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***SS5 ***ゆいりつデート 唯「おーい、りっちゃーん!」 律「遅いぞ唯ー!」 唯「うぅ、ごめーん!」 ぽかぽか日差しが気持ちいい日曜日、私とりっちゃんは二人で買い物に出かけることになっていた。 本当は軽音部の皆で行くはずだったんだけど、他の3人は急用でパス。 でもせっかく約束してたんだしどうせ暇だから、ということで二人だけで行くことになったんだけど… 律「……」 唯「……」 どうしよ、いつもは時間を忘れるくらいに弾む会話が今日は続かない。 だってりっちゃんのこと、まともに見れないんだもん。 アクセサリーつけたりおしゃれな服着てるわけじゃないのにすごくかわいくて、女の子っぽいから。 あ、そういえばこの二人だけで出かけるのって何気に今日が初めてかも。 うぅ、なんか恥ずかしくてまともに顔見れないよ… 律「あ、あのさ」 唯「え!?な、なに?」 律「今日のお前な、その……ぃぃょ」 唯「え?なに?」 律「だ、だから、……ぃぃ」 唯「えと、聞こえないよ…?」 律「かっ、かわいいって言ってんだ!」 唯「へ…?」 律「ヘアピンいつもと違うし靴もかわいいし服もおしゃれだし!とにかく今日のお前はかわいいの!」 唯「……あ…ありがと」 律「……おぅ」 唯「……」 律「……」 さっきからまた無言になっちゃった。あんなこと言われたら、ますますりっちゃんのこと意識しちゃうよ… でも、私のことかわいいって言ってくれた…えへへ、やっぱり嬉しいな。普段そんなことほとんど言われないし。 何より、りっちゃんに言われたことがすごく嬉しいかも… 律「…買い物、どこ行く?」 唯「あ、私は特に行きたいとこないかな。りっちゃんにまかせるよ」 律「私も別に…買いたいものとかないし」 唯「え、そうなの?」 律「うん…だ、だからさ」 唯「?」 律「これから、その…デート、しようぜ」 唯「え…デ…?」 律「出かける時はたいてい澪たちが一緒で、お前と二人だけで遊んだりなんか食ったりすることなかっただろ。だから…」 りっちゃんは顔を真っ赤にしながら私の服の袖を指先でおずおずと掴んだ。というより、つまんだって言った方がいいかな。 あ、なんかいい匂いがする…シャンプーの匂いかな。りっちゃん、こういうの使ってるんだ… りっちゃんの髪から漂う匂いを感じながらぼんやりとそんなことを考える。縮んだ距離は、それくらいに近かった。 唯「…うん…い、いいよ」 律「じゃ、じゃあ…行くか!」 唯「うんっ!」 唯「ふぃー、今日は楽しかったねー!」 律「お前、あんなにあちこちで食って大丈夫なのか?軽く英世さん3人分は食ったろ!」 唯「いやぁ、私いくら食べても太らないんだー」 律「澪とムギが聞いたらマジ泣きするレベルだな…」 唯「えへへー♪」 夕方、軽くなった財布の感触をポケットに感じながら、私は隣を歩くりっちゃんに視線を向けた。 …そういえば。一つだけ、聞きたいことがあるんだよね。 唯「ねぇりっちゃん」 律「ん?」 唯「なんで、デートなの?」 律「え?なんでって…」 唯「二人で出かけたいだけなら、わざわざそんな言い方はしないんじゃないかなって」 律「……」 唯「あ、あはは!ごめん、変なこと聞いちゃったね。そんなのどうでもいいよね」 律「…そう言わなきゃ、特別じゃないだろ」 唯「え…?」 律「ただ遊びたいってだけなら、他の誰かと出かけるのと同じだろ。それじゃ、嫌なんだ」 唯「どうして…?」 律「…お前と出かけるのは特別だから」 唯「……っ」 りっちゃんは私を抱きしめた。夕日に照らされて赤く染まる道端で、私たちの影は一つになる。 唯「と、特別って…」 律「…わかるだろ?」 唯「……」 なんとなく、りっちゃんの言いたいことはわかる。 でもそれを口にするのが恥ずかしくて、怖くて…私はただ、りっちゃんを抱きしめ返すことしかできなかった。 律「…唯?」 唯「……」ギュ 律「…なぁ唯、今日のお前な、ホントにかわいいぞ」 唯「…そう?」 律「ああ。私が言うんだからホントだよ」 唯「…澪ちゃんより?」 律「あぁ。つうか、あいつはこういう格好しないだろうな」 唯「…そっか」 律「唯?」 唯「…なに?」 律「好きだよ」 …ねぇりっちゃん、キスってすごいね。言葉なんてなくても、たくさん気持ちが伝わってくるんだよ。 私のことを想ってくれる、りっちゃんのあったかい気持ちが。ねぇ、私の気持ちも伝わってる? ううん、だめだよね。たとえ伝わってたとしてもちゃんと言わなきゃ。だって、りっちゃんはちゃんと言ってくれたもんね。 恥ずかしくても怖くても、ちゃんと言ってくれた。だから、私も―― 唯「…りっちゃん?」 律「…ん?」 唯「大好き。私、りっちゃんのこと大好きだよ」 律「……」 唯「りっちゃん?」 律「…顔見んな。…ハズいだろ」 唯「…じゃあ、こうしよう」 律「…おはよ」 唯「おはよう、りっちゃん」 次の日の朝、私とりっちゃんは待ち合わせをした。まだ門が開いて数分。私たち以外に誰もいない、静かな音楽室で。 学校でこうして時間を決めて待ち合わせをするのもなんだかんだ初めてで、とても新鮮な気がする。 律「…皆にはいつ話すか。こういうのって、内緒にしない方がいいよな」 唯「いつでもいいと思うよ。焦らないで私たちのタイミングで」 律「おー、お前にしちゃ、まともな意見だな」 唯「む、バカにしないでよ?こう見えても気配りはできるんだから!」 律「はいはい、これから期待してますよ」 唯「んもう!……」 律「…唯。おいで」 唯「…うん」 優しく抱き寄せられて、私はりっちゃんの胸に顔を埋める。ちょうど昨日、私がりっちゃんにしてあげたみたいに。 律「…これから毎日、こうしような」 唯「うん」 律「あとさ…その」 唯「?」 律「…言ってもらえると嬉しいかも」 唯「なにを?」 律「…すき…って」 唯「もう、りっちゃんは欲張りだね」 律「…るせー」 唯「へへ…うん、いいよ。毎日いっぱい言い合おうね」 律「…うん。私も言う」 唯「じゃ、一緒に言おう?せーの」 「「好きだよ」」

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