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SS33ぼんやりと窓の外を見ていると、不意に唯が歌い出した。

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yuiritsu

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SS33


ぼんやりと窓の外を見ていると、不意に唯が歌い出した。
教室は静かで、唯の歌声がやけに響いてる。
いつの間に二人きりだったんだろう。ついさっきまで私達の他にも誰か居たような、ずっと前から二人きりだったような。
とにかく、今は教室に唯と私しかいない。静かな空間に唯と二人きりなんて久しぶりだ。

私達は二人で唯の机の上に座って他愛ないお喋りしたりふざけたりして、進路指導の部屋に行った澪とムギを待っていた。
ホントは私達だって受験生なんだから一緒に行った方が良かった。
そうわかっていても、嫌なことは極力後回しにしてしまう。唯と私の共通点のひとつ。

オレンジ色に染まる部屋にぴったりの歌が心地よくて、頭を唯の肩に預けた。
目を閉じたら、歌声に包まれて溶けてしまうような気持ちになった。
小さな歌が止むと今度はそっと手を握られた。目を開けると繋がれた私達の手。
その手が唯の唇に寄せられてそのまま手の甲にキスをされた。
なんだか心が隅々まで一杯満たされて、身体中がやんわり熱くなる。
顔を上げて、唯の横顔に口付けた。温かくて柔らかい頬っぺた。
唯が顔をこっちに向けて笑った。嬉しそうに見えるのが自惚れなんかじゃなければ良いな。
今度は唇と唇をくっつけた。


澪の書くメルヘンな詞で痒くなるような私だけど、恋なんてしてみたら今みたいな時間を愛しく感じてる。
指を絡め合ってキスをして、なんて。
また唯の顔が近くなって、目を閉じると今度は瞼にキスされた。薄い皮膚の上に優しく唯の唇が触れたのを感じる。
唯は、りっちゃんは睫毛まで可愛いね、なんてわけのわからないことを言って反対の瞼にも口付けた。
瞼を閉じる寸前に見た私達から伸びる影は二つが一つになっていて、唯と私のゼロ距離を感じた。

廊下から声が聞こえてきて、また後で、とアイコンタクト。
何もなかったふりをして、唯がまた歌い出して、私達は友達の顔をして教室に入ってきたムギと澪を迎えた。

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