川 ゚ -゚)は真実を何も知らないようです 本編


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真っ白な部屋に堂々と存在するピエロ人形は、恐怖の対象だ。
其れが視界に映るだけで、酷い吐き気と頭痛が同時に私の身体を犯す。
さらに、ツンとした刺激臭が鼻腔を刺激する。
うっ、また嘔吐しそうだ。


川; ゚ -゚)「グェッ、ハアハア……」


部屋中に音を反響させるタイルが敷き詰められており、嘔吐した汚物の着地音が私の世界に響く。
窓も扉も存在しないこの世界に、何故私は存在する?
其れすらも解らない。


川; ゚ -゚)「胸糞悪い気分だ……」

序に言ってしまえば、この立派なピエロ人形を畏怖している理由も解らない。
解らない尽くしでどうしようもない。
何か、ヒントが欲しい。
このままじゃ精神的に辛い。


川; ゚ -゚)「何故、私は深紅のドレスを着ている?」


嘔吐物で少し汚れてしまった深紅のドレスは、慣れていないせいか、非常に動きにくい。
其ればかりか、奴隷が装着してそうな鎖付きの首輪と、蜜壷から延びている鎖が動作に制限を掛ける。
首輪の鎖は、天井の中心に存在する正方形の穴から出ており、穴の奥は漆黒の闇が広がっていることが確認できる。
蜜壷から伸びている鎖は、ピエロ人形の正面に存在する宝石箱の中に続いているようだ。
あの宝石箱には一体何が入っているのだろうか?


川; ゚ -゚)「私は確か、買い物してて、それから……」


・・・・・・駄目だ、思い出そうとすると頭が割れそうになる。
過去のことも一切思い出せない。
自身の頭の中に存在する記憶は、自分の名前だけ。
それ以外は、この部屋と同じで、真っ白だ。


川; ゚ -゚)「とりあえず、何かしら行動してみようか」


私は、首輪から伸びている鎖を引っ張った。
すると、鎖はスラスラと伸びていくのと比例して、蜜壷から伸びる鎖は私の中に侵入していく。
身体が震える程の歓喜を覚える。
暫く余興に浸ってから、今度は蜜壷から伸びる鎖を引っ張る。
今度は、首輪の鎖が引っ張られた。
私は其の行為にも快感を覚える。
何これ、病み付きになりそう……。







川; ゚ -゚)「とりあえず、この鎖の仕掛けは解ったが……」


私は、はしたない思考を捨て、真面目に脱出するルートを考えた。
つまり、この鎖の長さには限度が有る。
何処かに鎖を巻きつけ、限界まで天井の鎖を引っ張れば、上の穴から脱出できる。
しかし、この部屋には鎖を巻き付けられそうな物体は存在しない。
存在するのは、人と同じサイズのピエロ人形と小型の宝石箱、10:00と書かれた白く小さな箱型のデジタルタイマー。


川; ゚ -゚)「しかし、あの宝石箱には何が入っている?」


川; ゚ -゚)「とりあえず、鎖を手繰ってこっちに持ってこよう」


蜜壷から伸びる鎖を引っ張る。
すると、その宝石箱の中から赤子の泣き声が上がる
余りに予想外な現象に私は混乱した。


川; ゚ -゚)「え、何で泣き声?え?」

これはピエロ人形に畏怖してるとか関係ない。
今すぐ彼を救わなければ。
ん?彼?
何故、あの泣き声だけで男だと判る?
何故、救いたいと思った?
理由は解らない。
ただ、あの子は助けなければならないと本能が告げる。
私はピエロ人形に接近する。
彼と私の距離が短むにつれ、嘔吐と頭痛が酷くなる。


川; -)「ハアハア……ゲェェ!!」

びちゃびちゃと汚物をぶちまける。
純白のタイルが、下品な色に染まってゆく。
美しい色彩だった深紅のドレスも、汚物塗れになった。
でも、そんなの関係ない。
私はそれでも、行かなければならない。


川; -)「うっ……」


余りの頭痛に失神しそうになるも、私は踏ん張った。
あの子に会わなきゃ・・・・・。
其の使命感だけが、私の足を前に進ませる。








川; -)「ハア、ハア……」


「おぎゃ、おぎゃー……」


川; -)「ふふ、可愛いな」


掌サイズの小さな、小さな、命を眺めて口元が緩む。
赤子は臍から鎖が出ており、私と繋がっている。
これは一体何の意味があるのか?
私を此処に閉じ込めた輩は何を望んでいる?

まぁ、しかし。嘔吐と頭痛に耐えながら接近した価値はある。
この愛しい気持ちは一体なんだ?
未だかつて無いほどの、この幸福感は一体なんだ?
其れと同時に、強烈な睡魔が私を襲う。
意識を失う前に視界に映ったデジタルタイマーには、9:59と表示されていた。


川; -)「……」







私は覚醒する。
相変わらず真っ白な部屋にピエロ人形が堂々と存在し、私を威圧する。
そして、ある異変を感知した。


川; ゚ -゚)「あ、あれ?」


あの子がいない。
可愛いあの子がいない。
愛おしいあの子がいない。
一体、何所に行ってしまったんだ?

川 ; -;)「うぅ、何所に行ってしまったんだ……」


涙をぼろぼろ流しながら、辺りを見回す。
不安とあの子を失う恐怖が私を襲う。
そんな自身でも意味不明な感情が、私の全てを支配する。
嗚呼、なんて苦しくも、悲しい気持ちなのだろう。


川 ; -;)「あっ!!」


あの子が居る。
あの忌々しいピエロ人形の前でスヤスヤと眠っている。
何故、私の方で寝ない?
私がそんなに不満か?

川 ; -;)「うぅ、うっ!!」


嘔吐しそうになり、口元を手で押さえた。
情緒不安定な私を尻目に、スヤスヤと畏怖する存在の前で眠る赤子。
暫くして吐き気が収まったので、汚物塗れのドレスで涙を拭く。
勿論、汚物を避けながら涙を拭き取った。
しかし、拭いても、拭いても、涙が溢れてくる。
どうして、見ず知らずの子なのにこんなに悲しいのだろうか?


川 ; -;)「うう……あの子をこっち側に戻さなきゃ・・・・」


鎖を引っ張ろうかと考えたが、それでは赤子が可哀想なので却下した。
やはり此処は、私が行くしかない。






川* ゚ -゚)「よし、よし……」


「スースー……」


小さな赤子の頭を人差し指で撫上げる
寝顔を見る度、心が安らぐ。
さっきまでの頭痛や吐き気が嘘の様だ。
この子は、私を支えてくれるとっても大切な存在だ。
絶対に、手放さない。


川* ゚ -゚)「君は何て名前だい?」


「スー……スー……」


川* ゚ -゚)「お父さんとお母さんは居ないのかい?」


「うー……」

起こさない様に問いかけていたつもりだったが、目が覚めてしまったようだ。
赤子は小さな、小さな、身体をプルプルと震えさせていた。
なんだか、様子がおかしい。


川; ゚ -゚)「寒いのかい?」


「むー……」


手中で、寒そうに身体を震わせる赤子を見て心配になった。
私は汚れたドレスなどを全て脱ぎ、裸体になる。
理由は、人肌で温めれば、この子が寒さに震えなくて済むと考えたからだ。
私は暫くの間、赤子を優しく包み込むように抱いた。

川* ゚ -゚)「どうだ?寒くないかい?」


「きゃっきゃっ♪」


どうやら寒さは感じてないらしい。
この子の笑顔を見れれば、私はどうなってもいい。
いつの間にか、そんなことを本気で考え始めていた。
これを母性本能と言うのだろうか?
私には解らないし。理解もできない。
でも、其れを実行しようとする自分が存在する。
嗚呼、不思議な気分だ。







私はデジタルタイマーを凝視する。
時間は9:13と表示されていた。
これはどういう意味だ?


川; ゚ -゚)「まさか、爆弾じゃないだろうな……?」


今の状況を分析すると、この回答しかあり得ない。
むしろ、それ以外の答えは不自然だった。


川; ゚ -゚)「マズイ、これはマズイ……」


私の手中でスヤスヤと穏やかに眠る赤子を他所に、私は混乱する。
何か解決策がある筈だ。
いろんな角度からデジタルタイマーを観察し、回答を出そうと試みる。
そして、一瞬で其の回答が見つかった。

川; ゚ -゚)「なんだ?この紙は?」


デジタルタイマーの表示画面の裏側に、一枚のメモ書きが張ってあった。
其の紙を丁寧に剥し、凝視する。




アロペーよ、貴方は自身の役割を果たしなさい。
貴方は、この赤子の為に命を捧げなさい。
其れが貴方の役割でもあるし、貴方の幸福だ。
このタイマーのカウントが0になるまで頑張りなさい。
此れは、貴方が望んだことだ。
私は嘘を言わない。



川; ゚ -゚)「なんじゃこりゃ……?」


文章から察すると、私はアロペーと呼ばれているらしい。
とりあえず、この文章の通りなら爆弾では無いのだろう。
しかし、意味不明だ。
私を監禁した奴等は何が望みなんだ?
理解に苦しむ。







タイマーは8:43を表示する。
特に新しい発見も見つからなく、進展しない。
ただ、時間だけが消費される。
とても退屈な時間だ。


川 ゚ -゚)「さて、あの子はまだ眠っているかな?」


手中で眠る赤子を観察する。
初めて対面した時と比べて、成長しているのは気のせいだろうか?
否、気のせいじゃない。確実に大きくなっている。
しかし、たった一時間ちょっとで此処まで成長するものなのか?


「むにゃ……むにゃ……」

得体の知れない恐怖が私を襲う。
しかし、この子の寝顔を見ると、こんな感想が頭を過る。
私はこの子を守らなければならないし、成長を見届けなければならない。
母性本能と使命感が混じったような感覚に包まれた。


川* ゚ -゚)「よしよし、もっと大きくなるんだぞ」


赤子の腹を中指で摩りながら問いかけた。


「……ゲップ」


赤子の回答に、クスリと微笑む。






それから暫く、平和な時間を過した。
この子の成長する姿を楽しみながら、私は頬を染める。


川* ゚ -゚)「よしよし」


「きゃっきゃ」


吐き気や頭痛は一切無い。
ピエロ人形を見ても何とも思わなくなっていた。
ただ、疑問も増えた。
あのピエロ人形をこの部屋に置いておく意味はなんだ?
何故、時間が立つにつれ、ピエロ人形の周辺の床が罅割れていくのか?


そして、タイマーが7:30を過ぎた頃、事件が発生する。






「ギィ……ギィ……」


私は、不気味な鳴き声で覚醒する。
覚醒と同時に、激しい頭痛と吐き気が私を犯す。
視点がグルグルと螺旋を描くように廻る。
その定まらない視界から、何とか情報を得ようと奮闘する。
そして、私は知る。
今まで首をダランとだらしがなくさせ、動く気配がなかった【ソレ】が命が宿ったかのように身体を奮わせる。
【ソレ】の顔は此方を凝視し、殺意が宿った血走りの瞳が私の瞳と重なる。


私の本能が訴える。


【ピエロ】に私の全てが奪われると。

川; ゚ -゚)「守らなきゃ……守らなきゃ……」


私は咄嗟に赤子を庇う様に、身体をまるめる。
絶対に守り抜いて見せる。その決意が行動に現れた。
【ピエロ】は其の姿を見て、ケタケタと狂気に歪んだ笑顔を振り翳しながら私に接近する。
自身の心臓がバクバクと唸る。
恐怖と頭痛と吐き気で、裸体の身体が震える。


コツン……コツン……


【ピエロ】の足音が段々と大きくなる。
それに合わせて心臓の鼓動も大きくなる。


そして……


足音が消えた。

川; ゚ -゚)「……」


怖い。
ただ、其の一言に尽きる。
【ピエロ】は擦れた声で、何かを歌っているようだ。


カ------- 鳥ハ ----------ト---------レ?
カゴ--------ノ 夜明--------滑ッタ ---ロ-------レ?


声が聞き取れない。
必死に音を拾おうとするが、無駄だった。
どうやら、歌うのを止めたらしい。

ドゴッ!!


川; -)「ぐっ!!」


背中に激痛が走る。
どうやら、【ピエロ】が私を攻撃しているようだ。
理由は解っている。狙いは赤子だ。
確信は持てないが、本能がそれを告げる。
私はどんな目に遭ってもいい。
だが、この子を失うのは堪えられない。
それから暫く、【ピエロ】からの猛攻に堪え続けた。







タイマーは4:00を表示し、アラームが鳴る。
其れと同時に【ピエロ】の猛攻は止み、そいつは姿を消した。
残ったのは激痛と体中にできた痣、そして無傷の赤子だ。


川 ; -;)「良かった、良かったよぅ・・・・・」


安堵した私を凝視して、赤子は笑う。
赤子は初期の頃に比べ、かなり育っており、表情もハッキリと判るまで成長している。


( ><)「スー……スー……」

あと少しで私の役目は終わる。
役目が終わったら、私はどうなってしまうのだろうか?
いや、私はもう理解している。
結末は既に決まっている。
勿論、誰かに教えてもらった訳じゃない。
そう、私は自分の存在を思い出した。


川* -)「……」


徐々に床の罅が拡大する。
だけど、私は恐れない。


今は時間の限り、ビロードと一緒に居たい。






そして遂に、00:00とタイマーが表示される。
床の罅は全ての領域にまで広がっており、あと少し力を加えれば崩壊しそうなほどになっていた。


川ヽ -)「ビロードを……守りきったぞ」


天井から大量の水が流れ込んでくる。
衝撃で私とビロードが離され、赤子は落下し、暗い穴に落ちていった。
一方私は、軽くなった体が急上昇し、水が流れ込んでくる暗い穴に吸い込まれた。
穴の中は案の定、一色の闇。
これが死後の世界か。

身体が闇に蝕まれていく。


闇と私の意識が同化してゆく。


嗚呼、私は死ぬんだな。


でも、私は幸せだ。


だって私は、女として最高の幸せを掴んだのだから。



          • 川 ゚ -゚)は真実を何も知らないようです 完 ----


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