yt2_20-24

20 投稿日:2011/04/04(月) 20:07:18.06 ID:Bh+3CG9A


安広多恵子は評判の美少女だったが、妄想壁が強かった。
お姫様のように振る舞い、男子に指図する多恵子を、男子は鬱陶しがり、女子はいじめた。
多恵子は今日も夜の公園で一人、お姫様ごっこをする。

そんなある日、多恵子の前に一人の少年が現れ、彼女の寂しそうな表情を見かねて、従者の真似事をしてくれるようになった。
彼の前では少女はただの多恵子ではなく、セレスティア・ルーデンベルクになれた。
少年は、夜の公園にしか現れない。
多恵子は、昼間も会えないのかと問うた。
少年は帰りの遅い両親の代わりに妹の世話をしていたため、昼間は外出出来なかったのだが、
少女の趣味に合わせて、「ボクは吸血鬼だから、夜の間しか出歩けない」と答えた。

やがて少年は引っ越すことになり、お別れのときが近付いてきた。
少年はいい加減少女の無茶苦茶な命令に嫌気が差していたのでこれ幸いと思ったが、
まさかそんなことを言って少女を傷付けられるような性格ではなかったので、
「君が本当のお姫様になったら、そのときは再び騎士として参上する」と残して去った。

多恵子はやがてギャンブルの才能を見出し、お金持ちになっていった。
しかし、もはや顔もおぼろげで、ずっと「わたくしのナイト」と呼んでいたために本名を知らない少年のことは、
探しても見つからなかった。

多恵子はお城を買うためにお金を貯める。
いつか、あの吸血鬼の騎士と再会するために。
そのための障害となるなら、クラスメイトを犠牲にしたとしても。

一方、引っ越した少年はアイドルに夢中になり、少女のことなどすっぱり忘れた。



24 投稿日:2011/04/04(月) 22:20:53.51 ID:eqE8MbNT
 >>20
素晴らしい…でも悲しい…。ちょっと改変してSS1レスにまとめさせてくれ


今日も砂場にお城を作り、人形を並べて一人遊ぶ多恵子。
街灯の明かりに差した影にふと気づいて顔を上げると、見知らぬ少年が立っていた。
「きみ、ひとりであそんでるの?」
「……あなたには、かんけいないでしょう」
多恵子はそっぽを向いて答えた。どうせこの少年も自分を馬鹿にすると思ったから。

(この子、ちょっとさびしそうだな…)「ねえ、ボクもまぜてよ」
「えっ?」
「いっしょにあそぼうよ。ボク、きみのいうとおりにしてあげるから」
こんな優しい言葉をかけてくれたのは、彼が初めてだった。
「じゃ、じゃあ……わたくしはおひめさまで、あなたはナイトになって」
「うん。わかりました、おひめさま」
この日から二人は毎日、夕方の間だけ遊ぶようになった。

「うふふ。つぎは、おうまさんになりなさい」
「ええっ……また~?」
「ナイトのくせに、おひめさまのいうことがきけませんの?」
「……わ、わかったよ」
地面に手をつく少年。その背中に腰掛ける多恵子。
「ほら、あのブランコのところにいって!」
「いたた、かみをひっぱらないでよ!」

楽しい日々はあっという間に過ぎ、少年の引越しの日。
「きょうで、おわかれだね」
「そうですわね……」
いつもの元気がない多恵子が、少年は心配になった。
「いつか、むかえにくるよ」
「ほ、ほんとうですの?」
「うん、やくそくする。きみがおおきくなってほんとうのおひめさまになったら、ボクもほんとうのナイトになる」
「やくそく……。では、キスをしてください。ちかいのキスを」
「ええっ!? ……ど、どこに?」
「てにきまっているでしょう!」
差し出された手の甲にキスをして、少年は帰っていった。

多恵子はまた一人ぼっちになってしまったが、もう寂しくはなかった。
名前も知らない少年と交わした約束が、多恵子の生きる糧になった。
月日が流れてもそれは変わらない。むしろ夢への憧れは強くなる一方だ。
「ほんとうのおひめさま」になるために、多恵子は手段を選ばなかった。


「苗木君、次はこの花瓶の水を換えてきて下さい」
「ええっ。…また食堂に戻るの?」
「ナイトのくせに、わたくしのいう事が聞けませんの?」
「わ、わかったよ」「……?」
訝しげに首を傾げる苗木。
「どうしましたの?」
「いや、ずっと昔にも、こんな事があったような……。まあ、いいか。行ってくるよ」
(……まさか、苗木君が? でも、あの予感……彼に感じたAランクへの『可能性』は……)

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