前奏曲


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680 : ◆36m41V4qpU [sage saga]:2013/05/24(金) 22:28:22.20 ID:7ipQRA2L0



 "過ぎ去りし遠くの日々への前奏曲"




「留学―――って何だよ?!」

俺は深夜、妹の部屋に居た。
最初に人生相談を受けてから随分時間が経ったと思うが
本当に俺達は色々な経験をして、色々な人達と知り合うことが出来た。
でも流石に―――今はそんな感慨に浸ってる余裕は無かった。


「だからそのままの意味」

「何で―――何でだよ!
おまえ、こっちで自分が出来ることを頑張るって言ってたじゃねぇか」


「やっぱり………気が変わったの」


「お、俺は―――」


「な、何………?
あんたが言いたいことがあるなら聞いてあげても良いけど………さ」


俺は例の
―――何でもひとつだけ俺の言うことを聞いてくれると言う
『約束』を思い出した

―――けど

「………………」

結局、舌の先からでかかった言葉を呑み込む


「ふぅ~ん
じゃ、あたしの話を終わりだから、部屋から出てってくんない?」


「お、俺は………」

「良いから………もう出てって」


別に何か物を投げられたわけじゃない
機嫌が悪い時みたいに叩かれたわけでも、蹴られたりもしてない
そして張り上げるような大声を出されたわけでもない

でも―――桐乃が静かに言ったその言葉は、普段のどんな行動よりも
俺がこれ以上何かすることを拒絶するのに充分な説得力が有った。

「………桐乃、俺は」

「おやすみ………京介」

―――バタン

俺は暫く妹の部屋のドアの前で茫然と立ちつくす。

つーか、この事を親父達は知ってるのか?
おふくろはともかく、親父はもう桐乃が遠くに行く事を
絶対に許さないんじゃねぇのか?

だから………俺が心配なんてしなくても
桐乃はもう何処にも行かないんじゃねぇのか?


いいや―――
でも………あ゛ぁぁー、俺は一体どうしたいんだ?


桐乃を止めたいのか?
それとも―――

結局、俺は自分自身の気持ちの整理はつかず(整理をつける方法も分からずに)
でも、とにかく何とかしたくて親父達の部屋に向かった。

麻奈実や黒猫に相談しようかとも思った。
でも俺自身で(どうしたいのかも分からずに)とにかく何とかしたいと思った。
―――いつまでも他人に頼ってばっかじゃ成長が無いだろう。



――――――でも
親父達の部屋に行って戻った後、俺は更にややこしい状況に陥った。

自分の懸念を解決しようと思って、意を決して両親に話そうとしたのに
その前に、悩みが単に一つ追加された形になった。


―――いいや、決して悪いことじゃない
これは本来喜ぶべきことなのだから


しっかし、何で色々な事が、こう立て続けに起きるんだ
ああぁ―――………………………やっぱダメだ、俺には無理だ

そして

『もしもし麻奈実―――』

あーあ、結局はこのザマである。
でも―――今回ばっかりは
どうしても麻奈実に話を聞いて欲しかった。



次の日
夕方、話があると予め言っておき早く帰宅した親父に向かって、
俺は思いきって切りだした。


「なぁ、親父………桐乃の留学を認めてやってくれ!
確かに前の時は、最終的にあんな結果になっちまった。
でもあの時はこの俺が―――俺自身が心配でほっとけなくて無理矢理
桐乃を―――妹を連れ帰ってきたんだ。
だから桐乃が半端で適当な気持ちで留学したわけじゃね!!
あいつは、あいつなりに考えて決めた事なんだよ!!!」

俺は一気に切りだした。


「話は分かった。
京介………おまえの言いたいことはそれだけか?」


あーあ、極道面が見る――見る、赤くなるのが分かる。
やれやれ………俺、また殴られるのか?
まったく、アクティブな妹を持つ兄貴は大変だぜ


―――と思っていたら

「お父様―――たかだか高校生の分際で
しかも他人の私がこの様に差し出がましい真似をしてすいません。
でも京介が―――先輩が言う様に
桐乃が―――お父様の娘が中途半端な気持ちで留学を決意したとは
私には絶対に思えません」

「わたしも彼女と同じ意見です。
桐乃はわたしの学校でも優しくて親切で、みんなの信頼も厚くて
わたしはそんな桐乃に憧れてました。
桐乃は―――わたしの親友はちゃんとした考え方を持った女の子です。
お願いします………桐乃をどうか信じてあげてくださいっ」


何故こういう話の流れになったのか?の詳細はハッキリ覚えていない。
でも昨晩、麻奈実に電話した結果―――それが黒猫とあやせにも伝わって、
今は俺が親父を説得する際の援軍になっていた。


「………………………………………」

親父はずっと黙っていた。
俺たちも暫く黙っていた。

流石に、親父がどんなに怒り狂っても
黒猫やあやせの目の前で、俺が殺されることはねぇと思うが


そんな事を考えていた時

―――『ただいま』と桐乃の声がした。

………しまった。
本当なら、本人関係無い所でサラリと問題を解決して
桐乃に余計な心配をかけねぇつもりだったのに

「ただいま
って言うか………な、何であんた達がお父さんと一緒にいるの?!」

「ハハハ」

親父が突然大声で笑い出した。
娘が心配過ぎて、ついに壊れちまってねぇだろうな?
このおっさん

「桐乃、おまえは本当に良い親友を持ったようだな」

「え?
う、うん………もちろん!」

「「「あの………」」」

俺と黒猫とあやせは困惑して、俺の親父と妹を見ていた。


「桐乃………おまえから兄とお友達に、ちゃんと話なさい」

桐乃の話はこうだった。
親父は予想通り最初は大反対だったが、桐乃の真剣な説得の結果
留学のことを、すでに認めているということ
そして両親は前回のこと反省して、金銭面から留学先まで自分達が全面的に
サポートする予定ということ

「な、何だ、そうだったのかよ………」

俺は桐乃を見た。


「何か文句でもあんの?」

「いや、俺が言う事は何もねぇよ」

………そっか、こいつはもう俺に人生相談をしてた頃のガキじゃないんだ。
俺が出しゃばらなくても、ちゃんと自分で親父達を説得して自分の夢に向かって
歩いて行ける。
そうだ桐乃は―――こいつは何時だって、よっぽど俺よりも出来た妹だっただろ?


「ところでさ、何で黒猫やあやせ達がいるの?」

「そ、それは………ねぇ黒猫さん」

「え、ええ………ねぇ先輩」

「お、おう………えっとな、用事の半分はすでに片付いたんだが―――」

「はぁ?あんた何を言ってんの?
まぁせっかくだし、黒猫もあやせも夕ご飯食べてく?」

「ええ………有り難う、そうさせて貰うわ」

「う、うん………そうしようかな」

親父への説得は見事成功したのに
俺たちの間には微妙な空気が流れていた。


「ところで、お母さんは?買い物か何かなの?」


「桐乃ちゃん、おかえり♪みんなご飯出来ましたよぉ」

まるでタイミングを見計らった様に
麻奈実はダイニングからリビングへ顔を出した。


「え゛えぇぇ?
な、何で………麻奈実さんがうちの台所に立ってんの!!!
ちょっと母さんはどうしたのっ?!」

「う~んとね
それはわたしの口からは言いにくいので―――」

「―――まさか、うちの親が離婚して、
お父さんと再婚するとかじゃないでしょうね?」

「な、わけあるか!!!」

そんなの俺が絶対に許すかよ!
親父は関係なく―――相手の男が誰であろうと………だ


「桐乃、母さんはだな………………」

親父は何となく言いにくそうだった


「まさか、お母さんに何か遭ったの?!」

桐乃は心配そうな顔をして言った。


親父もこういう事にはだらしなかった。
しょうがないので、俺がこの一家の長男らしく宣言する


「そうだ、母さんに―――俺ら家族のみんなに、とても良い事があった。
桐乃、喜べ………おまえに妹か弟が出来る」

「は?」

だよな、俺も昨日の夜
親父達に聞かされて、まんまその反応したよ

「おまえは、もうすぐお姉ちゃんになる」

「えぇぇぇ?」

「おふくろは、つわりが酷くて今夜は大事を取って病院に泊まるらしい。
でも安心しろ、明日にはちゃんと帰ってくるから」


まぁ、ギネス級の高齢出産も良いところだからな


「だ、だから?」

「だからきょうちゃんのお母さんとお話して
今夜はわたしが夕食作ることになったんだ」

麻奈実はニコニコしながらそう言った。

黒猫とあやせが微妙な雰囲気だったのはこのせいだ。
流石に、高坂家の明るい家族計画を聞いても
普通は何と反応して良いか分からないだろう

「そ、そうなんだ………お父さんおめでとう♪」

「………う、うむ」

まぁ驚いたけど
―――これは高坂一家の慶事には違いなかった。
俺は桐乃が麻奈実がうちの台所に居て食事を作ることに
もっと難色を示すかと思っていたが、赤ちゃんのことで
そんな事を忘れたかの様に終始ご機嫌だった。


「何だかとても不思議な気分ね―――この光景を見ると」

「はい考えてみれば、本当に不思議ですね
わたしが黒猫さんやお姉さんと、桐乃のお家でお夕食を食べてるなんて」

「確かに、あんた達が二人そろってうちの食卓に居るって
ちょっと………シュールで面白いんですけど」

「まぁ、良いじゃねぇか、食事は大勢で食う方が旨いしさ」

「ふふ、きょうちゃん―――みんなもお代わり沢山してください
はい、おじさん―――お酌どうぞ」


「麻奈実ちゃん………ありがとう
それにしても今日は、まるでおまえの妹が増えたみたいで賑やかだな?
なぁ―――京介」

「おう、確かにそうだな………親父」

俺には今日の親父が
ただの気の良いおっさんにしか見えなかった。

ついでに俺はどんな奴に見えてたのだろうか?


その後、
酔っぱらって眠りこけた親父を寝室に運んだ後

そういや、親父も最近は酒にめっきり弱くなった気がする。
もう若くはねぇもんな―――でも夜はお盛んの様だが
うおぉ………変な想像しそうになって、必死にそのイメージを消した。

普通どう考えても―――エロ×家族=嫌悪しか出てこない。


「んじゃ―――俺はみんなを送ってくるわ」

「わたしはお片づけが残ってるから、
きょうちゃんは黒猫さんとあやせちゃんを送ってきてあげて」

「ちょ、ちょっとお待ちなさい!」

何故か納得のいかない様子の黒猫が異議を申し立てた。


「ほら、良いから―――帰りましょう、黒猫さん♪」

「あ、あなた―――ちょっと」

あやせは黒猫の腕を組むと無理矢理ひっぱる様にして
玄関から外に出た。


「お邪魔しました、桐乃またね♪」

「うん、今日は超楽しかったよ
二人共………バイバイ」


帰り道
まずは黒猫を駅に送る事になり
俺達は三人で駅に向かって歩いていた。

「新垣あやせ、あなたは一体どういうつもり?」


「ねぇ、黒猫さん―――今日はわたしのおうちにお泊まりません?」

「は、はい?
あなたは何を言ってるのかしら?」

「おまえらマジでメチャクチャ仲良しになったんだな」

俺は二人のやり取りを見つめながら、少し感慨深く感じてそう言った。



「お兄さん、ごきげんよう」

「せ、先輩―――また明日」

「おう、またな」


俺は黒猫をあやせの家に送り届けた後、帰路についた。


                   ***
               

「あなた、説明は―――してくれるのでしょうね?」


「お友達がお泊まりに来るのは久し振りだから
今日は、トコトン二人の親睦を深めましょうよ………黒猫さん♪」


「だから私はそんな話を今してるわけじゃないわ
何故、ベルフェ―――田村先輩をあの家に残そうとしたのかを
聞いているのよ」

「やっぱり怒ってますか?」

「事と次第によっては
裁きの雷があなたに落ちることになるでしょう」


「ふふ、そうですね………
今からわたしが話すのは独り言です
だからそのつもりで聞いてください」

「ええ、まぁ………良いでしょう」



わたし、黒猫さんのことが大嫌いでした
―――でも今は凄く好きですよ
桐乃や加奈子と同じくらい大好きになれました

何故だか分かりますか?

黒猫さんの本当の気持ちがよく分かったからです

お兄さんと黒猫さんがお付き合いして
突然別れたのって桐乃の為だったんですよね?
それは、予め―――あの兄妹を素直にさせる為の作戦だった


「そ、そうよ。あなたの言う通り―――」


―――本当は全然違いますよね?

本当は好きで好きでしょうないから
自分の心に逆らえなくて告白しちゃって、
でも桐乃の辛い顔が見ていられなくて別れた



「………」


もしお兄さんとまたお付き合い出来たら
今度はどうするんですか?

他人の辛い顔はもう見馴れたから、今度こそ平気ですか?
黒猫さんだって
―――あなた自身好きな人があの時よりも増えた
それは同時に―――自分が自覚して傷つけてしまう人が増えてしまった
ってことですよね?


「だ、だから
それは………私は桐乃もあなたも
みんなをちゃんと納得させて上で―――」


―――それは絶対に不可能ですね

人間って嫌いな事を
―――嫌いな人を好きになることはきっと出来るんです
………それが素敵な物であればあるほど、誤解してたり偏見で
嫌ってる場合が多いから

わたしが桐乃の趣味を、何とか認められたように
黒猫さんや沙織さんとちゃんとお友達になれたように

でも好きな人を
そんな都合よく好・き・じゃ・な・く・はなれない

好きなこの気持ちを
簡単に忘れて、無かったことになんて出来ない


違いますか?


「いいえ………違わないわね」


だったら、他人が泣いても苦しんでも構わないから
自分の為に誰かを傷つけたとしても手に入れるしかない

黒猫さんは優しいから―――凄く優しいから
きっと、それは無理だと思います

だったらいっそ、みんなで仲良くお兄さんを共有しますか?


「………そ、それは」


「今、あの人達は―――あの家族は
お兄さんも桐乃も、お父さんやお母さんも、凄く幸せなんでしょうね」

「あ、あなた………何を言ってるの?」


幸せの形って本当はそんなに多くはないってコトです

人の気持ちを簡単に分けたり、共有することなんて
絶対に出来ない

あの家族を見ていて凄く―――凄く、羨ましかった
わたしもお兄さんとあんな風になりたかった

そしてわたしは黒猫さんほどお人好しじゃないから
本当は何が有っても―――誰が相手でも
絶対に………諦めつもりは な・かっ・た・ んです


「あなたは―――新垣あやせは、その言葉を過去形で言うのね?」


そうです………わたしはもう
―――――あ・の・話・を・聞・い・て・し・まっ・た・か・ら・


他人をどんなに傷つけても構わないから

自分自身もどんなに傷ついても構わないから

本当の自分は、永遠に忘れ去れても構わないから

自分だけは絶対に結ばれなくても構わないから

彼の幸せだけを願う―――傲慢で独りよがりで身勝手な愛


そんな愛情を貫けるのは
この世界で………たった一人しか居ません


そしてそれは―――――………………




                   ***



「おかえり、きょうちゃん♪
ご飯に―――あっ、ご飯は食べたよね~
だったら、お風呂にしますかァ?
そ・れ・と・も・………♪?」


「うん、じゃぁ一緒に風呂でも入る?」

俺はずっと前に麻奈実にからかわれたことを
思い出して、意趣返しのつもりで言った。

「えー?本当にー?」

「馬鹿、冗談に決まってんだろ
最近のばあさんは色気づいて困るぜ」

「もうっきょうちゃんの馬鹿
わたしだって冗談だったんだからねっ
ぷんぷん」


「あんたら相変わらず仲良いみたいね
つーか、家まで乗り込んでやるって………
ぷ、アハハ」

「げっ」


「ハァー?
"げっ"て………何よ?げってさっ!
あたしが相当機嫌良いフリしてあげてんのに
本当に、あたしが微笑ましいなって思って笑ってるとでも思ってんの?」

「………ぐ」

やっぱり普通に
ご機嫌はナナメだったらしい。

この前、麻奈実の家で昔話の鼎談をしたが
俺の妹と幼馴染みの関係は冷戦から熱い戦いに変わっただけ
の様な気が今更ながらしてきた。


「ふふ、もうわたしは帰るから
またね………きょうちゃん、桐乃ちゃんも」

苦笑しながら麻奈実は言った。


「いや、俺が送って行くって」

「ううん、大丈夫。そろそろ―――」

―――ピンポーン

「よぉーす
ガーディアンのロック様がお迎えに参ったぜ」

「よぉーす
なるほど、おまえか。ちゃんと元気にしてたか?」

「おうよ
俺は元気だぜ、あんちゃん
つーか、この家もなかなか久し振りだ………ぜ」

暫く、我が家の内観を眺めていたロックだが―――

「げっ」

―――ロックは桐乃と目が合うと
さっきの俺の様な奇声を上げていた。

「あん゛?
裏切りもんの分際であんたが、あたしに何か文句でもあんの?」


「ひぃー、………姉ちゃん、速攻で帰ろうぜ」

「もう、ロックったら。じゃぁね、二人共」

「アディオス、あんちゃん!
あ、あんちゃんの妹のおまえも………な」


「ふんっ、もう二度と来んなつーの!」

やっぱ………色々な意味で
昔の様にはいかないんだと俺はしみじみ思った。


「うん?………う~ん?」

「何だよ………ロック、どうかしたか?」

「そういやさ、超古代の大昔に
このうちで俺って結構色々なゲームさせて貰ったよな~
って思ったんだけど―――あれ?
でもそれって、あんちゃんの部屋だっけ?」


「「「………………!」」」


「ほ、ほら………良いから帰るよ」

「ラジャー
じゃあ、マジでアディオス!」


麻奈実達が帰った後も
俺達兄妹の間には、時間を凍らせた様な冷たい沈黙がずっと横たわった。


「………」

「………」


おそらく
俺たちは二人共―――まったく同じことを考えていると
俺は感じる。


「ねぇ………話があるから、後であたしの部屋に来て」

暫くして桐乃はとてもゆっくりと静かに
―――しかし強い決意をした表情で俺に言った。


「………ああ」


俺は桐乃の部屋に行く前から
桐乃が何をこれから話すのかが直感的に分かった。


新しい命が生まれると分かった祝うべき今日この日
まさに、今この瞬間こそ(だけ)が
―――俺達兄妹の間に決して消えることなく燻っている
まだ『名前』のない(正体もハッキリ分からない)この不可思議な感情に、
ケリをつける最初で最後のチャンスかも知れない。


『俺達はお互いをどう考えているのか?』

『俺達はどうなりたいのか?』


本当は無理に決着も名前もつ・け・る・必要なんて、
その必要なんて全く無いのかも知れない―――このまま曖昧なままにして
二人の現在の関係を時が自然に、何かに変えてくれるのを待つ方法だってある。


名前を付けようとしなければ、その気持ちを俺達が言葉で呼ぶ必要はなくなり
決着を着けようとしなければ、その気持ちを否定も肯定もする必要はない

何かを望むいうことは
―――同時にその何かを失う可能性を、自ら作り出すことと同じだ。


桐乃………おまえはそれでも、俺に答えを求めるのか?




その夜
桐乃は―――前回留学へ旅立つ前夜、俺が見ることが出来なかった
あの『アルバム』の中身を俺に見せてくれた。





―――そこには俺がかつて本当に好きだった初恋の女の子が写っていた。





おわり
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