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7月7日。この日は世間が七夕で賑わう日だ。
僕達が通う希望ヶ峰学園も例に漏れず、植物庭園で採れた大きな笹に全校生徒の願いを書いた短冊を吊るし、校庭に飾っている。
近所の商店街でも七夕祭りが催され、希望ヶ峰学園の生徒達は授業が終わると次々に街へと繰り出していった。
この日の放課後、僕は思い切って舞園さんをお祭りに誘ったら、彼女は二つ返事でOKをくれた。

「苗木君、どうです?似合いますか?」

お祭りに参加するにあたり、商店街の呉服屋で浴衣をレンタルすることにした舞園さんは、試着室のカーテンを開けてポーズをとる。
長い黒髪をお団子にし、淡いピンク色の浴衣を纏った彼女の姿は眼福という他なく、僕はしばし見惚れてしまっていた。

「…あ。うん!凄く似合ってるよ、舞園さん!」
「ありがとうございます。では。お祭りに行きましょうか。」

舞園さんが呉服屋に浴衣のレンタル代を支払った後、僕達は七夕祭りへ繰り出した。
祭りが開かれている商店街は日没間近だというのに人で溢れており、出店も多く出ていた。
遊ぶ前に僕達は腹ごしらえとして焼きそばを購入し、ベンチに座った。

「苗木君、口元にソースがついてますよ。」
「え?」
「ちょっとだけ、動かないで下さい。」

そう言って舞園さんは鞄からハンカチを取り出し、僕の口元を拭ってくれた。
その間舞園さんの顔が凄く近かったので僕の心臓は物凄く高鳴り、心臓の音が彼女に聞こえてしまうんじゃないかと冷や冷やした。

腹ごしらえを終えた僕達は一緒に商店街を練り歩き、あちらこちらでクラスメイト達の姿を見かけた。
チョコバナナや綿菓子、リンゴ飴など両手に抱え切れないほどのお菓子を抱えた朝日奈さんと、それに付き合う大神さん。
浴衣姿の不二咲君を男と知らずにナンパしたチンピラを撃退する大和田君と石丸君。
女子大生数人をナンパしたはいいが、すっかり財布代わりにされてしまっている桑田君。
景品を撃ち落としまくって射的屋の親父を絶望させている戦刃さんと、隣でそれを見てゲラゲラ笑っている江ノ島さん。
いつものように山田君を顎で使うセレスさんに、腐川さんに庶民の祭りや出店の解説をさせている十神君。
無許可で占いコーナーを設置してお金をとっていたため商店街の人達に連行されていく葉隠君。
その際、僕達を見つけた葉隠君から助けを求められたのだが、僕達は全力で知らん顔をした。

「あ。苗木君、霧切さんも来てますよ。学園長さんも居ます。」
「本当だ。あの2人が揃って外出なんて珍しいね。」

金魚すくいの出店の近くに、青い浴衣を来た霧切さんと、父親の学園長が居る所を舞園さんが発見した。
学園長が霧切さんに金魚すくいに挑戦したらどうかと促しているようだが、霧切さんは見ているだけで十分なようだった。
すると、娘に良い所を見せようとしたのか学園長が挑戦したが、すぐにポイを破ってしまい、逆に呆れられてしまっていた。
しかし、いつも通りの無表情だったものの、霧切さんはどこか楽しそうな様子だった。

「きっと、お父さんと過ごせて嬉しいんですよ。」
「そうかもね…って、また僕の考えてることを…。」
「エスパーですから。親子水入らずのところを邪魔しちゃ悪いですから、場所を変えましょうか。」
「うん。」

その後もしばらく僕達は商店街をブラブラして祭りを楽しみ、少し歩き疲れたのでベンチで休憩することにした。
ふと空を見上げてみると、澄み切った夜空に沢山の星が瞬いていた。

「凄く綺麗だね。」
「ええ。晴れて本当に良かったです。ふぁ…。」

僕と話している途中、舞園さんは大きなあくびをした。

「大丈夫、舞園さん?疲れたのなら、そろそろ寮に…。」
「いえ、まだ大丈夫です。そういえば、苗木君は短冊に何て書いたんですか?」
「僕は『家族やクラスの皆とずっと仲良く出来ますように』って書いたよ。そう言う舞園さんは?」
「私も似たような内容です。でも、本当の願い事は別にあります。」
「じゃあ、どうしてそれを書かなかったの?」
「それは…本当の願い事は誰かに叶えてもらうんじゃなく、自分の力で叶えたいからです。」
「そっか。」

僕はそれ以上聞かなかった。
舞園さんの本当の願い事が何なのか気になったが、ここでそれを聞くのはいけないような気がした。
僕達がその後もしばらく星空を見上げていると、僕の左肩に何かが乗ってくると同時にいい匂いが鼻に入り込んできた。
何と、舞園さんが僕に寄りかかってきたのだ。

「ま、舞園さん!?」
「すぅ…すぅ…。」
「あらら、寝ちゃったよ。仕方ないな…。」

どうやら舞園さんは睡魔に負けてしまったようだ。
僕は舞園さんが起きるまで動けなくなったが、気持ち良さそうに眠っている舞園さんの寝顔を独り占め出来るのは悪い気分ではなかった。

この後、舞園さんが起きるまでの間、僕は僕らを見つけた江ノ島さんに冷やかされたり霧切さんに絶対零度の瞳で睨まれたりしたのだが、それはまた別の話だ…。


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